キーコントロールの選び方|数を絞る基準と評価の負担

内部統制の評価で作業量を左右するのは、評価の対象とする統制をいくつ選ぶかです。1つのプロセスにある統制をすべて評価すると、サンプルの件数も証憑の入手も膨れ上がります。

実務では、リスクを十分にカバーできる範囲で統制を絞り、その統制を重点的に評価します。ただし減らしすぎると、カバーされないリスクが残ります。

この記事では、選びやすい統制の特徴、絞り込みの5段階、絞りすぎていないかの確認、監査法人との協議、内部監査との関係を整理します。

この記事でわかること

  • キーコントロールに選びやすい統制の5つの特徴
  • 1つで複数のリスクに効く統制を探す考え方
  • 自動化された統制を優先すると評価の負担がどう変わるか
  • 選んだ後にリスクの一覧へ戻って確かめる理由
  • 網羅性と期間帰属という見落とされやすい論点
  • 監査法人との協議で示すべき資料

📌 結論 絞り込みが評価の負担を決める

内部統制の評価で作業量を左右するのは、評価の対象とする統制をいくつ選ぶかです。1つのプロセスに20個の統制があるとして、そのすべてを評価すると、サンプルの件数も証憑の入手も20倍になります。実務では、リスクを十分にカバーできる範囲で統制を絞り、その統制を重点的に評価します。この絞られた統制がキーコントロールと呼ばれるものです。

絞り込みは負担を減らすために行いますが、減らしすぎると、カバーされないリスクが残ります。適切な数はプロセスによって違いますが、リスクの一覧と対応づけて説明できることが条件になります。

キーコントロールに選びやすい統制特徴なぜ選びやすいか複数のリスクに効く1つで広い範囲をカバーする3者突合による支払の照合自動化されている件数が多くても評価が軽い与信限度を超えた受注の入力制限証跡が確実に残る評価の証拠を集めやすいシステム上の承認記録網羅性を担保する漏れを検出できる連番の管理と欠番の確認後工程で検出できる前工程の誤りをまとめて拾う月次の残高照合と差異の調査

自動統制は件数の負担が小さいので、優先して選ぶ価値がある

🧭 どう選ぶか

選び方の基本は、1つで複数のリスクに効く統制を探すことです。たとえば、注文書と納品書と請求書の3つを突き合わせて支払を承認する統制は、架空の仕入、数量の相違、単価の相違という複数のリスクに同時に効きます。こうした統制を選べば、少ない数で広い範囲をカバーできます。

キーコントロールを絞る5段階そのプロセスのリスクを一覧にするリスクごとに現に働いている統制を並べる1つの統制で複数のリスクに効くものを見つける証跡が残り評価できるものを優先して選ぶ選んだ統制でリスクが全部カバーされるか確かめる

選んだ後に、カバーされないリスクが残っていないかを必ず確かめる

次に見るのが、自動化されているかどうかです。システムで自動的に行われる統制は、設定が変わっていないことを確かめれば、件数を多く見る必要がありません。手作業の統制を25件見るのに比べて、評価の負担が大きく違います。上場準備の段階でシステムを入れ替えるのであれば、統制を自動化できないかを検討する価値があります。

3つ目が証跡です。統制が行われた記録が残らなければ、評価のしようがありません。担当者が確かめているという説明だけでは、有効だと結論づけられません。証跡の残る統制を優先して選び、残らない統制については記録の方法を先に決めます。

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📊 絞りすぎていないかの確認

統制を選んだら、逆方向から確かめます。リスクの一覧に戻り、それぞれのリスクが選んだ統制のどれかでカバーされているかを見ます。カバーされていないリスクが残っていれば、統制を追加するか、そのリスクが実際には重要でないことを説明する必要があります。

絞り込みでよくある失敗失敗どうなるか直し方全部を重要とする評価の件数が膨れ負担が回らない複数リスクに効く統制に絞る絞りすぎるカバーされないリスクが残るリスク一覧との対応を確かめる証跡のない統制を選ぶ評価の段階で証拠が出せない証跡の残る統制に置き換える手作業ばかり選ぶ件数が多く評価に時間がかかる自動統制を優先して選ぶ毎年見直さない業務が変わっても統制が古いまま年次で対応関係を点検する

