指摘に区分をつけない報告書は、経営者が優先順位を判断できません。すべてが同じ重みに見えて、結果としてどれも動かないことになります。
実務では、重要な指摘、指摘、改善提案の3区分が扱いやすい形です。区分ごとに是正計画の提出期限と完了期限を変えます。
この記事では、区分を判断する5つの材料、表現の選び方、重要な指摘が出たときの動き方、そして指摘の件数の見方を整理します。
- 指摘を3区分にして期限を変える理由
- 区分を判断する5つの材料
- 金額だけで区分を決めてはいけない理由
- 感情を含む言葉を事実の記述から外す方法
- 重要な指摘が出たときの報告経路
図 指摘事項の3つの区分の判定
📌 結論 3区分にして、期限を変える
重要な指摘は、報告と同時に経営者に口頭で伝えます。書面を回すだけにしないでください。
指摘に区分をつけない報告書は、経営者が優先順位を判断できません。すべてが同じ重みに見えるため、結果としてどれも動かないことになります。
実務では3区分が扱いやすい形です。重要な指摘、指摘、改善提案です。区分ごとに是正計画の提出期限と完了期限を変えます。
区分の定義は内部監査規程か、報告書の様式に書いておいてください。監査人によって基準が変わると、期をまたいだ比較ができなくなります。
🧭 区分を決める5つの材料
金額だけで決めないでください。小さな金額でも、承認と実行が同一人物なら重要な指摘です。
区分は、5つの材料から判断します。法令との関係、財務諸表への影響、金額、件数と頻度、そして不正の可能性です。
法令に触れうる事項は、金額が小さくても重要な指摘です。労働時間の管理、下請代金の支払期日、個人情報の取扱いなどが該当します。行政処分や訴訟につながる可能性があるためです。
不正の可能性がある事項も、重要な指摘として扱います。承認者と実行者が同一人物である、証憑に改ざんの形跡がある、といった事実です。金額が小さくても、仕組みとして不正が可能な状態であることが問題です。
逆に、金額が大きくても、単発の事務的なミスで、統制自体は機能している場合は、通常の指摘で足ります。金額の大小だけで区分を決めないでください。
📄 表現の選び方
感情を含む言葉は、事実の記述から外します。読み手が判断できる材料だけを書いてください。
指摘の文章から、感情を含む言葉を外してください。ずさん、不適切、意識が低い、といった言葉は、読み手に判断材料を与えません。
代わりに、何がどの基準からどう外れていたのかを書きます。職務権限規程3条の基準に対して係長決裁で処理されていた、と書けば、読み手は自分で問題の程度を判断できます。
被監査部門との関係でも、表現は大切です。責める言葉が並ぶ報告書は、次回の往査で協力を得にくくします。内部監査は敵対する活動ではなく、仕組みを良くする活動です。
ただし、事実を弱めてはいけません。表現をやわらげるあまり、一部に改善の余地があるという書き方になると、何を直せばよいのかが伝わりません。事実は正確に、言葉は中立に、が原則です。
区分の基準がないと、期ごとに重みがばらつきます。3区分の定義づくり、既存の報告書の指摘の見直し、経営者に伝わる表現への整理までお受けします。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
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📊 重要な指摘が出たとき
重要な指摘が出たときは、報告書の提出を待たずに、経営者へ口頭で報告します。とくに不正の兆候がある場合は、証拠が失われる前に手を打つ必要があります。
監査役にも同時に伝えます。会社法施行規則100条3項4号は、監査役への報告体制の整備を求めています。重要な事実を内部監査部門だけが把握している状態は、この趣旨に反します。
経営者自身が関与している疑いがある場合は、社長を飛ばして監査役に報告します。この経路を内部監査規程に書いておかないと、いざというときに動けません。
不正の疑いが強い場合は、通常の内部監査の手続から切り離し、調査として進めます。関係者への聞き取りの順番、証憑の保全、外部専門家の起用の要否など、判断が変わります。
🗂 指摘の件数をどう見るか
指摘が多いことは、必ずしも悪いことではありません。監査が機能している証拠でもあります。逆に、毎回指摘ゼロという報告書が続くと、監査の深度を疑われます。
上場審査でも、指摘がないこと自体が評価されるわけではありません。見るべきところを見て、問題があれば指摘し、是正されているか。この一連が回っているかどうかが評価されます。
ただし、同じ指摘が毎期繰り返されている場合は問題です。是正が形だけで終わっているか、原因の分析が浅いかのどちらかです。3期連続で同じ指摘が出ている事項があれば、原因の掘り下げからやり直してください。
⚖️ 上場審査での見られ方
審査では、指摘の区分の定義と、実際の運用が一致しているかが見られます。定義では重要な指摘とすべき事案が、通常の指摘に落とされていないかという観点です。
また、重要な指摘があった場合、それが経営者と監査役に適時に報告されたか、記録で確認されます。報告書の提出日だけでなく、口頭で報告した日も残しておいてください。
そして、区分ごとの是正期限が守られているかを見られます。期限を過ぎている事項がある場合は、その理由と現在の状況を説明できるようにしてください。
❓ よくある質問
A. 重要な指摘、指摘、改善提案の3区分が実務で扱いやすい形です。
A. 内部監査規程か報告書の様式に書きます。監査人によって基準が変わると期をまたいだ比較ができません。
A. 金額だけでは決めません。法令との関係、財務諸表への影響、件数と頻度、不正の可能性も見ます。
A. なります。承認と実行が同一人物であるなど、不正が可能な状態であれば重要です。
A. 避けてください。何がどの基準からどう外れていたかを書けば、読み手が判断できます。
A. 報告書を待たずに経営者と監査役へ口頭で報告します。経営者に疑いがある場合は監査役に直接報告します。
A. 下がりません。見るべきところを見て指摘し、是正されているかが評価されます。
A. 問題です。是正が形だけか、原因の分析が浅いかのどちらかです。原因の掘り下げからやり直してください。
📄 まとめ
指摘は重要な指摘、指摘、改善提案の3区分にして、区分ごとに是正期限を変えます。
区分は法令との関係、財務諸表への影響、金額、件数と頻度、不正の可能性の5つから判断します。
感情を含む言葉を外し、どの基準からどう外れていたかを書きます。事実は正確に、言葉は中立にが原則です。
重要な指摘は報告書を待たずに経営者と監査役へ伝えます。経営者に疑いがあるときは監査役へ直接報告します。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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