内部監査の指摘事項の区分|3区分の判断基準と表現の選び方

指摘に区分をつけない報告書は、経営者が優先順位を判断できません。すべてが同じ重みに見えて、結果としてどれも動かないことになります。

実務では、重要な指摘、指摘、改善提案の3区分が扱いやすい形です。区分ごとに是正計画の提出期限と完了期限を変えます。

この記事では、区分を判断する5つの材料、表現の選び方、重要な指摘が出たときの動き方、そして指摘の件数の見方を整理します。

この記事でわかること

  • 指摘を3区分にして期限を変える理由
  • 区分を判断する5つの材料
  • 金額だけで区分を決めてはいけない理由
  • 感情を含む言葉を事実の記述から外す方法
  • 重要な指摘が出たときの報告経路
その指摘はどの区分か把握した事実の影響を見積る法令違反や不正につながるか重大な指摘として扱うはいいいえ財務報告や業務の効率に影響するか改善を要する指摘として扱うはいいいえ運用の工夫で足りる程度か助言や要望として伝えるはいいいえ区分の基準をあらかじめ決めて継続して使う

図 指摘事項の3つの区分の判定

📌 結論 3区分にして、期限を変える

図1 指摘の3区分区分判断の目安是正期限の目安重要な指摘法令違反のおそれ、財務諸表に影響しうる、不正の兆候がある1か月以内に是正計画、3か月以内に完了指摘規程からの逸脱があり、繰り返されると影響が出る2か月以内に是正計画、6か月以内に完了改善提案規程どおりだが、より良いやり方がある次回監査までに検討

重要な指摘は、報告と同時に経営者に口頭で伝えます。書面を回すだけにしないでください。

指摘に区分をつけない報告書は、経営者が優先順位を判断できません。すべてが同じ重みに見えるため、結果としてどれも動かないことになります。

実務では3区分が扱いやすい形です。重要な指摘、指摘、改善提案です。区分ごとに是正計画の提出期限と完了期限を変えます。

区分の定義は内部監査規程か、報告書の様式に書いておいてください。監査人によって基準が変わると、期をまたいだ比較ができなくなります。

🧭 区分を決める5つの材料

図2 区分を判断する5つの材料材料高く評価する場合法令との関係労働基準法、下請法、個人情報保護法などに触れうる財務諸表への影響売上や費用の計上時期、資産の評価に影響しうる金額その部門の取引規模に対して大きい件数と頻度抽出した件数のうち多くで発生している。毎月起きている不正の可能性承認と実行が同一人物、証憑の改ざんの形跡がある

金額だけで決めないでください。小さな金額でも、承認と実行が同一人物なら重要な指摘です。

区分は、5つの材料から判断します。法令との関係、財務諸表への影響、金額、件数と頻度、そして不正の可能性です。

法令に触れうる事項は、金額が小さくても重要な指摘です。労働時間の管理、下請代金の支払期日、個人情報の取扱いなどが該当します。行政処分や訴訟につながる可能性があるためです。

不正の可能性がある事項も、重要な指摘として扱います。承認者と実行者が同一人物である、証憑に改ざんの形跡がある、といった事実です。金額が小さくても、仕組みとして不正が可能な状態であることが問題です。

逆に、金額が大きくても、単発の事務的なミスで、統制自体は機能している場合は、通常の指摘で足ります。金額の大小だけで区分を決めないでください。

📄 表現の選び方

図3 表現の使い分け場面避ける表現使う表現事実の記述ずさんな管理/不適切な処理職務権限規程3条の基準に対し、係長決裁で処理されてい原因の記述担当者の意識が低い決裁基準がシステムに設定されておらず、起票者の判断に委ねられていた改善の依頼徹底されたい/周知されたいシステムに金額基準を設定し、基準超過時に自動で上位者に回付する総括問題がある対象とした購買プロセスは、決裁基準の運用の面で改善が必要である

感情を含む言葉は、事実の記述から外します。読み手が判断できる材料だけを書いてください。

指摘の文章から、感情を含む言葉を外してください。ずさん、不適切、意識が低い、といった言葉は、読み手に判断材料を与えません。

代わりに、何がどの基準からどう外れていたのかを書きます。職務権限規程3条の基準に対して係長決裁で処理されていた、と書けば、読み手は自分で問題の程度を判断できます。

