監査調書の書き方|必ず入れる8つの欄と証拠力の高め方

監査調書は、内部監査の成果物のなかで最も見られる書類です。上場審査でも会計監査人のレビューでも、報告書より先に調書が確認されます。

判断の基準はひとつです。それを読んだ第三者が、同じ結論に至れるかどうか。確認した、問題なしという3文字では、確かめようがありません。

この記事では、調書に必ず入れる8つの欄、弱い書き方と強い書き方の違い、作る順番、そしてレビューと保存の実務を整理します。

この記事でわかること

  • 監査調書に必ず入れる8つの欄
  • 確認した問題なしでは足りない理由
  • 調書を作る順番と、証憑への印のつけ方
  • 1人体制でのレビューの依頼先
  • 審査で手続書と調書の対応が見られること
調書に何を残すか実施した手続を記録する誰がいつ何を確かめたかを書いているか実施した手続として記録するはいいいえ確かめた証憑や母集団を特定できるか対象と件数を明記するはいいいえ結論とその根拠を書いているか判断の過程として残すはいいいえ第三者が読んで同じ結論に至るかを確かめる

図 監査調書に残すべき事項の確認

📌 結論 第三者が同じ結論に至れるかで判断する

図1 調書に必ず入れる8つの欄書くこと抜けたときに起きること監査テーマと対象期間何をいつの分について見たかどの期間の話か分からなくなる手続の内容手続書のどの手続に対応するか手続書との対応が追えない母集団と抽出全体の件数と、そこから何件をどう選んだかなぜその件数かを説明できない実施した内容実際に何を見て何を確かめたか作業の再現ができない結果確かめた事実。数字と日付を具体的に結論の根拠が示せない結論手続の目的に照らして問題があるかないか事実の羅列で終わる作成者と作成日誰がいつ作ったか責任の所在が不明になるレビュー者とレビュー日誰がいつ確認したか第三者の目が入った証明ができない

8つのうちどれが欠けても、調書としての証拠力が下がります。様式に欄として作っておいてください。

監査調書の良し悪しは、それを読んだ第三者が同じ結論に至れるかどうかで決まります。上場審査でも会計監査人のレビューでも、この観点で見られます。

調書に必ず入れる欄は8つです。監査テーマと対象期間、手続の内容、母集団と抽出、実施した内容、結果、結論、作成者と作成日、レビュー者とレビュー日です。

このうち抜けやすいのが、母集団と抽出です。20件を確認したと書いてあっても、全体が何件でどう選んだ20件かが分からないと、その20件で足りるのかを判断できません。

🧭 弱い調書と強い調書

図2 弱い調書と強い調書場面弱い書き方強い書き方証憑の閲覧発注書を確認した。問題なし2026年4月から9月の発注書のうち100万円以上の全32件を閲覧し、職務権限規程3条の基準に照らして決裁者を確認した。32件すべて基準どおり質問担当者に聞いたところ問題ないとのこと購買課長に、承認前に発注した事例の有無を質問した。3件あると回答があり、うち2件は事後承認の記録を確認できた例外の発見一部不備あり2026年6月15日付の発注書1件について、課長決裁が必要な金額であるところ係長決裁で処理されていた

調書は、読んだ人が同じ結論に至れる情報量が要ります。問題なしの3文字では確かめようがありません。

もつとも弱いのが、確認した、問題なしという書き方です。何をどう確認したのかが書かれていないため、読んだ人には何も伝わりません。

強い調書は、対象期間、母集団の件数、抽出の方法と件数、照らした基準、そして結果を数字で書きます。上の表の右列がその例です。文章は長くなりますが、あとから読んで再現できます。

質問の記録も同じです。担当者に聞いたところ問題ないとのこと、では証拠になりません。誰に、何を質問し、どう回答があったかを書きます。そして回答を裏づける資料を確認したのであれば、それも書きます。

例外を見つけたときは、特定できる情報を書いてください。日付、伝票番号、金額、担当者名です。一部不備ありという書き方では、あとで是正を確認するときに、どれを直したのか分かりません。

📄 調書を作る順番

図4 調書を作る順番手続書の手続ごとに1枚ずつ用意する母集団の件数と抽出方法を先に書く見た証憑の識別情報を記録する(日付、番号、金額)確かめた事実を数字で書く手続の目的に照らして結論を書く証憑の写しを添付し、確認した箇所に印をつける

結論から書き始めると、結論に合う事実だけを拾ってしまいます。事実を書いてから結論を書いてください。

手続書の手続ごとに、調書を1枚ずつ作ります。1枚に複数の手続を詰め込むと、手続書との対応が追えなくなります。

書く順番は、母集団と抽出、実施した内容、結果、結論です。結論から書き始めると、結論に合う事実だけを拾ってしまいます。事実を積んでから結論に至る順番を守ってください。

