未上場株式の株価算定はどの方法を使うか|DCF・類似会社・純資産

未上場株式の株価はいくらか。答えは、何のための価額かによって変わります。

日本公認会計士協会の企業価値評価ガイドラインは、評価アプローチをインカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの3つに分類しています。DCF法はインカム・アプローチの中のフリー・キャッシュ・フロー法です。

一方、税務では財産評価基本通達の体系があります。ストックオプションの権利行使価額については、措置法通達29の2-1が原則と特例を定めています。物差しが並立しています。

この記事でわかること

  • 3つのアプローチとそれぞれの評価法
  • 税務での会社規模ごとの評価方式
  • 中会社の併用割合の数値
  • 権利行使価額の算定に使う通達
  • 所得税基本通達59-6の位置づけ
  • 場面ごとに物差しが違うこと

📌 結論 3つのアプローチが土台

図1 3つのアプローチアプローチ属する評価法インカム・アプローチフリー・キャッシュ・フロー法、調整現在価値法、残余利益法、配当還元法、利益還元法(収益還元法)などマーケット・アプローチ市場株価法、類似上場会社法、類似取引法、取引事例法ネットアセット・アプローチ簿価純資産法、時価純資産法(修正簿価純資産法)など

日本公認会計士協会 経営研究調査会研究報告第32号 企業価値評価ガイドラインの分類です。DCF法はインカム・アプローチのフリー・キャッシュ・フロー法にあたります。

日本公認会計士協会の経営研究調査会研究報告第32号、企業価値評価ガイドラインです。平成19年5月16日公表、平成25年7月3日改正で、本文が公開されています。

インカム・アプローチは将来の収益やキャッシュ・フローから価値を導きます。マーケット・アプローチは市場や類似会社の数値と比べます。ネットアセット・アプローチは純資産から導きます。

どれか1つが正しいというものではありません。会社の状況と目的に応じて選び、選んだ理由を説明できることが求められます。

🧭 税務は通達の体系で決まる

図2 税務での取引相場のない株式の評価株主会社規模評価方式同族株主等大会社類似業種比準方式同族株主等中会社類似業種比準方式と純資産価額方式の併用同族株主等小会社純資産価額方式同族株主以外の株主等配当還元方式

根拠は財産評価基本通達168、178から180、185、188、188-2、189から189-6です。中会社の併用割合は大が0.90、中が0.75、小が0.60です。

取引相場のない株式の評価は、まず株主が同族株主等かどうかで分かれます。同族株主等であれば原則的評価方式、それ以外の株主等であれば特例的評価方式である配当還元方式です。

原則的評価方式は会社規模で分かれます。大会社が類似業種比準方式、小会社が純資産価額方式、中会社が両者の併用です。中会社の併用割合は、大が0.90、中が0.75、小が0.60です。

会社規模の判定要素のひとつが従業員数で、70人以上であれば大会社になります。平成18年の改正で100人以上から変更されています。

比準要素数1の会社や株式等保有特定会社などの特定の評価会社は、純資産価額方式が原則になります。

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🧾 権利行使価額はどう決めるか

図3 目的によって使う物差しが変わる場面使われる考え方第三者割当の払込金額当事者間の交渉。有利発行に当たらないことを説明できる根拠が要るストックオプションの権利行使価額措置法通達29の2-1。原則は所得税基本通達23から35共-9の例、特例として財産評価基本通達178から189-7の例個人が法人へ株式を譲渡した場所得税基本通達59-6相続・贈与財産評価基本通達M&Aや投資判断企業価値評価ガイドラインの3アプローチ

同じ会社の株でも、場面によって使う物差しが違います。ひとつの評価額がすべてに通用する、ということはありません。

令和5年7月に新設された措置法通達29の2-1が、租税特別措置法第29条の2第1項第3号の1株当たりの価額について定めています。原則は所得税基本通達23から35共-9の例により算定します。

特例として、取引相場のない株式については財産評価基本通達178から189-7までの例により算定することもできます。ただし条件があります。大会社は類似業種比準方式、中会社は併用方式、小会社は純資産価額方式によること、中心的な同族株主に該当する場合も常に小会社として扱うこと、土地と上場有価証券は契約時の価額で評価すること、そして評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないことです。

個人が法人へ株式を譲渡した場合の価額は所得税基本通達59-6です。こちらも財産評価基本通達178から189-7までの例により算定するとしたうえで、譲渡または贈与の直前の議決権の数により判定すること、中心的な同族株主に当たるときは常に小会社として扱うこと、評価差額に対する法人税額等相当額を控除しないことなどを定めています。

📅 算定書をいつ作るか

図4 算定の進め方何のための価額かを決める(税務か、取引か、会計か)使う物差しを選び、選んだ理由を書く前提となる事業計画または純資産の数値をそろえる算定し、感応度(前提が変わると幾らになるか)を示す算定書として残し、意思決定の時期と紐づける

後から作った算定書は、審査でまず作成時期を聞かれます。動かす前に作ってください。

算定書は、取引を実行する前に作ってください。後から作ると、審査でまず作成時期を聞かれます。

そして前提の感応度を示してください。事業計画が1年ずれたら幾らになるか、割引率が1パーセント変わったら幾らになるか。単一の数値だけを示す算定書は、説得力を持ちません。

上場前の株式の移動については上場前に株式を動かすとどうなるかにまとめています。

❓ よくある質問

Q. DCF法はどのアプローチですか。

A. インカム・アプローチのフリー・キャッシュ・フロー法にあたります。

Q. 税務ではどの方式を使いますか。

A. 同族株主等かどうかと会社規模で決まります。大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社は併用です。

Q. 中会社の併用割合はいくつですか。

A. 大が0.90、中が0.75、小が0.60です。

Q. 従業員が何人なら大会社ですか。

A. 70人以上です。平成18年の改正で100人以上から変更されています。

Q. 権利行使価額はどう算定しますか。

A. 措置法通達29の2-1です。原則は所得税基本通達23から35共-9の例、特例として財産評価基本通達の例によることもできます。

Q. 特例の条件は何ですか。

A. 中心的な同族株主でも常に小会社として扱う、土地と上場有価証券は契約時の価額、評価差額に対する法人税額等相当額は控除しない、などです。

Q. 個人から法人へ譲渡する場合は。

A. 所得税基本通達59-6です。譲渡または贈与の直前の議決権の数で判定します。

Q. 1つの算定額をすべてに使えますか。

A. 使えません。目的ごとに使う物差しが違います。

📄 まとめ

企業価値評価ガイドラインは3つのアプローチを示しています。DCFはインカム・アプローチの一種です。

税務は財産評価基本通達の体系で、株主区分と会社規模で方式が決まります。

権利行使価額は措置法通達29の2-1、個人から法人への譲渡は所得税基本通達59-6です。

何のための価額かを先に決めてください。物差しを選んだ理由が書けていない算定書は、審査で必ず戻ってきます。

📚 参考(公的な一次情報)

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