賞与引当金はいつからいくら積むか|未払費用・未払金との使い分け

従業員の賞与はすべて賞与引当金なのか。違います。

支給額が確定していて支給対象期間に対応して算定される場合は未払費用、支給額は確定しているが支給対象期間以外の基準で算定される場合は未払金、支給額が確定していない場合に賞与引当金です。

そして賞与引当金だけを定めた会計基準はありません。根拠は企業会計原則注解の注18、引当金の4要件です。

この記事でわかること

  • 未払費用・未払金・賞与引当金の使い分け
  • 根拠が企業会計原則注解 注18であること
  • 賞与引当金だけの会計基準がないこと
  • いくら積むかの考え方
  • 社会保険料の事業主負担分の扱い
  • 上場準備で問われること

📌 結論 科目が3つに分かれる

図1 科目は3つに分かれる場面科目支給額が確定しており、支給対象期間に対応して算定される未払費用支給額は確定しているが、支給対象期間以外の基準(成功報酬的賞与等)で算定される未払金支給額が確定していない支給見込額のうち当期に帰属する額を賞与引当金

日本公認会計士協会のリサーチ・センター審理情報第15号の整理です。すべてが賞与引当金になるわけではありません。

日本公認会計士協会のリサーチ・センター審理情報第15号「未払従業員賞与の財務諸表における表示科目について」が、この3区分を示しています。

支給額が確定しているかどうか、そして支給対象期間に対応して算定されているかどうか。この2つで分かれます。

実務では、決算日までに支給額が確定していない会社が多いため、賞与引当金になることが多くなります。ただし、確定していれば未払費用や未払金です。機械的に賞与引当金としないでください。

📐 引当金の4要件

図2 引当金の4要件要件内容将来の特定の費用又は損失であること漠然とした将来の支出ではありませんその発生が当期以前の事象に起因すること当期以前の労働の対価であること発生の可能性が高いこと可能性の低い偶発事象については計上できませんその金額を合理的に見積ることができること算定の根拠を示せること

企業会計原則注解の注18です。賞与引当金もここに帰着します。賞与引当金だけを定めた会計基準はありません。

企業会計原則注解の注18は、将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつその金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れる、としています。

そして注18は、引当金の例として賞与引当金を挙げています。ただしそれ以上の具体的な計算方法は定めていません。

なお、発生の可能性が高いという要件について、注18に数値基準はありません。何パーセント以上、という基準を持ち出さないでください。

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🧮 いくら積むか

図3 いくら積むか賞与の支給対象期間を確認する(例:10月から3月分を6月に支給)支給見込額を見積もる(過去の支給実績、業績連動の算式、社内規程)支給対象期間のうち当期に属する月数の割合を出す支給見込額のうち当期に帰属する額を計上する社会保険料の事業主負担分の扱いを決める

支給対象期間と決算期のずれをどう按分するかが計算の中心です。規程に支給対象期間が書かれていない会社は、そこから整えてください。

計算の中心は、支給対象期間と決算期のずれをどう按分するかです。10月から3月分を6月に支給する会社であれば、3月決算なら支給対象期間が全部当期に入ります。4月から9月分を12月に支給するなら、決算期をまたぎます。

ここで問題になるのが、支給対象期間が社内規程に書かれていない場合です。書かれていなければ按分の根拠がありません。まず規程を整えてください。

社会保険料の事業主負担分を含めるかどうかも決めておきます。含める場合は、その分も同じ考え方で按分します。年度によって扱いが揺れないようにしてください。

🔍 上場準備で問われること

図4 上場準備で問われること論点確かめること規程の有無賞与の支給対象期間、支給日、算定方法が規程に書かれているか見積りの根拠支給見込額の算定根拠が資料で残っているか継続性毎期同じ方法で計算しているか社会保険料事業主負担分を含めているかどうかが年度間で揺れていないか役員賞与との区別役員賞与は企業会計基準第4号の話です。従業員賞与と分けて扱います

計上していないことより、計算の根拠が説明できないことのほうが問題になります。

審査や監査で問われるのは、計上しているかどうかよりも、計算の根拠が説明できるかどうかです。

支給見込額をどう見積もったのか。過去の実績か、業績連動の算式か、個人別の査定か。資料が残っていないと、毎期同じ議論をすることになります。

そして役員賞与とは分けてください。役員賞与は企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」の話です。従業員賞与とは別の論点になります。

❓ よくある質問

Q. 従業員賞与は必ず賞与引当金ですか。

A. 違います。支給額が確定し支給対象期間に対応して算定される場合は未払費用、支給対象期間以外の基準で算定される場合は未払金です。

Q. 賞与引当金の会計基準はありますか。

A. 賞与引当金だけを定めた会計基準はありません。企業会計原則注解の注18に帰着します。

Q. 引当金の要件は。

A. 将来の特定の費用又は損失であること、発生が当期以前の事象に起因すること、発生の可能性が高いこと、金額を合理的に見積ることができることの4つです。

Q. 発生の可能性が高いとは何パーセントですか。

A. 注18に数値基準はありません。

Q. いくら積みますか。

A. 支給見込額のうち当期に帰属する額です。支給対象期間で按分します。

Q. 社会保険料の事業主負担分は。

A. 含めるかどうかを決めて、毎期同じ扱いにしてください。

Q. 規程に支給対象期間がありません。

A. 按分の根拠がありません。まず規程を整えてください。

Q. 役員賞与も同じですか。

A. 違います。役員賞与は企業会計基準第4号の話です。

📄 まとめ

未払費用、未払金、賞与引当金。支給額が確定しているか、支給対象期間に対応して算定されているかで分かれます。

賞与引当金だけの会計基準はありません。企業会計原則注解の注18の4要件が根拠です。

金額は支給見込額のうち当期に帰属する額。按分の根拠は社内規程です。

いま規程に支給対象期間が書かれていないなら、そこから直してください。会計処理はそのあとです。

📚 参考(公的な一次情報)

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