内部監査室の設置時期|N-2期からの到達点と立ち上げ手順

内部監査の体制はいつまでに作ればよいか。上場を目指す会社から必ず出る質問です。

答えは、遅くともN-2期です。審査で見られるのは申請期の状態ではなく、N-2期とN-1期に積み上げた記録だからです。記録はあとからまとめて作ることができません。

この記事では、期ごとの到達点、立ち上げの順番、N-2期にやりきること、そして設置が遅れたときの影響を整理します。

この記事でわかること

  • N-2期からN-1期、申請期の到達点
  • 規程より先に整えるべき2つの規程
  • N-2期に1サイクルを通しておく理由
  • 設置が遅れたときに何が起きるか
  • 三様監査の連携をいつ始めるか
いつ内部監査を始めるか上場申請までの期間から逆算する申請期の2期前に入っているか規程を作り監査を始めるはいいいえ直前期に入っているか一巡した実績を作るはいいいえすでに直前期を過ぎているか頻度を上げて実績を積むはいいいえ準備の期間のうちに担当者を決め、規程を用意する

図 内部監査の立ち上げ時期の判定

📌 結論 N-2期には動かし始める

図1 期ごとの到達点時期内部監査でやること残す記録N-3期以前規程の草案づくり、職務分掌と職務権限の整備規程案、組織図N-2期規程の承認、担当者の任命、初回の年度計画、1テーマ以上の実施取締役会議事録、計画書、調書、報告書N-1期年度計画どおりに一巡、フォローアップまで完了年間の実施記録、是正計画と再確認の記申請期前期と同じ運用を継続、審査での説明資料を整える2期分の記録一式

審査で見られるのは申請期ではなくN-2期とN-1期です。申請期に整えても実績が足りません。

内部監査の体制は、遅くともN-2期には動かし始めてください。上場審査で見られるのは、申請期の状態ではなく、N-2期とN-1期に何をしてきたかだからです。

審査で提出するのは、年度計画、実施した監査の記録、報告書、そして是正のフォローアップの記録です。これらは積み上げるしかなく、申請期になってからまとめて作ることができません。

N-2期に規程を承認して担当者を任命し、その期のうちに少なくとも1テーマの監査を最後まで実施する。N-1期に年度計画どおりに一巡させる。この2期分の記録があれば、体制として説明がつきます。

🧭 立ち上げの順番

図3 立ち上げの順番職務分掌規程と職務権限規程を整える取締役会で内部統制システムの基本方針を決議する内部監査規程を承認し、担当者を任命する業務プロセスを洗い出し、3か年の監査サイクルを作る初年度の年度計画を取締役会に上程する1テーマ目の往査を実施し、報告とフォローアップまで完了させる

基準になる規程がないまま監査を始めると、何からの逸脱を指摘するのかが定まりません。

内部監査規程を最初に作りたくなりますが、順番が違います。先に職務分掌規程と職務権限規程を整えてください。誰がどの業務を担当し、どの金額まで誰が決裁するかが定まっていなければ、そこからの逸脱を指摘できません。

次に、取締役会で内部統制システムの基本方針を決議します。会社法362条4項6号が求める決議で、同条5項により大会社である取締役会設置会社では決定が義務づけられています。内部監査規程はこの決議を具体化する規程ですので、決議が先です。

そのうえで内部監査規程を承認し、担当者を任命します。任命は取締役会または社長の決裁で行い、記録を残してください。組織図に内部監査室と書いてあるだけで任命の記録がない、という例が意外に多くあります。

最後に、業務プロセスの洗い出しとリスク評価を行い、3か年の監査サイクルと初年度の年度計画を作ります。ここまでを整えてから、1テーマ目の往査に入ります。

📄 N-2期にやりきること

N-2期の目標は、1サイクルを最後まで通すことです。テーマ数は1つで構いません。予備調査、往査、調書の作成、報告書の提出、指摘への是正計画の受領、そしてフォローアップまでを実際に経験してください。

この1周を通すことで、様式の不足や手順の詰まりが見えます。たとえば、報告書の様式に是正期限の欄がない、調書に監査人の署名欄がない、といった問題は、実際にやってみないと気づきません。

また、被監査部門の反応も分かります。資料の提出を渋られる、往査の日程が取れない、といった摩擦は最初の年に必ず起きます。ここで規程の権限条項が効いてくるかどうかを確かめておくと、N-1期が楽になります。

