SQUEEZEのIPO|優先株式の一斉転換と子会社管理・関連当事者取引の開示【Ⅰの部から読む上場準備】

※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。

2026年4月22日、スマートホテル事業を営む株式会社SQUEEZE(証券コード558A)が東証グロース市場に上場しました。同社は、クラウド宿泊運営システム「suitebook」を中心に、ホテルの予約・受付・清掃などの運営をテクノロジーとオペレーションの両面から支援する会社です。ホテルを自ら所有しない「アセットライト」の運営を掲げる一方で、直近期には物件を借り上げて運営するモデルの導入も進めており、上場直前期には子会社の元役員による不適切な資金流用の判明と、その会計処理・開示も行っています。

結論からいえば、SQUEEZEのⅠの部から学べるのは、①A〜D種優先株式を取得条項で普通株式に一斉転換し、1:100の株式分割まで上場直前の数日で整理した資本政策の締めくくり方、②社外取締役が関係する会社との取引を「縮小・適正化」の方針とともに開示したガバナンスの説明の仕方、③子会社で判明した資金流用を期ごとに特定して計上・開示した内部統制上の対応、④借上物件モデルの拡大と繰延税金資産・資本金1億円をめぐる会計・税務の論点の4点です。本記事では、新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)の記載をもとに、これらの論点を上場準備の実務の目線で整理します。

この記事の論点を自社と比べられる「SQUEEZEのⅠの部と比べる 上場準備ギャップ診断シート(Excel)」を、記事の後半で無料でお渡ししています。

SQUEEZEはどのような会社で、どの市場に上場したのか

まず、会社と上場の概要を確認します。SQUEEZEは2014年9月に東京都港区で、資本金1,000千円で設立されました。Ⅰの部の沿革によれば、創業者である代表取締役CEOの舘林真一氏がシンガポール在住中に国内の民泊運営支援を行うなかで、訪日市場の拡大を実感したことが設立のきっかけとされています。

事業セグメントは「スマートホテル事業」の単一セグメントで、Ⅰの部では「テクノロジーとオペレーションの最適化による、効率性と柔軟性を追求したホテル運営を行う事業」と説明されています。グループは当社と連結子会社6社、関連会社1社の計8社で構成されています。決算期は12月で、Ⅰの部の最近事業年度は第12期(2025年12月期)です。

項目 内容
会社名 株式会社SQUEEZE(英訳名 SQUEEZE Inc.)
証券コード・市場 558A・東証グロース市場
上場日 2026年4月22日
本店所在地 北海道北広島市(登記上の本店。業務は東京都渋谷区の最寄りの連絡場所で実施)
代表者 代表取締役CEO 舘林 真一
設立 2014年9月(東京都港区、資本金1,000千円)
決算期 12月(最近事業年度は第12期=2025年12月期)
事業 スマートホテル事業(単一セグメント)
従業員数(連結) 123名(臨時509名・外数、2026年2月28日現在)
機関設計 監査役会設置会社
会計監査人 ESネクスト有限責任監査法人(継続監査期間2年)

従業員数は、2026年2月28日現在で連結123名、臨時雇用者は509名(年間平均・外数)です。臨時雇用者数は最近1年間で170名増えており、その理由は海外子会社でのオペレーション要員やエンジニアの増加と記載されています。提出会社単体では79名、平均年齢33.1歳、平均勤続年数2.3年です。単体の従業員数は第8期(2021年12月期)の26名から第12期の75名へと増えており、事業の拡大にあわせて人員を急速に増やしてきた会社であることがわかります。

本店所在地にも特徴があります。2014年に東京都港区で設立された後、2023年12月に東京都渋谷区、2025年3月に北海道北広島市へと本店を移しています。Ⅰの部の表紙では、登記上の本店は北広島市とされ、実際の業務は渋谷区の「最寄りの連絡場所」で行っている旨が記載されています。北広島市とは2025年7月に包括連携協定を結んでおり、同市のES CON FIELD HOKKAIDOに関わるホテル・温浴施設の運営にも参画しています。

上場準備会社にとってのポイントは、本店所在地と実際の業務拠点が異なる場合、Ⅰの部の表紙で「最寄りの連絡場所」として実務の拠点を示すことになる点です。また、税効果会計の注記では、本社移転後の法定実効税率を用いる旨も記載されています。本店の移転は登記や税務の手続だけでなく、法定実効税率や開示の書きぶりにも影響しうるため、上場準備の途中で移転する場合は、経理・法務・IR担当が早めに情報を共有しておくとよいでしょう。

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何で稼ぐ会社か:事業内容と収益モデル

SQUEEZEの主要な顧客は、不動産所有者やホテル事業者です。同社は宿泊施設の所有者や運営主体と直接契約し、施設の企画段階から開業後の運営までを支援しています。ミッションは「価値の詰まった社会を創る」、ビジョンは「空間と時間の可能性を広げるプラットフォームになる」と掲げられています。

SQUEEZEの事業モデル不動産所有者ホテル事業者SQUEEZEスマートホテル事業(単一セグメント)宿泊者(訪日客など)3つの領域で運営を支援SaaS領域suitebook(CRM・PMS等)クラウドオペレーション領域レセプション・レベニュー管理オンサイトオペレーション領域清掃・設備管理・接客主な提供形態SaaS型システムを提供BPaaS型システム+業務代行マネジメント・コントラクト型運営を受託マスターリース型借り受けて自社運営課金:施設の売上・利益に連動した成功報酬、システム利用料、固定料金等の組み合わせ運営委託宿泊提供

