購買と支払の内部監査|5つの着眼点と三者突合のやり方

購買と支払のプロセスは、多くの会社で毎年の監査対象になります。金額が大きく、不正が起きやすい領域だからです。

見る着眼点は5つあります。発注の権限、発注と検収の分離、検収の実在、支払の根拠、取引先の妥当性です。このうち発注と検収の分離が、人員の少ない部門でもつとも崩れやすい統制です。

この記事では、5つの着眼点、三者突合の手順、狙いを持った抽出条件、取引先の管理、そしてよく出る指摘を整理します。

この記事でわかること

  • 購買と支払で見る5つの着眼点
  • 発注書、検収書、請求書の三者突合の手順
  • 日付の順序から事後作成を見つける方法
  • 狙いを持った6つの抽出条件
  • 取引先マスタと反社チェックの確認方法
購買と支払のどこを見るか発注から支払までの流れをたどる発注の権限と金額の基準が守られているか承認の証跡を確かめるはいいいえ発注書と納品書と請求書が一致するか三者を突合するはいいいえ架空の取引先や単価の異常がないかマスタと取引の履歴を確かめるはいいいえ支払の実行と記帳までを追って確かめる

図 購買と支払の監査の着眼点

📌 結論 発注と検収の分離が最大の論点

図1 購買と支払で見る5つの着眼点着眼点確かめること見る資料発注の権限金額に応じた決裁者が承認しているか発注書、稟議書、職務権限規程発注と検収の分離発注した人が検収もしていないか発注書と検収書の担当者名検収の実在ものが届いていないのに検収していないか検収書、入庫記録、写真支払の根拠請求書と発注書と検収書の三者が一致している請求書、支払依頼書取引先の妥当性新規取引先の与信と反社チェックをしているか取引先登録の申請と承認記録

このうち発注と検収の分離が、上場準備会社でもつとも崩れやすい統制です。

購買と支払のプロセスは、多くの会社で毎年の監査対象になります。金額が大きく、不正が起きやすい領域だからです。

見る着眼点は5つです。発注の権限、発注と検収の分離、検収の実在、支払の根拠、取引先の妥当性です。

このうち上場準備会社でもつとも崩れやすいのが、発注と検収の分離です。人員が少ない部門では、同じ担当者が発注し、ものを受け取り、検収書を作っていることがあります。この状態では、実体のない取引を作ることが可能です。

🧭 権限の確認

発注の権限は、職務権限規程の金額基準に照らして確認します。基準を知らずに証憑を見ても、何が逸脱かが判断できません。予備調査の段階で基準を頭に入れてから往査に臨んでください。

とくに見たいのが、決裁基準の境界付近の取引です。100万円以上が部長決裁という基準であれば、98万円や99万円の発注が並んでいないかを見ます。基準を避けるために発注を分割している可能性があります。

分割発注の判定は、同じ取引先、近い時期、関連する品目という3つで見ます。同じ取引先に同じ月に2件の発注があり、合わせると基準を超える場合は、事情を聞いてください。

事後承認の扱いも確認します。緊急時に事後承認を認める規程になっている会社は多いのですが、事後承認が常態化していると、権限の統制が働いていないことになります。件数を数えて、割合を把握してください。

📄 三者突合のやり方

図3 三者突合の手順支払依頼書を母集団として抽出する対応する請求書を確認し、金額と請求先を照合する対応する発注書を確認し、品目、数量、単価、決裁者を照合する対応する検収書を確認し、検収日と数量を照合する4つの日付の順序(発注、納品、検収、請求)が整合するか見る

日付の順序が逆転している取引は、事後の発注書作成が疑われます。必ず確認してください。

購買監査の中心になるのが、発注書、検収書、請求書の三者突合です。支払依頼書を起点に、この3つを突き合わせます。

照合するのは、金額、品目、数量、単価、そして日付です。とくに日付は、発注、納品、検収、請求の順序が保たれているかを見ます。請求書の日付が発注書より前になっている取引は、事後に発注書を作ったことが疑われます。

金額の不一致は、値引きや追加発注の可能性がありますので、直ちに指摘とせず事情を聞きます。ただし、差額の説明ができる記録が残っているかは確認してください。

検収の実在は、証憑だけでは分かりません。入庫記録やシステムの受入登録、可能であれば現物を確認します。役務提供の場合は、成果物や作業報告書を見ます。

購買プロセスの監査手続書をご用意します

三者突合の抽出条件、日付の整合の見方、分割発注の判定基準まで、実際に使える手続書としてお渡しします。初回は往査に同行し、担当者の方に手順をお伝えします。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。

