業績予想の修正の開示基準
新たに算出した予想値または決算値を、直近に公表した予想値で割った数値が、売上高で1.1以上または0.9以下、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益で1.3以上または0.7以下になれば、直ちに開示が必要です(有価証券上場規程第405条第1項・第3項、同施行規則第407条)。4項目のうち1つでも当たれば開示します。
- 直近の予想値がなければ前期の実績値と比べる。予想値が0の場合や、利益の正負が逆転する場合も開示が要る
- 連結を作っていない会社は同じ比率を個別の数値で使う。連結を作っている会社の個別業績では、経常利益・当期純利益に「差額÷前期末の純資産額と資本金の額のいずれか少なくない金額」が0.05以上・0.025以上という基準が加わる
- 配当予想の修正には軽微基準がない
2026年10月12日更新
業績予想と実績がずれたとき、どこから開示が要るのか。数値は公表されています。
売上高は10パーセント、営業利益・経常利益・純利益は30パーセントです。正確には、新たに算出した予想値または決算値を直近の予想値で除した数値が、売上高で1.1以上または0.9以下、各利益で1.3以上または0.7以下となる場合です。
そして配当予想の修正には軽微基準がありません。期中に当期の予想値を修正したなら、幅にかかわらず開示が必要です。
- 売上高10パーセント、利益30パーセントの根拠
- 比率をどちらで割るのか
- 配当予想には軽微基準がないこと
- 修正の開示と差異の開示が別であること
- 判定を月次に組み込む方法
- 上場申請期の下方修正の扱い
この記事の見出し
📌 結論 売上高は10パーセント、利益は30パーセント
売上高は10パーセント、各利益は30パーセントです。連結財務諸表を作成していない会社は個別で読み替えます。根拠は上場規程第405条第1項・第3項と施行規則第407条各号です。
根拠は有価証券上場規程第405条第1項および第3項、そして同施行規則第407条各号です。東京証券取引所の上場会社向けの案内にこの条番号が示されています。
計算は、新たに算出した予想値または決算値を、直近に公表した予想値で除します。分母が直近の予想値です。実績で割るのではありません。
連結財務諸表を作成している会社は連結の数値で判定します。作成していない会社は個別の数値に読み替えます。比率の基準は同じです。なお、連結財務諸表を作成している会社は、これとは別に個別業績の修正も対象になり、個別の経常利益と当期純利益には純資産額を使った金額の基準が加わります(後述)。
そして純利益は、親会社株主に帰属する当期純利益です。非支配株主に帰属する部分を含む数値ではありません。
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🧭 配当予想には軽微基準がない
配当予想には軽微基準がありません。期中に当期の予想値を修正したなら、金額の大小にかかわらず開示が必要です(上場規程第405条第2項・第3項)。
業績予想については、売上高が0.9超1.1未満、各利益が0.7超1.3未満であれば軽微基準に当たり、開示は不要です。
一方、配当予想の修正には軽微基準がありません。東京証券取引所の説明に、本項目に軽微基準はありません、と明記されています。根拠は上場規程第405条第2項および第3項です。
1円の増配でも開示が要る、ということです。業績予想と同じ感覚で軽微基準を探すと、開示漏れになります。
上場後は、予想を出すこと自体より、ずれたときに遅滞なく出せるかが問われます。月次の着地見込みの作り方、判定の様式、開示文案のひな型、そして取締役会での決議の残し方まで設計します。上場準備の段階から、予算と実績の差異を説明できる形に整えます。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。支援の内容と進め方はIPO支援業務のページにまとめています。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
🧾 修正の開示と差異の開示は別
決算短信を出せば差異の開示も済む、ということにはなりません。乖離が基準に当たるなら、差異についての開示が別に要ります。
期中に予想値そのものを見直したときは、業績予想の修正の開示です。決算が確定して、その決算値が直近の予想値と乖離していたときは、予想値と決算値との差異の開示です。
判定に使う数値基準は同じです。ただ、出す場面が違います。決算短信を出したから差異の開示も兼ねている、とはなりません。
決算短信の訂正が必要になったときの手順は決算短信を訂正するときの手順にまとめています。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
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📅 上場申請期の下方修正
決算作業が終わってから気づく、が最も多い遅延です。判定は月次の中に組み込んでください。
上場申請をした事業年度に業績予想を下方修正した場合、審査でどう扱われるか。東京証券取引所の公表資料には、これを明示した記載を確認できませんでした。
ただ、グロース市場の実質審査基準には事業計画の合理性が置かれています(規程第219条第1項第4号)。予想を外したこと自体より、外した理由を説明できるか、見込みの作り方が変わったかが問われます。
上場前から、月次の着地見込みと年度予想の関係を文書で残してください。上場後に必要になる判定の仕組みは、そのまま準備期間の予実管理から作れます。
🧮 計算例:修正の開示が要るかを判定する
架空の数字で判定します。直近に公表した連結業績予想が、売上高100億円、営業利益8億円、経常利益8.2億円、親会社株主に帰属する当期純利益5億円でした。第3四半期の月次決算から着地見込みを作り直したところ、次の数字になりました。
| 科目 | 直近の予想値 | 新たな予想値 | 比率(新÷直近) | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 92億円 | 0.92 | 0.9超なので当たらない |