図1 SQUEEZEの事業モデルと提供形態(Ⅰの部「事業の内容」をもとに筆者作成)

3つの領域と4つの提供形態

Ⅰの部では、同社のサービスを3つの領域に分けて説明しています。1つ目は「SaaS領域」で、クラウド宿泊運営システム「suitebook」を通じて、CRM(顧客管理)、販売管理、PMS(宿泊施設の管理システム)などの機能を提供します。2つ目は「クラウドオペレーション領域」で、遠隔での受付(クラウドレセプション)や、客室単価・販売戦略を調整するレベニューマネジメントを担います。3つ目は「オンサイトオペレーション領域」で、現地でのゲスト対応、設備管理、客室清掃(ルームキーピング)などを行います。

提供形態も複数あります。システムを提供するSaaS型、システムと業務代行を組み合わせたBPaaS型、施設の運営を受託するマネジメント・コントラクト型、物件を賃貸借等で借り受けて同社が主体となって運営するマスターリース型などです。自社ブランドとして「Minn」と「Theatel」を展開しています。課金形態は、宿泊施設の売上や利益に連動した成功報酬型、SaaS型システム等の利用料、固定料金などを組み合わせたものとされています。

リカーリング収益とKPI

同社は、2025年12月期においてリカーリング収益が売上高の90%超を占めると記載しています。ここでのリカーリング収益は、DXホテルの企画・開発等の定常的な運営支援以外の収益を除いた売上高の、連結売上高に対する割合として定義されています。また、企画段階から関与してフル支援している一部の施設では、GOPマージン(営業総利益率)が70%超となっており、中規模ホテルの一般的な水準(35〜40%程度)と比較しています。この数値は、導入から3年程度が経過した中規模の3施設の2025年実績で、ホテル業界の統一会計基準であるUSALIに準拠していることを確認したものと説明されています。

経営上の指標としては、財務指標である売上高と売上総利益を重視し、KPIとしてGMV(流通総額)とRUM(運営客室数)を開示しています。2025年12月期のGMVは64,903百万円、RUMは21,351室です。ただし、GMVとRUMは監査法人の監査対象外であり、売上高と一対一で対応するものではないと明記されています。国内の客室数1,827,133室のうち、同社の導入客室数は2025年12月末で2万室を超え、市場占有率は1.2%とされています。

連結の主要指標とKPI指標2024年12月期2025年12月期売上高(千円)3,068,2545,367,866売上総利益(千円)1,099,9472,254,200営業利益(千円)240,586511,577GMV(百万円)21,22464,903RUM(室)9,05921,351※GMV・RUMは監査法人の監査対象外で、売上高と一対一には対応しない(Ⅰの部の記載)

図2 連結の主要指標と会社が重視するKPI(Ⅰの部「経営成績等の状況の概要」等をもとに筆者作成)

上場準備会社にとってのポイントは、独自のKPIを開示する場合に、その定義と監査対象かどうかを明確に書き分けることです。GMVのような取扱高の指標は、会社の収益(売上高)とは計上の考え方が異なることが多く、読み手が売上高と混同しないような注記が欠かせません。SQUEEZEのように「監査対象外」「売上高と一対一対応しない」と明示しておくことは、引受審査や取引所審査でKPIの算定根拠を問われたときにも説明の土台になります。グロース市場では事業計画や成長可能性の説明が重視されるため、KPIの集計方法は申請書類の作成前に社内で固めておきたいところです(参考:グロース市場の「高い成長可能性」とは)。

主要な販売先

主要な販売先として、2025年12月期はGala合同会社(692,309千円、売上高の12.9%)が記載されています。2024年12月期は、Gala合同会社(577,187千円、18.8%)、東京建物株式会社(454,853千円、14.8%)、ドムス合同会社(373,012千円、12.1%)の3社が10%以上の販売先でした。売上高の拡大にともない、特定の販売先への集中度が下がっている様子が読み取れます。

事業等のリスクでは、物件の供給元である不動産デベロッパー等への依存についても触れています。賃借・運営受託契約の期間はおおむね2年〜10年で、解除事由は合意、重大な契約違反、不可抗力、法令上の制限などとされています。ホテル運営の受託ビジネスでは、契約期間と解除条件が事業の継続性に直結するため、審査では主要な契約の内容を一覧にして説明できるようにしておくことが重要です。

民泊支援からスマートホテルへ:沿革と上場までの道のり

SQUEEZEの沿革は、民泊の運営支援から始まり、自社システムの開発、ホテル運営、大手企業との提携へと段階的に広がっています。2014年11月に民泊のトータルサポート「Mister Suite」を開始し、2017年4月にクラウド宿泊運営システム「suitebook」をローンチしました。同年9月には大阪で「Minn 十三」を開業し、スマートホテル事業を開始しています。

その後は不動産・鉄道系の企業との提携が続きます。2018年3月にケネディクス株式会社と資本業務提携、同年9月に京王電鉄株式会社・京王不動産株式会社と業務提携、2020年4月に株式会社日本エスコン(現 株式会社エスコン)と第三者割当増資を伴う協業を開始し、2021年5月にはJR東日本スタートアップ株式会社と資本業務提携を結んでいます。2021年12月には、株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントと業務提携し、ES CON FIELD HOKKAIDO「TOWER 11」のホテル・温浴施設の運営パートナーとして参画しました。

