販売と売上計上の内部監査|期ずれと押し込み販売の見つけ方

販売と売上計上のプロセスは、財務諸表への影響が最も大きい領域です。上場準備の内部監査では必ず対象になります。

中心になるのは計上時期です。翌期の売上を当期に計上する期ずれと、期末に無理に売上を作る押し込み販売は、上場準備会社で実際に問題になる類型です。

この記事では、5つの着眼点、計上時期の確かめ方、期末前後を厚く見る抽出条件、与信と債権の管理、そしてシステム上の統制の確認を整理します。

この記事でわかること

  • 販売と売上計上で見る5つの着眼点
  • 履行義務から計上時期を確かめる手順
  • 期ずれを見つける6つの抽出条件
  • 押し込み販売の兆候の拾い方
  • 販売管理システムで確認する3点
売上の計上に誤りはないか期末の前後の売上を抽出する期末に近い日付の売上が急に増えていないか出荷や検収の記録を確かめるはいいいえ通常より条件の緩い取引がないか契約書と承認の記録を確かめるはいいいえ返品や値引きが翌期に集中していないか期ずれや押し込み販売を疑うはいいいえ収益認識の基準に沿った計上かを確かめる

図 売上計上の監査の着眼点

📌 結論 期ずれと押し込みが最大の論点

図1 販売と売上計上で見る5つの着眼点着眼点確かめること見る資料受注の承認与信枠の範囲内か、値引きが権限どおりか受注書、見積書、稟議書売上計上の時期履行義務が充足された時点で計上しているか出荷記録、検収書、契約書期末付近の取引翌期の売上を当期に計上していないか期末前後2週間の売上明細返品と値引き事後の返品や値引きが適切に処理されているか返品伝票、赤伝、クレジットメモ債権の管理回収遅延の把握と、貸倒れの検討をしているか年齢調べ表、督促の記録

収益認識の基準が変わってから、期ずれの判定は契約書の履行義務の記載まで見る必要があります。

販売と売上計上のプロセスは、財務諸表への影響が最も大きい領域です。上場準備の内部監査では必ず対象になります。

着眼点は5つです。受注の承認、売上計上の時期、期末付近の取引、返品と値引き、債権の管理です。

このうち中心になるのが、売上計上の時期です。翌期の売上を当期に計上する期ずれと、期末に無理に売上を作る押し込み販売は、上場準備会社で実際に問題になる類型です。

🧭 計上時期をどう確かめるか

図3 売上計上時期の確かめ方契約書で履行義務の内容と充足時点を確認する出荷基準か検収基準かなど、会社の計上基準を確認する対象取引の出荷記録または検収書の日付を見る売上計上日と証憑の日付が一致しているか照合するずれがある場合は、その理由と件数を集計する

まず契約と基準を押さえてから証憑を見ます。基準を知らずに日付だけ見ても、何がずれなのか判断できません。

まず契約書を見ます。収益認識に関する会計基準のもとでは、履行義務がいつ充足されるかで計上時期が決まります。物品の引渡しなのか、検収なのか、一定期間にわたる役務提供なのか。契約の内容によって変わります。

次に、会社の計上基準を確認します。出荷基準、着荷基準、検収基準のいずれを採用しているかです。基準は継続して適用されるべきもので、取引ごとに使い分けることはできません。

そのうえで、対象取引の証憑を見ます。出荷基準なら出荷記録、検収基準なら検収書です。売上計上日と証憑の日付が一致しているかを照合します。

ずれがある場合は、件数と金額を集計してください。1件だけなら事務的なミスかもしれませんが、期末に集中してずれているなら、意図的な操作の可能性があります。

📄 期末前後を厚く見る

図2 期ずれを見つける抽出条件条件狙い期末月の最終週に計上された売上翌期の売上を前倒ししていないか期初月の第1週に計上された売上当期の売上を翌期に送っていないか出荷日と売上計上日が離れている計上時点の判断が一貫しているか検収基準の取引で検収書がない検収前に計上していないか期末に計上され翌期に返品されてい押し込み販売でないか与信枠を超えている取引回収可能性を検討しているか

期末前後の2週間を厚く見るのが定石です。前後を対にして見ると、判断の一貫性が分かります。

期ずれを見つけるには、期末前後の取引を厚く見ます。期末月の最終週と、期初月の第1週を対にして見るのが定石です。

期末月の最終週に計上された売上のうち、出荷や検収の証憑が翌期の日付になっているものがあれば、期ずれです。逆に、期初月の第1週に計上された売上で、証憑が当期の日付になっているものも、同じく期ずれです。

