内部監査の位置づけを説明するときに便利なのが3ラインモデルです。組織のなかでリスクを管理する役割を3つの線に分け、内部監査を第3線に置くという整理で、内部監査人協会が示しています。
実務で混乱が起きやすいのは第2線と第3線の区別です。どちらもリスクや統制に関わりますが、枠組みを作る側と、それが機能しているか確かめる側という違いがあります。
この記事では、3線の役割分担、第2線と第3線の違い、人数の少ない組織での分け方、統治機関の役割、重複と空白の点検までを整理します。
- 3ラインモデルの役割分担と、統治機関を含めた4者の関係
- 第2線と第3線の違いを5つの観点で整理
- 内部監査が規程の整備を主導するとなぜ説明が難しくなるか
- 小さい組織で3線を分けられないときの4つの工夫
- 統治機関への報告経路がなぜ必要か
- 3線の表を作って重複と空白を点検する方法
図 3ラインモデルの役割の判定
📌 結論 内部監査は第3線に立つ
内部監査の位置づけを説明するときに便利なのが3ラインモデルという整理です。組織のなかでリスクを管理する役割を3つの線に分け、内部監査を第3線に置くという考え方で、内部監査人協会が示しています。上場審査で内部監査の独立性を説明する際も、この枠組みを使うと話が通りやすくなります。
元は3つの防衛線という呼び方でしたが、防衛という言葉が守りだけを連想させることから、統治機関と経営管理者と内部監査の関係を示す3ラインモデルへと整理し直されました。守るための仕組みというより、役割分担の設計図として読むほうが実態に合います。
第2線と第3線を同じ人が担うと、自分の作った枠組みを自分で評価することになる
🧭 第2線と第3線の違い
実務で混乱が起きやすいのが、第2線と第3線の区別です。どちらもリスクや統制に関わる仕事をしますが、立場が違います。第2線は業務の一部として枠組みを作り、第1線を支援します。第3線はその枠組みが機能しているかを、外から確かめます。
同じ論点を扱っても、作る側と確かめる側という違いがある
たとえば、経理が仕訳の承認基準を定めて運用を指導するのは第2線の仕事です。その基準どおりに承認が行われているかを確かめるのが第3線です。同じ仕訳を見ていても、作る側と確かめる側という違いがあります。
この区別が崩れる典型が、内部監査が規程の作成や内部統制の整備を主導しているケースです。自分が作った仕組みを自分で評価することになるため、評価の客観性を説明できません。上場準備の会社では人手が足りず実際によく起きますが、そのままにせず手当てが必要です。
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📊 小さい組織でどう分けるか
人数の少ない会社では、3つの線をきれいに分けることはできません。管理部門が5人しかいない状態で、第2線と第3線を完全に分離するのは現実的ではないためです。だからといって3ラインモデルが使えないわけではなく、どこが分けられていないかを認識して説明できることが重要になります。
兼務そのものより、兼務を認識して手当てしているかが問われる
手順としては、まず第2線の機能を誰が担っているかを書き出します。規程の整備、コンプライアンスの推進、情報セキュリティの管理、リスク管理の枠組みといった機能ごとに担当を並べると、内部監査と重なっている部分が見えてきます。
重なっている領域については、監査の対象から外す、外部の専門家に評価してもらう、監査役等に評価を依頼するといった手当てを決めます。そのうえで、兼務の状況と手当ての内容を内部監査規程と報告書に書いておきます。審査で問われるのは、兼務があるかどうかより、兼務を認識して対応しているかどうかです。
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🗂 統治機関の役割
3ラインモデルでは、取締役会や監査役等といった統治機関の役割も明示されます。統治機関は経営を監督するとともに、内部監査が経営から独立して活動できる状態を確保する責任を負います。具体的には、内部監査の計画と結果の報告を受けること、内部監査部門長の人事や予算について関与することが挙げられます。
内部監査が経営者にだけ報告する構造だと、経営者自身に関わる論点が扱えません。統治機関への報告経路があってはじめて、3ラインモデルとして完結します。会社法も、企業集団を含めた業務の適正を確保する体制の整備を取締役会の職務としており、この関係と整合します。
実務としては、年度計画と年度の総括を取締役会に付議する、監査役等との定例の会合を設けるという2つを仕組みにしておけば足ります。回数より、継続していることと記録が残っていることが重要です。
⚖️ 3線の重複と空白を点検する
3ラインモデルを使うもう1つの利点は、重複と空白が見えることです。同じ領域を第2線と第3線が別々に点検していれば現場の負担が二重になりますし、逆にどの線も見ていない領域があれば、そこがリスクの空白になります。
点検の方法としては、主要な業務領域を縦に並べ、第1線から第3線までの誰が何をしているかを横に書く表を作ります。空欄が並ぶ領域は、誰も見ていない可能性が高い部分です。新しく始めた事業や、買収した子会社の領域に空白が生じやすい傾向があります。
この表は年度計画を作るときの材料としても使えます。空白の領域を優先的に監査の対象にする、重複している領域は第2線の点検結果に依拠して内部監査の作業を減らすといった判断ができます。限られた人数で回すには、依拠できるところは依拠するという考え方が欠かせません。
❓ よくある質問
A. 元は3つの防衛線と呼ばれていた考え方が整理し直されたものです。守りの仕組みというより、統治機関と経営管理者と内部監査の役割分担を示す設計図として読むほうが実態に合います。
A. 第2線は業務の一部として枠組みを作り第1線を支援します。第3線はその枠組みが機能しているかを外から確かめます。同じ対象を見ても、作る側と確かめる側という違いがあります。
A. 手伝うこと自体は否定されませんが、自分が作った仕組みを自分で評価する構図になります。その領域は監査の対象から外すか、外部や監査役等の評価を入れる手当てが必要です。
A. 分けられないこと自体より、どこが分かれていないかを認識して説明できることが重要です。兼務の状況と手当ての内容を規程と報告書に書いておきます。
A. 経営者にだけ報告する構造では、経営者自身に関わる論点を扱えません。取締役会や監査役等への報告経路があってはじめて3ラインモデルとして完結します。
A. 回数の基準はありません。年度計画と年度の総括を付議し、監査役等との定例の会合を設けるという2つを仕組みにしておけば足ります。継続と記録のほうが重要です。
A. 主要な業務領域を縦に並べ、第1線から第3線までの誰が何をしているかを横に書きます。空欄が並ぶ領域は誰も見ていない可能性が高い部分です。
A. 依拠は有効な考え方です。第2線が行った点検の範囲と質を確かめたうえで、内部監査の作業を重ねないという判断ができます。限られた人数で回すには欠かせません。
📄 まとめ
3ラインモデルは、内部監査の独立性を説明するための共通言語になります。審査での説明にも使えます。
第2線と第3線の違いは、枠組みを作る側と機能しているか確かめる側という点にあります。この区別が崩れると評価の客観性を説明できません。
人数の少ない会社では3線が分かれないのが普通です。分かれていない箇所を認識し、手当てを規程と報告書に書いておくことが求められます。
3線の表を作ると重複と空白が見えます。空白は優先的に監査の対象にし、重複は第2線に依拠して作業を減らすという判断ができます。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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