SkyfallのIPO|取締役3名のガバナンスと段階行使型ストック・オプション【Ⅰの部から読む上場準備】

※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。

2026年9月17日、株式会社Skyfall(証券コード625A)が東京証券取引所グロース市場に上場しました。リワード型の成果報酬型広告プラットフォーム「SKYFLAG」を主力とし、直前期(2025年9月期)の売上高は約162億円です。創業者と副社長の2名で株式の大半を持ち、ベンチャーキャピタル(VC)が株主にいない資本構成で上場した点でも、上場準備会社にとって参考になる事例です。

本記事では、同社が提出した「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」をもとに、事業と業績、資本政策、ガバナンス、内部監査、会計・開示の各論点を整理し、上場準備会社が自社の準備に生かせるポイントを解説します。結論からいえば、Skyfallのケースは「取締役3名というコンパクトな体制でも、社外役員の専門性・任意の協議会・クロス型の内部監査を組み合わせて審査に耐える体制をつくる」「オーナー中心の資本構成のもとで、ストック・オプションを段階的に設計し役職員へ広く配る」という2つの点で、多くの上場準備会社の参考になります。

この記事の論点を自社と比べられる「SkyfallのⅠの部と比べる 上場準備ギャップ診断シート(Excel)」を、記事の後半で無料でお渡ししています。

Skyfallはどんな会社で、いつどの市場に上場したのか?

株式会社Skyfall(英訳名 Skyfall Inc.)は、2017年10月に株式会社UKエージェンシーとして東京都目黒区で設立され、2019年1月に現在の商号へ変更しました。本店は東京都港区赤坂のミッドタウン・タワーにあります。決算期は9月30日で、事業年度は10月1日から翌年9月30日までです。

Ⅰの部の提出日は2026年8月17日で、2026年9月17日に東証グロース市場へ上場しました。財務諸表は単体のみで、2025年8月に設立した韓国の子会社Skyfall Korea Inc.は、重要性が乏しいため連結の範囲に含めていないと記載されています(資産基準0.2%、利益基準△0.2%など)。

従業員数は2026年7月31日現在で172名(ほかに臨時雇用者36名)、平均年齢は31.2歳、平均勤続年数は2.2年です。期末従業員数は第4期の51名から第8期の153名まで増えており、事業の拡大に合わせて採用を進めてきたことがわかります。

項目 内容
社名 株式会社Skyfall(Skyfall Inc.)
証券コード・市場 625A・東証グロース市場(2026年9月17日上場)
設立 2017年10月(株式会社UKエージェンシーとして設立、2019年1月に商号変更)
本店所在地 東京都港区赤坂九丁目7番1号 ミッドタウン・タワー19階
代表者 代表取締役社長 長谷川智一
決算期 9月30日
事業 リワードマーケティングプラットフォーム事業(SKYFLAG)ほか
従業員数 172名〔臨時雇用者36名、外数〕(2026年7月31日現在)
財務諸表 単体(非連結子会社1社)
会計監査人 ESネクスト有限責任監査法人
Ⅰの部提出日 2026年8月17日

なお、Ⅰの部とⅡの部の違いや、上場申請書類の全体像についてはⅠの部とⅡの部は何が違うかで解説しています。

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SKYFLAGは何で稼ぐビジネスなのか?

Skyfallの報告セグメントは「リワードマーケティングプラットフォーム事業」の1つで、そのほかに「その他」としてゲームやセルフオーダーシステムなどの事業があります。中心となるのは、2019年9月にリリースした「SKYFLAG」です。

Ⅰの部によると、SKYFLAGはリワード(報酬)型の成果報酬型広告プラットフォームで、広告主、メディア(ゲームアプリ、マンガアプリ等)、ユーザーを結びます。広告主は、自ら設定した成果地点(会員登録、継続利用、購入、口座開設など)が達成されたときに広告費を支払います。同社は広告主とメディアの双方と個別に契約し、広告配信・成果計測・報酬計算・レポーティングを一元的に管理しており、広告主から受け取った広告費の一部をメディアに収益分配として支払う仕組みです。

SKYFLAGの取引の流れ(Ⅰの部の記載をもとに作成)広告主国内・海外(ゲーム、金融等)SkyfallSKYFLAG(リワード型成果報酬型広告)メディアゲーム・マンガアプリ等配信・成果計測・報酬計算・レポートユーザー広告を自分で選んで利用広告費収益分配リワード(報酬)会員登録・継続利用・購入などの成果地点を達成

図1 Skyfallは広告主とメディアの双方と個別に契約し、広告配信・成果計測・報酬計算・レポーティングを一元的に管理する(Ⅰの部の事業の内容をもとに作成)

主力商品は「ロングCPEリワード広告」(同社の登録商標)で、アプリのインストールやチュートリアル完了よりも深いところに成果地点を置くのが特徴と説明されています。提供形態は、同社が管理する掲載面をメディアに設置する「独自フォーマット」と「API連携」の2つで、2024年10月から2026年6月までの売上構成比は独自フォーマットが76%、API連携が24%と記載されています。

取引先の分散についても具体的な数字が開示されています。2025年10月から2026年6月までのSKYFLAGの売上高では、最大の広告主の構成比が8.5%、海外企業からの売上高が46.0%(大半は海外の広告主が日本国内向けに出稿するもの)です。媒体費では最大のメディアが15.1%を占めます。また、メディア主の翌年継続率は98%と記載されています。

SKYFLAGの提供形態と取引先の分散提供形態別の売上構成比独自フォーマット 76%API連携 24%取引先の分散と継続率SKYFLAG売上高に占める最大の広告主8.5%SKYFLAG売上高に占める海外企業からの売上高46.0%媒体費に占める最大のメディア15.1%メディア主の翌年継続率98%

図2 提供形態は2024年10月〜2026年6月、広告主・海外・メディアの比率は2025年10月〜2026年6月の数値(Ⅰの部「事業の内容」をもとに筆者作成)

経営上の指標(KPI)としては、最重要KPIに「独自フォーマット導入メディア数」を置き、ほかに導入メディアMAU、ARPU、マージン率を挙げています。いずれも会計基準に基づかない経営管理上の指標であることを明記したうえで、それぞれの定義(たとえばマージン率=(SKYFLAGの売上高-メディア主への支払額)÷SKYFLAGの売上高)を示しています。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:グロース市場の審査では、事業計画の前提となるKPIが「何を、どう数えているか」を説明できることが重要です。独自の指標を使う場合は、Skyfallのように定義、計算方法、会計数値との関係、数値が動いた理由(たとえば一部のメディアがAPI提供に移ったことでMAUとARPUが変動した、という説明)をセットで用意しておくと、審査や開示の場面で一貫した説明ができます。事業計画の作り方はIPO審査の「事業計画の合理性」もあわせてご覧ください。

創業から上場まで、どのような道のりをたどったのか?

