内部監査のフォローアップ|是正計画と完了確認の進め方

内部監査でもつとも軽視されがちなのがフォローアップです。報告書を出した時点で終わった気になり、翌年の監査で同じ指摘が出る。よくある光景です。

是正されて初めて、内部監査に意味が生まれます。上場審査でも、指摘があったかどうかより、指摘がどう是正されたかが見られます。

この記事では、是正計画書に書いてもらう6つの欄、フォローアップの3段階、完了を証憑で確かめる方法、そして是正が進まないときの動き方を整理します。

この記事でわかること

  • 是正計画書に設ける6つの欄
  • 実施責任者を個人名で書いてもらう理由
  • フォローアップの3段階と中間確認の意味
  • 完了を証憑で確かめる具体的な方法
  • 是正が進まないときに誰に相談するか
是正をどう確かめるか是正計画の内容と期限を確かめる期限までに是正が完了したか証跡を入手して完了とするはいいいえ完了したが運用が定着していないか次回の監査で継続して確かめるはいいいえ期限を過ぎても是正されないか経営者に報告して対応を求めるはいいいえ是正の状況を一覧で管理し、報告に含める

図 フォローアップの進め方の判定

📌 結論 指摘して終わりでは監査にならない

図1 是正計画書に書いてもらうこと書いてもらう内容不十分な例指摘事項報告書の指摘番号と要旨(空欄のまま提出される)原因の認識被監査部門としての原因の見方担当者の確認不足是正の内容何をどう変えるか注意を徹底する実施責任者部署ではなく個人名購買部完了予定日日付。今期中などとしない速やかに完了の確認方法何をもって完了とするか(記載なし)

完了の確認方法を書いてもらうと、フォローアップで何を見ればよいかが決まります。

内部監査でもつとも軽視されがちなのが、フォローアップです。報告書を出した時点で仕事が終わった気になり、翌年の監査で同じ指摘が出る。よくある光景です。

是正されて初めて、内部監査に意味が生まれます。上場審査でも、指摘があったかどうかより、指摘がどう是正されたかが見られます。

まず必要なのが、是正計画書です。被監査部門に書いてもらう書類で、6つの欄を設けます。指摘事項、原因の認識、是正の内容、実施責任者、完了予定日、完了の確認方法です。

🧭 是正計画書の受け取り方

是正計画書で見るべきは、指摘の原因に対応した是正になっているかです。原因が仕組みにあるのに、注意を徹底しますという計画が出てきたら、差し戻してください。

実施責任者は個人名で書いてもらいます。部署名だと、誰も動かないまま期限が来ます。異動があった場合の引き継ぎも、個人名で管理していれば追えます。

完了予定日は日付で書いてもらいます。速やかに、今期中、といった表現では、いつ確認すればよいかが分かりません。

完了の確認方法も書いてもらってください。何をもって完了とするかを被監査部門と合意しておくと、フォローアップの段階でもめません。システムの設定変更であれば設定画面、規程の改定であれば改定後の規程と決裁記録、というように具体化します。

📄 フォローアップの3段階

図2 フォローアップの3段階段階時期やること是正計画の受領報告書提出から1から2か月計画の内容が指摘に対応しているかを確認する中間確認完了予定日の1か月前進捗を確認する。遅れていれば理由と見通しを聞く完了確認完了報告を受けてから証憑を見て、実際に変わったことを確かめる

完了報告を受け取るだけでは確認になりません。証憑で確かめて、その記録を残します。

フォローアップは3段階で行います。是正計画の受領、中間確認、完了確認です。

中間確認は、完了予定日の1か月前に行います。この時点で着手していない事項は、期限までに終わりません。早めに把握すれば、期限の延長を協議するか、優先順位を上げてもらうかの手が打てます。