設立から上場までの主な沿革事業の立ち上げと拡大2014年9月東京都港区で設立2017年4月suitebookローンチ2017年9月Minn 十三開業ホテル事業開始2019年4月カンボジアに子会社設立2021年12月TOWER 11の運営に参画上場準備の本格化2024年5月内部統制基本方針決議2025年3月本店を北広島市へ2026年1月4日優先株を普通株へ転換2026年1月6日1:100の株式分割2026年4月東証グロース市場に上場

図3 設立から上場までの主な沿革(Ⅰの部「沿革」「株式等の状況」をもとに筆者作成)

海外では、2019年4月にカンボジアにSQUEEZE ASIA CO., LTD.を設立し、開発業務やオペレーション業務を担わせています。2025年には国内に株式会社SQUEEZE商事(備品・商品の仕入業務)と株式会社SQUEEZE Halo(清掃業務)、カンボジアにSQUEEZE GLOBAL CREW CO., LTD.(清掃人材の育成業務)を設立し、2026年2月には台湾の子会社と、宅地建物取引業を予定する株式会社SQUEEZE Next Partnersを設立しています。子会社はいずれも新設で、M&Aによる取得の記載はありません。

グループ会社の構成(すべて新設)SQUEEZE(当社)新設した子会社(設立時期・主な業務)SQUEEZE ASIAカンボジア・2019年4月開発・オペレーションSQUEEZE商事国内・2025年備品・商品の仕入SQUEEZE Halo国内・2025年清掃SQUEEZE GLOBAL CREWカンボジア・2025年清掃人材の育成台湾の子会社2026年2月SQUEEZE Next Partners国内・2026年2月宅地建物取引業を予定連結子会社は2024年12月期1社→2025年12月期4社(持分法適用関連会社1社も加わる)

図4 当社が新設した子会社(Ⅰの部「沿革」「関係会社の状況」をもとに筆者作成)

上場準備の観点では、2024年5月16日の取締役会で内部統制システムの構築に関する基本方針を決議し、2025年12月の取締役会で優先株式の取得と株式分割を決議しています。そして2026年1月4日に優先株式を普通株式に転換、1月5日の臨時株主総会で定款を変更し、1月6日に1:100の株式分割を行ったうえで、同年4月に上場しています。

上場準備会社にとってのポイントは、グループ会社の新設が上場直前期に集中する場合、子会社管理の体制整備が同じスピードで求められることです。SQUEEZEでは、2024年12月期の連結子会社は1社でしたが、2025年12月期には4社となり、持分法適用関連会社も1社加わりました。連結範囲が広がると、連結決算の手続、子会社の規程整備、子会社監査の対象が一気に増えます。上場スケジュールのどこで負荷がかかるかを事前に見積もっておくことが大切です(参考:上場スケジュールはどこで遅れるか)。

業績はどう推移してきたか:赤字から黒字への転換

次に業績を見ていきます。Ⅰの部の「主要な経営指標等の推移」では、提出会社単体の5期分と、連結の2期分(第11期・第12期)が記載されています。単体の第8期(2021年12月期)から第10期(2023年12月期)までの数値は、会社計算規則に基づいて算出したもので、監査法人の監査を受けていない旨が注記されています。

業績の推移(単体・第8期〜第12期)売上高(百万円)01,5003,0004,5006,00021/1222/1223/1224/1225/124378102,2453,0685,365経常損益(百万円)021/1222/1223/1224/1225/12△200△112160221567

図5 単体の売上高と経常損益の推移(百万円未満四捨五入。第8期〜第10期は監査対象外。Ⅰの部「主要な経営指標等の推移」をもとに筆者作成)

単体の売上高は、第8期の437,310千円から第12期の5,364,708千円へと拡大しています。経常損益は第8期が△199,963千円、第9期が△111,859千円と損失でしたが、第10期に160,226千円の黒字に転じ、第12期は566,576千円となっています。第8期・第9期の損失計上は、新型コロナウイルス感染症の影響によるものと注記されています。

項目(連結・千円) 2024年12月期 2025年12月期
売上高 3,068,254 5,367,866
売上総利益 1,099,947 2,254,200
営業利益 240,586 511,577
経常利益 212,944 526,862
親会社株主に帰属する当期純利益 291,508 617,042
純資産額 862,659 1,480,247
総資産額 2,766,499 4,302,093
自己資本比率 31.2% 34.4%
営業キャッシュ・フロー 140,734 688,138
現金及び現金同等物期末残高 1,032,384 1,928,399

連結では、2025年12月期の売上高が5,367,866千円(前年同期比74.9%増)、営業利益が511,577千円(同112.6%増)、経常利益が526,862千円(同147.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が617,042千円(同111.7%増)です。運営施設数は前期末から8施設・365室増えて40施設1,232室となり、「エスコンフィールドHOKKAIDOホテル 北広島駅前」や「Minn 烏丸五条 京都 Station North」などが新たに加わったと記載されています。

経営環境として、Ⅰの部は2025年の訪日外国人数が4,268万人(前年比15.8%増)、訪日外国人旅行消費額が9兆4,559億円(前年比16.4%増)であったことを挙げています。また、出入国管理法の改正により宿泊業も特定技能1号の対象となったことにも触れています。

当期純利益が税引前利益を上回る理由

連結損益計算書を見ると、2025年12月期の税金等調整前当期純利益は526,862千円(特別損益はなし)である一方、当期純利益は617,042千円と、税引前の利益を上回っています。これは、法人税等調整額が△96,921千円となり、法人税等の合計がマイナスになったためです。税効果会計の注記では、税効果会計適用後の法人税等の負担率は2024年12月期が△36.9%、2025年12月期が△17.1%で、主な要因として評価性引当額の減少が挙げられています。