被監査部門との関係でも、表現は大切です。責める言葉が並ぶ報告書は、次回の往査で協力を得にくくします。内部監査は敵対する活動ではなく、仕組みを良くする活動です。

ただし、事実を弱めてはいけません。表現をやわらげるあまり、一部に改善の余地があるという書き方になると、何を直せばよいのかが伝わりません。事実は正確に、言葉は中立に、が原則です。

指摘の区分と表現の整備をお引き受けします

区分の基準がないと、期ごとに重みがばらつきます。3区分の定義づくり、既存の報告書の指摘の見直し、経営者に伝わる表現への整理までお受けします。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。

お問い合わせはこちら内部監査報告書の書き方を読む料金の目安を見る

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら

📊 重要な指摘が出たとき

重要な指摘が出たときは、報告書の提出を待たずに、経営者へ口頭で報告します。とくに不正の兆候がある場合は、証拠が失われる前に手を打つ必要があります。

監査役にも同時に伝えます。会社法施行規則100条3項4号は、監査役への報告体制の整備を求めています。重要な事実を内部監査部門だけが把握している状態は、この趣旨に反します。

経営者自身が関与している疑いがある場合は、社長を飛ばして監査役に報告します。この経路を内部監査規程に書いておかないと、いざというときに動けません。

不正の疑いが強い場合は、通常の内部監査の手続から切り離し、調査として進めます。関係者への聞き取りの順番、証憑の保全、外部専門家の起用の要否など、判断が変わります。

🗂 指摘の件数をどう見るか

指摘が多いことは、必ずしも悪いことではありません。監査が機能している証拠でもあります。逆に、毎回指摘ゼロという報告書が続くと、監査の深度を疑われます。

上場審査でも、指摘がないこと自体が評価されるわけではありません。見るべきところを見て、問題があれば指摘し、是正されているか。この一連が回っているかどうかが評価されます。

ただし、同じ指摘が毎期繰り返されている場合は問題です。是正が形だけで終わっているか、原因の分析が浅いかのどちらかです。3期連続で同じ指摘が出ている事項があれば、原因の掘り下げからやり直してください。

⚖️ 上場審査での見られ方

審査では、指摘の区分の定義と、実際の運用が一致しているかが見られます。定義では重要な指摘とすべき事案が、通常の指摘に落とされていないかという観点です。

また、重要な指摘があった場合、それが経営者と監査役に適時に報告されたか、記録で確認されます。報告書の提出日だけでなく、口頭で報告した日も残しておいてください。

そして、区分ごとの是正期限が守られているかを見られます。期限を過ぎている事項がある場合は、その理由と現在の状況を説明できるようにしてください。

❓ よくある質問

Q. 指摘の区分はいくつにしますか。

A. 重要な指摘、指摘、改善提案の3区分が実務で扱いやすい形です。

Q. 区分の基準はどこに書きますか。

A. 内部監査規程か報告書の様式に書きます。監査人によって基準が変わると期をまたいだ比較ができません。

Q. 金額が大きければ重要な指摘ですか。

A. 金額だけでは決めません。法令との関係、財務諸表への影響、件数と頻度、不正の可能性も見ます。

Q. 小さな金額でも重要な指摘になりますか。

A. なります。承認と実行が同一人物であるなど、不正が可能な状態であれば重要です。

Q. ずさんな管理という表現は使えますか。

A. 避けてください。何がどの基準からどう外れていたかを書けば、読み手が判断できます。

Q. 重要な指摘が出たらどうしますか。

A. 報告書を待たずに経営者と監査役へ口頭で報告します。経営者に疑いがある場合は監査役に直接報告します。

Q. 指摘が多いと評価が下がりますか。

A. 下がりません。見るべきところを見て指摘し、是正されているかが評価されます。

Q. 同じ指摘が続くのは問題ですか。

A. 問題です。是正が形だけか、原因の分析が浅いかのどちらかです。原因の掘り下げからやり直してください。

📄 まとめ

指摘は重要な指摘、指摘、改善提案の3区分にして、区分ごとに是正期限を変えます。

区分は法令との関係、財務諸表への影響、金額、件数と頻度、不正の可能性の5つから判断します。

感情を含む言葉を外し、どの基準からどう外れていたかを書きます。事実は正確に、言葉は中立にが原則です。

重要な指摘は報告書を待たずに経営者と監査役へ伝えます。経営者に疑いがあるときは監査役へ直接報告します。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

🔍 内部監査シリーズ(全45本)

体制と立ち上げ

計画とリスク評価

手続と実施

報告とフォローアップ

業務別の監査

不正への対応

内部統制報告制度

通報と監査役との連携

📚 参考(公的な一次情報)

IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406