内部統制の3点セット|業務記述書とフローチャートとRCMの作り方

内部統制報告制度の対応で作る業務記述書、フローチャート、リスクコントロールマトリクスは、まとめて3点セットと呼ばれます。決まった様式はなく、内容が整理されていれば形は自由です。

3つは同じ業務を別の角度から書いたものなので、内容は互いに一致していなければなりません。実務ではこの一致が崩れていることが最も多い問題です。

この記事では、3つの役割の違い、作る順序、マトリクスの各欄の書き方、内部監査での使い方、更新の回し方を整理します。

この記事でわかること

  • 3点セットそれぞれの役割と、何が分かるか
  • 文書を作る前にウォークスルーを行う理由
  • 業務記述書を5W1Hで書くときの注意点
  • リスクコントロールマトリクスの6つの欄と、よくある不足
  • 証跡の欄を埋めると何があぶり出されるか
  • 3点セットを内部監査でどう使い、どう更新するか

📌 結論 3つは同じ業務の別の見え方

内部統制報告制度の対応で作る文書のうち、業務記述書、フローチャート、リスクコントロールマトリクスの3つは、まとめて3点セットと呼ばれます。金融庁の実施基準でも、業務プロセスの内容を整理し記録する手段として例示されています。決まった様式があるわけではなく、内容が整理されていれば形は自由です。

3つは同じ業務を別の角度から書いたものです。流れを文章で書いたのが業務記述書、図にしたのがフローチャート、リスクと統制の対応を表にしたのがリスクコントロールマトリクスです。したがって、3つの内容は互いに一致していなければなりません。実務では、この一致が崩れていることが最も多い問題になります。

3点セットの役割の違い文書書くことこれで分かること業務記述書業務の流れを文章で順に書く誰が何をいつ行うかフローチャート流れを図で示す部門をまたぐ流れと分岐リスクコントロールマトリクスリスクと統制を対応づけるどのリスクに何の統制が効くか

3つは同じ業務を別の角度から書いたもので、内容は一致している必要がある

🧭 作る順序

作る順序は、業務の把握から始めます。担当者へのヒアリングと、1件を起点から終点まで追うウォークスルーで実際の流れを押さえてから文書に落とします。文書を先に作って現場に確認してもらうという進め方は、現場が細部の違いを指摘しにくいため、実態とずれた文書ができあがります。

3点セットを作る5段階対象の業務プロセスを決めて範囲の始点と終点を定める担当者へのヒアリングとウォークスルーで流れを把握する業務記述書に流れを文章で落とすフローチャートで部門をまたぐ流れと分岐を図にするリスクを洗い出し、対応する統制をマトリクスに整理する

記述書を書く前にウォークスルーで1件を追うと精度が上がる

範囲の決め方も重要です。販売プロセスであれば、受注から始めるのか引合いから始めるのか、入金で終わるのか売上計上で終わるのかを決めます。始点と終点が曖昧だと、他のプロセスとの間に空白ができます。

業務記述書は、5W1Hを意識して書きます。誰が、いつ、何を使って、何を行い、その結果どの記録が作られるか、という形です。承認するといった言葉だけでは、何を確かめて承認するのかが分かりません。

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📊 マトリクスの作り方

リスクコントロールマトリクスは、リスクの欄から書きます。ここで漠然としたリスクを書くと、対応する統制も漠然としてしまいます。売上が正しく計上されないという書き方ではなく、出荷していない商品の売上が計上される、という水準まで具体化します。

リスクコントロールマトリクスの欄書く内容よくある不足リスク起きてはいけないこと漠然としていて統制と対応しないアサーション実在性・網羅性など財務諸表の要件どの要件に効くのか書かれていない統制の内容誰が何をいつ行うか担当が部署名で個人が特定できない統制の種類予防か発見か・手作業か自動か分類がなく評価の方法が決まらないキーコントロール重要な統制かどうかの区分全部が重要とされ絞られていない証跡統制が行われた記録証跡が残らない統制が混ざっている

証跡の欄を埋める作業で、評価できない統制があぶり出される

リスクを具体化したら、それが財務諸表のどの要件に関わるかを書きます。実在性、網羅性、権利と義務、評価、期間帰属、表示といった要件のうち、どれに効く統制なのかがはっきりすると、統制の抜けが見えます。実在性に効く統制ばかりで網羅性に効く統制がないという状態は、実際によくあります。

