社外取締役は何人必要か。上場準備の会社からよく受ける質問です。
答えが1つに定まらないのは、ルールが3つ重なっているからです。会社法の設置義務、東京証券取引所の独立役員の確保、そしてコーポレートガバナンス・コードの人数の水準。それぞれ求めているものが違います。
この記事では、3つのルールを分けて整理し、社外取締役の要件そのものも条文で確認します。
- 会社法第327条の2の対象会社と、条文に人数の明示がないこと
- 独立役員は社外取締役に限られず、社外監査役でもよいこと
- コード原則4-10がプライム市場で3分の1以上、その他の市場で2名以上としていること
- 過半数という数字は支配株主を有する会社についてのものであること
- 社外取締役の要件が会社法第2条第15号のイからホであること
- 10年という期間が2か所に出てくること
📌 3つのルールを分けて考える
3つは別のルールです。会社法は設置義務、東証の企業行動規範は独立役員の確保、コードは人数の水準。求められるものが違います。
まず会社法です。第327条の2が、監査役会設置会社(公開会社であり、かつ大会社であるものに限る)であって、金融商品取引法第24条第1項の規定により発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、社外取締役を置かなければならない、としています。
注意したいのは、条文に「1人以上」「1名以上」という数の明示がないことです。実務では最低1人を置くことを求める規定と読まれますが、条文を引用する形で人数を書くことはできません。
次に東京証券取引所です。有価証券上場規程の第436条の2が、企業行動規範の遵守すべき事項として、独立役員を1名以上確保することを求めています。外国会社等については第445条の4です。
ここで大事なのは、独立役員が社外取締役に限られないという点です。独立役員は、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役です。社外監査役でも要件を満たします。
そしてコーポレートガバナンス・コードです。こちらは法令でも規程でもなく、コンプライ・オア・エクスプレインの枠組みです。人数の水準はここに書かれています。
🔢 コードが求める人数
原則4-10には一般の上場会社の基準と、支配株主を有する会社の基準の両方が置かれています。過半数という数字だけを見て、すべての会社に必要だと思わないでください。
コーポレートガバナンス・コードの2026年7月版では、人数の定めは原則4-10「独立社外取締役の数の確保」にあります。
一般の上場会社について、プライム市場上場会社は独立社外取締役を少なくとも3分の1以上、その他の市場の上場会社は2名以上とされています。
そして支配株主を有する会社については、別の基準が置かれています。支配株主を有するプライム市場上場会社は、支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも過半数、支配株主を有するその他の市場の上場会社は3分の1以上です。
過半数という数字だけを見て、すべての上場会社に必要だと考えないでください。これは支配株主を有する会社についての定めです。支配株主がいる場合の論点は親会社がある状態で上場できるのかで扱っています。
原則4-8との違い
参考までに、原則4-8の見出しは「独立社外取締役の役割・責務」で、人数の定めは置かれていません。原則4-9が「独立社外取締役の質の確保」です。人数について引用するときは原則4-10です。
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📋 社外取締役の要件
イからホのいずれにも該当する必要があります。10年という期間が2か所に出てくる点に注意してください。
社外取締役の定義は会社法第2条第15号にあります。株式会社の取締役であって、イからホの要件のいずれにも該当するものです。
イが、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人でなく、かつ、その就任の前10年間これらであったことがないことです。
ロが、就任前10年内に当該株式会社またはその子会社の取締役、会計参与、監査役であったことがある者について、それらへの就任前10年間、業務執行取締役等であったことがないことです。
ハが親会社等またはその関係者でないこと、ニが親会社等の子会社等の業務執行取締役等でないこと、ホが取締役等または親会社等(自然人であるものに限る)の配偶者または二親等内の親族でないことです。
実務での落とし穴
いちばん引っかかりやすいのがイとロの10年です。以前この会社で働いていた人、あるいはグループ会社にいた人を社外取締役にしようとすると、10年の期間で引っかかることがあります。
また、ホの二親等内の親族という要件も見落とされます。創業家の会社では、候補者が親族に当たらないかを先に確認してください。
なお、社外取締役の要件を満たすことと、独立社外取締役として扱われることは別です。独立性の判断には、取引関係や報酬の受領といった要素も入ります。
🏢 上場準備での進め方
要件を満たすことと、実際に機能することは別です。取締役会で発言がない社外取締役では、審査でも投資家からも評価されません。
実務としては、まず自社が会社法第327条の2の対象になるかを確認します。監査役会設置会社であり、公開会社であり、大会社であり、有価証券報告書提出会社になるか。この4つです。
次に、上場する市場区分を決めます。プライム市場を目指すのか、グロース市場かで、コードが求める人数が変わります。プライム市場なら3分の1以上ですから、取締役が6人なら2人、9人なら3人ということになります。
人を探す時間を見込む
要件を満たし、かつ引き受けてくれる人を複数見つけるのは時間がかかります。責任限定契約を締結できる定款になっているかも先に確認してください。定款変更は株主総会の決議事項です。役員の責任の範囲は監査役の責任はどこまで及ぶかで扱っています。
そして、置いただけでは足りません。取締役会で発言があるか、必要な情報が事前に渡されているか、取締役会以外の場でも意見を述べる機会があるか。審査でも投資家からも、ここが見られます。
❓ よくある質問
A. 第327条の2に人数の明示はありません。「社外取締役を置かなければならない」という規定です。
A. 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ大会社であるものに限る)で、有価証券報告書を提出しなければならないものです。
A. いいえ。独立役員は社外取締役または社外監査役です。社外監査役でも要件を満たします。
A. 有価証券上場規程第436条の2により1名以上です。
A. コーポレートガバナンス・コード2026年7月版の原則4-10が、独立社外取締役を少なくとも3分の1以上としています。
A. 同じ原則4-10が、その他の市場の上場会社について2名以上としています。
A. それは支配株主を有するプライム市場上場会社についての定めです。すべての上場会社に求められているものではありません。
A. できません。会社法第2条第15号イは、就任の前10年間これらであったことがないことを求めています。
A. いとこは四親等です。ホの要件は二親等内の親族を除外するものなので、この点だけでは失格になりません。ただし他の要件と、独立性の判断は別に必要です。
A. 人数は入口です。取締役会での発言、事前の情報提供、実効性評価の状況といった運用が見られます。
📄 まとめ
社外取締役をめぐるルールは3つ重なっています。会社法第327条の2の設置義務、有価証券上場規程第436条の2の独立役員の確保、そしてコーポレートガバナンス・コード原則4-10の人数です。
会社法の条文に人数の明示はありません。独立役員は社外取締役に限られず、社外監査役でもかまいません。
コードの人数は、一般の上場会社についてプライム市場が3分の1以上、その他の市場が2名以上です。過半数という数字は支配株主を有するプライム市場上場会社についてのものです。
社外取締役の要件は会社法第2条第15号のイからホです。10年という期間が2か所に出てくるため、元従業員や元グループ会社役員を候補にする場合は先に確認してください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 会社法 第2条第15号、第327条の2
- コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)原則4-8、原則4-9、原則4-10
- 有価証券上場規程 第436条の2、第445条の4、東京証券取引所「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」
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