内部監査の年間スケジュール|N-2期からの逆算で組む

内部監査はいつから始めればよいのかという質問をよく受けます。審査で見られるのは制度の有無ではなく、計画から往査、報告、是正まで一巡した実績が複数年度分あるかどうかです。

逆算すると、N-2期に着手して1巡目を回し始めるのが実質の期限になります。N-1期から始めると記録が1年度分しかなく、機能しているかの説明が難しくなります。

この記事では、N-3期からN期までの到達点、年度内の標準的な流れ、決算期との重なりの避け方、審査の1年前から意識することを順に整理します。

この記事でわかること

  • N-3期からN期までの内部監査の到達点と、その期に残す記録
  • 年度内の流れを7段階に分けた進め方と、計画の承認の重要性
  • 初年度に無理なく回せる往査の回数と1回あたりの期間
  • 決算期と重ならないように年度計画を組む方法
  • 審査の1年前から意識する記録の整理と三様監査の連携
  • 上場後に加わる作業と報告先の変化
いつ何をするか事業年度の始まりから作業を並べる期首の時期か年度計画を作り承認を得るはいいいえ期中の時期か往査と報告とフォローアップはいいいえ期末が近い時期か是正の完了確認と年度の総括はいいいえ翌年度の計画に当年度の結果を反映する

図 内部監査の1年の流れ

📌 結論 N-2期の着手が実質の期限

内部監査でよく聞かれるのが、いつから始めればよいかという質問です。上場審査では、内部監査が形として存在するかではなく、計画から往査、報告、是正まで一巡した実績が複数年度分あるかを見られます。年度をまたぐ運用の証拠が要るため、逆算するとN-2期に着手して1巡目を回し始めるのが実質の期限になります。

N-1期から慌てて始めると、記録が1年度分しかない状態で審査を迎えることになり、是正のフォローアップが完了していない項目が並びます。制度としては存在していても、機能しているかの説明が難しくなります。

N-2期からN期までの内部監査の到達点時期内部監査の状態その期に残す記録N-3期担当を決め規程の原案を作る規程案・体制の検討資料N-2期年度計画を作り往査を始める年度計画・調書・報告書の1巡目N-1期全部署を一巡し是正まで回す2期目の調書・フォローアップ記録N期継続運用と三様監査の連携3期目の記録・三者会合の議事録

審査で見られるのは2期分以上の実績なのでN-2期の着手が実質の期限

🧭 年度内の標準的な流れ

年度の流れは、リスク評価、計画の承認、往査、報告、フォローアップ、総括という順に進みます。このうち見落とされやすいのが、計画の承認です。年度計画を作っただけで往査に入ってしまうと、その監査が誰の指示で行われたものかが説明できません。取締役会または経営者の承認を受け、日付の入った記録を残します。

年度内の標準的な流れを7段階に分ける期初の2か月前にリスク評価を行い対象を選ぶ年度計画を作り取締役会または経営者の承認を得る四半期ごとに往査を実施し調書を残す往査ごとに報告書を出し是正計画を受け取る半期でフォローアップの状況を取りまとめる期末に年度の総括を作り監査役等と共有する翌年度の計画に未了項目と新しいリスクを反映する

計画の承認を得ないまま往査を始めると位置づけが説明できない

往査の回数は、初年度であれば年4回を目安にすると無理がありません。1回の往査で1部署または1プロセスを対象とし、準備、実施、報告までを1か月半程度で回します。これを4回繰り返すと、報告と是正のフォローアップまで含めて年度に収まります。

期末の総括は、その年度に何を見て何が見つかったかを1枚にまとめるものです。監査役等と共有し、次年度の計画の出発点にします。総括を作らずに次年度の計画に入ると、未了の是正項目が引き継がれずに消えてしまいます。

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📊 決算期との重なりをどう避けるか

実務でスケジュールが崩れる最大の要因は、決算業務との重なりです。内部監査の担当が経理を兼務している場合はもちろん、監査を受ける側の部署も決算期は手が空きません。年度計画を立てる段階で、決算月とその翌月には往査を置かないと決めてしまうのが確実です。

つまずきやすい時期と原因時期よくあるつまずき先回りの手当て最初の年度計画対象を欲張り消化できない年4回の往査に絞って回す2回目の往査決算業務と重なり延期する決算期と重ならない月に固定する是正の期限期限が来ても報告がない期限の2週間前に予告の連絡を入れ担当の異動引き継ぎで調書が散逸する調書の保管場所と様式を先に決める審査対応過去の記録が探せない年度ごとにファイルを閉じて索引をつける