当期純利益が税引前利益を上回る仕組み税金等調整前当期純利益526,862千円法人税等の合計がマイナスうち法人税等調整額△96,921千円当期純利益617,042千円税効果会計適用後の法人税等の負担率2024年12月期2025年12月期法人税等の負担率△36.9%△17.1%

図6 2025年12月期の税引前利益と当期純利益の関係(Ⅰの部の連結損益計算書・税効果会計の注記をもとに筆者作成)

赤字から黒字に転換した会社では、過去の税務上の繰越欠損金に対して計上していなかった繰延税金資産を、将来の課税所得の見込みに応じて計上するケースがよくあります。その結果、黒字化の初期には税負担率がマイナスになり、当期純利益が税引前利益を上回ることがあります。上場準備会社では、こうした税効果の影響と本業の利益(営業利益や経常利益)を分けて説明できるようにしておくと、投資家への説明や事業計画との整合の確認がスムーズになります。

グロース市場での成長可能性の説明

SQUEEZEは経営戦略として、①大手企業へのSQUEEZEモデルの導入(エンタープライズターゲット)、②顧客単価を高めるアップセル・クロスセルの拡充、③レジデンスや商業施設、スマートシティなど他のアセットタイプへの事業領域の拡張、の3つを挙げています。現時点では収益性・効率の観点から主にエンタープライズを対象とし、中堅・中小企業には一部のソリューションから段階的に提供する方針とされています。

また、ホテルを所有しないアセットライトの経営で貸借対照表のリスクを抑え、リカーリング収益で損益のぶれを抑えるという考え方が示されています。グロース市場の審査では、こうした成長の道筋が、過去の実績やKPIとどうつながっているかが問われます。SQUEEZEのように「どの顧客層を、どの順番で、どの指標で伸ばすのか」を具体的に示すことは、上場準備会社にとって参考になる書き方です(参考:グロース市場事前チェックリスト)。

資本政策と株主構成:優先株式はどう整理されたか

SQUEEZEの資本政策で最も特徴的なのは、上場前に存在していたA種〜D種の4種類の優先株式を、上場申請の直前に普通株式へ一斉に転換した点です。ここでは、株主構成、優先株式の整理、株式分割、株式の移動、新株予約権の順に見ていきます。

大株主は代表者・事業会社・VCの3グループ

Ⅰの部の「株主の状況」によれば、新株予約権による潜在株式を含めた総数3,498,800株のうち、筆頭株主は代表取締役CEOの舘林真一氏(760,500株、21.74%)です。続いて株式会社エスコン(16.33%)、ケネディクス株式会社(16.29%)、インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合(16.29%)、舘林氏の資産管理会社である株式会社GM(11.43%)、ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合(4.86%)と続きます。舘林氏と株式会社GMを合わせると1,160,500株(33.17%、潜在株式を含む)です。

大株主の構成(上位6名)舘林 真一(代表取締役CEO)21.74%㈱エスコン16.33%ケネディクス㈱16.29%インキュベイトファンド3号16.29%㈱GM(代表者の資産管理会社)11.43%ジャフコSV4共有投資事業組合4.86%代表者・資産管理会社事業会社VC

図7 大株主上位6名の所有割合(潜在株式を含む総数3,498,800株に対する割合。Ⅰの部「株主の状況」をもとに筆者作成)

株主 所有株式数(うち潜在株式) 割合
舘林 真一(代表取締役CEO) 760,500株(160,500株) 21.74%
株式会社エスコン 571,400株 16.33%
ケネディクス株式会社 570,100株 16.29%
インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合 570,000株 16.29%
株式会社GM(代表者の資産管理会社) 400,000株 11.43%
ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合 170,000株 4.86%
Canal Ventures Collaboration Fund 1号ほか2者 各35,700株 各1.02%

このほか、FFGベンチャー投資事業有限責任組合第1号、JR東日本スタートアップ株式会社、イノベーション・ホテル有限責任事業組合などが株主に名を連ねています。2026年2月28日現在の所有者別状況では、株主数は16名で、金融商品取引業者1名(18.72%)、その他の法人9名(60.72%)、個人その他6名(20.56%)となっています。親会社等に該当する株主はいません。

沿革で見たとおり、エスコンやケネディクス、JR東日本スタートアップは資本業務提携の相手先でもあります。事業会社が株主として入っている場合、上場後もその会社との取引が継続することが多いため、取引条件の妥当性や独立性の説明が求められます。VCが保有する株式は、上場時の流通株式の計算にも関係します(参考:ベンチャーキャピタルの持株は流通株式から除かれるか)。

取得条項による優先株式の一斉転換と株式分割

上場前の発行済株式は、普通株式10,000株、A種優先株式5,000株、B種優先株式2,972株、C種優先株式5,701株、D種優先株式6,785株でした。SQUEEZEは2025年12月11日の取締役会で、取得条項に基づいてA種〜D種の優先株式すべてを取得することを決議し、2026年1月4日付で取得しました。その対価として優先株式1株につき普通株式1株を交付し、取得した優先株式は同日すべて消却しています(会社法178条)。この結果、発行済株式は普通株式30,458株となりました。