Ⅰの部の沿革を見ると、同社は広告業として創業したあと、自社プロダクトの開発に軸足を移し、ゲーム事業や調査事業を加えながら、組織再編と拠点整備を進めてきたことがわかります。

Skyfallの沿革(主要イベント)2017年10月UKエージェンシー設立2019年1月Skyfallへ商号変更2019年9月SKYFLAGリリース2021年8月ポーカーチェイス配信2023年4月子会社C-betを吸収合併2024年4月DataLabを吸収合併2025年6月ISMS認証取得2025年8月韓国子会社設立2026年8月Ⅰの部提出2026年9月東証グロース上場

図3 設立からグロース市場上場までの主な出来事(Ⅰの部の沿革をもとに作成。上場は2026年9月17日)

主な出来事は次のとおりです。2019年1月に「自社広告プロダクトの開発に注力するため」商号をSkyfallへ変更し、同年9月にSKYFLAGをリリースしました。2020年9月に子会社(のちのC-bet)を設立して2021年8月にポーカーゲーム「ポーカーチェイス」を配信し、2023年4月にはこの子会社を吸収合併しています。

2021年2月にand factory株式会社、2023年9月に株式会社Amaziaと資本業務提携を結び、2024年8月には株式会社セガ エックスディーと業務提携しました。2024年2月に新潟オフィス(カスタマーサポート拠点)を開設し、同年4月にはDataLab株式会社を吸収合併して調査パネル事業「SKYFLAGリサーチ」を始めています。

上場前の2年間には、2025年6月のISMS認証(ISO/IEC 27001)の取得、同年7月のSKYFLAGのコンセプト変更、同年8月の韓国子会社の設立と、情報セキュリティ体制の整備と海外展開が続きました。韓国では2025年4月に広告配信を始め、2026年4月に独自フォーマットの配信を始めたと記載されています。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:子会社の設立と吸収合併、事業の追加といった組織再編は、上場準備期間中に行うと、比較可能性や会計処理(のれん、抱合せ株式消滅差損など)の論点を生みます。上場準備の全体スケジュールのなかで、どの時点までに組織を固めるかを早めに決めておくことが大切です。全体像はIPO準備の全体像(N-3期〜N期)で整理しています。

業績はどう推移してきたのか? 黒字上場の中身をどう読むか

Ⅰの部の「主要な経営指標等の推移」によると、売上高は第4期(2021年9月期)の40億58百万円から第8期(2025年9月期)の162億15百万円まで、4期でおよそ4倍に伸びています。直前期の第8期は前期比26.0%の増収で、営業利益は5億15百万円(前期比259.5%増)、経常利益は5億53百万円(同108.5%増)、当期純利益は4億46百万円でした。

回次(決算期) 第4期 2021/9 第5期 2022/9 第6期 2023/9 第7期 2024/9 第8期 2025/9
売上高(千円) 4,058,527 6,912,869 8,162,480 12,870,585 16,215,701
経常利益(千円) 365,660 1,061,595 495,785 265,584 553,694
当期純利益(千円) 240,073 725,521 325,585 △117,138 446,613
純資産額(千円) 519,084 1,244,605 1,523,386 1,406,247 1,852,860
総資産額(千円) 1,721,507 2,953,467 3,957,886 4,978,021 5,301,888
自己資本比率(%) 30.15 42.14 38.49 28.25 34.95
営業CF(千円) - - - 823,774 △917,108
従業員数(名) 51〔6〕 68〔3〕 95〔13〕 142〔17〕 153〔38〕

表の注記によれば、第4期から第6期は会社計算規則に基づく数値で監査を受けておらず、キャッシュ・フロー計算書も作成していません。第7期と第8期は財務諸表等規則に基づいて作成され、ESネクスト有限責任監査法人の監査を受けています。

売上高の推移(単体、百万円)04,5009,00013,50018,000第4期 2021/9第5期 2022/9第6期 2023/9第7期 2024/9第8期 2025/94,0586,9128,16212,87016,215

図4 第4期から第8期までの売上高の推移。第4〜6期は会社計算規則に基づく数値で監査を受けていない(Ⅰの部 主要な経営指標等の推移をもとに作成、百万円未満切捨て)

経常利益と当期純利益の推移(単体、百万円)-40004008001,200第4期第5期第6期第7期第8期経常利益当期純利益

図5 第7期は経常黒字を維持する一方、のれんの減損損失(263百万円)などにより当期純損失となった(Ⅰの部をもとに作成)

利益の推移を見ると、第5期に経常利益10億61百万円を計上したあと、第6期・第7期は売上高が伸びる一方で経常利益は減少し、第7期は当期純損失(△1億17百万円)となりました。第7期の損益計算書では、DataLab株式会社の吸収合併で生じたのれんの未償却残高2億63百万円を減損損失として特別損失に計上しています。第8期は増収とともに利益も回復しました。

直近の第9期(2026年9月期)についても、中間期(2025年10月〜2026年3月)の売上高91億44百万円・営業利益6億46百万円、第3四半期累計(2025年10月〜2026年6月)の売上高140億59百万円・営業利益10億13百万円・四半期純利益7億96百万円が開示されています。第3四半期累計では「その他」セグメントが黒字(セグメント利益6百万円)になったと記載されています。

過年度の財務諸表の訂正はどう開示されているか

主要な経営指標等の推移の注記には、為替レートの取扱い等の契約条件と運用状況を確認した結果、メディアへの追加精算が必要となり、過年度の財務諸表の訂正を含む会計処理と追加精算を実施した旨が記載されています。この影響は複数年度の損益とキャッシュ・フローに及び、第7期の当期純損失と第8期の営業キャッシュ・フローの支出の一因になったこと、主な精算は完了しており翌期以降に重要な追加負担は見込んでいないことも、あわせて説明されています。

過年度の財務諸表の訂正に至る流れ為替レートの取扱い等の契約条件と運用状況を確認メディアへの追加精算が必要と判明過年度の財務諸表の訂正と追加精算を実施影響は複数年度の損益とキャッシュ・フローに及ぶ第7期の当期純損失の一因第8期の営業キャッシュ・フローの支出の一因主な精算は完了しており、翌期以降に重要な追加負担は見込んでいない

図6 Ⅰの部「主要な経営指標等の推移」の注記をもとに筆者作成

上場準備の過程では、契約条件と実際の運用の差(たとえば外貨建て取引の換算レートの決め方)が、監査法人の監査や社内の点検を通じて見つかることがあります。その場合は、影響額を特定して過年度の数値を訂正し、原因と今後の影響を開示書類のなかで説明することになります。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:過年度の会計処理の見直しは、発見が遅いほど上場スケジュールへの影響が大きくなります。とくに、取引先との精算が契約書の条項(為替レート、計算期間、手数料率など)に依存するビジネスでは、契約条件の台帳化と、実際の請求・支払計算との突合を早い段階で仕組みにしておくことが有効です。過年度の誤りが見つかったときの対応は過年度の会計処理に誤りが見つかったときで詳しく解説しています。

