内部監査室の立ち上げ手順|最初の90日でやること

内部監査室を立ち上げるとき、規程を作り込んでから始めようとすると、準備だけで何か月も過ぎてしまいます。おすすめは、最初の90日で計画から往査、報告までを1巡させることです。

1巡させれば、自社にとって何が必要かが具体的に分かります。この期間で完璧を目指す必要はなく、規程も手続書も後から直せます。

この記事では、90日を3つの段階に分けた進め方と、それぞれの期間でやること、避けたほうがよいことを整理します。

この記事でわかること

  • 90日を3段階に分けた立ち上げの進め方と各期間の成果物
  • 最初の30日でそろえる資料の順番と、監査法人の指摘の使い方
  • 内部監査規程に最初から入れておく骨格
  • 初年度の年度計画に書くべきことと往査の回数
  • 1回目の往査で選ぶべき対象の条件
  • 最初の90日でやらないほうがよい5つのこと
最初の90日で何をするか内部監査を立ち上げる規程と体制が決まっていないか規程を作り担当と報告経路を決めるはいいいえ会社全体のリスクを把握できていないか部署ごとにリスクを洗い出すはいいいえ年度の計画がないか対象と時期を決めて承認を得るはいいいえ最初の往査を行い、報告と是正の型を作る

図 内部監査の立ち上げの手順

📌 結論 90日で1巡させる

内部監査室を立ち上げるとき、最初に何から手をつけるかで迷う人は多いところです。規程を作り込んでから始めようとすると、何か月も準備だけで過ぎてしまいます。おすすめは、最初の90日で計画から往査、報告までを1巡させてしまうことです。1巡させれば、自社にとって何が必要かが具体的に分かります。

この期間で完璧を目指す必要はありません。規程は後から直せますし、手続書も回数を重ねるほど良くなります。むしろ、動かしてみないと分からないことのほうが多いというのが実務の感覚です。

90日を3つの段階に分ける期間やることこの期間の成果物1日目から30日会社を知り資料をそろえる資料の一覧と業務の全体図31日目から60日規程と年度計画を作り承認を得る内部監査規程・年度計画61日目から90日1回目の往査を実施して報告する監査手続書・調書・報告書

90日で1巡させると、その後の運用が具体的に描ける

🧭 最初の30日でそろえるもの

最初の1か月は、会社を知ることに使います。集める資料には順番があり、組織図と職務分掌表から入ると全体の見取り図ができます。次に職務権限規程と稟議の様式を見れば、意思決定がどこで行われているかが分かります。

最初の30日でそろえる資料の順番組織図と職務分掌表で誰が何をしているかを押さえる職務権限規程と稟議の様式で決裁の流れを把握する既存の規程の一覧を作り欠けているものを洗い出す直近2期の決算資料と月次の管理資料に目を通す監査法人からの指摘事項と改善の状況を確認する

監査法人の指摘は最初の年度計画の重点領域を決める材料になる

既存の規程については、一覧を作ることが目的です。何があって何がないかが分かれば、内部統制の整備状況の概観がつかめます。規程の中身を精読するのは後で構いません。

監査法人からの指摘事項は、必ず確認します。会計監査の過程で見つかった業務プロセス上の問題は、内部監査の重点領域を決める有力な材料になります。指摘に対する会社の対応状況も併せて聞いておくと、最初の往査の対象を選びやすくなります。

この期間に、主要な部署の責任者と一度ずつ話をしておくことも有効です。内部監査が何をする部署なのかを説明し、業務上の困りごとを聞いておくと、その後の往査が進めやすくなります。

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📊 31日目から60日で作るもの

2か月目には、内部監査規程と年度計画を作ります。規程は、目的、対象範囲、独立性、権限、報告の経路、調書の保存という骨格が入っていれば、最初はそれで足ります。他社の規程をそのまま持ってくると、自社にない委員会や役職が出てきて運用できません。

年度計画では、対象の選び方の考え方と、年に何回どこを見るかを書きます。初年度は年4回程度に絞ります。対象の選定理由を書いておくことが重要で、なぜその部署を選んだのかが説明できれば、計画としての体裁は整います。

規程と年度計画は、取締役会または経営者の承認を受けます。この承認があってはじめて、内部監査が会社の仕組みとして位置づけられます。承認の記録は日付とともに残しておきます。

