適格現物出資の要件
適格現物出資は、法人税法第2条第12号の14が定める現物出資です。被現物出資法人の株式だけが交付されることを前提に、完全支配関係型(イ)、支配関係型(ロ)、共同事業型(ハ)の3類型があり、支配関係型は主要な資産及び負債の移転、従業者のおおむね80%以上の従事見込み、事業の継続見込みの3要件が必要です。適格なら資産は帳簿価額で移り(法人税法第62条の4)、譲渡損益は出ません。
- 完全支配関係型・支配関係型とも、現物出資後に関係が続く見込みが要る(施行令第4条の3第13項・第14項)
- 共同事業型は施行令第4条の3第15項の6要件(事業関連性、規模または特定役員、資産負債の移転、従業者、事業継続、株式の継続保有)
- 外国法人へ国内資産等を移す現物出資は、原則として適格にならない
2026年10月12日更新
現物出資が適格になるかどうか。法人税法第2条第12号の14が、合併と同じイロハの3類型で定めています。
ただし、ロの支配関係型の要件が3つあります。主要な資産及び負債が被現物出資法人に移転していること、従業者のおおむね百分の八十以上が業務に従事することが見込まれていること、そして現物出資事業が引き続き行われることが見込まれていることです。
合併のロが2つなのに対し、主要な資産及び負債の移転が加わります。ここが現物出資の特徴です。
- 適格現物出資の3類型と要件
- 支配関係型の要件が3つあること
- 外国法人への移転が原則として除かれること
- 恒久的施設を通じる場合の例外
- 現物出資と現物分配の号番号の違い
- 適格現物分配が完全支配関係に限られること
この記事の見出し
📌 結論 支配関係型の要件は3つ
合併と同じイロハの構造です。ただし、ロの要件は3つ。合併のロが2つなのに対し、主要な資産及び負債の移転が加わります。
柱書は、現物出資法人に被現物出資法人の株式のみが交付されるものに限る、としています。株式以外の資産が交付されると適格になりません。
イが完全支配関係型で、条文上の追加の要件はありません。ただし、政令で定める関係として、現物出資後に完全支配関係が継続することの見込みが求められます(施行令第4条の3第13項)。ロが支配関係型で3つ、ハが共同事業型で政令の要件です。
ロの(1)は、主要な資産及び負債が当該被現物出資法人に移転していること。これは合併にはない要件です。合併では会社が丸ごと移るので、当然に満たされるからです。
現物出資では、何を出資するかを選べます。だからこそ、主要な資産及び負債が移っているかが問われます。
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🧭 外国法人への移転は原則として非適格
外国法人へ国内資産を移す現物出資は、原則として適格になりません。恒久的施設を通じて行う事業に係るものとなるなら例外です。
柱書の括弧書きが長く、外国法人への移転を除いています。国内不動産等、国内資産等、無形資産等の3つです。
国内不動産等は、国内にある不動産その他の政令で定める資産。国内資産等は、国内事業所等を通じて行う事業に係る資産または負債。無形資産等は、内国法人の工業所有権、著作権その他の政令で定める資産です。
ただし、これらの全部が当該移転により当該被現物出資法人である外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係る資産または負債となるものとして政令で定めるものは、除外から外れます。日本に恒久的施設が残るなら適格になり得る、という構造です。
さらに外国法人株式については、発行済株式等の総数または総額の百分の二十五以上の株式を除く旨の括弧書きがあります。
何を出資するか、主要な資産及び負債が移転しているといえるか、従業者の引継ぎをどう説明するか。現物出資は自由度が高いぶん、判定が難しくなります。事業の切り出しの範囲の設計、適格要件の当てはめ、そして時価評価が必要になる場合の影響額の試算まで通してお受けします。実行前の段階からご相談ください。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
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🧾 現物出資と現物分配は別のもの
適格現物分配は完全支配関係がある内国法人のみに限られます。現物出資には支配関係型も共同事業型もあります。