黒字なのに営業キャッシュ・フローがマイナスになった理由

第8期は当期純利益4億46百万円の黒字でしたが、営業キャッシュ・フローは△9億17百万円でした。MD&Aでは、主な要因として売上債権の増加8億13百万円、仕入債務の減少1億39百万円、法人税等の支払4億49百万円が挙げられています。財務キャッシュ・フローは短期借入金の純増4億円です。

SKYFLAGのように、広告主から広告費を回収し、メディアへ媒体費を支払うビジネスでは、売上の伸びに合わせて売掛金と買掛金の両方が大きくなります。第8期末の売掛金は26億89百万円、買掛金は26億41百万円で、売上原価139億12百万円のうち媒体費が132億67百万円(95.2%)を占めます。回収と支払のタイミングが少しずれるだけで、資金繰りが大きく動く構造です。

同社は2026年4月に三井住友銀行と極度額5億円のコミットメントライン契約を結んでいます。財務制限条項として、純資産を一定水準(2025年9月期末または直前期末の75%)以上に維持すること、経常損益を2期連続で損失にしないことが定められています。第9期中間期の営業キャッシュ・フローは7億52百万円のプラスでした。

運転資金の構造と資金の手当て広告主Skyfallメディア広告費を回収売掛金26億89百万円媒体費を支払買掛金26億41百万円第8期 営業CF △9億17百万円売上債権の増加 8億13百万円仕入債務の減少 1億39百万円法人税等の支払 4億49百万円財務制限条項純資産を一定水準以上に維持経常損益を2期連続で損失にしない三井住友銀行コミットメントライン極度額5億円

図7 売掛金・買掛金は第8期末、コミットメントラインは2026年4月の契約(Ⅰの部「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」「経営上の重要な契約等」をもとに筆者作成)

上場準備会社にとっての実務上のポイント:審査では、利益だけでなく資金繰りの安定性も確認されます。運転資金が大きく動くビジネスでは、売上債権の回転期間、取引信用保険の活用(同社は信用リスクを取引信用保険で軽減していると記載)、借入枠と財務制限条項の内容を、事業計画とあわせて説明できるようにしておきましょう。

グロース市場で求められる「成長可能性」の説明

グロース市場は、高い成長可能性を有する企業向けの市場と位置づけられており、上場会社には「事業計画及び成長可能性に関する事項」の開示が求められます。Skyfallは黒字での上場ですが、Ⅰの部では、国内インターネット広告市場やアプリ内広告市場に関する外部調査の数値を引用し、主力のロングCPEリワード広告がどの市場区分に含まれるかという整理まで示しています。そのうえで、中長期的には韓国を起点に欧米(特に米国)へ展開する方針や、SKYFLAGの資産を使った新規領域への投資方針を記載しています。

海外展開の歩みと方針2025年4月韓国で広告配信を開始2025年8月韓国子会社を設立2026年4月独自フォーマットの配信を開始中長期の方針欧米(特に米国)へ展開韓国を起点に欧米へ展開する方針。SKYFLAGの資産を使った新規領域への投資方針も記載海外企業からの売上高はSKYFLAG売上高の46.0%(2025年10月〜2026年6月)

図8 Ⅰの部「沿革」「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をもとに筆者作成(右端は方針)

成長可能性の説明は、市場規模の数字を並べるだけでなく、「自社がその市場のどこで、どのKPIを伸ばして成長するのか」をつなげて示すことがポイントです。詳しくはグロース市場の「高い成長可能性」とはをご覧ください。

VCのいない資本政策はどのように組み立てられたのか?

Skyfallの資本政策の大きな特徴は、外部の投資ファンド(VC)が株主にいないことです。Ⅰの部の「株主の状況」に記載されている株主は、代表取締役社長の長谷川智一氏、取締役副社長の田谷野貴正氏、長谷川氏の資産管理会社である株式会社L.V.R、資本業務提携先の事業会社であるand factory株式会社と株式会社Amaziaの5者で、そのほかは役職員等が保有する新株予約権(潜在株式)です。株主数は5名(その他の法人3、個人その他2)と記載されています。

順位 氏名・名称 所有株式数(株) 比率 備考
1 長谷川 智一 3,750,000 54.35% 代表取締役社長
2 田谷野 貴正 1,250,000 18.12% 取締役副社長
3 株式会社L.V.R 750,000 10.87% 長谷川氏の資産管理会社
4 and factory株式会社 363,700 5.27% 資本業務提携先
5 株式会社Amazia 93,750 1.36% 資本業務提携先
- 新株予約権の保有者(役職員等) 692,020 10.03% 潜在株式の合計

表の比率は、自己株式を除く発行済株式総数に潜在株式を加えた6,899,470株に対する割合です(2026年7月現在)。長谷川氏の所有株式数は、L.V.R分を含めると4,500,000株と記載されています。

株主の状況(潜在株式を含む比率、2026年7月現在)長谷川 智一(代表取締役社長)54.35%田谷野 貴正(取締役副社長)18.12%㈱L.V.R(社長の資産管理会社)10.87%and factory㈱5.27%㈱Amazia1.36%新株予約権(潜在株式)10.03%創業者・役員・資産管理会社事業会社新株予約権

図9 比率は自己株式を除く発行済株式総数に潜在株式を加えた6,899,470株に対する割合。株主にベンチャーキャピタルはいない(Ⅰの部 第四部 株主の状況をもとに作成)

上場申請時の発行済株式は6,207,450株で、すべて普通株式です。種類株式は発行されていません。VCから資金を調達する会社では、優先株式などの種類株式を上場前に普通株式へ転換する手続きが必要になりますが、Skyfallにはその工程がありません。種類株式の扱いについては種類株式は上場前に普通株式へ戻すのかで解説しています。

株式分割と第三者割当はどの順で行われたか

上場までの資本政策の主な動き2021年8月株式分割1株→1,000株2021年9月第三者割当副社長へ125万株2021〜2026年新株予約権第1〜6回を発行2026年5月単元株制度100株を採用2026年6月自己株式42,550株を消却

図10 株式分割、第三者割当、ストック・オプションの継続的な付与、単元株制度の採用、自己株式の消却という流れ(Ⅰの部をもとに作成)

発行済株式総数と資本金の推移を見ると、2021年8月18日に1株を1,000株に分割して発行済株式を5,000,000株とし、その翌月の2021年9月17日に有償の第三者割当で1,250,000株を発行しています。割当先は現在の取締役副社長である田谷野貴正氏で、発行価格は1株47.03円(資本組入額23.515円)でした。この結果、発行済株式は6,250,000株、資本金は79,393千円となり、その後の上場申請まで資本金は変わっていません。

