内部監査の年度計画は、毎年ゼロから考えるものではありません。3か年の監査サイクル表を起点に、当期の事情で差分を足す。この作り方であれば、短時間で作れて、しかも網羅性の説明ができます。
計画書に何を書くかは決まっていませんが、実務では7つの項目に落ち着きます。とくに実施時期を月で書くこと、所要日数を見積もることが、あとで効いてきます。
この記事では、年度計画に書く項目、重点領域の選び方、承認の取り方、そして計画を変更するときの扱いを整理します。
- 年度計画に書く7つの項目
- その年の重点領域を決める6つの材料
- 中期計画を別に作らなくてよい理由
- 取締役会での承認の取り方と時期
- 期の途中で計画を変更するときの記録
図 年度の内部監査計画の作り方
📌 結論 サイクル表と差分で作る
実施時期を月で書くと、実施できたかどうかが後から確認できます。四半期単位では検証できません。
年度計画を毎年ゼロから考えている会社は、時間がかかるうえに網羅性の説明ができません。3か年の監査サイクル表を作っておき、その年に当たるテーマを起点にして、当期の事情で差分を足す。これが実務的な作り方です。
計画書に書く項目は7つです。監査の方針、監査対象、実施時期、監査体制、所要日数、報告、前期からの繰越です。このうち実施時期は、四半期ではなく月で書いてください。月で書いておくと、あとから実施できたかどうかを確認できます。
所要日数を書く会社は多くありませんが、書いておくと役に立ちます。計画の合計日数と、担当者が内部監査に使える日数を比べれば、その計画が実行可能かどうかが分かるからです。
🧭 重点領域をどう選ぶか
重点領域は勘で決めません。6つの材料を見れば、選んだ理由を計画書に書けます。
その年に重点を置く領域は、6つの材料から決めます。前期の指摘事項、組織変更と人事異動、新規事業と新拠点、システムの入替え、会計監査人からの指摘、そして内部通報の内容です。
とくに見落とされやすいのが、組織変更と人事異動です。統制は人に紐づいて動いていますので、担当者が代わった直後は手順が守られなくなりやすくなります。異動の多かった部門を重点領域に入れるのは、理にかなっています。
内部通報の内容も材料になります。通報の詳細を内部監査部門が把握できない場合でも、どの部門にどの分野の通報があったかという情報だけでも、監査対象の選定に使えます。
これらの材料を見て決めたことを、計画書の監査の方針の欄に書きます。なぜその年にその部門を選んだのかを聞かれたときの答えが、そのまま計画書に残っている状態にしてください。
📄 中期計画は必要か
サイクル表があれば、毎年ゼロから考える必要はありません。差分だけを検討します。
3か年の監査サイクル表があれば、それが中期計画にあたります。別に中期計画書という文書を作る必要はありません。
サイクル表は、業務プロセスを10前後の単位に分け、それぞれのリスクを高中低で評価し、高は毎年、中は2年に1度、低は3年に1度という頻度を割り当てた表です。この表を取締役会に報告しておけば、単年度の計画だけを見て網羅性を疑われることがなくなります。
サイクル表は毎年見直します。組織が変われば業務プロセスの区切りも変わりますし、リスク評価も動きます。見直した記録を残しておくと、形骸化していないことを示せます。
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📊 承認の取り方
年度計画は取締役会の承認を得るのが実務です。法令上の義務ではありませんが、内部監査が経営の意思にもとづいて行われていることを示す記録になります。
上程の時期は期初です。期が始まってから2か月以内には承認を得てください。期の途中で承認された計画では、期初からの活動が計画外だったことになります。
議案書には、計画書本体に加えて、前期の実施結果と指摘のフォローアップ状況を添えます。前期の振り返りがあると、当期の重点領域を選んだ理由が伝わります。
承認された計画は、監査役にも共有してください。往査日程の重複を避けられますし、三様監査の連携の記録にもなります。
🗂 計画を変更するとき
期の途中で計画を変更することはあります。想定外の事象が起きて緊急に監査が必要になった、担当者が異動した、被監査部門の繁忙で日程がずれた、といった理由です。
変更そのものは問題になりません。問題になるのは、変更の記録がないまま実態だけが変わっていることです。変更したときは、変更後の計画と変更理由を文書に残し、取締役会に報告してください。
実施できなかったテーマがある場合は、翌期の計画に繰り越します。繰り越したことを翌期の計画書に明記しておけば、そのテーマが抜け落ちていないことを示せます。
⚖️ 上場審査で見られる点
審査では、年度計画そのものと、計画に対する実施率が見られます。計画の8割以上が実施されていれば、体制として機能していると評価されます。
また、計画の承認時期も確認されます。期初に承認されているか、取締役会の議事録に記載があるかを見られます。
そして、監査していない領域について理由を聞かれます。3か年のサイクル表とリスク評価の記録があれば、この質問に答えられます。表がないと、選ばなかった理由を説明できません。
❓ よくある質問
A. 監査の方針、監査対象、実施時期、監査体制、所要日数、報告、前期からの繰越の7項目です。
A. 月で書いてください。四半期単位だと、実施できたかどうかを後から検証できません。
A. 3か年の監査サイクル表があれば、それが中期計画にあたります。別文書は不要です。
A. 前期の指摘、組織変更、新規事業、システム入替え、会計監査人の指摘、内部通報の6つを材料に決めます。
A. 取締役会の承認を得るのが実務です。法令上の義務ではありませんが、記録として重要です。
A. 期初から2か月以内が目安です。期の途中の承認では、それまでの活動が計画外になります。
A. 変更は問題ありません。変更後の計画と理由を文書に残し、取締役会に報告してください。
A. 翌期の計画に繰り越し、繰越であることを計画書に明記してください。
📄 まとめ
年度計画は3か年の監査サイクル表を起点に、当期の差分を足して作ります。毎年ゼロから考える必要はありません。
書く項目は7つです。実施時期は月単位で書き、所要日数を見積もって実行可能性を確かめてください。
重点領域は6つの材料から決め、選んだ理由を計画書の方針欄に残します。
期初に取締役会の承認を得て、監査役にも共有します。変更したときは理由とともに記録を残してください。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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