その工事は修繕費か、それとも資本的支出か。決算のたびに悩むところで、税務調査でも必ず見られます。
原則は法人税法施行令の第132条です。使用可能期間を延長させる部分と、価額を増加させる部分。この2つが資本的支出になります。ただし、この物差しだけで実際の工事を区分するのは難しいため、国税庁は金額による判定を示しています。
この記事では、原則の条文を確認したうえで、20万円・60万円・10パーセントという基準を使う順番と、調査で説明できる形の残し方を整理します。
- 資本的支出の定義が法人税法施行令第132条にあること
- 延長分と増加分の両方に当たるときは、合計ではなく、いずれか多い金額であること
- 20万円未満とおおむね3年周期を先に見ること
- そのあとで60万円未満と取得価額のおおむね10パーセント相当額を見ること
- 継続適用を条件に、30パーセントと10パーセントのいずれか少ない金額で分ける方法があること
- 金額基準よりさきに、工事の目的を説明できる資料が要ること
📌 結論 条文は2つの物差し、実務は順番
延長分と増加分を足すのではありません。両方に当たるときは、いずれか多い金額のほうが資本的支出になります。ここを合計と覚えていると、税務調査で説明が食い違います。
法人税法施行令の第132条は、内国法人が、修理、改良その他いずれの名義をもってするかを問わず、その有する固定資産について支出する金額で、次に掲げる金額に該当するものを損金の額に算入しない、と定めています。
第1号が使用可能期間を延長させる部分に対応する金額、第2号が支出の時における価額を増加させる部分に対応する金額です。
ここで見落とされやすいのが柱書のかっこ書きです。そのいずれにも該当する場合には、いずれか多い金額、とあります。延長分と増加分を足し合わせるのではありません。両方に当たる工事なら、多いほうの金額が資本的支出になります。
もっとも、実際の工事について延長分がいくらで増加分がいくらかを見積もるのは容易ではありません。そこで国税庁は、金額による判定を示しています。実務はこちらで決着します。
🔢 使う順番を間違えない
順番があります。20万円と3年周期がさきで、60万円と10パーセントがあとです。いきなり60万円から入ると、20万円未満で決着したはずのものまで説明が必要になります。
タックスアンサーNo.5402は、まず、一つの修理や改良などの金額が20万円未満の場合、またはおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかな修理、改良などである場合は、その支出した金額を修繕費とすることができる、としています。
ここで決着しなかったものについて、その支出した金額が60万円未満のとき、またはその支出した金額がその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額のおおむね10パーセント相当額以下であるときは修繕費とすることができる、と続きます。
順番があります。20万円と3年周期がさき、60万円と10パーセントがあとです。この順番で見ていけば、多くの工事は途中で決着します。
10パーセントの分母をどう取るか
取得価額のおおむね10パーセント相当額という基準は、分母の取り方で結論が変わります。建物全体の取得価額なのか、それとも資産計上している単位なのか。固定資産台帳の単位がそのまま分母になりますから、台帳の作りかたが判定に効いてきます。
台帳が「本社建物」の一行しかない会社と、建物と建物附属設備を分けている会社では、同じ工事でも結論が変わり得ます。分けることの意味は使用権資産と建物附属設備の切り分けでも触れています。
工事内容の確認から、判定の記録づくり、固定資産台帳の単位の見直しまで対応します。調査で聞かれたときに、そのまま出せる資料の形にして残します。IPO準備で過年度分をさかのぼって整理したいという場合もご相談ください。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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📊 金額基準を一覧で
10パーセントの分母は、その固定資産の前事業年度終了の時における取得価額です。建物全体なのか、その一室なのかで金額が変わります。単位の取り方をさきに決めてください。
いちばん下の行が、どちらとも決めきれないときの逃げ道です。継続して適用することを条件に、支出額の30パーセント相当額と、その固定資産の取得価額の10パーセント相当額のいずれか少ない金額を修繕費とし、残りを資本的支出とすることができます。
継続適用が条件ですから、その年だけ都合よく使うということはできません。使うと決めたら、以後も同じ扱いを続けることになります。
🔍 調査で見られるところ
金額基準に当てはめるまえに、その支出が何なのかを説明できることが先決です。見積書に工事一式としか書いていない案件は、そこで止まります。
金額基準は、その支出が何なのかがわかってはじめて当てはめられます。工事一式としか書いていない見積書では、20万円未満かどうかを議論する以前に、一つの修理の単位がどこまでなのかが決まりません。
実務でいちばん効くのは、着工前の写真です。壊れていたものを直したのか、それとも新しくしたのか。写真があれば一目でわかります。金額の話をする必要すらなくなることがあります。
逆に、用途変更をともなう工事や、間仕切りを増やす工事、能力を上げる設備更新は、金額が小さくても資本的支出と見られます。ここは金額基準の手前の話です。
過年度分に誤りが見つかったら
過去に修繕費で落としたものが資本的支出だった、という指摘を受けることがあります。この場合は修正申告になりますが、資産計上したうえで減価償却を通していくため、影響が複数年に及びます。手順は税務調査で過年度の売上計上漏れを指摘されたときの考え方と同じです。
❓ よくある質問
A. 法人税法施行令第132条です。使用可能期間を延長させる部分に対応する金額(第1号)と、価額を増加させる部分に対応する金額(第2号)が損金に算入されません。
A. 合計しません。柱書に、そのいずれにも該当する場合にはいずれか多い金額、とあります。
A. 20万円未満とおおむね3年周期が先です。そこで決着しなかったものについて60万円未満と取得価額のおおむね10パーセント相当額を見ます。
A. その固定資産の前事業年度終了の時における取得価額です。固定資産台帳の単位がそのまま分母になります。
A. 継続して適用することが条件です。その年だけ使うということはできません。
A. いいえ。用途変更や能力向上をともなう工事は、金額が小さくても資本的支出と見られます。金額基準は、その支出が何なのかを確かめたあとの話です。
A. 見積書と仕様書、着工前の写真、竣工図、工事ごとに分けた請求書の内訳です。工事の目的が読み取れる資料が中心になります。
A. 固定資産台帳の単位です。単位が粗いと10パーセント基準の分母が大きくなり、判定も減価償却も説明しにくくなります。早い段階で整えておくことをおすすめします。
📄 まとめ
資本的支出の定義は法人税法施行令第132条にあります。使用可能期間の延長分と、価額の増加分。両方に当たるときは、合計ではなく、いずれか多い金額です。
実務は金額基準で決着します。20万円未満とおおむね3年周期を先に見て、そのあとで60万円未満と取得価額のおおむね10パーセント相当額を見る。この順番です。
どちらとも決めきれないときは、継続適用を条件に、支出額の30パーセント相当額と取得価額の10パーセント相当額のいずれか少ない金額を修繕費とする方法があります。
そして、どの基準を使うにしても、その工事が何のためのものだったかを説明できる資料が要ります。着工前の写真と、内訳のある請求書。この2つを残しておくかどうかで、調査の長さが変わります。
📚 参考(公的な一次情報)
- 法人税法施行令 第132条(資本的支出)
- 法人税基本通達 7-8-1から7-8-6、7-8-10
- 国税庁タックスアンサー No.5402(修繕費とならないものの判定)
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