同じ時期の2021年9月13日に決議された第1回新株予約権(ストック・オプション)の行使価額は50円で、株式価値の算定方法は純資産価額方式と記載されています。役員への第三者割当と、役職員へのストック・オプションの付与を、近い時期に近い株価水準で行っている点が読み取れます。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:上場前に役員や従業員へ株式を割り当てる場合、その価格がどう決まったかは、審査でも税務でも必ず確認されます。同じ時期のストック・オプションの行使価額や、その後の取引価格との整合性を説明できるよう、算定方法と算定書を残しておくことが大切です。算定方法の選び方は未上場株式の株価算定はどの方法を使うかで整理しています。

ストック・オプションはどう設計されていたか

Skyfallは2021年から2026年にかけて、6回の新株予約権を発行しています(第3回は外部協力者との関係強化を目的とするもので、ストック・オプションではありません)。各回の内容は次のとおりです。

回 決議日 付与対象者(付与時) 当初付与株数 2026年7月末の残高 行使価額 株式価値の算定方法
第1回 2021/9/13 取締役1、監査役1、子会社取締役1、従業員53 451,440 221,610 50円 純資産価額方式
第2回 2022/9/15 従業員26 93,270 28,180 200円 類似会社比準方式と純資産価額方式の折衷
第3回 2022/9/15 外部協力者 - 3,130 200円 -
第4回 2023/9/21 従業員44 145,230 69,160 1,100円 DCF法と類似会社比準方式の折衷
第5回 2024/9/19 従業員82 292,830 283,390 1,430円 DCF法と類似会社比準方式
第6回 2026/2/19 従業員62 86,950 86,550 970円 DCF法と類似会社比較法
ストック・オプションの行使価額の推移(円)04008001,2001,600第1回 2021/9第2回 2022/9第4回 2023/9第5回 2024/9第6回 2026/2502001,1001,430970

図11 行使価額は第1回50円から第5回1,430円まで上昇し、第6回は970円。算定方法も純資産価額方式からDCF法等へ移っている(Ⅰの部をもとに作成。第3回は外部協力者向けの新株予約権で行使価額200円)

設計面では、次の3点が特徴的です。1つ目は段階的な行使です。行使条件として上場していることを求めたうえで、上場日以降に付与数の4/10、1年経過後に8/10、2年経過後に全部を行使できると定めています。2つ目は年間の行使額の上限で、年間の行使価額の合計を1,200万円までとしています。3つ目は在籍条件で、権利行使時に役職員等の地位にあることを求め、相続人による行使は認めていません。

ストック・オプションの段階的な行使行使の前提:上場していること累計 4/10累計 8/10全部上場日以降上場から1年経過後上場から2年経過後そのほかの条件年間の行使価額の合計1,200万円まで行使時に役職員等の地位にあること相続人による行使は認めない

図12 行使できる割合は付与数に対する累計(Ⅰの部「新株予約権等の状況」をもとに筆者作成)

在籍条件があるため、退職者の分は失効します。Ⅰの部の注記を見ると、第1回は当初451,440株に対して第8期末の残高が224,450株、第4回は145,230株に対して70,440株となっており、付与後の人員の入れ替わりが残高に反映されています。第5回・第6回の付与は従業員82名・62名と幅広く、第四部の「取得者の概況」では第5回は従業員65名、第6回は従業員60名が保有していると記載されています。

当初付与株数と現在の残高0125,000250,000375,000500,000第1回第2回第4回第5回第6回当初付与株数2026年7月末の残高

図13 単位:株。残高は2026年7月末。第3回(外部協力者向け)は除く(Ⅰの部「新株予約権等の状況」をもとに筆者作成)

行使価額は第1回の50円から第5回の1,430円まで上がり、2026年2月の第6回は970円です。算定方法も、純資産価額方式から、類似会社比準方式との折衷、さらにDCF法と類似会社比較法へと移っています。会社の成長段階に合わせて評価方法を見直してきたことがわかります。なお、ストック・オプションの公正な評価単価は本源的価値によっており、費用計上はありません。第8期末の本源的価値の合計は428,019千円と注記されています。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:ストック・オプションは、付与のたびに行使価額の根拠となる株式価値の算定が必要です。とくに、前回より行使価額が下がる場合や算定方法を変える場合は、その理由(事業計画の見直し、評価手法の変更など)を説明できるようにしておきましょう。税制適格ストックオプションの要件については税制適格ストックオプション、注記の書き方はストック・オプションの注記の記載例で解説しています。

上場直前の第三者割当と保有確約

第四部「株式公開情報」の「第三者割当等の概況」には、第5回(2024年9月発行)と第6回(2026年2月発行)の新株予約権が記載されています。第6回については、有価証券上場規程施行規則第272条に基づき、割当を受けた者が割当日から上場日の前日または行使日のいずれか早い日まで保有する旨の確約を行っています。発行価格(行使価額)の算定方法は、DCF法と類似会社比較法で算出した価格を総合的に勘案したと記載されています。

一方、「特別利害関係者等の株式等の移動状況」は「該当事項はありません」とされており、上場前の一定期間に役員や大株主の間で株式の移動はありませんでした。

上場前の一定期間内に行った第三者割当や株式の移動は、Ⅰの部の第四部で開示され、継続保有の確約が求められる場合があります。詳しくは上場前に株式を動かすとどうなるか(継続所有の確約)をご覧ください。

自己株式の消却と単元株制度の採用

同社は第7期の期首時点ですでに自己株式42,550株(帳簿価額46,805千円)を保有しており、2026年6月17日の取締役会決議でその全株を消却しました。消却に伴ってその他資本剰余金が負の値になったため、その他利益剰余金から減額したと第3四半期の注記に記載されています。これにより発行済株式総数は6,207,450株となりました。

また、2026年5月28日の臨時株主総会で単元株制度(1単元100株)を採用しています。上場会社の売買単位は100株に統一されているため、上場準備の終盤で単元株制度を導入するのが一般的な流れです。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:グロース市場の上場審査では、流通株式数(1,000単位以上)、流通株式比率(25%以上)、株主数(150人以上)などの形式要件を満たす必要があります。Skyfallのようにオーナーの持株比率が高い会社では、公募・売出しを通じてこれらの基準を満たす計画を、資本政策の段階から逆算しておくことが重要です。流通株式比率の考え方は流通株式比率の計算式と調べ方で解説しています。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

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取締役3名の体制で、ガバナンスをどう組み立てているのか?