続いて、2026年1月5日の臨時株主総会で定款を変更し、A種〜D種優先株式に関する定めを廃止するとともに、単元株制度(1単元100株)を採用しました。そして2026年1月6日付で普通株式1株を100株に分割し、発行済株式総数は3,045,800株、発行可能株式総数は12,183,200株となっています。株式分割の目的は、流動性の向上と投資家層の拡大と記載されています。

優先株式の一斉転換と株式分割取得前の発行済株式普通株式 10,000株A種優先株式 5,000株B種優先株式 2,972株C種優先株式 5,701株D種優先株式 6,785株普通株式30,458株(2026年1月4日)普通株式3,045,800株(1月6日分割後)取得条項により優先株式1株につき普通株式1株を交付し、優先株式は同日消却1月5日の臨時株主総会で種類株式の定めを廃止し、単元株制度(100株)を採用1:100

図8 A〜D種優先株式の取得・普通株式の交付と株式分割による発行済株式数の変化(Ⅰの部「株式等の状況」をもとに筆者作成)

資本政策の時系列株式・新株予約権の発行と移動2018年3月第3回SO行使35,000円2021年3月D種優先株140,000円2022年12月〜第5回・第6回行使73,000円2024年6月B種優先株移動分割後2,300円2024年11月〜第7回〜第9回行使104,699円上場直前の株式の整理2025年12月取得条項に基づく取得決議2026年1月4日優先株を普通株へ1:1・消却2026年1月5日定款変更単元株100株2026年1月6日株式分割1株→100株2026年4月東証グロース市場に上場

図9 新株予約権・優先株式・株式分割の時系列(価格は注記がない限り分割前。Ⅰの部「株式等の状況」「株式公開情報」をもとに筆者作成)

なお、優先株式が残っていた期間の1株当たり純資産額はマイナスで表示されています(2025年12月期の連結で△257.50円)。これは、A種〜D種優先株式に優先して配分される残余財産の額を純資産から控除して算定しているためです。優先株式を発行している未上場会社では、このようにⅠの部の1株当たり純資産額がマイナスになることがあり、注記でその理由を説明しておく必要があります。

上場準備会社にとってのポイントは、優先株式の転換は「取得条項」「定款変更」「株式分割」「単元株制度」の手続がセットになり、取締役会・株主総会・種類株主総会の日程を前もって組む必要があることです。SQUEEZEでは、取締役会決議(12月11日)から転換(1月4日)、定款変更(1月5日)、株式分割(1月6日)までを短期間で完了しています。優先株式の普通株式への転換の考え方は、種類株式は上場前に普通株式へ戻すのかでも解説しています。

資本金1億円の維持と欠損填補

資本金の推移にも特徴があります。2021年3月25日にD種優先株式357株を発行価格140,000円で第三者割当(主な割当先はJR東日本スタートアップ株式会社)した結果、資本金は124,990千円となりましたが、同年8月17日に会社法447条1項に基づいて資本金24,990千円を資本準備金に振り替え、資本金を100,000千円に戻しています。さらに2022年3月24日には、資本準備金1,798,694千円をその他資本剰余金に振り替え、繰越利益剰余金の欠損填補に充てています(会社法448条1項・452条)。

事業等のリスクでは、2025年12月末の法人税法上の繰越欠損金が387,697千円あり、資本金1億円で中小法人等に該当するため、最大約132,204千円のキャッシュ・フロー上のメリットがあると記載しています。一方で、中小法人等に該当しなくなった場合には、繰越欠損金の控除限度額が所得の50%に制限されることにも触れています。上場時の増資で資本金が増える場合、税務上の取扱いが変わる可能性があるため、資本金と資本準備金への組入れ方は資本政策の段階で検討しておくことが大切です。

資本金1億円の維持と欠損填補2021年3月D種優先株式発行資本金124,990千円2021年8月資本金24,990千円を資本準備金へ振替え資本金100,000千円に2022年3月資本準備金1,798,694千円をその他資本剰余金に振り替え、欠損を填補資本金1億円で中小法人等に該当することの効果(2025年12月末)税務上の繰越欠損金387,697千円キャッシュ・フロー上のメリット最大約132,204千円※中小法人等に該当しなくなった場合、繰越欠損金の控除限度額は所得の50%に制限

図10 資本金の推移と、中小法人等に該当することの税務上の効果(Ⅰの部「発行済株式総数、資本金等の推移」「事業等のリスク」をもとに筆者作成)

上場前の株式移動と価格の決め方

Ⅰの部の「特別利害関係者等の株式等の移動状況」に記載されている移動は1件のみです。2024年6月10日に、舘林真一氏からイノベーション・ホテル有限責任事業組合へ、B種優先株式26,000株(分割後換算)が59,800,000円(1株2,300円)で譲渡されています。理由は「協力関係強化のため」とされ、価格はDCF法、純資産方式及び類似会社比準方式により算出した価格を総合的に勘案し、譲渡人と譲受人の協議により決定したと記載されています。

上場前の一定期間に行われた株式の移動は、Ⅰの部で移動前後の所有者、株数、価格、理由まで開示されます。価格の算定方法は、引受審査・取引所審査で必ず確認される項目です。複数の評価方法を組み合わせた場合でも、どの方法をどのように勘案したかを説明できる資料を残しておきましょう(参考:上場前に株式を動かすとどうなるか(継続所有の確約)、未上場株式の株価算定はどの方法を使うか)。

