上場準備で就業規則のどこを直すか。よく問題になるのは3つです。固定残業代の書き方、管理監督者の範囲、そして周知の方法です。
周知については見落としが多い箇所があります。労働基準法施行規則第52条の2第3号は、電子的な方法で周知する場合に、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること、まで求めています。
イントラネットに置いてある、では条文を満たしません。工場や店舗の現場に端末があるかを確かめてください。
- 第89条の記載事項の号ごとの区分
- 意見聴取が同意ではないこと
- 電子的な周知に機器の設置が要ること
- 固定残業代について公的資料が求めていること
- 管理監督者の判断要素
- 令和6年4月から増えた明示事項
📌 結論 記載事項は2種類に分かれている
絶対的必要記載事項という語は条文にありません。第1号から第3号が無条件、第3号の2以降が定めをする場合においては、という書き分けです。
労働基準法第89条は、常時十人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない、としています。変更した場合も同様です。
第1号から第3号は無条件で記載します。始業終業と休憩休日、賃金、退職に関する事項です。第3号は解雇の事由を含む、と明記されています。
第3号の2以降は、定めをする場合においては、という書き方です。退職手当、臨時の賃金等、費用負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰及び制裁、その他全労働者に適用される定めです。
なお、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項という呼び方は条文にはありません。講学上の呼称です。
🧭 意見聴取と周知
社内のイントラに置いただけでは第3号を満たしません。常時確認できる機器の設置まで条文に書かれています。
第90条第1項は、過半数労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない、としています。同意ではありません。
第2項が、届出に際して前項の意見を記した書面を添付することを求めています。反対の意見でも、届出自体はできます。
そして第106条第1項が周知を定め、方法は施行規則第52条の2に委ねられています。第3号の電子的方法は、記録するだけでなく、各作業場に常時確認できる機器を設置することまでが要件です。
固定残業代の設計変更が過去の未払額にどう跳ね返るか、管理監督者の見直しが人件費にどれだけ影響するか。就業規則を直すと、必ず数字が動きます。引当の要否、注記の要否、そして上場申請書類での説明まで一体で設計します。規程の改定そのものは社会保険労務士と連携して進めます。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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🧾 固定残業代と管理監督者
役職名では決まりません。名称にとらわれず実態に即して判断すべきもの、というのが行政解釈です。
固定残業代について、厚生労働省の労働条件に関するQ&Aは、割増賃金相当部分とそれ以外の賃金部分とを明確に区別することを求めています。そして定額の支給額が実際の割増賃金額を下回るときは、その差額を支払う必要があるとしています。残業手当の定額払いであることを就業規則等に明記することが必要、とも書かれています。
管理監督者については、第41条第2号が事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者としています。行政解釈は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者とし、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえて判断するとしています。
そして第41条が適用を除外するのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定です。深夜割増と年次有給休暇は除外されません。ここを外している規程は少なくありません。
📅 令和6年4月から増えた明示事項
意見聴取は同意ではありません。条文は意見を聴かなければならない、です。ただし反対意見が出た事実は残ります。
労働条件の明示ルールが令和6年4月1日から変わりました。就業場所と従事すべき業務について、変更の範囲を明示することが全ての労働者に必要になっています(労働基準法施行規則第5条第1項第1号の3)。
有期契約の労働者については、更新上限として通算契約期間または更新回数の上限がある場合に、その上限を明示します(同項第1号の2)。
無期転換申込権が発生する場合は、申込みに関する事項と、転換後の労働条件を明示します(同条第5項)。同条第2項は、明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない、としています。
❓ よくある質問
A. 常時十人以上の労働者を使用する場合です(第89条)。事業場ごとに数えます。
A. 第90条は意見を聴かなければならない、としています。同意までは求めていません。
A. 施行規則第52条の2第3号は、各作業場に常時確認できる機器を設置することまで求めています。
A. 時間数の上限を定めた公的な基準は確認できません。区別の明確性と差額の支払いが求められます。
A. 労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されません。深夜割増は別に必要です。
A. 決まりません。職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金等の待遇からの総合判断です。
A. 令和6年4月1日からです。全ての労働者が対象です。
A. 施行規則第5条第2項が、事実と異なるものとしてはならない、としています。
📄 まとめ
第89条の記載事項は、無条件のものと定めをする場合のものに分かれています。
意見聴取は同意ではありません。ただし電子的な周知には機器の設置まで要ります。
管理監督者でも深夜割増と年次有給休暇は除外されません。
規程を直すと必ず人件費が動きます。改定の前に、過去分の影響額を見積もってから進めてください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 労働基準法(e-Gov法令検索) 第41条、第89条、第90条、第106条
- 労働基準法施行規則(e-Gov法令検索) 第5条、第52条の2
- 基本給に含めた割増賃金(厚生労働省 確かめよう労働条件)
- 管理監督者(厚生労働省 確かめよう労働条件)
- 2024年4月から労働条件明示のルールが変わります(厚生労働省)