Skyfallの機関設計は、取締役会と監査役会を置く監査役会設置会社です。会計監査人はESネクスト有限責任監査法人で、そのほかに経営会議、リスク・コンプライアンス委員会、任意の指名・報酬協議会を設けています。役員は男性5名・女性1名の計6名で、取締役3名(社内2名、社外1名)と監査役3名(全員社外、うち常勤1名)という構成です。

Skyfallの機関設計(監査役会設置会社)株主総会取締役会取締役3名(うち社外1名)指名・報酬協議会(任意・5名)監査役会監査役3名(全員社外)代表取締役社長会計監査人ESネクスト有限責任監査法人経営会議原則週1回リスク・コンプライアンス委員会(原則毎月)内部監査担当コーポレート部長+外部専門家選任選任選定・監督連携

図14 取締役3名(うち社外1名)と社外監査役3名を中心に、任意の指名・報酬協議会、経営会議、リスク・コンプライアンス委員会、内部監査担当を置く(Ⅰの部のコーポレート・ガバナンスの状況をもとに作成)

役職 氏名 主な経歴(Ⅰの部の記載から抜粋)
代表取締役社長 長谷川 智一 アドウェイズ、セガゲームスを経て2017年10月に当社を設立
取締役副社長 田谷野 貴正 アドウェイズを経て2019年10月に当社取締役COO、2024年12月から副社長
取締役(社外) 森 大輝 弁護士。関東財務局 証券取引等監視官部門の証券検査官、証券会社のコンプライアンス部門・企業公開部門を経験。2022年3月就任
常勤監査役(社外) 江口 慎一 上場会社で内部統制・法務部門の室長、取締役管理本部長を経験。2021年5月就任
監査役(社外) 野村 浩子 経済誌の編集長、新聞社の編集委員、大学教授、上場会社の社外役員を経験。2021年12月就任
監査役(社外) 小島 啓之 公認会計士。監査法人、事業会社のCFOを経て会計事務所代表。2025年12月就任

取締役の任期は1年、監査役の任期は4年で、社外役員4名(森氏、江口氏、野村氏、小島氏)はいずれも独立役員に指定されています。社外役員の独立性基準は2022年4月に制定し、2024年12月に改訂したと記載されています。また、事務連絡者を務めるCFOは執行役員(取締役ではない)で、執行役員は4名です。

取締役会は年22回、全員が出席

取締役会は毎月の定例開催に加えて必要に応じて臨時に開催され、第8期は22回開かれ、取締役3名全員が22回すべてに出席したと記載されています。監査役3名も取締役会に出席しています。主な報告事項として、上場審査の進捗、内部監査、リスク・コンプライアンス委員会の活動などが挙げられています。

また、社外取締役と社外監査役は、取締役会の前に連絡会議を開いていると記載されています。取締役が3名と少ない体制のなかで、社外役員同士が事前に情報を共有し、取締役会での議論の質を高める工夫と読めます。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:上場審査で求められる社外取締役の人数は市場によって異なり、グロース市場では独立役員を1名以上確保することが求められます。取締役の人数自体に下限はありませんが、取締役会が実質的に機能していることを、開催回数、出席状況、議題の内容で示す必要があります。人数の考え方は社外取締役は何人必要か、機関設計の選び方は監査役会設置会社と監査等委員会設置会社はどちらを選ぶ?で解説しています。

社外役員の専門性:証券規制・内部統制・会計

社外役員の顔ぶれを見ると、それぞれの専門性がはっきりしています。社外取締役の森氏は、財務局の証券検査部門と証券会社の企業公開部門の経験を持つ弁護士です。常勤監査役の江口氏は上場会社で内部統制や管理部門を率いた経験があり、監査役会の記載では「他社で財務諸表作成の責任者を務めた経験がある」とされています。2025年12月に就任した小島氏は公認会計士で、監査法人と事業会社のCFOの経験を持ちます。

上場準備会社では、社内の役員が事業出身者中心になりやすいため、社外役員で法務・内部統制・会計の専門性を補う設計がよく見られます。Skyfallの役員構成は、その典型的な例といえます。監査役に求められる知見については監査役に会計の知識は必要かもご覧ください。

社外役員4名の経歴と専門性森 大輝社外取締役江口 慎一常勤監査役(社外)小島 啓之監査役(社外)野村 浩子監査役(社外)弁護士証券検査官・証券会社の企業公開部門を経験上場会社で内部統制・法務部門の室長、取締役管理本部長公認会計士監査法人、事業会社CFO会計事務所代表経済誌の編集長大学教授上場会社の社外役員証券規制・法務内部統制・管理会計報道・教育の経験4名とも独立役員に指定。社外取締役と社外監査役は取締役会の前に連絡会議を開く

図15 Ⅰの部「役員の状況」をもとに筆者作成

常勤監査役と新株予約権

Ⅰの部では、常勤監査役の江口氏が第1回新株予約権5,010個を保有していること、それ以外に同社との利害関係はないことが記載されています。社外役員がストック・オプションを保有している場合、上場審査や開示では、その内容(数量、付与時期)と、独立性の判断にあたってどう考えたかを明確に示すことが求められます。Skyfallは、役員の状況の欄に保有の事実と利害関係の有無を記載する形で開示しています。

任意の指名・報酬協議会と役員報酬の決め方

同社は2022年5月に任意の指名協議会を設け、2026年3月に報酬も扱う「指名・報酬協議会」に改組しました。構成員は代表取締役、社外取締役、常勤監査役、社外監査役2名の5名で、委員長は互選です。第8期は2回開催され、スキル・マトリックスの見直しや役付取締役候補の審議、規程の改訂を扱ったと記載されています。

役員報酬の方針は2021年12月に取締役会で決議されています。業務執行取締役の報酬は固定報酬、業績連動報酬、非金銭報酬(ストック・オプション)で構成され、業績連動報酬は「前事業年度の経常利益が当初計画の110%を超えた場合」に賞与を支給できるという基準が示されています。社外取締役は固定報酬のみです。個人別の報酬額は、監査役会の意見を聴いたうえで、取締役会の決議により代表取締役社長に委任しています。報酬総額の上限は、2026年5月の臨時株主総会で取締役年額3億円以内、監査役年額50百万円以内に改定されました。第8期の実績は、社外を除く取締役2名で68,400千円(固定報酬のみ)、社外役員4名で18,240千円です。

取締役報酬の構成と決め方業務執行取締役の報酬の構成固定報酬業績連動報酬(賞与)前事業年度の経常利益が当初計画の110%を超えた場合非金銭報酬(ストック・オプション)社外取締役は固定報酬のみ個人別の報酬額の決め方株主総会で総額の上限を決議取締役 年額3億円以内監査役 年額50百万円以内取締役会の決議(監査役会の意見を聴取)代表取締役社長に委任個人別の報酬額を決定