ストック・オプションは第3回〜第9回で潜在株式14.8%

Ⅰの部に記載されている新株予約権(ストック・オプション)は第3回から第9回までの7回分で、2026年2月28日現在の目的となる株式数は合計453,000株、発行済株式総数3,045,800株に対する割合は14.8%です。行使価額(分割前)は、2018年の第3回が35,000円、2021年〜2023年の第4回〜第6回が73,000円、2024年〜2025年の第7回〜第9回が104,699円と、段階的に上がっています。

回(決議日) 主な対象者 目的株式数(分割後) 行使価額(分割後) 特徴
第3回(2018/3/22) 取締役1名、従業員1名 23,000株 350円 無償・在籍条件
第4回(2021/3/25) 取締役2名、従業員1名 42,500株 730円 在籍条件
第5回(2022/12/22) 取締役・子会社取締役・監査役・外部協力者 114,500株 730円 有償(業績条件・株価条件付)
第6回(2023/2/28) 取締役2名、従業員14名 83,000株 730円 在籍条件
第7回(2024/11/7) 取締役・子会社取締役・監査役・従業員 8,000株 1,047円 有償(業績条件・株価条件付)
第8回(2024/11/7) 取締役2名、従業員7名 150,000株 1,047円 在籍条件
第9回(2025/1/10) 従業員7名 32,000株 1,047円 在籍条件

このうち第5回と第7回は、新株予約権の払込みを伴う有償のストック・オプションです。第5回では、2022年12月期〜2026年12月期のいずれかの事業年度で、損益計算書の売上高が40億円を超えた場合に100%、20億円を超えた場合に50%を行使できるという業績条件が付されています。第7回は、2024年12月期〜2027年12月期のいずれかで売上高60億円超なら100%、30億円超なら50%という条件です。あわせて、割当日から一定期間内に行使価額を下回る価格で株式の発行や売買が行われた場合などには行使できなくなる株価条件も設けられています。

第三者割当等の概況では、第7回〜第9回の行使価額はDCF法等により算出した価格を総合的に勘案して決定したと記載されています。また、第9回については、上場前の割当てに関する継続所有等の確約(取引所の有価証券上場規程施行規則272条に基づくもの)の対象として記載されています。ストック・オプションに係る費用計上額は両期とも「該当事項なし」で、未公開企業であることから公正な評価単価を本源的価値で見積もっていると注記されています。

上場準備会社にとってのポイントは、ストック・オプションの付与を「回ごとの目的」と「行使価額の根拠」で説明できるようにすることです。潜在株式比率が10%を超えると、投資家から希薄化の説明を求められることが多く、SQUEEZEも事業等のリスクで新株予約権の行使による希薄化を「発生可能性:高」として開示しています。税制適格要件や有償ストック・オプションの設計については、税制適格ストックオプションも参考にしてください。

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コーポレート・ガバナンス:取締役4名・監査役3名の体制をどう運用しているか

SQUEEZEの機関設計は、取締役会・監査役会・会計監査人を置く監査役会設置会社です。取締役は4名(うち社外取締役1名)、監査役は3名(うち社外監査役2名)で、役員7名のうち女性は1名(14.3%)です。

SQUEEZEの機関設計株主総会取締役会4名(うち社外1名)監査役会3名(うち社外2名)代表取締役CEO経営会議(原則月1回)会計監査人ESネクスト有限責任監査法人内部監査室室長1名・担当者1名+外部委託リスク・コンプライアンス委員会(委員長CEO)選任選任監査選定・監督連携直轄

図11 機関設計と主な会議体(Ⅰの部「コーポレート・ガバナンスの状況等」をもとに筆者作成)

役職 氏名 主な経歴(Ⅰの部の記載から抜粋)
代表取締役CEO 舘林 真一 ゴールドマン・サックス証券シンガポール支社、トリップアドバイザー シンガポール支社を経て2014年に当社設立
取締役CBO 丸野 卓也 タナベ経営、リンクアンドモチベーション、グリー等を経て2020年入社、2022年取締役
取締役CFO 安養寺 鉄彦 グリー、ContractS(代表取締役)等を経て2024年入社、2025年3月取締役CFO
社外取締役 原田 静織 トリップアドバイザー代表取締役等。2024年3月当社監査役、同年12月取締役
常勤監査役 松尾 繁樹 公認会計士・税理士。2016年当社会計参与、2019年監査役、2024年常勤監査役
社外監査役 佐々木 翔平 クラウドワークス取締役等。2024年8月就任
社外監査役 関口 健一 弁護士。2024年12月就任

取締役会は年25回、監査役会は年12回

取締役会は毎月1回の定時開催に加えて臨時に開催され、最近事業年度は25回開催されました。出席状況は全員100%(期中就任の安養寺氏は21回中21回)で、経営戦略、事業計画、重要な投資、重要な組織・人事、コーポレート・ガバナンスなどを検討したと記載されています。監査役会は毎月1回の定時開催と臨時開催で、最近事業年度は12回、全員が全回出席しています。

このほか、代表取締役CEOが議長を務め、常勤取締役等が参加する経営会議(原則月1回、常勤監査役がオブザーバー出席)と、リスク・コンプライアンス規程に基づくリスク・コンプライアンス委員会(委員長は代表取締役CEO、四半期に1度と随時開催)が設けられています。指名・報酬に関する任意の委員会の記載はありません。

常勤監査役の松尾繁樹氏は公認会計士・税理士で、社外監査役ではありません。2016年1月に当社の会計参与に就任し、2019年4月に監査役、2024年4月に常勤監査役となった経歴が記載されています。常勤監査役に会計の専門家を置くことで、監査法人とのやり取りや会計上の論点の検討に厚みが出ます(参考:監査役に会計の知識は必要か、常勤監査役は必要か)。

