回収できない売掛金をいつ落とせるのか。決算のたびに残高だけが残っていく、という会社は少なくありません。
貸倒損失は、法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れ、形式上の貸倒れの3つに分かれます。どれに当たるかで、落とせる時期も、落とせる金額も変わります。全額なのか、備忘価額を残すのか。売掛債権に限られるのか、貸付金も入るのか。
この記事では、3つの区分の要件を確認したうえで、どの順番で当てはめるかを整理します。
- 貸倒損失が法律上・事実上・形式上の3つに分かれること
- 法律上の貸倒れには、法的整理・協議による切捨て・書面による債務免除の3つがあること
- 事実上の貸倒れは、その全額が回収できないことが明らかな場合であること
- 担保物があるときは処分したあとでなければ判断できないこと
- 形式上の貸倒れは売掛債権に限られ、備忘価額を残すこと
- 1年の起算日が、取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時であること
📌 結論 3つの区分で、時期も金額も変わる
法律上の貸倒れは、切り捨てられた事実によってその事業年度の損金になるという書き方です。事実上と形式上は、損金経理をすることができるという書き方になっています。同じ貸倒損失でも、この違いは実務に効きます。
貸倒損失の扱いは、国税庁のタックスアンサーNo.5320が3つに整理しています。法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れ、形式上の貸倒れです。
注目したいのは書き方の違いです。法律上の貸倒れについては、切り捨てられた金額はその事実が生じた事業年度の損金の額に算入される、とされています。これに対して事実上と形式上は、貸倒れとして損金経理をすることができる、という書き方です。
つまり、後の2つは帳簿でその処理をしてはじめて損金になります。決算で落とし忘れたものを、あとから更正の請求で拾うという話にはなりにくい、ということです。決算のタイミングで判断しておく必要があります。
⚖️ 法律上の貸倒れ
3つめの書面による債務免除は、こちらから動いて貸倒れを確定させる方法です。ただし、債務超過の状態が相当期間継続していることが前提になります。単に回収をあきらめただけでは足りません。
1つめは法的整理です。会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられた金額が対象になります。認可決定などの書面が根拠になりますから、判断に迷うところは多くありません。
2つめは、法令の規定による整理手続によらない債権者集会の協議決定、および行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で、合理的な基準によって切り捨てられた金額です。ここでのポイントは合理的な基準という部分です。債権者ごとに扱いがばらばらであれば、合理的とはいえません。
3つめが書面による債務免除です。債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明らかにした債務免除額が対象になります。
書面による債務免除を使うとき
この3つめは、こちらから動いて貸倒れを確定させられる、という点で実務的な意味があります。ただし前提が2つあります。債務超過の状態が相当期間継続していること。そして、その金銭債権の弁済を受けることができない状態であることです。
したがって、相手の決算書を入手して債務超過であることを確かめ、その状態が続いていることを記録に残したうえで、内容証明などの書面で免除の意思を伝える、という手順になります。単に督促をあきらめただけでは足りません。
どの区分で落とせるか、いつ落とせるか、何を残しておけばよいか。債権ごとに整理して、調査で説明できる形にします。滞留債権が積み上がっている会社の一括整理や、IPO準備での過年度分の洗い出しにも対応します。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
💧 事実上の貸倒れ
債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において、貸倒れとして損金経理をすることができます。
要件は、その全額が回収できないことが明らかである、というところにあります。半分は取れそうだ、という状態ではこの区分には乗りません。
担保物があるときは、その担保物を処分したあとでなければ判断できません。不動産に抵当権を設定している、保証金を預かっている、といった場合は、まず処分や充当を済ませることになります。
保証債務については、現実に履行したあとでなければ対象になりません。保証人として支払う可能性がある、という段階では貸倒れの話になりません。
何を根拠に明らかというか
相手の直近の決算書、登記情報、不動産の状況、他の債権者の動き。集められるものを集めて、なぜ全額回収できないといえるのかを文章にしておいてください。調査で聞かれるのはこの部分です。
連絡が取れないというだけでは弱いところがあります。所在不明であることを示す資料や、督促の履歴もあわせて残します。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
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📅 形式上の貸倒れ
対象は売掛債権です。貸付金はこの区分では落とせません。また、1年の起算日は取引停止の時と最後の弁済の時などのうち、いちばん遅い時です。取引停止の日から数えて終わりではありません。
形式上の貸倒れは2つあります。1つは、継続的な取引を行っていた債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したときです。
起算日に注意してください。取引停止の時と最後の弁済の時などのうち、最も遅い時です。取引を止めたあとに一部でも入金があれば、そこから1年を数えることになります。
もう1つは、同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がないときです。少額の売掛債権が広く散らばっている業種で使えます。督促した記録が要ります。
どちらも、落とせるのは売掛債権から備忘価額を控除した残額です。全額を落とし切ることはできません。そして対象は売掛債権に限られます。貸付金はこの区分では落とせません。
🔢 当てはめる順番
上から順に見ていきます。いちばん下の書面による債務免除は、動けば使える選択肢です。ただし債務超過の状態が相当期間継続していることが前提で、その裏づけが要ります。
実務では上から順に見ていきます。切り捨てられた事実があるならそこで決まります。なければ全額回収不能といえるかを検討し、それも難しければ、売掛債権について形式上の貸倒れを見る、という流れです。
どれにも当たらない場合に残るのが、書面による債務免除です。ここは待っていても状況が変わりませんから、動くかどうかの判断になります。
なお、過年度に落とすべきだったものが残っている場合、さかのぼって直すことになります。過去の期の数字を動かすときの手順は過年度の会計処理に誤りが見つかったときで通しで整理しています。
❓ よくある質問
A. 法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れ、形式上の貸倒れの3つです。
A. 事実上の貸倒れは、その全額が回収できないことが明らかになった場合とされています。一部については、この区分では扱われていません。
A. 担保物を処分したあとでなければ判断できません。まず処分や充当を済ませてください。
A. 使えません。形式上の貸倒れの対象は売掛債権です。
A. 取引停止の時と最後の弁済の時などのうち、最も遅い時からです。取引停止後に入金があれば、そこから数えます。
A. 形式上の貸倒れです。売掛債権から備忘価額を控除した残額を損金にします。
A. 現実に履行したあとでなければ対象になりません。
A. 事実上と形式上は、貸倒れとして損金経理をすることができる、という書き方です。帳簿でその処理をすることが前提になりますから、決算のタイミングで判断しておく必要があります。
📄 まとめ
貸倒損失は3つに分かれます。法律上の貸倒れは、法的整理による切捨て、債権者集会の協議決定などによる合理的な基準での切捨て、そして書面による債務免除です。
事実上の貸倒れは、その全額が回収できないことが明らかになった場合です。担保物があるときは処分したあと、保証債務は現実に履行したあとになります。
形式上の貸倒れは売掛債権に限られ、備忘価額を残します。1年の起算日は、取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時です。
そして、法律上の貸倒れは切り捨てられた事実によってその事業年度の損金になるのに対し、事実上と形式上は損金経理をすることができるという書き方です。決算で判断しておくことが要ります。
📚 参考(公的な一次情報)
- 法人税法 第22条
- 法人税基本通達 9-6-1から9-6-3
- 国税庁タックスアンサー No.5320(貸倒損失として処理できる場合)
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