現物出資は、資産を出して株式を受け取る取引です。現物分配は、法人がその株主等に金銭以外の資産を交付する取引です。方向が逆です。
号番号も別です。現物出資法人が第2条第12号の4、被現物出資法人が第12号の5。現物分配法人が第12号の5の2、被現物分配法人が第12号の5の3です。
そして適格現物分配は第12号の15で、資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る)のみであるもの、とされています。支配関係型や共同事業型はありません。
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📅 何を出資するか
現物出資は、事業ではなく資産だけを移すこともできます。その場合、ロの主要な資産及び負債の移転をどう判定するかが論点になります。
現物出資の実務では、まず移転先が国内法人かどうかを確認します。外国法人なら柱書の除外を確認します。
次に関係の強さです。完全支配関係があればイで、主要な資産及び負債の移転や従業者の要件はありません。ただし、現物出資後も完全支配関係が継続する見込みが必要です。
支配関係型なら、主要な資産及び負債が移転しているかを判定します。事業に必要な資産を全部移すのか、一部を残すのか。ここの設計が適格性を左右します。
繰越欠損金の取扱いは欠損金の繰越控除とはもあわせてご覧ください。
🧮 類型ごとの要件一覧(施行令第4条の3)
法人税法第2条第12号の14のイとロは、関係の中身を「政令で定める関係」に委ねています。委任先が法人税法施行令第4条の3で、第13項が完全支配関係型、第14項が支配関係型、第15項が共同事業型の要件です。3類型の要件を並べると次のとおりです。
| 要件 | 完全支配関係型(イ) | 支配関係型(ロ) | 共同事業型(ハ) |
|---|---|---|---|
| 交付されるもの | 被現物出資法人の株式のみ(柱書) | 同左 | 同左 |
| 関係の継続見込み | 完全支配関係の継続(令第4条の3第13項) | 支配関係の継続(同第14項) | 問われない(イ・ロに当たらない現物出資が対象) |
| 主要な資産及び負債の移転 | 不要 | 必要(法第2条第12号の14ロ(1)) | 必要(令第4条の3第15項第3号) |
| 従業者のおおむね80%以上の従事見込み | 不要 | 必要(同ロ(2)) | 必要(同第4号) |
| 現物出資事業の継続見込み | 不要 | 必要(同ロ(3)) | 必要(同第5号) |
| 事業の相互関連性 | 不要 | 不要 | 必要(同第1号) |
| 規模がおおむね5倍以内、または特定役員の就任見込み | 不要 | 不要 | 必要(同第2号) |
| 交付株式の全部の継続保有見込み | - | - | 必要(同第6号) |
図1でイの追加の要件を「なし」としているのは、法人税法の条文に書かれた要件のことです。施行令第4条の3第13項が定める関係には、現物出資後に完全支配関係が継続することの見込みが含まれます。現物出資の直後に被現物出資法人の株式を外部へ売る予定があれば、イには当たりません。
単独新設現物出資(1社だけで新しい会社を設立する現物出資)では、現物出資後に現物出資法人による完全支配関係があるかどうかで判定し、その関係の継続が見込まれていることを求めています。また、現物出資後に適格合併(完全支配関係型では適格株式分配を含む)が見込まれている場合は、その直前まで関係が継続すれば足ります。
見込みは現物出資の時点で判定します。株式の保有方針、人員配置、事業計画を、実行前の日付で書面に残してください。
💴 適格と非適格で課税はどう変わるか(計算例)
適格現物出資に当たると、現物出資法人は移転した資産及び負債を、現物出資の直前の帳簿価額で譲渡したものとして所得を計算します(法人税法第62条の4第1項)。譲渡損益は出ません。受け取る株式の取得価額は、移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を引いた額です(施行令第119条第1項第7号)。被現物出資法人の側も、受け入れた資産及び負債の取得価額は帳簿価額に相当する金額になります(施行令第123条の5)。
非適格の場合は、資産を時価で譲渡したものとして譲渡損益を計上します。受け取る株式の取得価額は、給付した資産の価額です(施行令第119条第1項第2号)。