図16 Ⅰの部「役員の報酬等」をもとに筆者作成

上場準備会社にとっての実務上のポイント:オーナー経営者が報酬の決定を担う会社では、決定プロセスの客観性をどう確保するかが問われます。社外役員が過半を占める任意の協議会で審議し、取締役会に答申する仕組みを、上場の1〜2年前までに動かし始めておくと、運用実績として説明しやすくなります。

支配株主の存在と関連当事者取引

Ⅰの部では、親会社等は「ない」とされていますが、代表取締役社長が資産管理会社と合わせて株式の過半を保有しています。財務諸表の関連当事者情報は、第7期・第8期ともに「該当事項はありません」と記載されています。

また、責任限定契約は社外取締役と社外監査役3名全員と締結しており、取締役と監査役を被保険者とするD&O保険(役員等賠償責任保険)にも加入しています。定款では、会社法426条1項に基づく取締役会決議による責任免除、会社法165条2項に基づく取締役会決議による自己株式の取得、中間配当を定めています。買収防衛策は導入していません。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:オーナーの持株比率が高い会社では、少数株主の利益を損なう取引が行われない仕組み(関連当事者取引の承認手続き、社外役員によるチェックなど)が審査の焦点になります。関連当事者取引の整理はIPO審査の「企業経営の健全性」(関連当事者取引)、社長個人と会社の取引の解消方法は社長個人と会社の取引はどう解消するかで解説しています。

独立した内部監査部門がない会社は、内部監査をどう回しているのか?

Ⅰの部の「監査の状況」によると、Skyfallには独立した内部監査部門はなく、コーポレート部長が内部監査を担当しています。内部監査担当が所属するコーポレート部については、アプリ事業部長が監査を行うことで、自分の所属部門を自分で監査すること(自己監査)を避けています。さらに、内部監査業務の補助を外部の専門家(コンサルティング会社)に委託し、監査結果は代表取締役と取締役会に報告する体制です。

内部監査の体制(自己監査の回避)内部監査担当コーポレート部長監査担当アプリ事業部長外部専門家内部監査業務を補助各部門(コーポレート部以外)コーポレート部(担当者の所属部門)結果は代表取締役と取締役会へ報告監査監査

図17 コーポレート部長が内部監査を担当し、その所属部門はアプリ事業部長が監査する。補助業務は外部専門家に委託している(Ⅰの部の監査の状況をもとに作成)

上場準備会社、とくに管理部門の人数が限られる会社では、専任の内部監査室をすぐに置けないことが少なくありません。その場合によく採られるのが、Skyfallのように「他部門の責任者が内部監査を兼務し、兼務者の所属部門は別の者が監査する」というクロス監査の形です。外部専門家の支援を組み合わせることで、監査手続きの専門性や工数を補うことができます。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:兼務型の内部監査で大切なのは、(1)監査対象から担当者自身の業務を外すこと、(2)誰が誰を監査するかを内部監査規程や年度計画に明記すること、(3)報告先を代表者だけでなく取締役会にも広げ、監査役とも情報を共有することの3点です。体制づくりは内部監査の担当者と兼務(自己監査の回避)、人数の目安は内部監査の人数と体制、報告先の考え方は内部監査の報告先は社長だけでよいのかで解説しています。

三様監査の連携:監査協議会と情報共有会議

監査役監査は、常勤監査役1名と非常勤監査役2名の3名(全員社外)で行われ、監査役会は第8期に12回開催されています。監査役は重要会議への出席、実地監査、内部統制の確認、監査法人の評価や報酬への同意、監査役会の実効性評価などを行っていると記載されています。補欠監査役は選任していません。

三者の連携については、監査役会、内部監査担当、監査法人が随時「監査協議会」を開いていること、常勤監査役と内部監査担当が定期的に情報共有会議を開いていること、常勤監査役が内部監査に合わせて部門ヒアリングや往査を行っていることが記載されています。

三様監査の連携監査役会常勤監査役(社外)内部監査担当コーポレート部長監査法人ESネクスト定期的な情報共有会議監査法人の評価・報酬同意監査協議会(三者・随時)

図18 監査役会、内部監査担当、監査法人は随時「監査協議会」を開き、常勤監査役と内部監査担当は定期的に情報共有会議を開く(Ⅰの部をもとに作成)

三様監査の連携は、上場審査でも「形だけでなく実際に動いているか」が確認されます。会議の開催記録、共有した論点、その後の対応までを議事録などで残しておくと、運用の実績として説明しやすくなります。詳しくは監査役監査・内部監査・会計監査(三様監査)と監査役監査と内部監査の連携をご覧ください。

内部統制システム、リスク管理、コンプライアンス

内部統制システムの基本方針は2021年7月に制定され、2024年7月、2025年2月、2026年6月の3回にわたって改訂されています。基本方針は11項目で構成され、監査役の補助者について「任命・解任には監査役の同意、人事評価には常勤監査役の同意が必要」と定めるなど、監査役の独立性を確保する規定も含まれています。

リスク管理とコンプライアンスは、リスク・コンプライアンス委員会が中心です。代表取締役社長をCECO(最高倫理・コンプライアンス責任者)として議長とし、副社長、常勤監査役、各執行役員、各部長、コンプライアンス推進委員で構成され、原則毎月開催して取締役会へ報告しています。リスク管理規程、コンプライアンス規程、ISMS(2025年6月に認証取得)がその土台です。サステナビリティに関する事項も、この委員会で協議し取締役会が監督する体制と記載されています。

内部通報制度の窓口は、外部弁護士、社外役員、経営管理本部長の3つで、常勤監査役も通報窓口を務めています。反社会的勢力の排除については経営管理本部が統括し、警視庁管内特殊暴力防止対策連合会に加入しています。子会社については「関係会社運営管理規程」を定め、関係会社の監督を経営会議の審議事項としています。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:内部統制システムの基本方針は、一度決めて終わりではなく、組織や事業の変化に合わせて改訂していくものです。Skyfallのように改訂の履歴を示せると、体制を継続的に見直していることの説明になります。内部通報の窓口を社外にも設けることは、上場審査でも確認されやすいポイントです。内部通報体制は上場審査でどこまで見られるかもあわせてご覧ください。

情報セキュリティへの取組み

同社はユーザーの個人情報を取得する事業を営んでおり、事業等のリスクでも情報セキュリティを影響度「大」と評価しています。対処すべき課題として、2022年3月に情報セキュリティのガイドラインを制定し、2025年6月にISMS認証を取得したことが記載されています。個人情報を扱う事業では、規程の整備に加えて、第三者認証の取得やアクセス管理の運用実績が、審査での説明材料になります。

会計・開示ではどんな論点が読み取れるか?