| 営業利益 | 8億円 | 5.4億円 | 0.675 | 0.7以下なので当たる |
| 経常利益 | 8.2億円 | 5.9億円 | 約0.72(0.7195…) | 0.7超なので当たらない |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 5億円 | 3.6億円 | 0.72 | 0.7超なので当たらない |
営業利益だけが基準に当たります。4項目のうち1つでも当たれば開示が必要なので、この会社は業績予想の修正を直ちに開示します。経常利益のように境界に近い科目は、端数処理の前の数字で比率を計算してください。
比率の計算で迷いやすい場面は、東京証券取引所の説明で次のように整理されています。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 直近の予想値を公表していない | 前期(前連結会計年度)の実績値と比べる |
| 直近の予想値または前期の実績値が0 | 新たな予想値または決算値を算出した時点で開示が必要 |
| 利益の正負が逆転する(赤字予想が黒字になる等) | 比率が0以下となり、0.7以下に当たるため開示が必要 |
| 直近の予想がレンジで、新しい予想もレンジ | 上限同士、下限同士で割り、どちらかが軽微基準の範囲外なら開示 |
| 直近の予想がレンジで、新しい予想が特定値または決算値 | その値を直近の上限と下限のそれぞれで割り、どちらかが範囲外なら開示 |
📊 連結作成会社の個別業績の基準(純資産額基準が加わる)
連結財務諸表を作成している会社(取引規制府令第49条第2項に規定する特定上場会社等を除く)は、連結の業績予想とは別に、個別業績の売上高、経常利益、当期純利益の修正も開示の対象です。個別の営業利益は上場規程上の対象外です(任意に個別の営業利益予想を開示している場合は、その予想との差異の開示が必要です)。
連結財務諸表を作成していない会社は、この節の基準ではなく、前の節の連結の基準を個別の数値に読み替えて使います(営業利益も含めて比率だけで判定します)。
連結作成会社の個別の経常利益と当期純利益には、比率の基準に加えて金額の基準がかかり、両方に当たったときに開示が必要です。
| 科目(連結作成会社の個別) | 比率の基準 | あわせて満たすと開示 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1.1以上または0.9以下 | なし(比率だけで判定) |
| 経常利益 | 1.3以上または0.7以下 | 差額÷前期末の純資産額と資本金の額のいずれか少なくない金額が0.05以上 |
| 当期純利益 | 1.3以上または0.7以下 | 同じ分母で0.025以上 |
「いずれか少なくない金額」は、純資産額と資本金の額のうち大きいほうです。差額は、新たな数値と直近の予想値のうち大きいほうから小さいほうを引いた額です。
架空の数字で当てはめます。前期末の個別の純資産額が40億円、資本金が5億円なら、分母は40億円です。個別の経常利益の予想3億円が2億円になると、比率は約0.67で0.7以下ですが、差額1億円÷40億円=0.025で0.05に届きません。当期純利益の予想2億円が1.3億円になる場合も、比率は0.65ですが、差額0.7億円÷40億円=0.0175で0.025に届きません。どちらも個別では開示不要です。純資産が厚い会社ほど、個別の利益は比率だけでは開示に至らないことになります。
レンジ予想と正負逆転の計算例
直近の売上高予想を90億円〜110億円のレンジで公表していた会社が、新たな予想を99億円の特定値にしたとします。99億円÷110億円=0.9で、0.9以下に当たります(99億円÷90億円=1.1で、1.1以上にも当たります)。新しい予想値がレンジの中に収まっていても、開示が必要になる例です。
直近の営業利益予想が1億円の赤字(-1億円)で、新たな予想が0.5億円の黒字になった場合は、0.5億円÷(-1億円)=-0.5です。0以下なので0.7以下に当たり、開示が必要です。
❓ よくある質問
A. 直近の予想値で除した数値が1.1以上または0.9以下のときです。10パーセントです。
A. 1.3以上または0.7以下です。30パーセントです。営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益が対象です。
A. 直近に公表した予想値です。新たな予想値または決算値を、直近の予想値で除します。
A. ありません。期中に当期の予想値を修正したなら開示が必要です。
A. 個別の数値に読み替えて判定します。売上高は1.1以上または0.9以下、営業利益・経常利益・当期純利益は1.3以上または0.7以下で、連結と同じ比率です。純資産額を使った金額の基準は、連結財務諸表を作成している会社の個別業績にかかるものです。
A. 済みません。予想値と決算値との差異の開示は別に判定します。
A. 有価証券上場規程第405条第1項から第3項と、同施行規則第407条各号です。
A. そう定めた公表資料は確認できません。理由の説明と、見込みの作り方が問われます。
A. 要ります。利益の正負が逆転すると比率が0以下になり、0.7以下の基準に当たります。直近の予想値が0の場合も、新たな予想値を算出した時点で開示が必要です。
A. 新しい予想もレンジなら上限同士・下限同士で、特定値や決算値なら直近の上限と下限のそれぞれで割り、どちらかが軽微基準の範囲外なら開示が必要です。
📄 まとめ
売上高10パーセント、各利益30パーセント。分母は直近に公表した予想値です。
配当予想の修正には軽微基準がありません。幅にかかわらず開示です。
予想の修正と、予想値と決算値との差異は別の開示です。
上場してから仕組みを作るのでは間に合いません。準備期間の予実管理を、そのまま判定の様式に育ててください。
このテーマの全体像は上場準備のガバナンス|機関設計と開示体制の決め方にまとめています。
📚 参考(公的な一次情報)
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