金型の取引は新リース会計基準でどうなるか|リースの識別から考える

支給先に置いている金型は、新しいリース会計基準でリースになるのか。

まず筋を2つに分けてください。金型の使用を支配する権利を対価と交換に渡しているのか、それとも金型そのものを対価と交換に譲渡しているのか。前者はリースの識別、後者は有償支給取引の話です。

リースの識別は企業会計基準第34号の第25項から第27項です。有償支給取引は企業会計基準適用指針第30号の第104項です。別の基準になります。

この記事でわかること

  • 金型の取引が2つの筋に分かれること
  • リースの識別が第34号 第25項からであること
  • 第34号の適用が2027年4月1日以後開始年度からであること
  • 早期適用が2025年4月1日以後開始年度から可能であること
  • 有償支給は適用指針第30号 第104項であること
  • 確かめるべき4点

📌 結論 まず筋を分ける

図1 金型を渡したときに考える2本の筋自社の金型を支給先に置いて使わせている筋1 その金型の使用を支配する権利を渡しているか(リースの識別)筋2 金型そのものを対価と交換に譲渡しているか(有償支給取引)どちらの話なのかで、適用する基準が変わる

金型の取引はひとくくりにできません。無償で貸しているのか、有償で譲渡しているのかで別の基準に入ります。

金型の取引と一口に言っても、実務ではいくつもの形があります。自社の金型を無償で支給先に置く、有償で譲渡して加工後に買い戻す、支給先が作った金型の代金を負担する。それぞれ論点が違います。

ですから、まずどの形なのかを契約書と実態で確かめます。ここを飛ばして基準を当てはめると、議論がかみ合いません。

そのうえで、リースの識別に進むのか、有償支給取引として整理するのかを決めます。

🔍 リースの識別

図2 リースの識別論点内容リースの定義の考え方特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、その契約はリースを含む条文の位置企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第25項から第27項適用時期2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から(第58項早期適用2025年4月1日以後開始する年度の期首から適用できます

新しいリース会計基準では、契約の名前ではなく中身でリースかどうかを判断します。金型が論点になるのはこのためです。

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2024年9月13日に公表され、2025年4月23日に改正されています。第25項から第27項がリースの識別を定めています。

考え方は、特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転するかどうかです。契約の名前がリース契約かどうかではありません。

適用は第58項により2027年4月1日以後開始する年度の期首からで、2025年4月1日以後開始する年度から早期適用できます。いま契約を見直す時期にあたります。

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📐 どこを見るか

図3 どこを見るか確認事項考え方資産が特定されているかどの金型かが契約や実態で特定されているか。入替えの権利が誰にあるか対価があるか金型の使用に対して対価が支払われているか。加工賃に含まれていないか期間があるか一定期間にわたる使用かどうか支配しているのは誰か使用から生じる経済的利益を得ているのは誰か。使用方法を決めているのは誰か

自社の金型を支給先に無償で置いている場合、対価がないためリースにあたらないと整理できることが多いですが、加工賃の中に実質的に含まれていないかは確かめてください。

資産が特定されているかどうかは、どの金型かが決まっているか、そして入替えの権利が誰にあるかで見ます。

対価があるかどうかも重要です。自社の金型を支給先に無償で置いているだけであれば、対価と交換にという要件を満たさないと整理できることが多くなります。ただし、加工賃の中に金型の使用料が実質的に含まれていないかは確かめてください。

そして支配です。使用から生じる経済的利益を得ているのは誰か、使用方法を決めているのは誰か。金型の場合、自社製品専用であれば経済的利益は自社に帰属していることが多くなります。考え方は使用を支配する権利とは何かにまとめています。

🔁 有償支給の筋

図4 有償支給の筋に入る場合場面扱い出典金型を対価と交換に譲渡し、加工後に買い戻す有償支給取引として整理します企業会計基準適用指針第30号 第104項買戻義務を負っていない支給品の消滅を認識する。収益は認識しない同 第104項買戻義務を負っている連結では消滅も認識しない。個別では認識することができる同 第104項

金型を有償で渡している会社では、この筋に入ります。売上を立てていないかを先に確かめてください。

金型を対価と交換に譲渡している場合は、有償支給取引の筋に入ります。企業会計基準適用指針第30号の第104項です。

この場合、買戻義務の有無にかかわらず、支給品の譲渡に係る収益は認識しません。売上を立てている会社は処理を見直すことになります。

詳しくは収益認識の注記は何を書くかとあわせて、契約の実態から整理してください。

❓ よくある質問

Q. 金型は必ずリースになりますか。

A. なりません。特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転しているかどうかで判断します。

Q. 無償で置いている場合は。

A. 対価と交換にという要件を満たさないと整理できることが多くなります。ただし加工賃に含まれていないかは確かめてください。

Q. リースの識別はどの項ですか。

A. 企業会計基準第34号 第25項から第27項です。

Q. 新リース会計基準はいつから適用ですか。

A. 2027年4月1日以後開始する年度の期首からです(第58項)。

Q. 早期適用はできますか。

A. 2025年4月1日以後開始する年度の期首から適用できます。

Q. 金型を有償で渡している場合は。

A. 有償支給取引として整理します。適用指針第30号 第104項です。

Q. その場合、売上は立ちますか。

A. 立ちません。買戻義務の有無にかかわらず、譲渡に係る収益は認識しません。

Q. 何から始めますか。

A. 契約書の棚卸です。取引先ごとに形が違うことが多いので、一覧にしてください。

📄 まとめ

金型の取引は、リースの識別の筋と有償支給取引の筋に分かれます。まずどちらの話かを決めてください。

リースの識別は企業会計基準第34号の第25項から第27項です。適用は2027年4月1日以後開始年度から、早期適用は2025年4月1日以後開始年度からです。

有償支給取引は適用指針第30号の第104項です。譲渡に係る収益は認識しません。

契約書の棚卸をいま始めるか、適用直前に始めるか。取引先が多い会社ほど、いま始めたほうが確実です。

📚 参考(公的な一次情報)

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