社外取締役が関係する会社との取引をどう説明しているか

社外取締役の原田静織氏は、2024年3月に当社の監査役に就任し、同年12月に取締役に就任しています。原田氏が代表を務め、議決権の過半数を保有するTOUCH GROUP株式会社と当社との間には、広告宣伝の委託取引があり、関連当事者との取引として開示されています。

事業年度 相手先・関係 取引内容 取引金額 期末残高
2024年12月期 TOUCH GROUP㈱(社外取締役が議決権の過半数を保有、役員の兼任) 広告宣伝の委託 16,350千円 未払金10,175千円
2025年12月期 同上 広告宣伝の委託 9,150千円 未払金5,720千円

取引条件については、独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っていると記載されています。また、役員の状況の社外役員の欄では、取引金額は僅少であり、代替可能な取引先の検討を進めていて今後の取引金額は段階的に縮小・適正化していく方針であることから、独立性に影響はないと判断している旨が説明されています。なお、同社は社外役員の独立性に関する基準を特段定めておらず、会社法の要件や東京証券取引所の判断基準を参考にしていると記載しています。

上場審査では、関連当事者との取引について「取引の必要性」と「取引条件の妥当性」が確認され、必要性の乏しい取引は上場前に解消することが原則とされます。役員が関係する会社との取引を継続する場合には、SQUEEZEのように、金額の水準、取引条件、今後の方針(縮小・適正化など)をあわせて説明できるようにしておくことが重要です。社外役員の独立性の判断理由まで含めて開示されている点は、上場準備会社の書きぶりの参考になります(参考:IPO審査の「企業経営の健全性」(関連当事者取引)、関連当事者との取引はどこまで開示するか)。

社外役員の新株予約権と役員報酬の決め方

社外取締役と社外監査役は、いずれも当社の新株予約権を保有しています。第三者割当等の概況によれば、2024年11月7日に発行された第7回の有償ストック・オプションは、原田静織氏(取締役)、松尾繁樹氏・関口健一氏(監査役)がそれぞれ2,000株分を取得しています。社外役員の新株予約権の保有状況は、役員の状況の社外役員の欄でも、原田氏2,000株相当、佐々木氏4,000株相当、関口氏2,000株相当と記載されています。

役員報酬は、株主総会で決議された総額の範囲内で、役職、経験、経営上の重要性をもとに、社外取締役と監査役への諮問を経て取締役会で個別の報酬額を決める方針です。報酬限度額は取締役が年額6,000万円以内、監査役が年額1,500万円以内(いずれも2025年3月27日の定時株主総会決議)で、すべて固定報酬(基本報酬)であり、業績連動報酬はありません。最近事業年度の報酬総額は、取締役(社外を除く)3名で41,340千円、監査役(社外を除く)1名で5,580千円、社外役員3名で7,200千円です。

上場準備会社にとってのポイントは、任意の報酬委員会を設けない場合でも、社外役員の意見を聞くプロセスを決定方針に組み込むことで、報酬決定の客観性を説明できることです。また、監査役や社外役員にストック・オプションを付与する場合には、監査の独立性との関係をどう考えるかを社内で整理し、開示で説明できるようにしておくとよいでしょう。

内部監査・内部統制:少人数の体制とグループ管理の課題

内部監査は室長1名・担当者1名と外部委託

SQUEEZEの内部監査は、代表取締役社長直轄の内部監査室が担当しています。Ⅰの部によれば、内部監査は内部監査室長1名、内部監査担当者1名及び外部委託先によって、内部監査規程に基づいて実施されています。必要に応じて、社長が命じた他部署の者が補助する体制も記載されています。

自己監査の回避については、内部監査担当者が自己の所属部門以外について内部監査を実施する旨が記載されています。監査結果は、取締役会への直接報告は行っていないものの、代表取締役及びその他の全取締役に個別に報告しているとされています。そのうえで、被監査部門への改善指示、改善状況の報告、フォローアップ監査という流れで改善を確認しています。

三様監査の連携と内部監査の報告経路監査役(常勤1名)公認会計士内部監査室室長1名+担当者1名会計監査人継続監査期間2年「実効性のある三様監査」を目指す代表取締役・全取締役取締役会への直接報告は行っていない(改善指示→改善報告→フォローアップ監査)定期的な情報交換定期的な情報交換定期的な意見交換個別に報告

図12 三様監査の連携と内部監査結果の報告経路(Ⅰの部「監査の状況」をもとに筆者作成)

三様監査の連携については、常勤監査役が内部監査人・会計監査人と定期的に情報交換会を行い、「実効性のある三様監査」を目指すと記載されています。常勤監査役は取締役会、経営会議、リスク・コンプライアンス委員会に出席し、子会社を含む事業拠点の視察・往査も行っています。内部監査室は監査役会と連携して内部統制全般の整備・運用状況を評価し、代表取締役社長に報告する体制です。

上場準備会社にとってのポイントは、内部監査を少人数と外部委託で行う場合に、①誰がどの部門を監査するか(自己監査の回避)、②外部委託先の作業を誰が監督し結論に責任を持つか、③結果をどこへ報告するか、の3点を規程と運用の両面で明確にしておくことです。内部監査の報告先を代表者だけにするか、取締役会や監査役会にも報告するかは会社ごとに設計が分かれるところで、SQUEEZEは全取締役への個別報告という形をとっています(参考:内部監査の担当者と兼務(自己監査の回避)、内部監査の報告先は社長だけでよいのか、監査役監査・内部監査・会計監査(三様監査))。

