上場前に種類株式は普通株式へ戻すのか。実務ではほぼそうしますが、その手続は定款に何が書かれているかで変わります。
会社が一定の事由を条件として取得できる定めがあれば、会社の側から動かせます。取得条項付株式です(会社法第2条第19号、第108条第1項第6号)。
株主が請求できる定めしかなければ、株主が請求するのを待つか、別の方法を採ることになります。取得請求権付株式です(第2条第18号、第108条第1項第5号)。
- 種類株式の9類型と号番号
- 公開会社が発行できない類型があること
- 取得請求権付と取得条項付の違い
- 定款変更に要る決議
- 種類株主総会が要る場面
- 議決権種類株式の上場について確認できること
📌 結論 まず定款の号を確認する
柱書のただし書が、指名委員会等設置会社および公開会社は第9号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない、としています。
会社法第108条第1項が、種類株式として定めることができる事項を9つ列挙しています。剰余金の配当、残余財産の分配、議決権を行使できる事項、譲渡制限、取得請求権、取得条項、全部取得条項、種類株主総会の決議を必要とするもの、そして種類株主総会での取締役または監査役の選任です。
柱書のただし書が、指名委員会等設置会社および公開会社は第9号の定めがある種類の株式を発行することができない、としています。上場すれば公開会社ですから、第9号の定めは上場前に整理する必要があります。
投資契約でよく使われるのは、第1号の優先配当、第2号の残余財産の優先分配、第5号または第6号の転換、そして第8号の拒否権です。
🧭 会社から動かせるかどうか
上場前に普通株式へ戻すときは、この2つのどちらが定款に入っているかで手続が変わります。会社の側から動かせるのは取得条項付です。
第2条第18号が取得請求権付株式を、第19号が取得条項付株式を定義しています。前者は株主が請求するもの、後者は会社が一定の事由を条件として取得するものです。
全部の株式の内容として定める場合は第107条第1項第2号と第3号、種類株式として定める場合は第108条第1項第5号と第6号です。第107条第2項第2号と第3号に、定款に記載すべき事項が定められています。
上場を条件とする取得条項が入っていれば、上場承認を条件に会社が取得して普通株式を交付できます。この定めがないと、投資家との個別の合意に頼ることになります。
定款の号ごとの棚卸し、投資契約との整合の確認、取得条項の有無の点検、種類株主総会の要否の判定、そして上場申請書類での説明資料まで通してお受けします。次のラウンドの前に種類株式を設計する段階からご一緒することもできます。登記の実行は司法書士と連携して進めます。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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🧾 種類株主総会を忘れない
株主総会の特別決議だけでは足りません。種類株主に損害を及ぼすおそれがあれば、種類株主総会の決議まで要ります。
定款の変更は第466条により株主総会の決議によります。第309条第2項第11号が、第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会を掲げており、定款変更は特別決議です。
そのうえで第322条第1項が、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、種類株主総会の決議がなければその効力を生じない、としています。第1項第1号が定款変更を対象としており、株式の種類の追加、株式の内容の変更、発行可能株式総数の増加が挙げられています。
第2項に、種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定められる場合があります。第4項は、種類株主全員の同意が必要となる場合を定めています。定款を先に読んでください。
📅 議決権種類株式のまま上場できるか
定款の条文と投資契約の条文がずれていることがあります。両方を並べて確認してください。
東京証券取引所は、議決権種類株式の上場制度について検討を行っています。平成20年1月16日の議決権種類株式の上場制度に関する報告書がその成果です。
報告書では、極めて小さい出資割合で会社を支配するような状況が生じた場合に、議決権種類株式のスキームが解消できるような方策が挙げられています。
上場規程上の条番号までは今回確認できていません。議決権種類株式のまま上場することを検討するなら、主幹事と取引所に事前に相談してください。
資本政策の順番については資本政策はなぜやり直せないかにまとめています。
❓ よくある質問
A. 会社法第108条第1項が9つの事項を列挙しています。組み合わせて定めます。
A. 第9号(種類株主総会での取締役・監査役の選任)です。柱書ただし書に定めがあります。
A. 取得条項付株式(第108条第1項第6号)であれば、一定の事由を条件として会社が取得できます。
A. 前者は株主が請求するもの、後者は会社が取得するものです(第2条第18号・第19号)。
A. 第466条により株主総会。第309条第2項第11号により特別決議です。
A. 種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときです(第322条第1項)。第2項の定款の定めがあれば不要になる場合があります。
A. 第322条第4項に定めがあります。定款を確認してください。
A. 東証が制度の検討を行っています。上場規程の条番号は今回確認できていません。主幹事にご相談ください。
📄 まとめ
種類株式の内容は第108条第1項の9類型で決まります。公開会社は第9号を発行できません。
会社から動かせるのは取得条項付株式です。取得請求権付では会社の側から取得できません。
定款変更は特別決議、加えて種類株主総会が要る場合があります(第322条第1項)。
投資契約と定款は別の文書です。両方を並べて、どちらに何が書かれているかを先に確認してください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 会社法(e-Gov法令検索) 第2条、第107条、第108条、第309条、第322条、第466条
- 議決権種類株式の上場制度(日本取引所グループ)
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