完了確認では、証憑を見ます。完了報告を受け取っただけでは確認になりません。是正後の手順で処理された取引を抽出し、実際に変わったことを確かめてください。

この確認の記録は、フォローアップの調書として残します。上場審査では、指摘と是正の対応表に加えて、この確認の記録が見られます。

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📊 一覧表で管理する

指摘とその是正状況は、一覧表で管理します。エクセルで足ります。列は、指摘番号、監査テーマ、指摘の区分、指摘内容、是正の内容、実施責任者、完了予定日、進捗、完了確認日です。

この表を、毎月あるいは四半期ごとに更新します。更新した表を経営者と監査役に共有すると、是正が進まない事項に対して経営の側から圧力がかかります。内部監査部門だけが督促する構図では、動かないことがあります。

完了した事項も、表から削除せずに残してください。過去にどんな指摘があり、どう是正されたかの履歴になります。上場審査で提出を求められる資料でもあります。

期をまたいで残っている事項は、翌期の年度計画に繰り越します。繰り越したことを計画書に明記しておけば、抜け落ちを防げます。

🗂 是正が進まないとき

是正が進まない理由は、おおむね3つです。予算がない、人がいない、優先順位が低いと判断されている、のいずれかです。

予算や人の問題であれば、内部監査部門が解決できることではありません。経営者に状況を報告し、判断を仰いでください。報告した記録を残しておけば、内部監査としての役割は果たしたことになります。

優先順位が低いと判断されている場合は、指摘の影響の書き方に問題があったかもしれません。放置するとどうなるかが伝わっていない可能性があります。改めて影響を説明してください。

それでも動かない場合は、監査役に相談します。監査役は取締役の職務執行を監査する立場ですので、内部統制の不備が放置されている状況は監査役の関心事です。

なお、経営者が是正しないと判断した場合、その判断自体は経営の裁量です。内部監査部門としては、リスクを説明したうえで、判断された事実と理由を記録に残します。

⚖️ 上場審査で見られる点

審査では、指摘と是正の対応表が提出を求められます。指摘がすべて是正済みである必要はありませんが、未完了のものについては理由と見通しを説明できるようにしてください。

とくに、重要な指摘が未是正のまま申請することは避けたいところです。財務諸表に影響しうる指摘や法令に触れうる指摘は、申請前に完了させてください。

また、完了確認の方法も見られます。完了報告を受け取っただけの記録と、証憑で確かめた記録では、評価が違います。

3期連続で同じ指摘が出ている事項があると、フォローアップが機能していないと判断されます。原因の分析からやり直し、その過程も記録に残してください。

❓ よくある質問

Q. 是正計画書には何を書いてもらいますか。

A. 指摘事項、原因の認識、是正の内容、実施責任者、完了予定日、完了の確認方法の6つです。

Q. 実施責任者は部署名でよいですか。

A. 個人名で書いてもらってください。部署名だと誰も動かないまま期限が来ます。

Q. 完了予定日はどう書いてもらいますか。

A. 日付で書いてもらいます。速やかに、今期中といった表現では確認時期が決まりません。

Q. 完了報告を受け取れば確認は終わりですか。

A. 終わりません。是正後の手順で処理された取引を抽出し、証憑で確かめてください。

Q. 中間確認はいつしますか。

A. 完了予定日の1か月前です。着手していなければ期限までに終わりません。

Q. 是正が進まないときはどうしますか。

A. 経営者に状況を報告して判断を仰ぎます。動かない場合は監査役に相談してください。

Q. 経営者が是正しないと判断したら。

A. その判断は経営の裁量です。リスクを説明したうえで、判断された事実と理由を記録に残します。

Q. 未是正の指摘があると審査で不利ですか。

A. 理由と見通しを説明できれば問題ありません。ただし重要な指摘は申請前に完了させてください。

📄 まとめ

是正計画書には6つの欄を設け、実施責任者は個人名、完了予定日は日付で書いてもらいます。

フォローアップは受領、中間確認、完了確認の3段階です。中間確認は完了予定日の1か月前に行います。

完了確認は証憑で行います。完了報告を受け取っただけでは確認になりません。

是正が進まないときは経営者へ報告し、動かなければ監査役に相談します。記録を残すことが役割です。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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