内部監査規程を作るときに悩むのが、基準との関係をどう書くかです。準拠すると書くのか、参考にすると書くのか、あるいは何も書かないのかという選択になります。
準拠すると書けば、その基準が求めることをすべて満たす必要が生じます。人数が限られる段階で準拠と書くと、満たせていない部分を後から問われることになります。
この記事では、規程での書き方の選択肢、国内と国際的な基準の関係、基準が求めることの骨格、自社の規程の点検方法を整理します。
- 規程で準拠と書く場合と参考にすると書く場合の違い
- 日本の内部監査基準と国際的な基準の関係
- 基準が求めることを7つの区分で整理
- 実務で抜けやすい専門的能力と品質の条項
- 自社の規程を4段階で点検する方法
- 運用が伴わない条項を書き足すことの弊害
図 内部監査基準への準拠の書き分け
📌 結論 準拠と参考は意味が違う
内部監査規程を作るときに悩むのが、基準との関係をどう書くかです。日本内部監査協会が公表している内部監査基準に準拠すると書くのか、参考にすると書くのか、あるいは何も書かないのかという選択になります。
準拠すると書けば、その基準が求めることをすべて満たしている必要が生じます。品質評価の仕組みや専門的能力の確保まで含めて整っていれば問題ありませんが、上場準備の段階で人数も限られる会社が準拠と書いてしまうと、満たせていない部分を後から問われることになります。
準拠すると書いたのに満たせていない状態が、最も説明しにくい
🧭 国内の基準と国際的な基準
内部監査に関する基準には、日本内部監査協会が公表している内部監査基準と、国際的な内部監査人協会が定めている基準があります。日本の基準は国際的な基準を踏まえて作られており、考え方の骨格は共通しています。
国際的な基準については改訂が行われており、日本の協会もそれを踏まえた対応を進めています。上場準備の会社としては、最新の版を確認したうえで、自社の規程が骨格を押さえているかを見る形で足ります。細かな条項まで追う必要はありません。
公認内部監査人の資格試験の学習範囲は国際的な基準に沿っているため、担当者が資格取得の学習をしている会社では、そちらの枠組みで理解が進んでいることもあります。どちらを出発点にしても、規程に落とす内容は大きく変わりません。
骨格は7つ。規程がこれをカバーしていれば形は整う
📊 骨格を押さえる
基準が求めることは、大きく7つの区分に整理できます。目的と権限、独立性、専門的能力、品質、計画、実施と報告、フォローアップです。自社の内部監査規程がこの7つをカバーしていれば、形としては整っていることになります。
実務で抜けやすいのが、専門的能力と品質の2つです。目的や権限、計画や報告については、規程を作る段階で自然に書かれますが、担当者の知識をどう維持するか、監査の品質をどう保つかという条項は落ちがちです。
この2つは、書き足すだけなら簡単ですが、運用が伴わないと意味がありません。研修の受講記録を残す、年に1回自己評価を行うという運用を先に始めてから、規程に書くという順序でも構いません。
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🗂 自社の規程を点検する
既に規程がある会社は、7つの骨格と並べて点検します。書かれていない項目と、書かれているが運用されていない項目を分けて洗い出すと、次にやることがはっきりします。
書き足すのは簡単だが、運用が伴わない条項は逆効果になる
書かれていない項目は、書き足すことで対応できます。ただし、書き足した条項が運用できるかを確かめてから書きます。年4回の往査を行うと書いて、実際には2回しかできなかったという状態は、規程に書いていなかった場合よりも説明が難しくなります。
書かれているが運用されていない項目は、規程を実態に合わせるか、運用を規程に合わせるかの判断になります。上場審査の観点では、規程を緩めるより運用を整えるほうが望ましいところですが、明らかに実現できない条項であれば、規程の側を現実的な水準に直すことも選択肢です。
⚖️ 基準を使う実務上の意味
基準を参照する意味は、体裁を整えることではありません。少人数で内部監査を立ち上げるとき、何を備えるべきかの一覧として使えることに価値があります。ゼロから考えると抜けが出ますが、骨格が示されていれば、自社に足りないものが見えます。
また、監査法人や主幹事証券会社と話すときの共通の言葉にもなります。独立性をどう確保しているか、品質をどう保っているかという問いに対して、基準の枠組みに沿って答えられれば、説明が通りやすくなります。
ただし、基準に書かれているからという理由だけで運用を決めるのは避けます。自社の規模と業種に照らして、その手続が本当に必要かを考えたうえで取り入れます。基準は最低限を示すものではなく、幅のある実務のなかで参照する枠組みだと捉えると、使いやすくなります。
❓ よくある質問
A. 準拠と書けば基準の要求をすべて満たす必要が生じます。体制を作っている段階では、参考にするという書き方のほうが実態に合うことが多いところです。
A. 日本の基準は国際的な基準を踏まえて作られており、骨格は共通しています。どちらを出発点にしても、規程に落とす内容は大きく変わりません。
A. 細かな条項まで追う必要はありません。骨格となる7つの区分を自社の規程がカバーしているかを見る形で足ります。
A. 専門的能力と品質の2つです。担当者の知識をどう維持するか、監査の品質をどう保つかという条項が落ちがちです。
A. 運用できるかを確かめてから書きます。年4回の往査と書いて2回しかできなかったという状態は、書いていなかった場合より説明が難しくなります。
A. 規程を実態に合わせるか、運用を規程に合わせるかの判断になります。審査の観点では運用を整えるほうが望ましいところです。
A. 少人数で立ち上げるときに、何を備えるべきかの一覧として使えます。ゼロから考えると抜けが出ますが、骨格があれば足りないものが見えます。
A. 自社の規模と業種に照らして必要かを考えます。基準は最低限を示すものではなく、幅のある実務のなかで参照する枠組みです。
📄 まとめ
規程での準拠と参考は意味が違います。満たせていない状態で準拠と書くことが、最も説明しにくい状態を作ります。
基準が求めることは、目的と権限、独立性、専門的能力、品質、計画、実施と報告、フォローアップの7つに整理できます。
抜けやすいのは専門的能力と品質です。運用を先に始めてから規程に書くという順序でも構いません。
既存の規程は7つの骨格と並べて点検し、書かれていない項目と運用されていない項目を分けて洗い出します。
基準は体裁を整えるためではなく、何を備えるべきかの一覧として、また監査法人や証券会社との共通の言葉として使います。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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