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🗂 61日目から90日で1回目の往査

3か月目には、実際に1回目の往査を行います。対象は、リスクが高く、かつ資料がそろっている部署を選びます。最初から難しい領域を選ぶと、結論が出せずに終わる可能性があります。購買や経費精算のように、手続が定型的で証憑がそろっている領域が入りやすいところです。

最初の90日でやらないほうがよいことやりがちなことなぜ避けるか代わりにやること全部署を一度に見る浅くなり結論が出ない1部署に絞って深く見る他社の規程をそのまま使う自社の実態と合わない必要な条項を選んで作る細かい不備を大量に指摘する信頼関係が作れない重要度の高いものに絞る監査法人の指摘を丸写しする内部監査の価値が出ない自分の手続で確かめ直す報告書を長く作り込む読まれない2ページに要点をまとめる

最初の1回で信頼を得られるかが、その後の協力の得やすさを決める

往査の前に監査手続書を作ります。何を何件どう確かめるかを事前に書いておくことで、当日の作業が具体的になり、調書も書きやすくなります。手続書がないまま現場に行くと、話を聞いて終わってしまいます。

報告書は2ページ程度にまとめます。長く作り込む必要はありません。むしろ、指摘を重要度の高いものに絞り、それぞれに事実、原因、影響、是正案を書くほうが読まれます。最初の報告書が読まれるかどうかで、その後の協力の得やすさが変わります。

⚖️ 90日を過ぎたら

1巡させた後は、やってみて分かった不足を埋めていきます。規程に足りない条項を追加する、調書の様式を使いやすく直す、手続書のひな型を作るといった作業です。1回やった後なら、何が必要かが具体的に分かります。

並行して、監査役等および会計監査人との関係づくりを始めます。年に数回の定例の会合を設定し、内部監査の計画と結果を共有する場を作ります。早い段階で始めておけば、審査の時点で継続した実績として説明できます。

そして、2回目以降の往査を年度計画どおりに進めます。最初の1回を終えた時点では体制の形が見えているだけで、実績としてはまだ足りません。計画から報告、是正のフォローアップまでを繰り返して積み上げていくことが、結局のところ最も確実な準備になります。

❓ よくある質問

Q. 規程を作り込んでから始めるべきではないですか

A. 作り込みに時間をかけるより、骨格だけ作って1巡させるほうが早く形になります。やってみて分かった不足を後から埋めるほうが、自社に合った規程になります。

Q. 最初の往査はどこを選べばよいですか

A. リスクが高く、かつ資料がそろっている部署を選びます。購買や経費精算のように手続が定型的で証憑がそろっている領域が入りやすいところです。

Q. 他社の内部監査規程を参考にしてよいですか

A. 参考にするのは有効ですが、そのまま使うと自社にない委員会や役職が出てきて運用できません。必要な条項を選んで作ります。

Q. 年度計画に何を書けばよいですか

A. 対象の選び方の考え方と、年に何回どこを見るかを書きます。なぜその部署を選んだのかという理由が書かれていれば、計画としての体裁は整います。

Q. 規程と年度計画に承認は必要ですか

A. 必要です。取締役会または経営者の承認を受けてはじめて、内部監査が会社の仕組みとして位置づけられます。承認の記録は日付とともに残します。

Q. 最初の報告書はどのくらいの分量にしますか

A. 2ページ程度で足ります。長く作り込むより、指摘を重要度の高いものに絞り、事実・原因・影響・是正案を書くほうが読まれます。

Q. 監査法人の指摘をそのまま監査すればよいですか

A. 材料として使うのは有効ですが、丸写しでは内部監査の価値が出ません。自分の手続で確かめ直したうえで報告します。

Q. 90日を過ぎたら次に何をしますか

A. やってみて分かった不足を埋めながら、2回目以降の往査を年度計画どおりに進めます。並行して監査役等および会計監査人との定例の会合を始めます。

📄 まとめ

内部監査室の立ち上げは、90日で計画から往査、報告までを1巡させるのが最短の道筋です。

最初の30日は会社を知ることに使います。組織図と職務分掌表から入り、監査法人の指摘まで確認すると重点領域が見えてきます。

2か月目に規程と年度計画を作り、承認を受けます。骨格が入っていれば最初はそれで足ります。

3か月目の往査では、手続書を事前に作り、報告書は2ページに絞ります。最初の報告書が読まれるかで、その後の協力の得やすさが変わります。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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