延期の判断はその場ではなく年度計画の時点で織り込む

四半期決算がある会社では、往査に使える月が限られます。3月決算であれば、往査は6月、9月、12月、2月といった配置になります。この制約を前提に、1回の往査で見る範囲を決めます。範囲を先に決めてから日程を探すと、必ずどこかで無理が出ます。

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🗂 審査の1年前から意識すること

申請の1年前になったら、記録の整理を意識します。審査では過去の年度の調書や報告書の提示を求められるため、年度ごとにファイルを閉じ、何がどこにあるかの索引をつけておきます。電子で保管している場合も、フォルダ構成と命名の規則を決めておかないと、必要な資料を出すのに時間がかかります。

また、是正が完了していない項目が残っている状態は避けたいところです。期限を過ぎた項目については、なぜ遅れているのか、いつまでに完了するのかを管理表に記載し、放置していないことを示せる状態にしておきます。件数がゼロである必要はなく、管理されていることが分かれば足ります。

三様監査の連携についても、この時期までに定例の会合を設けておきます。年に2回から4回、内部監査の計画と結果、監査役等が把握している論点、会計監査人の着目領域を持ち寄る場を作り、議事録を残します。申請の直前に急に始めても、実績としては数えられません。

⚖️ 上場後に変わること

上場した後は、内部統制報告制度への対応が加わります。評価の対象となる業務プロセスの選定と評価の実施が年度の作業として乗ってくるため、内部監査の年間計画もそれを織り込んだ形に組み替える必要があります。

また、報告の相手も変わります。上場前は経営者への報告が中心でも、上場後は監査役等への定期的な報告が制度として求められる場面が増えます。年度計画の段階で、誰にいつ何を報告するかを決めておくと、期中の調整が少なくて済みます。

体制面では、担当者の異動が起きたときに監査が止まらないようにしておくことが重要です。調書の様式と保管場所を決めておく、監査手続書を個人のやり方ではなく標準の形にしておくといった準備が、結果として引き継ぎの負担を減らします。

❓ よくある質問

Q. 内部監査はいつから始めればよいですか

A. N-2期の着手が実質の期限です。審査では複数年度分の実績を見られるため、N-2期に1巡目を回し始めておくと、申請時に2期分以上の記録がそろいます。

Q. 初年度の往査は何回が適当ですか

A. 年4回を目安にすると無理がありません。1回の往査で1部署または1プロセスを対象とし、準備から報告まで1か月半程度で回す形が現実的です。

Q. 年度計画に承認は必要ですか

A. 必要です。取締役会または経営者の承認を受け、日付の入った記録を残します。承認がないと、その監査が誰の指示で行われたものかを説明できません。

Q. 決算期と往査が重なってしまいます

A. 年度計画を立てる段階で決算月とその翌月には往査を置かないと決めてしまうのが確実です。3月決算であれば6月、9月、12月、2月といった配置になります。

Q. 是正が完了していない項目が残っていても大丈夫ですか

A. 件数がゼロである必要はありません。遅れている理由といつまでに完了するかが管理表に記載され、放置していないことが示せれば足ります。

Q. 期末の総括は必要ですか

A. 必要です。その年度に何を見て何が見つかったかを1枚にまとめ、監査役等と共有します。総括がないと未了の是正項目が次年度に引き継がれずに消えます。

Q. 三様監査の連携はいつから始めますか

A. 申請の1年前までには定例の会合を設けておきます。直前に始めても実績としては数えられないため、早い段階で年2回から4回の場を作り議事録を残します。

Q. 担当者が異動すると監査が止まりませんか

A. 調書の様式と保管場所を決め、監査手続書を標準の形にしておくことで引き継ぎの負担が減ります。個人のやり方に依存した運用は異動の際に崩れます。

📄 まとめ

内部監査の着手はN-2期が実質の期限です。年度をまたぐ運用の証拠が要るため、逆算するとここが分かれ目になります。

年度の流れはリスク評価、計画の承認、往査、報告、フォローアップ、総括の順です。計画の承認を飛ばすと監査の位置づけが説明できません。

スケジュールが崩れる最大の要因は決算業務との重なりです。往査を置かない月を年度計画の段階で決めてしまうのが確実です。

審査の1年前からは記録の整理を意識します。年度ごとにファイルを閉じ、索引をつけておくと資料の提示がすぐにできます。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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