架空の数字で比べます。A社が、帳簿価額5,000万円、時価9,000万円の土地を、子会社B社に現物出資します(負債の移転はありません)。ケース1はB社がA社の100%子会社で、完全支配関係が続く見込みがある場合。ケース2はA社の持分が70%で、土地だけを出資し事業の移転がないため、ロの要件を満たさない場合です。
| 項目 | ケース1 適格(イ) | ケース2 非適格 |
|---|---|---|
| A社の譲渡損益 | 0円(帳簿価額で譲渡) | 譲渡益4,000万円(9,000万円-5,000万円) |
| A社が取得するB社株式の取得価額 | 5,000万円 | 9,000万円 |
| B社での土地の取得価額 | 5,000万円 | 9,000万円 |
| A社の税務上の仕訳のイメージ | B社株式 5,000万円/土地 5,000万円 | B社株式 9,000万円/土地 5,000万円、譲渡益 4,000万円 |
ケース2の仕訳は、借方9,000万円に対し貸方が5,000万円+4,000万円=9,000万円で一致します。同じ土地でも、関係と要件の当てはめ次第で4,000万円の課税所得が生じるかどうかが分かれます。
なお、100%グループ内で非適格になった場合でも、土地などの譲渡損益調整資産を移したときは、法人税法第61条の11により譲渡損益が繰り延べられます。完全支配関係があるのに非適格になる例としては、現物出資後の完全支配関係の継続が見込まれていない場合や、柱書で除かれる国外への移転に当たる場合があります。
共同事業型(ハ)の6要件をどう読むか
共同事業型は、完全支配関係も支配関係もない相手への現物出資を想定しています。施行令第4条の3第15項の6要件は、すべて満たす必要があります。第2号の規模要件は、売上金額、従業者の数などの規模の割合がおおむね5倍を超えないことで、満たさない場合は、現物出資法人の役員等のいずれかと被現物出資法人の特定役員のいずれかが、現物出資後に被現物出資法人の特定役員となることが見込まれていれば足ります。第6号は、交付を受けた被現物出資法人の株式の全部を、現物出資法人が継続して保有することの見込みです。一部でも売る予定があれば当たりません。
❓ よくある質問
A. 法人税法第2条第12号の14です。
A. 3つです。主要な資産及び負債の移転、従業者のおおむね80パーセント、事業継続の見込みです。
A. 合併のロは2つです。現物出資には主要な資産及び負債の移転が加わります。
A. 柱書が国内不動産等、国内資産等、無形資産等の移転を除いています。恒久的施設を通じる場合の例外があります。
A. 方向が逆です。現物出資は資産を出して株式を受け取り、現物分配は株主等に資産を交付します。
A. 完全支配関係がある内国法人のみが資産の移転を受ける場合に限られます(第12号の15)。
A. 完全支配関係があり、その継続が見込まれていればイに当たります。支配関係型なら主要な資産及び負債の移転が問われます。
A. 人員配置の計画、事業計画、取締役会の決議です。実行前に日付の入った文書で残してください。
A. いいえ。被現物出資法人の株式のみが交付されること(柱書)に加え、現物出資後も完全支配関係が継続することが見込まれている必要があります(施行令第4条の3第13項)。外国法人への国内資産等の移転も柱書で除かれます。
A. 現物出資法人は移した資産を時価で譲渡したものとして譲渡損益を計上し、受け取る株式の取得価額も時価ベースになります。100%グループ内で譲渡損益調整資産を移した場合は、法人税法第61条の11により譲渡損益が繰り延べられます。
📄 まとめ
適格現物出資は第2条第12号の14。イロハの3類型で、ロの要件は3つです。
合併にはない、主要な資産及び負債の移転が加わります。何を出資するかの設計が効きます。
外国法人への移転は原則として除かれます。恒久的施設を通じる場合の例外があります。
出資する資産の範囲を先に決めてください。あとから足りないと分かっても、やり直せません。
📚 参考(公的な一次情報)
- 法人税法(e-Gov法令検索) 第2条第12号の4、第12号の5、第12号の5の2、第12号の5の3、第12号の14、第12号の15、第61条の11、第62条の4
- 法人税法施行令(e-Gov法令検索) 第4条の3(第13項から第15項)、第119条第1項第2号・第7号、第123条の5
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