内部監査の品質という言葉は抽象的ですが、実際に問われるのは、その監査がきちんと行われたことを後から示せるかという一点です。記録がなければ品質は説明できません。
逆に言えば、記録の形さえ整っていれば、少人数の体制でも十分に説明が通ります。人数の不足を理由に品質が低いと判断されるわけではありません。
この記事では、品質をどの場面で担保するか、調書のレビューの回し方、年1回の自己評価の項目、少人数体制での工夫、よくある弱点を順に整理します。
- 品質を担保する5つの場面と、それぞれで残す記録
- 調書のレビューを4段階で回す進め方とタイミング
- 年1回の自己評価で確認する10の項目
- 1人体制でレビューが難しい場合の代替の工夫
- 担当者の能力について残しておく記録
- 実務でよく見られる3つの品質上の弱点
図 内部監査の品質評価の進め方
📌 結論 品質は記録の形で示すしかない
内部監査の品質という言葉は抽象的ですが、審査や監査法人とのやりとりで実際に問われるのは、その監査がきちんと行われたことを後から示せるかという一点です。担当者が丁寧に仕事をしていても、記録がなければ品質は説明できません。逆に、記録の形さえ整っていれば、少人数の体制でも十分に説明が通ります。
日本内部監査協会の内部監査基準は、内部監査の品質を管理し評価する枠組みを示しています。上場準備の段階で外部の評価まで受ける必要はありませんが、自己評価を年に1回行い、その記録を残しておくことは現実的な出発点になります。
レビューの記録がない調書は後から品質を説明できない
🧭 調書のレビューをどう回すか
品質を担保する仕組みのうち、最も効果が大きいのは調書のレビューです。担当者が書いた調書を別の人が見ることで、証拠が結論を支えているか、指摘の根拠が十分かが確かめられます。1人体制の会社では上長がこの役割を担います。
レビューを報告書作成の直前にまとめて行うと差し戻せない
レビューのタイミングは、往査の直後が最も有効です。報告書を書く直前にまとめてレビューすると、証拠が足りないことが分かっても追加で確かめる時間がありません。往査の翌営業日までに一度見るという運用にしておけば、必要なら現場に追加の依頼を出せます。
レビューの記録は、調書にレビュー欄を設けて確認者と日付を書くだけで足ります。指摘した点と修正の結果まで残せればより良いのですが、まずは誰がいつ見たかを残すところから始めます。
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📊 年に1回の自己評価
自己評価は、その年度の内部監査が定めた枠組みどおりに行われたかを、担当者自身が書面で確認する作業です。難しいものではなく、確認する項目をあらかじめ決めておき、年度末に1枚のシートで確認していきます。
年1回、この10項目を書面で確認して記録に残す
確認の結果、できていなかった項目については、翌年度の改善計画に落とします。すべてがそろっている必要はありません。むしろ、できていない点が正直に書かれ、翌年度に改善された記録が残っているほうが、体制が動いている証拠になります。
自己評価の結果は、経営者と監査役等に報告します。この報告があることで、内部監査の品質について経営が把握しているという説明ができます。報告の記録は取締役会の議事録や会合の議事録に残しておきます。
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🗂 少人数体制での現実的な工夫
1人か2人の体制では、独立したレビューが難しい場面が出てきます。その場合の工夫としては、対象部署の責任者に事実の確認を取るという方法があります。指摘の事実関係について相手の確認を得ておけば、少なくとも事実誤認による指摘は防げます。
もう1つは、外部の専門家に年1回だけ関与してもらう形です。年度の調書と報告書を見てもらい、手続や記録の形について助言を受けます。常時の委託に比べて費用は限られ、品質の説明材料としては十分に機能します。
担当者の能力についても記録を残します。研修の受講、資格の取得、業務知識の習得のための取り組みを年度ごとにまとめておくと、担当者が監査を行うのに十分な知見を持っていることの説明になります。会計や法務の知識が必要な領域では、外部の助言を受けたことも記録に含めます。
⚖️ よくある品質上の弱点
実務でよく見られる弱点の1つ目は、調書が結論だけで証拠が添付されていないことです。確かめた件数、抽出の理由、確かめた資料の名称が書かれていないと、後からその結論の根拠をたどれません。
2つ目は、指摘の影響が書かれていないことです。事実と是正案だけが並んでいると、読む側がその指摘の重さを判断できません。影響の欄を様式に設けておくと、書き手も自然に考えるようになります。
3つ目は、是正の完了確認が甘いことです。担当部署から完了の報告を受けただけで完了としている状態は、確認とはいえません。証拠の提示を求めるか、翌年度の往査で改めて確かめるという運用を決めておきます。この3点を押さえるだけで、品質の説明は大きく変わります。
❓ よくある質問
A. 上場準備の段階で外部評価まで受ける必要は通常ありません。年1回の自己評価を書面で行い記録を残すところから始めれば十分に説明が通ります。
A. 上長がレビューを担う形が基本です。それも難しい場合は、対象部署の責任者に事実の確認を取ることで、少なくとも事実誤認による指摘は防げます。
A. 往査の直後です。報告書を書く直前にまとめてレビューすると、証拠が足りないと分かっても追加で確かめる時間がありません。
A. 調書にレビュー欄を設け、確認者と日付を書くだけで足ります。指摘した点と修正の結果まで残せればより良いところです。
A. 問題ありません。むしろ正直に書かれ、翌年度に改善された記録が残っているほうが、体制が動いている証拠になります。
A. 経営者と監査役等に報告します。この報告があることで、内部監査の品質を経営が把握しているという説明ができます。
A. 研修の受講、資格の取得、業務知識の習得の取り組みを年度ごとにまとめます。外部の助言を受けた記録も含めておくと説明しやすくなります。
A. 完了の報告を受けただけでは確認とはいえません。証拠の提示を求めるか、翌年度の往査で改めて確かめる運用を決めておきます。
📄 まとめ
内部監査の品質は記録の形で示すしかありません。丁寧に仕事をしていても記録がなければ説明できません。
最も効果が大きいのは調書のレビューです。往査の直後に行い、確認者と日付を残すところから始めます。
年1回の自己評価を10項目のシートで行い、できていない点は翌年度の改善計画に落とします。正直に書くほうが体制の証拠になります。
よくある弱点は、証拠が添付されていない調書、影響が書かれていない指摘、完了確認の甘い是正の3点です。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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- 内部監査の品質をどう保つか(この記事)
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