収益認識:広告主の検収完了時点で売上を計上

重要な会計方針の収益認識の項目によると、SKYFLAGについて同社は、広告主との契約に基づき、契約期間にわたって広告配信と成果の計測・管理を行う義務を負っています。そして、この履行義務は「広告成果について広告主の検収が完了した時点」で充足されると判断し、検収完了時に売上を計上しています(一時点で充足される履行義務)。SKYFLAGリサーチ等も顧客の検収完了時に計上し、ゲーム事業ではユーザーが課金で取得したゲーム内通貨のうち未消化の残高を契約負債としています。第8期の収益の分解情報では、リワードマーケティングプラットフォーム事業の売上はすべて一時点で認識する区分に入っています。

また、売上原価の明細では、媒体費13,267,211千円が売上原価の95.2%を占めています。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:広告プラットフォームのように、顧客(広告主)と供給者(メディア)の間に立つビジネスでは、(1)履行義務の識別と充足時点(成果発生時か、検収時か)、(2)自社が本人か代理人か(売上を総額で計上するか、純額で計上するか)が、審査や監査で必ず確認されます。とくに本人・代理人の判断は売上高の大きさそのものを左右するため、契約上の責任、在庫リスク(サービスの場合は提供責任)、価格設定の裁量などを根拠として文書化しておくことが大切です。詳しくは上場審査で問われる収益認識と収益認識基準 完全ガイドをご覧ください。

のれんの減損と組織再編の会計

2024年4月1日、同社はDataLab株式会社を現金を対価とする吸収合併により取得しました。取得原価は320,000千円、のれんは293,126千円(5年で均等償却)です。その後、第7期中にリサーチ事業で当初想定していた超過収益力が見込めなくなったとして、のれんの未償却残高263,814千円を全額減損しています。この影響もあり、第7期の税効果会計適用後の法人税等の負担率は6,718.0%と注記されています。

また、2023年4月には連結子会社だったC-betを吸収合併しており、第6期に抱合せ株式消滅差損を計上したと記載されています。この合併以降、同社は連結財務諸表を作成していません。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:上場準備期間中のM&Aは、のれんの計上と減損の判定、取得原価の配分、税効果の計算など、会計上の論点を一度に生みます。買収時の事業計画と実績の差を定期的にモニタリングし、減損の兆候をどの指標で判定するかを決めておくと、監査対応がスムーズです。IPO審査でのれんの減損リスクはどう見られるかもあわせてご覧ください。

重要な会計上の見積りと税効果

重要な会計上の見積りの注記は、第7期・第8期ともに「該当事項なし」とされています。MD&Aでは、繰延税金資産の回収可能性、引当金、固定資産の減損について見積りを行っているものの、翌期以降に重要な影響を及ぼす見積りはないと判断した旨が記載されています。第8期末の繰延税金資産(純額)は331,317千円です。

税効果の注記には、2026年9月期中に予定している増資によって資本金が1億円を超え、外形標準課税の対象となる見込みであるため、増資後に解消する一時差異には外形標準課税の税率を使用した旨が記載されています。上場時の公募増資で資本金が増えることを、税効果の計算に織り込んでいる点は、上場準備会社が見落としやすいポイントです。

監査法人と監査報酬

会計監査人はESネクスト有限責任監査法人で、継続監査期間は2024年9月期からの2年間です。主要な経営指標等の推移の注記にあるとおり、第4〜6期は監査を受けておらず、直前々期(第7期)と直前期(第8期)の財務諸表について上場申請のための監査を受けています。監査証明業務の報酬は前事業年度17,000千円、最近事業年度26,000千円で、非監査業務の報酬はありません。監査役会は、報酬単価が他法人の平均と同等であること、監査法人が上場会社等監査人名簿に登録されていることなどを理由に、報酬に同意したと記載されています。

上場準備会社にとっての実務上のポイント:新規上場の申請には、原則として直前2期分の財務諸表について監査法人の監査を受ける必要があります。監査法人の選定とショートレビューの時期は、上場スケジュール全体を左右します。監査法人はいつまでに決めるかとショートレビューとはで詳しく解説しています。

論点 Skyfallの記載 上場準備会社が確認したいこと
収益認識 SKYFLAGは広告主の検収完了時に一時点で計上 履行義務の充足時点、本人か代理人かの判断根拠
のれん・M&A DataLabののれん263,814千円を第7期に全額減損 買収時の計画と実績のモニタリング、減損の兆候の判定
会計上の見積り 第7期・第8期とも「該当事項なし」 繰延税金資産や減損の見積りの重要性の判断
税効果 増資による外形標準課税の適用を見込んだ税率 上場時の増資が税率に与える影響
過年度訂正 為替レートの取扱いに関する追加精算と過年度の訂正 契約条件と運用の突合、訂正時の開示
監査 ESネクスト。継続監査2年、監査報酬26,000千円 監査法人の選定時期、監査を受ける期間

その他の特徴的な開示

ほかにも、上場準備会社の参考になる開示がいくつかあります。地域別の売上高(顧客の所在地基準)では、第8期に日本9,974,092千円、中国3,524,469千円、その他のアジア1,808,909千円などと区分しています。主要な販売先としては株式会社MAVELを挙げ、第8期の販売実績1,624,748千円(総販売実績に対する割合10.0%)を開示しています。

資産除去債務は、負債として計上する代わりに、敷金のうち回収が見込めない金額を費用計上する簡便的な方法を採っています。新しいリース会計基準は2028年9月期の期首から適用する予定で、影響額は評価中と記載されています。資金決済法に基づく供託(差入保証金32,000千円)も担保資産として注記されています。

事業等のリスクには何が書かれ、審査では何が問われやすいか?

Skyfallは事業等のリスクとして19項目を挙げ、それぞれに「発生可能性」「発生時期」「影響度」を示しています。影響度を「大」としているのは、プラットフォーマー(App Store、Google Play)のポリシー変更と、情報セキュリティの2項目です。主な項目を整理すると次のとおりです。

リスク項目 発生可能性 影響度 Ⅰの部の記載の要点
プラットフォーマーのポリシー変更 低 大 トラッキング制限や課金ポリシーの変更などの影響
情報セキュリティ 低 大 個人情報を取得。ISMS認証を取得し管理
主要需要先の動向と収益依存 低 中 ゲーム、映像・マンガ、金融関係の広告主への依存
海外での事業展開 中 中 カントリーリスク、配信先の法令への適合
競合 中 中 参入障壁が相対的に低く、価格競争の可能性
法的規制 低 中 景品表示法、電気通信事業法などの規制
特定の経営者への依存 低 中 代表取締役社長と取締役副社長への依存
人材確保・育成 中 中 事業拡大に必要な人材の確保
為替レートの変動 中 中 月次で社内換算レートを見直し、海外の売掛金の回収期間を短縮
資金調達 低 小 借入金利の上昇など

