内部統制の評価範囲はどう決めるか|3分の2は削除されていない

内部統制の評価範囲について、おおむね3分の2という例示が削除されたと聞いた。本当か。

削除されていません。2023年4月7日に公表された改訂で行われたのは、例示の削除ではなく、機械的に適用すべきでないという留意の追加です。

そして適用は2024年4月1日以後開始する事業年度における評価及び監査からです。公表日と適用開始を混同した資料が出回っていますので、確かめてください。

この記事でわかること

  • おおむね3分の2程度の例示が残っていること
  • 機械的に適用すべきでないという留意が加わったこと
  • 金額的及び質的影響の両方を考慮すること
  • 相当程度下回ることがあり得るとされていること
  • 決定の方法と根拠を記録すること
  • 2024年4月1日以後開始事業年度から適用されること

📌 結論 削除ではなく留意の追加

図1 2023年4月の改訂で変わったことよくある誤解実際おおむね3分の2という例示が削除された削除されていません。実施基準に残っています数値基準がなくなり質的判断だけになった金額的及び質的影響の重要性を考慮する、という書き方です。両方です3分の2は下限である結果として相当程度下回ることがあり得るとされています2023年4月1日以後開始事業年度から適2024年4月1日以後開始する事業年度の評価及び監査から適用です

改訂の中身は、例示の削除ではなく、機械的に適用すべきでないという留意の追加です。ここを取り違えている資料が非常に多い論点です。

改訂後の実施基準にも、連結ベースの売上高等の一定割合をおおむね3分の2程度とする考え方は残っています。総資産や税引前利益等の一定割合とする考え方も示されています。

変わったのは、一定割合をどう考えるかについて一律に示すことは困難であるという前置きが置かれ、おおむね3分の2程度については機械的に適用すべきでないことに留意する、という文が加わったことです。

そして結果として、売上高等の一定割合を相当程度下回ることがあり得るとされました。3分の2が下限だという読み方は誤りです。

🧭 決める順番

図2 評価範囲を決める順番全社的な内部統制を評価する重要な事業拠点を選定する(売上高等の重要性による)金額的及び質的影響と発生可能性を考慮する評価対象の業務プロセスを分析する重要性の大きい個別の業務プロセスを追加する決定の方法と根拠を記録する

最後の記録が改訂で強調された点です。どう決めたのかを説明できる状態にしてください。

全社的な内部統制の評価が先です。ここが良好であれば、業務プロセスの評価範囲を絞る根拠になります。

重要な事業拠点の選定では、財務報告に対する金額的及び質的影響と、その発生可能性を考慮します。事業拠点は地理的な概念にとらわれず、本社、子会社、支社、支店のほか事業部等として識別されることがあるとされています。

最後に記録です。改訂後の基準は、評価の範囲に関する決定方法及び根拠等を適切に記録しなければならないとしています。ここが実務でいちばん増えた作業です。

評価範囲の設計と説明資料づくりをお引き受けします

指標の選定、割合の考え方、質的リスクの拾い方、決定の根拠の記録、そして内部統制報告書の記載まで通してお受けします。監査人との事前のすり合わせを前提に、説明できる形に整えます。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。

お問い合わせはこちら内部監査と三様監査の話を読む料金の目安を見る

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら

📐 指標の選び方

図3 実施基準が示す指標の例指標考え方連結ベースの売上高等の一定割おおむね3分の2程度とする考え方が示されています総資産、税引前利益等の一定割こうした指標による考え方も示されています留意おおむね3分の2程度については機械的に適用すべきでないことに留意するとされています結果事業又は業務の特性等により、売上高等の一定割合を相当程度下回ることがあり得るとされています

一律に示すことは困難である、という前置きが置かれています。自社の事業の特性から説明できるかどうかが問われます。

売上高を使うのが一般的ですが、それだけではありません。総資産や税引前利益等の一定割合という考え方も示されています。

大事なのは、なぜその指標を選んだのかを自社の事業の特性から説明できることです。売上高が薄くても資産や損益への影響が大きい拠点があるなら、そこは拾うことになります。

逆に、機械的に3分の2まで積み上げただけの説明では足りなくなりました。改訂の趣旨はここにあります。

📝 報告書への記載

図4 内部統制報告書に書くこと項目内容利用した指標重要な事業拠点の選定において何を使ったのか一定割合その指標のどの割合で線を引いたのか判断事由なぜその指標とその割合にしたのか

意見書は、決定の判断事由を含めて記載することが適切であるとしています。数字だけを書いても説明になりません。

意見書は、重要な事業拠点の選定において利用した指標とその一定割合等の決定の判断事由等について記載することが適切であるとしています。

指標と割合の数字だけを並べても、判断事由が書かれていなければ説明になりません。なぜその指標なのか、なぜその割合なのかを短くても書いてください。

内部統制報告書の記載と、開示すべき重要な不備の判断は別の話です。不備の側は誤謬の訂正と内部統制報告制度で扱っています。

❓ よくある質問

Q. おおむね3分の2は削除されましたか。

A. されていません。改訂後の実施基準にも残っています。

Q. では何が変わったのですか。

A. 一律に示すことは困難であるという前置きと、機械的に適用すべきでないことに留意するという文が加わりました。

Q. 3分の2を下回ってもよいですか。

A. 結果として相当程度下回ることがあり得るとされています。

Q. 指標は売上高だけですか。

A. 総資産、税引前利益等の一定割合とする考え方も示されています。

Q. 質的な要素はどう扱いますか。

A. 金額的及び質的影響の重要性を考慮するとされています。どちらか一方ではありません。

Q. 記録は必要ですか。

A. 評価の範囲に関する決定方法及び根拠等を適切に記録しなければならないとされています。

Q. いつから適用されますか。

A. 2024年4月1日以後開始する事業年度における評価及び監査からです。公表日の2023年4月7日と混同しないでください。

Q. 報告書には何を書きますか。

A. 利用した指標、その一定割合、そして決定の判断事由です。

📄 まとめ

2023年4月の改訂は、おおむね3分の2という例示の削除ではありません。機械的に適用すべきでないという留意の追加です。

指標は売上高に限られません。総資産や税引前利益等の考え方も示されています。金額的影響と質的影響の両方を見ます。

そして決定の方法と根拠を記録します。内部統制報告書には、指標と一定割合に加えて判断事由を書くことが適切であるとされています。

いまの評価範囲を機械的な積み上げのまま残すのか、質的リスクから見直すのか。監査人と話す前に、社内で先に決めておいてください。

📚 参考(公的な一次情報)

IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406