分配可能額の計算方法|会社法461条の手順とのれん等調整額の計算例

分配可能額の計算方法

分配可能額は、剰余金の額(期末のその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計に、期末日後の増減を加減した額)から、自己株式の帳簿価額、期末日後に処分した自己株式の対価の額、会社計算規則第158条の額(のれん等調整額、マイナスのその他有価証券評価差額金など)を引いて計算します(会社法第461条第2項)。判定は、配当や自己株式の取得の効力が生ずる日の時点で行います。

  • 剰余金の額は会社法第446条、差し引くものは第461条第2項第3号から第6号
  • のれん等調整額は「のれんの2分の1+繰延資産」を資本金・準備金などと比べて控除額を決める
  • 臨時計算書類の承認を受ければ、期中の利益も加えられる

2026年10月12日更新

配当をいくらまで出せるか。剰余金の額をそのまま使ってはいけません。

会社法第461条第2項が分配可能額の計算を定めています。剰余金の額から、自己株式の帳簿価額、期末日後に処分した自己株式の対価の額、そして会社計算規則第158条のその他減ずるべき額を引きます。

そして判定の時点は、当該行為がその効力を生ずる日です。決算日ではありません。

この記事でわかること

  • 剰余金の額と分配可能額が違うこと
  • 自己株式が二度出てくること
  • 会社計算規則第158条で引くもの
  • その他有価証券評価差額金は非対称であること
  • 判定の時点が効力発生日であること
  • 臨時計算書類を使うには承認が要ること

📌 結論 剰余金の額から引く

図1 分配可能額が出るまで剰余金の額を計算する(会社法第446条)臨時計算書類の承認を受けた場合は、その期間の利益等を加える(第461条第2項第2号)自己株式の帳簿価額を引く(同第3号)最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合の対価の額を引く(同第4号)会社計算規則第158条のその他減ずるべき額を引く(同第6号)

剰余金の額イコール分配可能額ではありません。引く項目が複数あります。

会社法第461条第1項は、剰余金の配当などにより株主に交付する金銭等の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない、としています。

そして第2項が分配可能額の中身です。剰余金の額と、臨時計算書類の承認を受けた場合の利益等を足し、自己株式の帳簿価額、期末日後の自己株式処分の対価の額、臨時計算書類の期間の損失、そして法務省令で定める額を引きます。

剰余金の額そのものは第446条にあります。最終事業年度末日の資産の額と自己株式の帳簿価額の合計から、負債の額、資本金及び準備金の額、法務省令で定める額を引き、そこに期末日後の増減を加減します。

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🔁 自己株式は二度出てくる

図2 自己株式は二度出てくる場面扱い条文剰余金の額の計算最終事業年度末日の自己株式の帳簿価額を加える会社法第446条第1号ロ分配可能額の計算自己株式の帳簿価額を引く同第461条第2項第3号期末日後の処分処分した自己株式の対価の額を引く同第4号

剰余金の額でいったん加算し、分配可能額で控除します。この往復を追えないと計算が合いません。

第446条第1号ロで、最終事業年度末日の自己株式の帳簿価額をいったん加えます。そして第461条第2項第3号で、自己株式の帳簿価額を引きます。

行って戻る形です。この往復を理解していないと、Excelで組んだ計算表がどこかで合わなくなります。

期末日後に自己株式を処分した場合は、第4号でその対価の額も引きます。処分益がそのまま配当原資になるわけではありません。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

📐 第158条で引くもの

図3 会社計算規則第158条で引くもの号内容第1号のれん等調整額(のれんの額の2分の1と繰延資産の額)と、資本等金額やその他資本剰余金との大小関係による調整第2号その他有価証券評価差額金がマイナスの場合の当該額第3号土地再評価差額金がマイナスの場合の当該額第4号連結配当規制適用会社の調整第5号から第8号臨時計算書類関係、300万円基準、自己株式処分、その他資本剰余金の増加に関する調整

その他有価証券評価差額金はマイナスのときだけ引きます。プラスのときは加えません。非対称です。

会社計算規則第158条は、法第461条第2項第6号の額として、第1号から第8号の合計額から第9号と第10号の合計額を引いた額を定めています。

第1号がのれん等調整額です。資産の部ののれんの額の2分の1と繰延資産の額の合計を、資本等金額やその他資本剰余金と比べて調整します。のれんが大きい会社では効いてきます。

第2号と第3号は、その他有価証券評価差額金と土地再評価差額金がマイナスの場合の当該額です。マイナスのときだけ引きます。プラスのときは加えません。ここが非対称です。

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📅 判定の時点

図4 判定の時点と手続論点内容判定の時点当該行為がその効力を生ずる日(会社法第461条第1項)。決算日でも株主総会日でもありません対象となる行為自己株式の取得の各類型と剰余金の配当(第461条第1項第1号から第8号)臨時計算書類第441条第4項の承認を受けた場合に、その期間の利益を加えられます剰余金の処分損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分は株主総会の決議による(第452条)

効力発生日で判定します。決算日に余裕があっても、その後の取引で分配可能額が減っていることがあります。

第461条第1項は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額、としています。決算日でも株主総会の日でもありません。