内部監査の立ち上げをN-2期から一緒に進めます

規程の作成だけでは動きません。職務分掌と職務権限の点検、取締役会決議との整合、監査サイクルの設計、初年度の往査への同行まで通してお受けします。N-1期に自社で回せる状態を目標に設計します。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。

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📊 設置が遅れたとき

図2 設置が遅れたときに起きること遅れた時期起きること取り返し方N-1期に設置運用実績が1期分しかない申請期も含めて2期分になるよう、申請時期を後ろにずらす申請期に設置実績がほぼない実質的に1年の延期になる規程だけ先に作成運用の記録がなく形式だけ整っている直ちに年度計画を作り、実施を始める

内部監査は積み上げた記録がすべてです。あとからまとめて作ることができません。

N-1期になってから設置した場合、運用実績は1期分しかありません。申請期も含めて2期分の記録にするには、申請時期を後ろにずらす判断が必要になります。主幹事証券会社と早めに相談してください。

申請期に入ってから設置した場合は、実質的に1年の延期になります。内部監査だけが理由で延期になるのは避けたいところです。

よくあるのが、規程だけ先に作って運用が始まっていないケースです。この場合、直ちに年度計画を作り、実施に移してください。規程の日付と最初の監査の日付が1年以上離れていると、形式だけ整えたと見られます。

🗂 監査役監査と会計監査人との関係

内部監査の立ち上げ時期は、監査役監査および会計監査人の監査との関係でも決まります。上場準備では、この3つを三様監査と呼び、連携が求められます。

会計監査人によるショートレビューはN-3期からN-2期に行われることが多く、そこで内部管理体制の課題が指摘されます。この指摘を受けてから内部監査の体制づくりに着手すると、N-2期の後半になります。ショートレビューの結果を待たずに、規程と担当者の準備は進めておいてください。

監査役監査との関係では、往査の日程を重ねないこと、そして発見事項を共有することが実務上の連携になります。連携の記録は三様監査の実効性を示す材料になりますので、定例の情報交換の場を作って議事メモを残してください。

⚖️ 上場審査で確認されること

審査では、内部監査規程の制定日、担当者の任命日、最初の年度計画の承認日、そして各監査の実施日が確認されます。これらが申請の直前に集中していると、実績として評価されません。

また、計画に対する実施率が見られます。年4テーマの計画で2テーマしか実施していないと、体制が機能していないと判断されます。実施できる計画を立てることが、結果として評価につながります。

2期分の記録に加えて、指摘に対する是正が完了しているかも確認されます。指摘したまま放置されている事項があると、フォローアップの仕組みが機能していないと見られます。

❓ よくある質問

Q. 内部監査はいつまでに設置しますか。

A. 遅くともN-2期です。N-2期とN-1期の2期分の運用記録が審査で見られます。

Q. 規程を作る前にやることはありますか。

A. 職務分掌規程と職務権限規程の整備、そして取締役会での内部統制システムの基本方針の決議です。

Q. N-2期は何テーマ実施すればよいですか。

A. 1テーマで構いません。予備調査から報告、フォローアップまでを最後まで通すことが目的です。

Q. N-1期に設置した場合はどうなりますか。

A. 実績が1期分しかないため、申請時期を後ろにずらす判断が必要になることがあります。

Q. 規程だけ先に作ってもよいですか。

A. 構いませんが、制定日と最初の監査の日付が1年以上離れると形式だけと見られます。

Q. 担当者の任命は記録が必要ですか。

A. 必要です。取締役会または社長の決裁で任命し、記録を残してください。

Q. ショートレビューの結果を待つべきですか。

A. 待たずに規程と担当者の準備は進めてください。結果を待つとN-2期の後半になります。

Q. 監査役との連携はいつから始めますか。

A. 立ち上げと同時です。往査日程の調整と発見事項の共有から始め、議事メモを残してください。

📄 まとめ

内部監査は遅くともN-2期に動かし始めてください。審査で見られるのはN-2期とN-1期の記録です。

順番は、職務分掌と職務権限の整備、取締役会決議、内部監査規程の承認と担当者の任命、監査サイクルの設計、年度計画です。

N-2期は1テーマでよいので、予備調査から報告、フォローアップまでを最後まで通してください。

設置が遅れると申請時期の後ろ倒しにつながります。内部監査だけを理由に延期しないよう、早めに着手してください。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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