グループ法人税制の寄附金と譲渡損益|法人による完全支配関係の限定

グループ法人税制で、寄附金と譲渡損益では条文の書き方が違います。

法人税法第37条第2項は、完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)と書いています。第25条の2の受贈益も同じです。

ところが第61条の11第1項の譲渡損益調整資産には、この限定がありません。完全支配関係がある普通法人又は協同組合等、と書かれているだけです。

この記事でわかること

  • 法人による完全支配関係という限定の有無
  • 個人が親である兄弟会社では寄附金の特例が働かないこと
  • 譲渡損益調整資産の1,000万円の判定
  • 帳簿価額で見ること
  • 完全子法人株式等の配当
  • 中小特例が使えなくなること

📌 結論 限定の有無が結論を分ける

図1 寄附金と譲渡損益で条文の書き方が違う制度関係の限定寄附金の全額損金不算入法人税法第37条第2項完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)受贈益の益金不算入法人税法第25条の2第1項同上譲渡損益調整資産の譲渡損益の繰延法人税法第61条の11第1項完全支配関係がある普通法人又は協同組合等(法人によるという限定はない)

寄附金と受贈益は、法人による完全支配関係に限られます。個人が親である兄弟会社間では働きません。譲渡損益にはこの限定がありません。

第37条第2項は、完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額を損金の額に算入しない、としています。括弧書きが、法人による完全支配関係に限る、です。

第25条の2第1項も同じ限定で、受贈益を益金の額に算入しないとしています。

つまり、社長個人が2社の株式を全部持っている兄弟会社の間では、この特例は働きません。寄附した側は損金にならず、受けた側は益金になります。両方で課税されます。

一方、第61条の11第1項にはこの限定がありません。個人が親である兄弟会社の間でも、譲渡損益は繰り延べられます。

🧭 1,000万円は帳簿価額で見る

図2 譲渡損益調整資産の範囲論点内容対象資産固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く)、有価証券、金銭債権および繰延資産で政令で定めるもの以外のもの除外(金額基準)その譲渡の直前の帳簿価額が千万円に満たない資産(法人税法施行令第122条の12第1項第3号)譲渡先当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等効果譲渡損益を繰り延べる

1,000万円の判定は帳簿価額です。時価ではありません。そして直前の帳簿価額で見ます。

第61条の11第1項の対象は、固定資産、土地、有価証券、金銭債権および繰延資産で政令で定めるもの以外のもの、です。

その政令が法人税法施行令第122条の12です。第1項第3号が、その譲渡の直前の帳簿価額が千万円に満たない資産を除いています。

1,000万円の判定は帳簿価額です。時価ではありません。そして、譲渡の直前の帳簿価額で見ます。減価償却が進んだ資産は、取得価額が大きくても対象から外れることがあります。

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🧾 完全支配関係は有利にも不利にも働く

図3 完全支配関係で変わるその他の取扱い制度内容受取配当等の益金不算入法人税法第23条第5項完全子法人株式等は、配当等の額の全額が益金不算入中小特例の不適用法人税法第66条第5項第2号大法人(資本金5億円以上)による完全支配関係がある普通法人は軽減税率の対象外同上の引用先法人税法第52条第1項第1号、第57条第11項第1号貸倒引当金と繰越欠損金の控除限度額の特例からも除かれる

完全支配関係は有利にも不利にも働きます。配当は全額益金不算入になる一方、中小特例は使えなくなります。

第23条第5項が完全子法人株式等を定義しています。配当等の額の計算期間を通じて内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人の株式等として政令で定めるもの、です。この配当は全額が益金不算入になります。

一方、第66条第5項第2号により、大法人との間に当該大法人による完全支配関係がある普通法人は、軽減税率が使えません。大法人はイで、資本金の額または出資金の額が五億円以上である法人とされています。

この除外は貸倒引当金(第52条第1項第1号)と繰越欠損金の控除限度額の特例(第57条第11項第1号)にも引用されています。親会社の資本金が5億円以上なら、子会社の資本金が1億円以下でも中小法人向けの特例は使えません。

📅 繰り延べた損益をどう管理するか

図4 グループ内で資産を動かす前に完全支配関係が法人によるものか、個人によるものかを確認する動かす資産の直前の帳簿価額が1,000万円以上かを確認する1,000万円以上なら、譲渡損益が繰り延べられることを織り込む無償で動かすなら、寄附金と受贈益の適用があるかを確認する法人による完全支配関係でなければ、寄附金が損金にならず受贈益が益金になることを確認する繰り延べた損益がいつ実現するかを管理表に残す

繰り延べた損益は、いつか戻ってきます。管理表がないまま数年が経つと、誰も追えなくなります。

繰り延べた譲渡損益は、資産が譲受法人から出ていくときなどに戻ってきます。数年後に実現します。

問題は、そのときに誰も覚えていないことです。譲渡した資産、繰り延べた金額、実現の事由。この3つを管理表にして、決算のたびに確認する仕組みが要ります。

グループ通算制度を採用している場合の注記はグループ通算制度で注記は何が変わるかにまとめています。

❓ よくある質問

Q. 社長個人が全株を持つ兄弟会社間の寄附はどうなりますか。

A. 第37条第2項の括弧書きは、法人による完全支配関係に限る、としています。この特例は働きません。

Q. 譲渡損益の繰延べにも同じ限定がありますか。

A. ありません。第61条の11第1項には、法人による、という限定はありません。

Q. 1,000万円は時価ですか。

A. 帳簿価額です。譲渡の直前の帳簿価額が千万円に満たない資産が除かれます。

Q. どんな資産が対象ですか。

A. 固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産です(政令で定めるものを除く)。

Q. 完全子法人株式等の配当は。

A. 第23条第5項の完全子法人株式等に該当すれば、全額が益金不算入です。

Q. 親会社が大きいと不利になりますか。

A. 資本金5億円以上の大法人による完全支配関係があると、軽減税率、貸倒引当金、欠損金の控除限度額の特例が使えません。

Q. 繰り延べた損益はいつ戻りますか。

A. 資産が譲受法人から出ていくときなどです。管理表で追ってください。

Q. グループ通算制度とは別ですか。

A. 別です。グループ法人税制は完全支配関係があれば自動的に適用されます。通算は承認が要ります。

📄 まとめ

寄附金と受贈益は、法人による完全支配関係に限られます。個人が親の兄弟会社では働きません。

譲渡損益調整資産にはこの限定がありません。1,000万円は帳簿価額で判定します。

完全支配関係は配当で有利に、中小特例で不利に働きます。両方を見てください。

繰り延べた損益の管理表を今日作ってください。動かした年に作らないと、後からは追えません。

📚 参考(公的な一次情報)

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