資産除去債務の利息費用はどの区分に出すか|営業外費用ではない

資産除去債務を計上すると、毎期、時の経過による調整額が発生します。実務では利息費用と呼ばれることが多い費用です。

これを損益計算書のどこに出すか。利息という名前から営業外費用に入れてしまう例がありますが、そうではありません。企業会計基準第18号の第14項は、関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上する、としています。

この記事では、区分の考え方と、毎期の計算方法、そしてつまずきやすいところを整理します。

この記事でわかること

  • 利息費用が減価償却費と同じ区分に計上されること(第14項)
  • 営業外費用ではないこと
  • 算定に当初負債計上時の割引率を使うこと(第9項)
  • 工場設備に係るものは製造原価に含まれること
  • 除去費用の減価償却とは別の費用であること(第7項)
  • 期首残高が増えるため、利息費用も年々増えること

📌 結論 減価償却費と同じ区分

図1 利息費用の計上区分と算定方法論点定め区分(第14項)時の経過による資産除去債務の調整額は、損益計算書上、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上する算定(第9項)時の経過による資産除去債務の調整額は、その発生時の費用として処理する。当該調整額は、期首の負債の帳簿価額に当初負債計上時の割引率を乗じて算定する除去費用の配分(第7項資産計上された資産除去債務に対応する除去費用は、減価償却を通じて、当該有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分する

営業外費用ではありません。関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分です。本社の内装なら販売費及び一般管理費、工場設備なら売上原価というように、資産の使われ方で決まります。

企業会計基準第18号の第14項は、時の経過による資産除去債務の調整額は、損益計算書上、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上する、としています。

ここで基準になるのは、その資産除去債務に関連する有形固定資産です。本社オフィスの内装であれば、その減価償却費は販売費及び一般管理費に入りますから、利息費用も販売費及び一般管理費です。工場の生産設備であれば製造原価です。

営業利益の水準に影響します。営業外費用に入れると営業利益が過大になりますから、比較可能性の面でも問題になります。

🏭 資産の使われ方で決まる

図2 資産の使われ方で区分が変わる対象の有形固定資産減価償却費の区分利息費用の区分本社オフィスの内装販売費及び一般管理費販売費及び一般管理費工場の生産設備売上原価(製造原価)売上原価(製造原価)店舗の造作販売費及び一般管理費販売費及び一般管理費賃貸用の建物不動産賃貸原価など同じ区分

利息費用という名前から営業外費用に入れてしまう例がありますが、条文は減価償却費と同じ区分としています。名前に引きずられないでください。

ひとつの会社の中に、複数の資産除去債務があることは珍しくありません。本社の内装、工場の設備、店舗の造作。それぞれ関連する有形固定資産が違いますから、利息費用の区分も分かれます。

まとめて販売費及び一般管理費に計上している例を見かけますが、工場設備に係るものは製造原価です。原価計算をしている会社では、製品原価にも影響します。

資産除去債務の一覧を作るときに、関連する有形固定資産と、その減価償却費の計上区分をあわせて書いておいてください。これがあれば毎期の処理が機械的になります。

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🔢 毎期の計算

図3 毎期の計算期首の資産除去債務の帳簿価額を確認する当初負債計上時の割引率を掛ける。当期の利率ではない算出した額を、その発生時の費用として処理する損益計算書では、関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含める負債の帳簿価額に加算する。翌期はその金額が期首残高になる

率は当初のまま固定です。金利が動いても付け替えません。期首残高が毎期増えていくので、利息費用も年々増えていきます。

第9項は、時の経過による資産除去債務の調整額は、その発生時の費用として処理し、当該調整額は、期首の負債の帳簿価額に当初負債計上時の割引率を乗じて算定する、としています。

使う率は当初のままです。市場金利が上がっても下がっても、この計算では変えません。

期首の負債の帳簿価額は、前期末の残高です。毎期、利息費用の分だけ負債が増えていきますから、利息費用そのものも年々増えていきます。除去の時点で、当初見積もった割引前の金額に一致します。

見積りを変更したとき

第11項により、割引前の将来キャッシュ・フローが増加する場合はその時点の割引率、減少する場合は負債計上時の割引率を適用します。増加した場合、その部分は変更時点の率で計算することになりますから、その後の利息費用の計算は層が分かれます。

計算シートを作るときは、当初計上分と、変更による増加分を行を分けて持っておいてください。割引率の決め方は資産除去債務の割引率は何を使うかで扱っています。

⚠️ つまずくところ

図4 実務でつまずくところ場面考え方営業外費用に入れてしまう第14項は、関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めるとしています当期の割引率で計算する第9項は、当初負債計上時の割引率を乗じて算定するとしています製造原価に入れ忘れる工場設備に係るものは製造原価に含めます。販売費及び一般管理費に一括すると原価計算がずれます除去費用の償却と混同する第7項の除去費用の費用配分と、第9項の時の経過による調整額は別の費用で見積り変更後も元の率で計算し続ける増加分については、変更時点の割引率で計算した部分が加わります(第11項

除去費用の減価償却と、時の経過による調整額。この2つは別の費用です。同じ区分に計上されるため、内訳を分けて管理しておかないと、あとで説明できなくなります。

もうひとつ整理しておきたいのが、除去費用の減価償却との関係です。

第7項は、資産計上された資産除去債務に対応する除去費用は、減価償却を通じて、当該有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分する、としています。これは資産側の話です。

一方、第9項の時の経過による調整額は負債側の話です。同じ区分に計上されますが、性質は別の費用です。内訳を分けて管理しておかないと、監査で内訳を聞かれたときに答えられません。

❓ よくある質問

Q. 利息費用はどの区分ですか。

A. 関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分です(第14項)。

Q. 営業外費用ではありませんか。

A. 違います。名前は利息費用ですが、条文は減価償却費と同じ区分としています。

Q. 工場設備に係るものはどうしますか。

A. その減価償却費が製造原価に入るのであれば、利息費用も製造原価です。

Q. どの割引率で計算しますか。

A. 当初負債計上時の割引率です(第9項)。当期の率ではありません。

Q. 毎期増えていくのはなぜですか。

A. 期首の負債の帳簿価額に率を乗じるためです。負債残高が増えるので、費用も増えます。

Q. 除去費用の減価償却と同じものですか。

A. 別の費用です。第7項の費用配分は資産側、第9項の調整額は負債側の話です。

Q. 見積りを変更したらどうなりますか。

A. 増加分はその時点の割引率、減少の場合は負債計上時の割引率で扱います(第11項)。

Q. 何を資料に残しますか。

A. 債務ごとの当初計上額、当初の割引率、関連する有形固定資産、そして減価償却費の計上区分です。

📄 まとめ

時の経過による資産除去債務の調整額は、損益計算書上、関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上します(第14項)。営業外費用ではありません。

算定は、期首の負債の帳簿価額に当初負債計上時の割引率を乗じて行います(第9項)。率は当初のまま固定です。

工場設備に係るものは製造原価です。まとめて販売費及び一般管理費にすると、原価計算がずれます。

そして、除去費用の減価償却(第7項)とは別の費用です。同じ区分に入るからこそ、内訳を分けて管理しておいてください。

📚 参考(公的な一次情報)

  • 企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第7項、第9項、第11項、第14項
  • 企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第5項
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