内部監査の往査|2日間の進め方とクロージングの実務

往査の2日間で何を見るかは、予備調査の段階で決まっています。現場でやるのは確認です。その場で何を見るか考え始めると、説明を聞くだけで終わります。

一方で、現場でしか分からないこともあります。証憑の原本、保管の状況、システムの実際の画面、そして手順どおりに動いているかどうか。これらを見るために往査があります。

この記事では、往査2日間の組み立て、オープニングで伝えること、現場で必ず見る4つ、質問のしかた、そしてクロージングでの確認事項を整理します。

この記事でわかること

  • 往査2日間の時間の使い方
  • オープニングミーティングで伝える4つ
  • 現場でしか確認できない4つのもの
  • 事実から理由へという質問の順番
  • クロージングで指摘を先に伝える理由
往査の当日をどう進めるか往査の日程と担当を決める冒頭で目的と範囲を説明したか開始時の打合せで共有するはいいいえ現物や証憑を実際に確かめたかその場で証跡を入手するはいいいえ気になる点が出てきたか担当者に確認して記録を残すはいいいえ終了時の打合せで事実を確認し、認識の違いをなくす

図 往査の当日の進め方

📌 結論 往査は確認の場であり、調査の場ではない

図1 往査2日間の組み立て時間帯やること注意点1日目 午前オープニングミーティング、業務の説明を受け説明は聞くが、そこで結論を出さない1日目 午後証憑の閲覧を始める。抽出した件から順にその場で写しを取り、印をつける2日目 午前証憑の閲覧の続き、システム画面の確認権限一覧は画面を保存する2日目 午後前半疑問点の質問、事実の確認責める言い方をしない。事情を聞く2日目 午後後半クロージングミーティング指摘の候補を伝え、事実誤認がないか確認する

クロージングで事実を確認しておくと、報告書の段階での差し戻しが減ります。

往査の2日で何を見るかは、予備調査の段階で決まっています。現場では、決めたことを確認します。その場で何を見るか考え始めると、説明を聞いて終わります。

1日目の午前はオープニングミーティングと業務の説明です。ここで大切なのは、説明を聞いても結論を出さないことです。手順どおり運用していますという説明を受けても、それを確かめるのが監査です。

2日目の午後はクロージングミーティングに充てます。ここで確認できた事実を伝え、事実誤認がないかを被監査部門に確かめます。この工程を飛ばして帰ると、報告書の段階で事実が違うという差し戻しが起きます。

🧭 オープニングで伝えること

オープニングミーティングでは、4つを伝えます。監査の目的、対象期間と対象業務、2日間の進め方、そして何を用意してほしいかです。

目的の伝え方が大切です。不備を探しに来たという伝わり方をすると、現場が身構えます。手順が守れる仕組みになっているかを一緒に確認する、という立て方をしてください。指摘を出すことが目的ではなく、仕組みを良くすることが目的です。

被監査部門の責任者には同席してもらいます。担当者だけで進めると、決裁や例外処理の判断について聞ける相手がいなくなります。

所要時間は30分で十分です。長い説明を受けるより、早く証憑に入ったほうが実りがあります。

📄 現場で必ず見るもの

図2 現場で必ず見る4つ見るもの確かめること証憑の現物写しではなく原本。日付の改ざん、印影の重なり、後付けの追記がないか保管の状況施錠されているか、誰でも触れる場所にないか、廃棄の記録があるかシステムの画面権限の設定、承認の履歴、ログの取得状況現場の動き手順どおりに動いているか。マニュアルと実際の作業が違わないか

資料だけを見るなら現場に行く必要がありません。現物と現場を見るために往査があります。

証憑は原本を見ます。事前に写しを送ってもらっている場合でも、往査では原本を確認してください。日付の改ざん、印影が重なっている、あとから追記されている、といったことは写しでは分かりません。

保管の状況も見ます。契約書や現金が誰でも触れる場所に置かれていないか、施錠されているか、鍵の管理者は誰か。これは資料を取り寄せても分からない、現場でしか確認できない事項です。

システムの画面は、担当者に操作してもらいながら見ます。権限一覧の画面、承認履歴の画面、ログの設定画面です。画面の写しを取って調書に添付してください。

そして現場の動きです。マニュアルにある手順と、実際にやっていることが違うのはよくあることです。違いを見つけたときは、なぜそうしているのかを聞きます。マニュアルが実態に合っていないだけのこともあります。