上場審査では、事業等のリスクに書いた内容と、実際の管理体制や事業計画の前提が一致しているかが確認されます。Skyfallのケースで審査上の論点になりやすいのは、たとえば次のような点です。

  • プラットフォーム依存と規制対応:アプリストアのポリシーや広告関連法規の変更に、どの部署がどう対応するか。
  • 海外取引の管理:海外の広告主からの売上が大きい中で、与信管理、為替の取扱い、契約条件の管理をどう行っているか。
  • 経営者への依存と後継体制:創業者2名に株式と経営が集中する中で、意思決定の牽制や後継体制をどう確保するか。
  • 広告の適格性審査:対処すべき課題に掲げる「広告主・メディア主の適格性を審査する体制」をどう運用しているか。
  • 新規事業の採算管理:セグメント損失が続いた「その他」事業について、投資規模の判断基準をどう持っているか。

事業等のリスクの書き方と審査の視点は、IPOの実質審査基準とはとIPO審査の「企業の継続性及び収益性」でも整理しています。事業に必要な許認可や法規制の確認についてはIPOで許認可はどこまで見られるかもご覧ください。

Skyfallのケースから上場準備会社が学べることは?

ここまでの内容をもとに、上場準備会社が自社の準備に生かせるポイントを7つにまとめます。

  1. コンパクトな取締役会でも「実質的に機能していること」を示す。取締役3名・年22回開催・全員出席という実績と、社外役員の連絡会議の運用は、規模より運用が問われることを示しています。
  2. 社外役員で専門性を補う。証券規制に詳しい弁護士、内部統制の実務家、公認会計士という組み合わせは、上場準備で手薄になりがちな領域を補う設計です。
  3. 兼務型の内部監査でも、自己監査を避ける仕組みを明文化する。担当者の所属部門を別の責任者が監査し、外部専門家で補う形は、人数の限られる会社の現実的な選択肢です。
  4. ストック・オプションは「段階行使」と「算定方法の説明」をセットで設計する。上場後の行使タイミングを分散させる設計と、各回の株式価値の算定根拠を残すことが大切です。
  5. 契約条件と実際の運用を早めに突合する。為替レートの取扱いのように、精算条件の運用が会計数値に直結する取引は、上場準備の早い段階で点検しましょう。
  6. 運転資金の構造を資金計画に織り込む。黒字でも売上債権の増加で営業キャッシュ・フローがマイナスになり得ます。借入枠と財務制限条項もあわせて管理します。
  7. 独自KPIは定義と変動要因まで開示できるようにする。非GAAP指標の定義、算定方法、変動の理由を一貫して説明できることが、成長可能性の説明の土台になります。
  • 取締役会の開催回数・出席状況・議題を記録し、実質的な運用を説明できるか
  • 社外役員の専門性(法務・内部統制・会計)が自社の弱い領域を補っているか
  • 内部監査の担当者が自分の所属部門を監査しない体制を規程で定めているか
  • ストック・オプション各回の株式価値の算定方法と根拠資料を保管しているか
  • 取引先との精算条件(為替レート・料率など)と実際の計算を突合しているか
  • 独自KPIの定義・計算方法・変動要因を文書化しているか

よくある質問

Q1. 取締役が3名だけでも上場できますか?

会社法上、取締役会設置会社の取締役は3名以上であればよく、上場審査でも人数そのものに下限があるわけではありません。Skyfallも取締役3名(うち社外1名)で上場しています。ただし、取締役会が経営の監督機能を実際に果たしていることを、開催回数、出席状況、審議の内容、社外役員の関与などで示す必要があります。

Q2. VCが入っていない会社は、資本政策で何に注意すべきですか?

VCがいない会社では、種類株式の転換や投資契約の解消といった手続きが不要になる一方、オーナーの持株比率が高くなりやすく、上場時の流通株式比率や株主数の基準をどう満たすかを公募・売出しの設計で考える必要があります。また、少数株主保護の観点から、関連当事者取引の管理や社外役員の関与がより重視されます。

Q3. 内部監査を兼務で行う場合、どのように体制を組めばよいですか?

担当者が自分の所属部門を監査しないよう、その部門は別の責任者が監査するクロス監査の形にするのが一般的です。Skyfallはコーポレート部長が内部監査を担当し、コーポレート部はアプリ事業部長が監査する体制で、補助業務を外部専門家に委託しています。誰が何を監査するかを規程と年度計画に明記しておきましょう。

Q4. ストック・オプションの行使価額が前回より下がっても問題ありませんか?

行使価額は付与時点の株式価値をもとに決めるため、事業計画の見直しや評価方法の変更によって前回より低くなることはあり得ます。大切なのは、各回の算定方法と前提を説明できることです。Skyfallでも第6回(970円)の行使価額は第5回(1,430円)より低く、算定方法としてDCF法と類似会社比較法が記載されています。

最初の一歩は「誰が何を監督・監査しているか」の一覧化から

Skyfallのケースが示しているのは、会社の規模や人数に合わせた体制でも、役割分担と運用の記録をきちんと整えれば、上場審査に耐えるガバナンスと内部管理体制をつくれるということです。まずは、自社の取締役会、監査役(会)、内部監査、各委員会について「誰が・何を・どの頻度で」監督・監査しているかを1枚の表に書き出してみてください。空白や重複が見えれば、それが上場準備で最初に手をつけるべき課題です。上場準備の全体の進め方はIPO準備 完全ガイド、ガバナンス体制の整え方は上場準備のガバナンスでも解説しています。

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SkyfallのⅠの部と比べる 上場準備ギャップ診断シート(Excel)

Skyfallの機関設計・内部監査・会計・資本政策の25論点を、自社の状況と並べて点検できます。申請期の期末日を入れると上場までの逆算表も作れます。

まとめ

株式会社Skyfallは、リワード型の成果報酬型広告プラットフォーム「SKYFLAG」を主力に、直前期の売上高約162億円、経常利益約5.5億円で東証グロース市場に上場しました。VCが株主におらず、創業者と副社長が株式の大半を持つ資本構成のもとで、役職員に6回にわたって新株予約権を付与し、段階的な行使条件を設けています。

ガバナンス面では、取締役3名(うち社外1名)と全員社外の監査役3名というコンパクトな構成に、任意の指名・報酬協議会やリスク・コンプライアンス委員会を組み合わせています。内部監査は兼務型で、自己監査を避けるクロス監査と外部専門家の活用で補っています。会計・開示では、検収完了時点での収益認識、のれんの減損、外形標準課税を見込んだ税効果、過年度の訂正に関する説明など、上場準備会社が自社の論点を考えるうえで参考になる記載が多く見られます。

自社の規模や事業に合った体制を早めに設計し、運用の実績を積み上げていくことが、上場準備を円滑に進める近道です。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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