契約管理の内部監査で最初に確かめるのは、契約書台帳があるかどうかです。台帳がなければ当期にどんな契約が結ばれたのかという母集団が作れず、抽出も点検もできません。
台帳さえ整っていれば、そこから先の点検は機械的に進みます。稟議と契約書の突合、法務の関与、反社の確認、原本の所在という順に確かめていきます。
この記事では、6つの着眼点、抽出と突合の進め方、締結権限と法務の関与、反社会的勢力への対応、期限管理までを実務の順に整理します。
- 契約管理で見る6つの着眼点と、それぞれの証拠資料
- 契約の抽出と点検を5段階で行う進め方
- 稟議と契約書を突き合わせるときに見る4つの項目
- 締結権限の回避としての契約分割をどう見つけるか
- 反社会的勢力への対応で確認する5つの項目
- 期限管理と法令変更への対応の仕組み
図 契約管理の監査の着眼点
📌 結論 台帳がすべての出発点
契約管理の内部監査で最初に確かめるべきなのは、契約書台帳があるかどうかです。台帳がなければ、当期にどんな契約が結ばれたのかという母集団が作れず、抽出も点検もできません。逆に台帳さえ整っていれば、そこから先の点検は機械的に進みます。
上場審査では、取引所の新規上場ガイドブックで反社会的勢力との関係の遮断が説明を求められる項目とされており、契約の締結前に確認が行われる仕組みがあるかが問われます。契約管理と法令遵守の監査は、この点でも重なります。
台帳がなければ、そもそも点検の母集団が作れない
🧭 抽出と突合の進め方
点検の対象は、当期に締結した契約を母集団とします。そこから金額の大きい順に数件、種類別に数件を選ぶ形が実務的です。金額の大きいものだけを見ると、少額でも会社に長期の義務を課す契約を見落とします。
台帳と原本の両方を突き合わせないと管理の実態は見えない
選んだ契約について、稟議書と契約書を突き合わせます。見るのは、相手方の名称、金額、契約期間、自動更新の有無です。稟議では単年度の契約として承認されているのに、契約書は自動更新の条項が入っているという食い違いが実際にあります。
原本の所在は、台帳の記載だけで判断せず、実際に保管場所を見て確認します。担当者の手元にあるという状態は、退職や異動のときに失われるリスクがあります。電子契約の場合は、システム上で検索でき、権限のある人が閲覧できる状態になっているかを見ます。
台帳の様式から確認の手順まで、審査で説明できる形に組み立てます。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
📊 締結権限と法務の関与
締結権限については、職務権限規程で定められた金額の区分どおりに稟議が回っているかを確かめます。よく見つかるのは、金額の区分を回避するために契約を分割しているケースです。同じ相手方との契約が短期間に複数に分かれている場合は、意図を確認します。
法務の関与については、締結前にレビューを受ける仕組みがあるか、実際にレビューの記録が残っているかを見ます。人数の少ない会社では専任の法務がないこともありますが、その場合でも、一定額以上や特定の種類の契約については外部の弁護士に確認するという基準を決めておくことが求められます。
雛形の管理も確認します。取引基本契約書や業務委託契約書の雛形が最新の法令に対応しているか、雛形から外れた条件で締結する場合の手続が定まっているかを見ます。雛形が数年前のまま更新されていない例は少なくありません。
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🗂 反社会的勢力への対応
反社会的勢力の排除については、規程があるかどうかだけでなく、確認の手順が具体的に定まっているかを見ます。方針の宣言だけがあって、誰がいつ何を使って確認するのかが決まっていない状態はよく見られます。
記録がない確認は、行われていないのと同じに扱われる
確認の範囲は、新規の取引先すべてと、一定額以上の契約を対象にするのが一般的です。既存の取引先についても、定期的に再確認する仕組みがあるかを見ます。取引開始時に確認しただけで、その後何年も見直していないという状態は、審査で指摘されることがあります。
記録については、確認日、確認した手段、確認者、結果を残します。確認は行っているが記録がないという状態は、行っていないのと同じに扱われます。内部監査としては、サンプルで選んだ契約について、この記録が実際に存在するかを確かめます。
⚖️ 期限管理と法令の変更
契約の期限管理は、見落とされやすい割に影響が大きい領域です。自動更新の契約について、解約したい場合の通知期限を把握していないと、意図せず1年延長されることがあります。台帳に更新期限と通知期限の欄を設け、期限が近づいたら担当者に通知される仕組みがあるかを確かめます。
法令の変更への対応も見ます。取引に関係する法令が改正された場合に、既存の契約の見直しが必要になることがあります。誰が法令の変更を把握し、どのように社内に展開するかという仕組みがあるかを確認します。仕組みがない場合、改正への対応が担当者の個人的な情報収集に依存することになります。
指摘を書くときは、契約1件ごとの不備を並べるのではなく、台帳の整備、権限の運用、法務の関与、反社の確認、期限の管理という区分ごとにまとめます。区分ごとに書けば、どの仕組みを直せばよいかが読む側に伝わります。
❓ よくある質問
A. まず台帳の作成を是正案として示します。母集団が作れなければ点検そのものができないため、他の指摘より優先度の高い項目として扱います。
A. 金額順だけでは不十分です。少額でも長期の義務を課す契約があるため、種類別にも数件を選びます。
A. 同じ相手方との契約が短期間に複数に分かれている場合は、締結権限の区分を回避する意図がないかを確認します。
A. 一定額以上や特定の種類の契約については外部の弁護士に確認するという基準を決めておきます。基準があれば体制として説明できます。
A. 新規の取引先すべてと、一定額以上の契約を対象にするのが一般的です。既存の取引先についても定期的な再確認の仕組みがあるかを見ます。
A. 記録のない確認は行われていないのと同じに扱われます。確認日、手段、確認者、結果を残す運用に改めることを指摘します。
A. 退職や異動で失われるリスクがあります。保管場所を定め、台帳と実際の所在が一致していることを確認できる状態にします。
A. 解約通知の期限です。台帳に更新期限と通知期限の欄を設け、期限が近づいたら担当者に通知される仕組みがあるかを確かめます。
📄 まとめ
契約管理の監査は台帳から始まります。台帳がなければ母集団が作れず、点検そのものが成り立ちません。
稟議と契約書は、相手方、金額、期間、自動更新の有無を突き合わせます。稟議は単年度なのに契約は自動更新という食い違いが実際にあります。
反社会的勢力への対応は、方針の有無ではなく確認の手順と記録が問われます。記録のない確認は行っていないのと同じです。
指摘は契約1件ごとに並べず、台帳、権限、法務、反社、期限という区分でまとめると、どの仕組みを直せばよいかが伝わります。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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