監査役に会計の知識は必要なのか。上場準備の会社からよく聞かれます。
会社法に、会計の知識を持つ監査役を置かなければならない、という定めは見当たりません。あるのは会社法施行規則第121条第9号で、監査役等が財務及び会計に関する相当程度の知見を有しているものであるときは、その事実を事業報告に記載する、という定めです。
義務ではない。ただし、記載事項として置かれている以上、いない状態は説明を求められます。この記事では、条文の建て付けと、実務でどう組み立てるかを整理します。
- 財務及び会計に関する相当程度の知見が施行規則第121条第9号の記載事項であること
- 知見を有する監査役を置く義務が条文上見当たらないこと
- それでも実務では構成として問われること
- 監査役の権限が会社法第381条に定められていること
- 監査役会設置会社は監査役3人以上で半数以上が社外監査役であること
- 人を探す時間を見込んで早く動く必要があること
📌 結論 記載事項であって、設置義務ではない
施行規則第121条第9号は、知見を有しているときはその事実を事業報告に記載する、という定め方です。知見を有する者を置かなければならない、とは書かれていません。
会社法施行規則の第121条は、事業報告の記載事項を定めた条文です。その第9号が、会社役員のうち監査役、監査等委員又は監査委員が財務及び会計に関する相当程度の知見を有しているものであるときは、その事実、としています。
読み方は素直です。有しているときは、その事実を書く。有していなければならない、とは書かれていません。
ただし、書く欄があるということは、書けない会社があるということでもあります。事業報告を読む人には、知見を有する監査役がいないということが伝わります。
🔍 実務では何が問われるか
会社法に人数の義務はありませんが、記載事項として置かれている以上、いないという状態は説明を求められます。
監査役の権限は会社法第381条にあります。第1項が、監査役は、取締役の職務の執行を監査する、としています。第2項は、いつでも、取締役および会計参与ならびに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、または監査役設置会社の業務および財産の状況の調査をすることができる、としています。
この権限を実際に使うためには、何を見ればよいかがわかっている必要があります。計算書類の数字を見て、どこがおかしいのかに気づけるかどうか。ここが会計の知識の意味です。
上場審査でも、監査役会の構成は見られます。全員が業務畑の出身で、会計の話になると会計監査人に任せきり、という状態は評価されません。
会計監査人との関係
会計監査人がいるから監査役は会計を知らなくてよい、ということにはなりません。会計監査人の監査の方法および結果の相当性を判断するのは監査役の側です。判断するには、内容がわかる必要があります。
三様監査の役割分担については監査役の責任はどこまで及ぶかもあわせてご覧ください。
機関設計の選択、監査役の構成、候補者の要件整理、監査役監査基準と監査計画の作成、そして事業報告の記載まで対応します。会計の分かる社外監査役をどう確保するかという相談も、実際に多くいただきます。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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👤 どういう人が候補になるか
肩書だけではなく、何をしてきたかが説明できることが大切です。事業報告に事実として記載する以上、根拠が要ります。
財務及び会計に関する相当程度の知見という表現について、会社法や施行規則に定義は見当たりませんでした。ですから、何年の経験があれば該当する、という基準を条文から示すことはできません。
実務では、公認会計士や税理士としての経験、上場会社の経理財務部門での責任者経験、金融機関での財務分析の経験などが挙げられることが多くあります。
大切なのは、事業報告にその事実として記載する以上、根拠を説明できることです。経歴のどの部分が財務および会計に関する知見にあたるのかを、社内で整理しておいてください。
🏢 IPO準備での組み立て
人を探すところにいちばん時間がかかります。会計の分かる社外監査役は、どの会社も欲しがるからです。早く動いてください。
監査役会設置会社を選ぶ場合、会社法第335条第3項により、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません。過半数ではなく半数以上です。
この3人の中に、会計の分かる人を入れることになります。社外監査役として会計士や税理士を招く例が多いのは、この構成の要請と、知見の記載の両方を満たせるからです。
そして、人を探すのに時間がかかります。会計の分かる社外監査役は、どの上場準備会社も欲しがります。N-3期のうちから動いてください。
常勤をどうするかについては常勤監査役は必要かで扱っています。
❓ よくある質問
A. 会社法にその義務を定めた規定は見当たりませんでした。施行規則第121条第9号は、有しているときはその事実を記載する、という定めです。
A. 条文に定義は見当たりませんでした。年数などの基準を条文から示すことはできません。
A. 事業報告です。会社法施行規則第121条が事業報告の記載事項を定めています。
A. 会計監査人の監査の方法および結果の相当性を判断するのは監査役の側です。内容がわかる必要があります。
A. 会社法第381条です。取締役の職務の執行を監査し、事業の報告を求め、業務および財産の状況を調査できます。
A. 3人以上で、そのうち半数以上が社外監査役です(第335条第3項)。
A. 第381条第3項により、職務を行うため必要があるときは子会社に対して事業の報告を求め、または業務および財産の状況を調査できます。子会社は正当な理由があるときは拒めます(第4項)。
A. N-3期のうちからです。会計の分かる社外監査役は取り合いになります。
📄 まとめ
会社法施行規則第121条第9号は、監査役等が財務及び会計に関する相当程度の知見を有しているときは、その事実を事業報告に記載する、としています。置かなければならない、という定めではありません。
ただし記載事項として置かれている以上、いないという状態は説明を求められます。上場審査でも監査役会の構成は見られます。
監査役の権限は会社法第381条にあります。この権限を実際に使うには、計算書類を読んでおかしいところに気づける必要があります。
監査役会設置会社なら監査役3人以上で半数以上が社外監査役です。会計の分かる人を含めた構成を作るには時間がかかりますから、早く動いてください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 会社法 第335条第3項、第381条
- 会社法施行規則 第121条第9号、第10号
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