往査への同行と、現場での確認をお引き受けします

現物と現場を見るのが往査です。証憑の見方、システム画面での確認事項、質問のしかたを、実際の往査に同行しながらお伝えします。担当者の方が自社だけで往査できる状態を目標に進めます。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。

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📊 質問のしかた

質問には順番があります。まず事実を聞き、次に理由を聞きます。いきなり理由から聞くと、相手が身構えて事実が出てこなくなります。

この発注書の承認者はどなたですか、というのが事実の質問です。回答を得てから、この案件だけ承認者が違うのはどういう事情ですかと理由を聞きます。

相手が答えに詰まったときは、待ってください。沈黙を埋めようとしてこちらから答えを示すと、その答えに合わせた回答が返ってきます。

手順から外れた処理が見つかったときも、責める言い方は避けます。現場には事情があり、その事情を聞き出せるかどうかで指摘の質が変わります。手順が守れなかった理由が仕組みの側にあるなら、直すべきは仕組みです。

🗂 クロージングで確認すること

図3 クロージングミーティングの進め方監査の目的と実施した手続を振り返る確認できた事実を、証憑を示しながら伝える事実誤認がないかを被監査部門に確認する指摘となりうる事項を伝え、背景の事情を聞く報告書の提出時期と、是正計画の提出期限を伝える

指摘を伝えずに帰り、報告書ではじめて知らせるのは避けてください。信頼関係が壊れます。

クロージングミーティングでは、確認できた事実を証憑を示しながら伝えます。抽象的に伝えると、後で認識の違いが出ます。日付と伝票番号を挙げて、この処理はこうなっていました、と示してください。

そのうえで、事実誤認がないかを確認します。閲覧した証憑が最新版でなかった、別の記録に承認の証跡があった、という反論が出ることがあります。この段階で分かれば、報告書を書き直さずに済みます。

指摘となりうる事項も、この場で伝えます。報告書ではじめて知らされると、被監査部門は不意打ちと受け取ります。是正に協力してもらう相手ですので、先に伝えておいてください。

最後に、報告書の提出時期と是正計画の提出期限を伝えます。いつまでに何を出せばよいかが分かれば、現場も動けます。

⚖️ 往査の記録として残すもの

往査の記録として残すのは、日程表、オープニングとクロージングの出席者と議事メモ、そして調書です。

出席者の記録は、被監査部門の責任者が関与したことの証明になります。担当者だけで進めた監査は、審査で実効性を疑われることがあります。

議事メモは詳細でなくて構いません。日時、場所、出席者、伝えた内容、確認した事実、次の期限が書いてあれば足ります。

これらの記録がそろっていると、上場審査で往査の実施状況を説明できます。調書だけあって日程表や議事メモがないと、いつ誰が誰と何をしたのかを示せません。

❓ よくある質問

Q. 往査は何日必要ですか。

A. 1テーマあたり2日が標準です。証憑の件数が多い場合や拠点が離れている場合は追加します。

Q. オープニングで何を伝えますか。

A. 監査の目的、対象期間と対象業務、2日間の進め方、用意してほしい資料の4つです。

Q. 証憑は原本を見るべきですか。

A. 見てください。日付の改ざんや後付けの追記は写しでは分かりません。

Q. 現場で見るべきものは何ですか。

A. 証憑の現物、保管の状況、システムの画面、そして実際の作業の動きです。

Q. 質問はどの順番でしますか。

A. 事実を先に聞き、次に理由を聞きます。理由から聞くと相手が身構えます。

Q. 指摘は報告書ではじめて伝えてよいですか。

A. 避けてください。クロージングで伝え、事実誤認がないかを確認しておきます。

Q. 被監査部門の責任者は同席してもらいますか。

A. 同席してもらってください。担当者だけでは決裁や例外処理の判断について聞けません。

Q. 往査の記録は何を残しますか。

A. 日程表、オープニングとクロージングの出席者と議事メモ、そして調書です。

📄 まとめ

往査は確認の場です。何を見るかは予備調査で決めておき、現場では決めたことを確かめます。

現物、保管状況、システム画面、実際の作業は、現場でしか確認できません。

質問は事実から理由へ。手順から外れた処理には現場の事情があり、仕組みの側に原因があることもあります。

クロージングで事実と指摘の候補を伝えれば、報告書段階での差し戻しが減ります。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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