ですから、期末に十分な分配可能額があっても、その後に自己株式を取得していれば、配当の効力発生日には減っています。

臨時計算書類の利益を加えるには、第441条第4項の承認が必要です。臨時決算を組めば当然に加えられる、というものではありません。

🧮 分配可能額の計算手順と計算例

条文の順番どおりに5つの手順で計算します。

手順 やること
1. 期末の剰余金の額 最終事業年度の末日の、その他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額です。会社法第446条第1号は「資産+自己株式−負債−資本金・準備金−法務省令で定める額」という式ですが、会社計算規則第149条の控除額を当てはめると、この2つの合計に一致します。
2. 期末日後の増減 期末日後の自己株式の処分差額、資本金・準備金の減少額を加え、自己株式の消却額、剰余金の配当の額などを引きます(第446条第2号から第7号)。
3. 臨時計算書類 第441条第4項の承認を受けた臨時計算書類があれば、その期間の利益と期間内の自己株式の処分の対価を加え、損失を引きます(第461条第2項第2号・第5号)。
4. 自己株式 効力発生日の自己株式の帳簿価額と、期末日後に処分した自己株式の対価の額を引きます(同項第3号・第4号)。期末日後に取得した自己株式もここで引かれます。
5. 会社計算規則第158条 のれん等調整額による控除、その他有価証券評価差額金と土地再評価差額金がマイナスの場合のその額、純資産300万円に関する調整などを引きます(同項第6号)。

のれん等調整額の判定

のれん等調整額は、最終事業年度の末日の「のれんの額の2分の1」と「繰延資産の額」の合計額です。これを資本等金額(資本金と準備金の合計額)やその他資本剰余金と比べて、控除する額が決まります(会社計算規則第158条第1号)。

場合 控除する額
のれん等調整額が資本等金額以下 0円
資本等金額を超え、資本等金額+その他資本剰余金以下 のれん等調整額−資本等金額
資本等金額+その他資本剰余金を超え、のれんの2分の1は資本等金額+その他資本剰余金以下 のれん等調整額−資本等金額
資本等金額+その他資本剰余金を超え、のれんの2分の1も資本等金額+その他資本剰余金を超える その他資本剰余金+繰延資産の額

計算例(架空の会社)

3月決算の会社が、期末日後の5月に自己株式200万円を取得し、6月の定時株主総会で配当を決める場面です。期末の貸借対照表は、資本金1,000万円、資本準備金500万円、利益準備金200万円、その他資本剰余金300万円、その他利益剰余金5,000万円、自己株式△800万円、その他有価証券評価差額金△150万円、のれん4,000万円、繰延資産なしとします。

項目 金額
剰余金の額(その他資本剰余金300万円+その他利益剰余金5,000万円) 5,300万円
引く:自己株式の帳簿価額(期末800万円+5月取得200万円) △1,000万円
引く:その他有価証券評価差額金(マイナスの額) △150万円
引く:のれん等調整額による控除 △300万円
分配可能額 3,850万円

のれん等調整額は、のれん4,000万円の2分の1で2,000万円です。資本等金額は資本金1,000万円、資本準備金500万円、利益準備金200万円の合計1,700万円で、のれん等調整額はこれを超えますが、資本等金額とその他資本剰余金の合計2,000万円以下に収まります。そのため控除額は2,000万円−1,700万円=300万円です。資本金と準備金の合計が300万円以上あるので、300万円に関する調整は0円になります。

期末の数字だけで計算すると、自己株式の5月の取得分200万円を引き忘れて4,050万円と出てしまいます。効力発生日の時点で計算し直すのはこのためです。

❓ よくある質問

Q. 分配可能額の計算はどの順番で行いますか。

A. 期末のその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計(剰余金の額)から始め、期末日後の増減を加減し、自己株式の帳簿価額と会社計算規則第158条の額(のれん等調整額、マイナスの評価差額金など)を引きます。

Q. 分配可能額は剰余金の額と同じですか。

A. 違います。自己株式の帳簿価額などを引きます(会社法第461条第2項)。

Q. 自己株式はなぜ二度出てきますか。

A. 剰余金の額の計算で加え(第446条第1号ロ)、分配可能額の計算で引く(第461条第2項第3号)ためです。

Q. その他有価証券評価差額金がプラスなら加えますか。

A. 加えません。会社計算規則第158条第2号はマイナスの場合の控除だけを定めています。

Q. のれんはどう影響しますか。

A. のれん等調整額として第158条第1号で調整されます。のれんの額の2分の1と繰延資産の額が基礎になります。

Q. いつの時点で判定しますか。

A. 当該行為がその効力を生ずる日です(第461条第1項)。

Q. 臨時決算をすれば配当を増やせますか。

A. 第441条第4項の承認を受けた場合に、その期間の利益等を加えられます。承認が前提です。

Q. 剰余金の処分はどの条文ですか。

A. 会社法第452条です。株主総会の決議によります。

Q. 計算はどこから始めますか。

A. 第446条の剰余金の額からです。その後に第461条第2項の控除を適用します。

📄 まとめ

分配可能額は剰余金の額そのものではありません。自己株式の帳簿価額などを引いた額です。

会社計算規則第158条の控除項目、とくにのれん等調整額とマイナスの評価差額金を落とさないでください。

判定の時点は効力発生日です。決算日ではありません。

配当や自己株式の取得を予定しているなら、決めてから計算するのではなく、計算してから決めてください。順番を逆にすると、決議のやり直しになります。

📚 参考(公的な一次情報)

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