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📊 抽出の条件を決める

図2 抽出の考え方抽出の条件狙い金額が決裁基準の境界付近基準を避けるための分割発注がないか期末に集中している取引費用の計上時期を操作していないか同じ取引先に偏っている特定の取引先との癒着がないか起票者と承認者が同じ権限の分離が崩れていないか取引先の新規登録が直前実体のない取引先でないか単価が他と大きく違う特別な条件になっていないか

無作為抽出だけでは異常が拾えません。条件を決めて狙って抽出してください。

無作為に20件抽出するだけでは、異常な取引は拾えません。狙いを持った抽出条件を6つ用意してください。

決裁基準の境界付近、期末集中、取引先の偏り、起票者と承認者の一致、取引先の新規登録が直前のもの、単価の乖離です。この条件で抽出した件に加えて、無作為抽出を数件足すと、網羅性と狙いの両方が確保できます。

抽出の条件と、抽出できた件数は調書に記録します。条件に該当する取引がゼロだった場合も、ゼロだったことを記録してください。確認していないことと、確認して該当がなかったことは違います。

データが電子で取れる場合は、表計算ソフトで全件を分析します。金額の分布、取引先別の集計、月別の推移を見れば、異常が浮かびます。全件分析は、抽出よりも強い証拠になります。

🗂 取引先の管理

取引先の登録手続も監査の対象です。誰が申請し、誰が承認して、マスタに登録されるのか。この経路が定まっていない会社があります。

確認するのは3点です。新規登録の申請と承認の記録があるか、与信の確認をしているか、そして反社会的勢力でないことの確認をしているか、です。

反社チェックは、上場審査でも必ず見られる項目です。データベースでの検索記録、あるいは調査会社への照会記録が残っているかを確認します。取引開始後に確認していないことが分かると、審査で問題になります。

取引先マスタの変更履歴も見ます。振込先の口座情報が変更された取引先について、変更の申請と承認の記録があるかを確認してください。口座情報の不正な変更は、実際に発生している類型です。

⚖️ よく出る指摘

この領域でよく出る指摘は4つです。第1に、発注書がないまま発注しているケースです。口頭やメールでの発注が常態化している部門があります。

第2に、検収書に検収日の記載がない、あるいは押印だけで誰が検収したか分からないケースです。

第3に、事後承認の常態化です。緊急対応として認められた例外が、月に何件も発生している状態です。

第4に、取引先マスタに使われていない取引先が大量に残っているケースです。実体のない取引先が紛れ込む余地になりますので、定期的な棚卸しを提案してください。

❓ よくある質問

Q. 購買監査で何を見ますか。

A. 発注の権限、発注と検収の分離、検収の実在、支払の根拠、取引先の妥当性の5つです。

Q. 三者突合とは何ですか。

A. 発注書、検収書、請求書の3つを突き合わせ、金額、品目、数量、単価、日付が整合するかを見る手続です。

Q. 日付は何を見ますか。

A. 発注、納品、検収、請求の順序が保たれているかです。請求書が発注書より前の日付なら事後作成が疑われます。

Q. 分割発注はどう見つけますか。

A. 同じ取引先、近い時期、関連する品目という3つで見ます。合算すると決裁基準を超えるものを抽出します。

Q. 抽出は無作為でよいですか。

A. 無作為だけでは異常が拾えません。決裁基準の境界、期末集中、取引先の偏りなど条件を決めて抽出してください。

Q. 検収の実在はどう確かめますか。

A. 証憑だけでは分かりません。入庫記録、システムの受入登録、現物、役務なら成果物を確認します。

Q. 取引先の反社チェックは監査対象ですか。

A. 対象です。上場審査でも必ず見られます。検索記録や照会記録が残っているかを確認してください。

Q. 事後承認は認めてよいですか。

A. 緊急時の例外として規程にあるなら構いません。ただし常態化していれば統制が働いていないことになります。

📄 まとめ

購買と支払は毎年の監査対象です。5つの着眼点のうち、発注と検収の分離がもつとも崩れやすい統制です。

三者突合では金額と品目だけでなく、発注から請求までの日付の順序を確認してください。

抽出は無作為だけでは足りません。決裁基準の境界や期末集中など、狙いを持った条件を用意します。

取引先の新規登録、与信、反社チェック、口座情報の変更履歴まで見てください。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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