統制の欄では、誰が何をいつ行うかを書きます。担当を部署名で書くと、実際には誰も行っていないという状態が起こります。役職まで特定し、頻度も書きます。

最後に証跡の欄を埋めます。この作業をすると、確かめてはいるが記録が残らない統制があぶり出されます。証跡がない統制は評価できないため、記録の方法を決めるか、別の統制に置き換えることになります。

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🗂 内部監査での使い方

3点セットは、評価のために作る文書ですが、内部監査でもそのまま使えます。往査の前に読めば業務の流れが把握でき、どこに統制があるかも分かります。ゼロから業務を理解するより、はるかに早く準備ができます。

ただし、そのまま信じるのではなく、実態と合っているかを確かめるという姿勢で使います。文書が作られたのが数年前であれば、システムの入れ替えや組織変更で実態が変わっている可能性があります。往査でウォークスルーを行い、ずれがあれば文書の改訂を求めます。

逆に、内部監査で見つけた実態を評価の担当部門に伝えることで、文書の精度が上がります。両方の作業を担う人が同じ会社では、この往復が自然に起きます。担当が分かれている場合は、往査の結果を共有する仕組みを作っておきます。

⚖️ 更新をどう回すか

3点セットは、作った時点で完成ではありません。業務が変われば文書も変える必要があります。実務でよくあるのは、初年度に丁寧に作った後、翌年以降は更新されずに残っているという状態です。

更新を回すには、変更が起きたときに文書を直す責任者を決めておきます。システムを入れ替える、組織を変える、規程を改定するという場面で、3点セットの見直しを手続に組み込みます。年に1度まとめて見直すより、変更のたびに直すほうが負担が小さくて済みます。

また、年次の評価の際に、前年度からの変更点を担当者に確認する作業を必ず入れます。変更がなければ確認だけで済み、変更があればその部分だけを直します。この確認の記録自体が、文書が実態を反映していることの説明になります。

❓ よくある質問

Q. 3点セットに決まった様式はありますか

A. ありません。内容が整理されていれば形は自由です。実施基準でも業務プロセスの内容を記録する手段として例示されているにとどまります。

Q. 3つとも作る必要がありますか

A. 必ず3つでなければならないわけではありません。ただし流れの理解とリスクと統制の対応づけの両方が説明できる必要があり、実務では3つを作る会社が多くあります。

Q. 文書を先に作って現場に確認してもらう進め方でよいですか

A. 現場が細部の違いを指摘しにくいため、実態とずれた文書ができます。ヒアリングとウォークスルーで実際の流れを押さえてから書きます。

Q. リスクはどのくらい具体的に書きますか

A. 売上が正しく計上されないではなく、出荷していない商品の売上が計上される、という水準まで具体化します。漠然としたリスクには漠然とした統制しか対応しません。

Q. アサーションの欄は必要ですか

A. どの要件に効く統制なのかがはっきりすると統制の抜けが見えます。実在性に効く統制ばかりで網羅性の統制がないという状態は実際によくあります。

Q. 統制の担当は部署名でよいですか

A. 役職まで特定します。部署名で書くと、実際には誰も行っていないという状態が起こります。頻度も併せて書きます。

Q. 証跡が残らない統制はどうしますか

A. 評価できないため、記録の方法を決めるか別の統制に置き換えます。証跡の欄を埋める作業でこうした統制があぶり出されます。

Q. 3点セットの更新はいつ行いますか

A. 変更が起きたときに直します。システムの入れ替えや組織変更、規程改定の手続に見直しを組み込むと、年に1度まとめて直すより負担が小さくて済みます。

📄 まとめ

3点セットは同じ業務を別の角度から書いたものです。3つの内容が一致していることが前提になります。

作る順序は業務の把握から始めます。ウォークスルーで1件を追ってから文書に落とすと精度が上がります。

マトリクスはリスクの具体化から始め、アサーション、統制の内容、種類、キーコントロールの区分、証跡の順に埋めます。

証跡の欄を埋める作業で、確かめてはいるが記録が残らない統制があぶり出されます。

更新は変更が起きたときに行います。年次の評価では前年度からの変更点を必ず確認します。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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