証憑の写しは調書に添付します。そのとき、確認した箇所に印をつけてください。決裁欄を見たのであれば決裁欄に、金額を突き合わせたのであれば金額に印をつけます。写しを添付しただけで印がないと、どこを見たのかが伝わりません。

電子データで作業した場合は、画面の写しを取ります。システムの承認履歴を見たのであれば、その画面を保存します。見たという記録が残らない作業は、していないのと同じ扱いになります。

調書の様式づくりと、作成のレビューをお引き受けします

調書は書き方を決めておけば質が安定します。8つの欄を備えた様式の作成、手続書との対応づけ、作成された調書のレビューまで対応します。1人体制でレビュー者を置けない会社では、レビューの役割をお受けすることもできます。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。

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いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

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📊 レビューの意味

調書のレビューは、監査の品質を保っための仕組みです。作成者以外の目が入ることで、手続の抜けや結論の飛躍が見つかります。

レビュー者は、次の点を見ます。手続書の手続がすべて実施されているか、抽出の方法が妥当か、結果から結論が導けるか、例外事項の扱いが適切か、そして証憑の写しが添付されているかです。

レビューした事実は調書に残します。レビュー者名とレビュー日の欄に記入し、指摘があった場合は指摘内容と対応も残します。この記録があると、内部監査に第三者の目が入っていることを示せます。

1人体制でレビュー者がいない場合は、内部監査部門を管掌する役員か、監査役に依頼します。専門的な内容の確認ではなく、記録として成立しているかの確認であれば、会計の専門家でなくても行えます。

🗂 保存と引き継ぎ

調書の保存期間は法令で定められていません。実務では5年とする例が多く、上場審査では過去2期から3期分が見られます。

保存場所は規程で特定してください。個人のパソコンに置いたままだと、担当者の交代で失われます。共有フォルダにテーマごとのフォルダを作り、そこに集約します。

フォルダの構成は、年度、テーマ、工程の3階層が扱いやすい形です。予備調査、往査、報告という工程で分けておけば、あとから探しやすくなります。

紙の証憑を扱った場合も、写しをスキャンして電子で保存します。紙のファイルだけだと、テレワークや拠点をまたいだレビューができません。

⚖️ 上場審査で見られる点

審査では、監査手続書と調書の対応が確認されます。手続書に書いた手続がすべて実施され、その結果が調書に記録されているか。ここがつながっていれば、計画的に監査が行われたと評価されます。

また、指摘事項の根拠が調書にあるかも見られます。報告書に書かれた指摘が、どの調書のどの発見にもとづくのかが追えることが求められます。

逆に、調書には書いてあるのに報告書に載っていない事項があると、なぜ報告しなかったのかを問われます。報告しない判断をした場合は、その理由も調書に書いておいてください。

❓ よくある質問

Q. 調書に何を書きますか。

A. テーマと対象期間、手続の内容、母集団と抽出、実施内容、結果、結論、作成者と作成日、レビュー者とレビュー日の8つです。

Q. 問題なしという書き方は避けるべきですか。

A. 避けてください。何をどう確認したかが分からず、第三者が同じ結論に至れません。

Q. 母集団と抽出はなぜ重要ですか。

A. 20件見たと書いても、全体が何件でどう選んだかが分からないと、その件数で足りるかを判断できません。

Q. 証憑の写しは添付しますか。

A. 添付し、確認した箇所に印をつけてください。写しだけではどこを見たか伝わりません。

Q. 1人体制でレビューはどうしますか。

A. 管掌役員か監査役に依頼します。記録として成立しているかの確認であれば会計の専門家でなくても行えます。

Q. 保存期間は何年ですか。

A. 法定の定めはありません。実務では5年とする例が多く、審査では2期から3期分を見られます。

Q. 調書はどこに保存しますか。

A. 共有フォルダに年度、テーマ、工程の3階層で保存します。個人のパソコンは避けてください。

Q. 調書にあるのに報告しない事項があってもよいですか。

A. あります。ただし報告しないと判断した理由を調書に書いておいてください。

📄 まとめ

調書の基準は、第三者が同じ結論に至れるかどうかです。8つの欄を様式に備えてください。

母集団の件数、抽出の方法、照らした基準、結果の数字を書きます。問題なしの3文字では証拠になりません。

事実を積んでから結論を書きます。証憑の写しには確認した箇所に印をつけてください。

共有フォルダに集約し、レビューの記録を残します。手続書と調書の対応が審査で見られます。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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