絞り込みは負担を減らすためだが、減らしすぎると評価が成り立たない

特に見落とされやすいのが、網羅性に関わるリスクです。承認の統制は実在性には効きますが、そもそも記録されなかった取引は捕まえられません。連番の管理や、後工程での残高照合といった統制が、網羅性をカバーします。承認の統制ばかり選んでいると、この面が空白になります。

もう1つが、期間帰属です。取引が正しい期に計上されているかは、承認の有無とは別の論点です。締切の管理や、期末前後の取引の確認といった統制が必要になります。

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🗂 監査法人との協議

キーコントロールの選定は、会社が行うものですが、監査法人の考えとずれていると、評価が終わった後で追加の評価を求められることがあります。評価の作業に入る前に、選定した統制の一覧を共有して意見を聞いておくと、手戻りを防げます。

協議の際は、なぜその統制を選んだのかという理由を示します。リスクの一覧と統制の対応表があれば、説明はそれだけで足ります。表がないまま口頭で説明すると、議論が抽象的になり時間がかかります。

また、監査法人が評価の結果を利用する場面もあるため、評価の手続や記録の残し方についても、事前にすり合わせておくと効率的です。会社の評価をそのまま利用してもらえれば、監査法人が行う手続が減り、結果として会社の負担も減ります。

⚖️ 内部監査との関係

キーコントロールとして選ばれた統制は、内部監査でも重点的に見る対象になります。評価の担当部門と内部監査が別であっても、見るべき統制は共通しているためです。年度計画を作る段階で、キーコントロールの一覧を確認しておくと、往査で確かめるべきことが具体的になります。

逆に、キーコントロールから外れた統制について、内部監査が見る意味がないわけではありません。財務報告への影響は小さくても、業務の効率や法令の遵守という観点では重要な統制があります。評価の範囲と監査の範囲は一致しないという前提で、それぞれの対象を決めます。

絞り込みは毎年見直します。業務が変わればリスクも統制も変わり、去年のキーコントロールがそのまま使えるとは限りません。年次の評価に入る前に、前年度からの変更点を確かめる作業を入れておきます。

❓ よくある質問

Q. キーコントロールは何個くらいが適当ですか

A. プロセスによって違うため、決まった数はありません。リスクの一覧と対応づけて、すべてのリスクがカバーされていると説明できることが条件になります。

Q. どんな統制を選べばよいですか

A. 1つで複数のリスクに効く統制を優先します。3者突合のように、架空の仕入や数量の相違に同時に効く統制を選ぶと、少ない数で広くカバーできます。

Q. 自動統制を選ぶ利点は何ですか

A. 設定が変わっていないことを確かめれば、件数を多く見る必要がありません。手作業の統制を25件見るのに比べて評価の負担が大きく違います。

Q. 証跡が残らない統制は選べますか

A. 評価のしようがないため選べません。証跡の残る統制に置き換えるか、記録の方法を先に決めます。

Q. 絞りすぎていないかはどう確かめますか

A. リスクの一覧に戻り、それぞれのリスクが選んだ統制のどれかでカバーされているかを見ます。カバーされていないリスクが残っていれば統制を追加します。

Q. 見落としやすいリスクはありますか

A. 網羅性と期間帰属です。承認の統制は実在性に効きますが、記録されなかった取引や期ずれは捕まえられません。連番管理や残高照合が必要になります。

Q. 監査法人にはいつ相談しますか

A. 評価の作業に入る前に、選定した統制の一覧を共有して意見を聞きます。終わった後で追加の評価を求められると手戻りが大きくなります。

Q. 内部監査の対象と一致させるべきですか

A. 一致しないという前提で考えます。財務報告への影響は小さくても、業務の効率や法令遵守の観点で重要な統制があります。

📄 まとめ

キーコントロールの絞り込みが、評価の作業量をそのまま決めます。少ない数で広いリスクをカバーする統制を探します。

選ぶ基準は、複数のリスクに効くこと、自動化されていること、証跡が確実に残ることの3つです。

選んだ後は必ずリスクの一覧に戻って、カバーされていないリスクがないかを確かめます。網羅性と期間帰属が空白になりがちです。

評価に入る前に監査法人と一覧を共有します。リスクと統制の対応表があれば、説明はそれだけで足ります。

絞り込みは毎年見直します。業務が変わればリスクも統制も変わります。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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