監査法人はいつまでに決めれば間に合うか。直前々期の期首まで、という説明が広く出回っています。
ただ、有価証券上場規程にそう書いた条文はありません。規程が定めているのは、最近2年間の財務諸表等が監査を受けていること、という結果の要件です(第205条第7号)。
そしてもう一点。2期とも無限定適正意見が必要、という説明も正確ではありません。第205条第6号は、直前々期にあたる部分について、除外事項を付した限定付適正意見でもよいとしています。
- 監査の形式要件がどの条番号にあるか
- 直前々期は限定付適正意見でも形式要件を満たすこと
- 直前期は無限定適正意見が必要であること
- 登録上場会社等監査人という要件
- 品質管理レビューを受けた者に限られること
- 期首までに契約という言い方が規程の文言ではないこと
📌 結論 条文が求めているのは契約時期ではなく状態
有価証券上場規程の条番号です。市場ごとに条が分かれています。監査に関する形式要件は、スタンダードなら第205条第7号です。
スタンダード市場の内国会社であれば、有価証券上場規程第205条第7号です。最近2年間に終了する各事業年度及び各連結会計年度の財務諸表等について、登録上場会社等監査人による法第193条の2の規定に準ずる監査を受けていること、と書かれています。
ここに、いつまでに監査契約を結ばなければならない、という定めはありません。求められているのは、申請の時点で2年分の監査を受け終わっている状態です。
そして第205条の柱書は、第207条に定めるスタンダード市場の上場審査は次の各号に適合するものを対象として行う、としています。形式要件を満たさない会社は、そもそも実質審査の対象になりません。
結果として、直前々期の期首の時点で会計処理と証憑が監査に耐える状態になっていなければ間に合いません。実務でいう期首までにという言い方は、この結果要件から逆算した目安であって、条文の文言ではないということです。
🧭 直前々期は限定付適正意見でも通る
2期とも無限定適正意見が必要、という説明を見かけますが、規程はそう書いていません。直前々期は限定付適正意見でも形式要件は満たします。
第205条第6号は、監査報告書に記載されるべき意見を2段階に書き分けています。
b は、最近2年間のうち最近1年間を除く部分について、無限定適正意見または除外事項を付した限定付適正意見が記載されていること、としています。c は、最近1年間について無限定適正意見としています。
つまり直前々期は限定付適正意見でも形式要件は満たします。直前期は無限定適正意見でなければなりません。2期とも無限定でなければ上場できない、という説明は条文と合っていません。
ただし、これは形式要件の話です。限定の理由が内部管理体制の不備に由来するなら、第207条の実質審査で別に問われます。形式要件を満たすことと、審査を通ることは別だとお考えください。
直前々期の期首から監査に耐える状態を作るには、勘定科目の設計、証憑の保存ルール、月次決算の早期化、そして会計方針の文書化が要ります。監査法人が入る前に何を直しておくべきかを、実際の帳簿を見ながら洗い出します。ショートレビューで指摘された項目の改善もお引き受けします。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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🧾 監査法人ならどこでもよいわけではない
監査法人ならどこでもよい、ではありません。登録と品質管理レビューの2つが要件です。
第205条第7号の号見出しは、登録上場会社等監査人による監査です。金融商品取引法第193条の2第1項も、特定発行者が上場会社等である場合には、公認会計士法第34条の34の2の登録を受けた公認会計士または監査法人に限る、としています。
さらに同号の括弧書きが、日本公認会計士協会が行う品質管理レビューを受けた者に限る、当取引所が適当でないと認める者を除く、と重ねています。
中小規模の監査法人と契約するときは、この登録の有無を先に確認してください。日本公認会計士協会が上場会社等監査人名簿を公表しています。
📅 期首から申請までの順番
規程には監査契約をいつまでに結べという条文はありません。あるのは、2年間の監査を受けた状態であることという結果の要件です。
Ⅰの部に載せる財務諸表の作り方は、有価証券上場規程施行規則第204条第1項第4号aにあります。企業内容等の開示に関する内閣府令第8条第2項第1号に規定する第2号の4様式の第二部から第四部までに準じて作成する、という書き方です。
掲載される期数と、準ずる監査を受ける期数は別です。Ⅰの部に3期分の数値が並んでいても、監査の対象は最近2年間だけ、ということが起こります。
内部統制の評価範囲の決め方は内部統制の評価範囲はどう決めるかにまとめています。
❓ よくある質問
A. 規程に契約時期の定めはありません。最近2年間の財務諸表等が監査を受けている状態であることが要件です(第205条第7号)。逆算すると、直前々期の期首より前に決まっている必要があります。
A. いいえ。直前々期にあたる部分は除外事項を付した限定付適正意見でも形式要件は満たします(第205条第6号b)。直前期は無限定適正意見が必要です(同号c)。
A. 登録上場会社等監査人であり、かつ日本公認会計士協会の品質管理レビューを受けた者に限られます。
A. 最近1年間の中間財務諸表等について、中間監査報告書または期中レビュー報告書が求められます。
A. 変わります。形式要件は第211条、上場審査は第213条です。グロース市場は第217条と第219条です。
A. 通りません。第205条は第207条の審査の対象となるための入口です。実質審査は別に行われます。
A. まず月次決算の早期化と証憑の整備を先に進めてください。受嘱の判断は、帳簿の状態と管理部門の人員で決まります。
A. 金融商品取引法第193条の2の規定に準じて行う監査という意味です。上場前は同条の適用がないため、準ずるという言い方になっています。
📄 まとめ
規程が定めているのは監査契約の時期ではなく、最近2年間の監査を受けた状態です。
直前々期は限定付適正意見でも形式要件は満たします。直前期は無限定適正意見が必要です。
監査人は登録上場会社等監査人で、かつ品質管理レビューを受けた者に限られます。
いま監査法人が決まっていないなら、契約先を探す前に、直前々期の期首から監査に耐える帳簿を作れるかを確かめてください。受嘱されない理由の多くは、監査法人側ではなく会社側の状態にあります。
📚 参考(公的な一次情報)
- 上場審査基準(日本取引所グループ) 形式要件と実質審査基準
- 新規上場申請に係る提出書類等(内国株券・東京証券取引所) 提出書類の一覧と根拠条番号
- 金融商品取引法(e-Gov法令検索) 第193条の2第1項
- 上場会社等監査人登録制度(日本公認会計士協会) 登録の仕組み
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