有償支給取引は売上に計上できるか|買戻義務があってもなくても収益は認識しない

有償支給で支給先に原材料を渡したとき、売上に計上できるのか。

できません。企業会計基準適用指針第30号の第104項は、買戻義務を負っている場合も負っていない場合も、支給品の譲渡に係る収益は認識しない、としています。

分かれるのは、支給品の消滅を認識するかどうかです。買戻義務を負っていなければ消滅を認識し、負っていれば認識しません。ただし個別財務諸表では、負っている場合でも譲渡時に消滅を認識することができるとされています。

この記事でわかること

  • どちらの場合も収益を認識しないこと
  • 分かれるのは支給品の消滅の認識であること
  • 個別での容認があること
  • 容認が個別に限られること
  • 根拠が適用指針第30号 第104項であること
  • 契約書で買戻義務を確かめること

📌 結論 収益は認識しない

図1 買戻義務の有無で分かれる場面支給品の消滅譲渡に係る収益買戻義務を負っていない認識する認識しない買戻義務を負っている(連結)認識しない認識しない買戻義務を負っている(個別)認識することができる認識しない

企業会計基準適用指針第30号 第104項です。どの場合でも、支給品の譲渡に係る収益は認識しません。ここが最大のポイントです。

第104項は、企業が対価と交換に原材料等を外部に譲渡し、支給先における加工後に当該支給品を購入する場合について定めています。一般的に有償支給取引と呼ばれる取引です。

そして、処理にあたっては企業が当該支給品を買い戻す義務を負っているか否かを判断する必要がある、としています。

買戻義務を負っていない場合、企業は当該支給品の消滅を認識することとなるが、当該支給品の譲渡に係る収益は認識しない。買戻義務を負っている場合、企業は支給品の譲渡に係る収益を認識せず、当該支給品の消滅も認識しないこととなる。個別財務諸表においては、支給品の譲渡時に当該支給品の消滅を認識することができる。なお、その場合であっても、当該支給品の譲渡に係る収益は認識しない。第104項はこう定めています。

🧭 判断の順番

図2 判断の順番原材料等を対価と交換に支給先へ譲渡する支給先での加工後に、その支給品を購入するかを確認する企業が支給品を買い戻す義務を負っているかを判断する負っていなければ、支給品の消滅を認識する。収益は認識しない負っていれば、連結では消滅も認識しない。個別では消滅を認識することができ

出発点は買戻義務の有無です。契約書のどこにその義務が書かれているかを先に押さえてください。

最初に見るのは契約書です。加工後の製品を必ず引き取る定めがあるか。数量や価格が決まっているか。実質的に引き取らざるを得ない状況になっていないか。

明文の定めがなくても、取引の実態から買戻義務があると判断される場合があります。形式だけで決めないでください。

そのうえで、消滅を認識するかどうかを決めます。収益の認識については、どちらでも認識しないという結論は変わりません。

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🤔 なぜ収益を認識しないのか

図3 なぜ収益を認識しないのか論点考え方取引の実態加工を委託し、加工後に戻ってくる取引です。第三者への販売ではありません収益認識の考え方顧客との契約から生じる収益ではないため、譲渡に係る収益は認識しません個別での容認実務上の便宜として、支給品の譲渡時に消滅を認識することができるとされています容認の範囲個別財務諸表限定です。連結には及びません

売上高が大きく見える処理を続けている会社は、上場審査で必ず論点になります。早めに整理してください。

有償支給は、加工を委託し、加工後に戻ってくる取引です。支給先へ売って終わりではありません。

ですから、支給時に売上を立てて、戻ってきたときに仕入を立てると、売上高も仕入高も実態より大きく見えます。この処理を続けている会社は少なくありません。

上場審査でも監査でも、売上高の計上方法は必ず見られます。金額が大きい会社ほど、早く整理しておくべき論点です。

🔍 実務で確かめること

図4 実務で確かめること確認事項見るところ買戻義務の有無基本契約書、個別契約、覚書。実質的な義務も含めて判断します現在の会計処理支給時に売上を計上していないか連結と個別の整合個別で消滅を認識している場合、連結で戻す処理があるか在庫の管理支給先にある支給品を自社の在庫として把握できているか注記会計方針として記載しているか

支給時に売上を計上している会社は珍しくありません。金額が大きいと、修正のインパクトも大きくなります。

支給先にある支給品を自社の在庫として把握できているか。ここも実務では重要です。買戻義務を負っている場合、連結上はまだ自社の資産です。

個別で消滅を認識している場合、連結で戻す処理が必要になります。この処理が漏れていると、連結と個別で在庫が合いません。

そして会計方針として注記しているかを確かめてください。有償支給取引に係る会計処理は、収益認識の会計方針の1つとして書くことになります。

❓ よくある質問

Q. 有償支給で売上を計上できますか。

A. できません。買戻義務の有無にかかわらず、支給品の譲渡に係る収益は認識しません(適用指針第30号 第104項)。

Q. 買戻義務がなければどうなりますか。

A. 支給品の消滅を認識します。収益は認識しません。

Q. 買戻義務があるときは。

A. 連結では消滅も認識しません。個別では譲渡時に消滅を認識することができます。

Q. 個別の容認は連結にも及びますか。

A. 及びません。個別財務諸表限定です。

Q. 買戻義務はどう判断しますか。

A. 契約書の定めに加えて、取引の実態も見ます。形式だけでは決まりません。

Q. 根拠はどこですか。

A. 企業会計基準適用指針第30号 第104項です。会計基準第29号の本体ではありません。

Q. いま売上を立てています。どうしますか。

A. 影響額を試算して、監査法人と修正の要否を相談してください。上場準備中なら早いほうがよいです。

Q. 在庫はどう管理しますか。

A. 買戻義務を負っている場合、連結上はまだ自社の資産です。支給先にある数量を把握できる仕組みが要ります。

📄 まとめ

有償支給取引では、買戻義務の有無にかかわらず、支給品の譲渡に係る収益を認識しません。

分かれるのは支給品の消滅の認識です。買戻義務がなければ認識し、あれば連結では認識しません。

個別では、買戻義務があっても譲渡時に消滅を認識することができます。ただし収益は認識しません。

いま支給時に売上を立てているなら、契約書の確認から始めてください。影響額が大きいほど、早く動くほうが選択肢が残ります。

📚 参考(公的な一次情報)

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