前後を対にして見ると、判断の一貫性が分かります。前倒しだけ、あるいは繰延べだけが偏って発生している場合は、意図が働いている可能性があります。

押し込み販売の兆候は、期末に計上され翌期の早い時期に返品されている取引です。返品伝票を期初2か月分だけ抽出し、元の売上計上日を追えば、この類型は拾えます。

販売プロセスの監査手続書をご用意します

収益認識の基準が変わり、計上時期の判定は契約の履行義務まで遡って見る必要があります。契約類型ごとの計上時点の整理、期末前後の抽出条件、押し込み販売の兆候の拾い方まで、手続書としてお渡しします。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。

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📊 与信と債権の管理

受注の承認では、与信枠の範囲内かを確認します。与信枠を超えた受注が承認なく通っていないか、枠の見直しが定期的に行われているかを見ます。

値引きの承認も見ます。値引きは利益に直結しますので、金額や率に応じた承認基準があるはずです。基準を超える値引きが担当者の判断で行われていないかを確認してください。

債権の管理では、年齢調べ表を見ます。滞留している債権について、督促の記録があるか、回収の見通しが検討されているか、貸倒引当金の計上を検討しているかを確認します。

とくに、滞留債権が特定の取引先に偏っている場合は、その取引先との取引を継続している理由を聞いてください。回収できていない相手に売り続けている状態は、統制上の問題です。

🗂 システムでの確認

販売管理システムを使っている会社では、システム上の統制も確認します。

見るのは3点です。第1に、受注登録の権限設定です。誰が受注を登録でき、誰が承認できるのかを、権限一覧の画面で確認します。

第2に、売上計上のタイミングの自動化です。出荷登録と連動して売上が計上される仕組みであれば、手作業の余地が減ります。手入力で売上を計上できる状態であれば、その権限を持つ人が誰かを確認してください。

第3に、変更履歴です。いったん計上した売上を修正した記録が残るか、誰が修正したかが分かるかを確認します。履歴が残らない設定は、統制上の弱点です。

⚖️ よく出る指摘

この領域でよく出る指摘は4つです。第1に、検収基準を採用しているのに検収書を入手していない取引があるケースです。検収の事実が確認できないまま売上が計上されています。

第2に、値引きの承認基準がなく、担当者の判断で値引きが行われているケースです。

第3に、滞留債権の督促記録がなく、回収状況が把握されていないケースです。

第4に、売上の手入力による計上が可能で、その権限が広く付与されているケースです。システムの権限設定は、内部監査でこそ見つけられる論点です。

❓ よくある質問

Q. 販売監査では何を見ますか。

A. 受注の承認、売上計上の時期、期末付近の取引、返品と値引き、債権の管理の5つです。

Q. 計上時期はどう確かめますか。

A. 契約書で履行義務の充足時点を確認し、会社の計上基準を押さえたうえで、証憑の日付と計上日を照合します。

Q. 期ずれを見つける方法は。

A. 期末月の最終週と期初月の第1週を対にして厚く見ます。証憑の日付と計上日のずれを集計します。

Q. 押し込み販売はどう見つけますか。

A. 期初2か月の返品伝票を抽出し、元の売上計上日を追います。期末計上で翌期返品のものが兆候です。

Q. 与信は何を見ますか。

A. 与信枠の範囲内で受注しているか、枠の見直しが定期的に行われているかを見ます。

Q. 債権管理では何を確認しますか。

A. 年齢調べ表で滞留を把握し、督促の記録と回収見通し、貸倒引当金の検討状況を確認します。

Q. システムでは何を見ますか。

A. 受注登録の権限設定、売上計上の自動化の程度、そして修正の変更履歴が残るかの3点です。

Q. 売上を手入力できる状態は問題ですか。

A. 権限が広く付与されていれば問題です。誰が手入力できるかを確認してください。

📄 まとめ

販売と売上計上は財務諸表への影響が最大の領域です。中心の論点は計上時期です。

契約の履行義務と会社の計上基準を押さえてから、証憑の日付と計上日を照合してください。

期末月の最終週と期初月の第1週を対にして見ると、判断の一貫性が分かります。

与信枠、値引きの承認、滞留債権の督促、システムの権限設定まで確認してください。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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