内部統制システムの基本方針とリスク管理

内部統制システムの構築に関する基本方針は、2024年5月16日の取締役会で決議されています。主な内容として、リスク・コンプライアンス規程の制定、内部監査室による監査、内部通報制度、反社会的勢力排除規程、文書管理規程、情報システム管理規程、重大事故発生時の対策本部の設置、月次の予算管理、取締役会の毎月1回以上の開催などが挙げられています。

子会社の管理については、関係会社管理規程を定め、統括管理取締役を任命し、子会社から毎月の業況を当社の取締役会に報告させる体制とされています。監査役と内部監査室による子会社監査も行う方針です。また、優先的に対処すべき課題として「内部統制の強化」が挙げられ、規程類の見直し、内部監査機能の強化、監査法人・顧問弁護士等との連携が記載されています。事業等のリスクでも、「小規模体制」と「内部管理体制の構築」がいずれも発生可能性「中」として開示されています。

子会社管理の仕組み取締役会監査役・内部監査室統括管理取締役(関係会社管理規程)子会社(国内外)対処すべき課題「内部統制の強化」規程類の見直し内部監査機能の強化監査法人・顧問弁護士等との連携毎月の業況を報告管理子会社監査

図13 関係会社管理規程に基づく子会社管理と、対処すべき課題としての内部統制の強化(Ⅰの部「コーポレート・ガバナンスの状況等」「対処すべき課題」をもとに筆者作成)

子会社元役員による資金流用はどう処理・開示されたか

SQUEEZEのⅠの部で、内部統制の観点から特に注目したいのが、連結子会社の関連当事者との取引として開示されている事案です。Ⅰの部によれば、子会社の元役員による不適切な資金流用が2025年8月に判明しました。同社は、各連結会計年度に帰属する金額を特定したうえで、損害に係る債権を長期未収入金として計上し、同氏に返還を請求しています。

事業年度 取引内容 金額 期末残高 会計処理
2024年12月期 子会社の元役員による損害に係る未収入金 39,557千円 長期未収入金48,627千円 残高全額に貸倒引当金
2025年12月期 同上 18,672千円 長期未収入金67,668千円 残高全額に貸倒引当金

期末残高の全額に貸倒引当金が計上され、貸倒引当金繰入額は営業外費用に計上されています(2024年12月期39,557千円、2025年12月期18,672千円)。なお、同氏は2025年8月7日付で子会社の役員を退任し、関連当事者に該当しないこととなったと記載されています。また、提出会社単体の損益計算書では、2025年12月期に連結子会社SQUEEZE ASIA CO., LTD.の株式に係る関係会社株式評価損58,608千円が特別損失として計上されています。

子会社元役員による資金流用への対応2025年8月資金流用が判明各連結会計年度に帰属する金額を特定長期未収入金に計上元役員に返還請求残高全額に貸倒引当金を計上(営業外費用)※元役員は2025年8月7日付で子会社役員を退任。単体では関係会社株式評価損58,608千円を 特別損失に計上(2025年12月期、SQUEEZE ASIA CO., LTD.の株式)

図14 子会社元役員による資金流用の判明から会計処理までの流れ(Ⅰの部「関連当事者情報」等をもとに筆者作成)

事業等のリスクでは「グループ会社ガバナンス」の項目を設け、国内外に7社のグループ会社を有していることを踏まえたリスクとして開示しています。上場準備の途中で不正が見つかった場合、まず重要なのは事実関係の調査と影響額の特定です。SQUEEZEのように各期に帰属する金額を特定して過年度の財務諸表に反映させるには、証憑の確認や関係者への聴取などの手続が必要で、監査法人との協議も欠かせません。そのうえで、再発防止策(承認・報告体制の見直し、海外子会社の資金管理の強化など)を整備し、運用状況を示せるようにすることが、審査で説明を求められる点になります(参考:不適切会計が発覚したら、過年度の会計処理に誤りが見つかったとき)。

ホテル運営ならではの「入金・支払漏れ」と「品質管理」

事業等のリスクには、ホテル運営受託のビジネスに特有の項目も見られます。そのひとつが「入金・支払漏れ」で、同社は宿泊施設の運営収支に関わる入出金処理を日々行っているため、処理の誤りや漏れが生じるリスクを開示しています。もうひとつが「品質管理」で、清掃品質やクレーム、SNS・レビューサイトでの拡散のリスクについて、発生可能性を「高」としています。

施設オーナーのお金を預かって入出金を代行する事業では、自社の資金とオーナーの資金を区分して管理する仕組み、日々の照合、権限の分離が内部統制の中心になります。上場準備会社でも、自社のビジネスモデル特有のリスクを洗い出し、それに対応する統制をJ-SOXの文書化(業務記述書・フローチャート・リスクコントロールマトリクス)に落とし込んでおくことが重要です(参考:内部統制の3点セット)。

会計・開示の論点:収益認識、リース、税効果

契約形態ごとに異なる収益認識

SQUEEZEの収益は、Ⅰの部の注記で「ホテル支援ソリューション売上」(2025年12月期5,242,019千円)と「コンサルティング・開発支援売上」(同125,847千円)の2つに区分されています。ホテル支援ソリューション売上は、さらに次のように整理されています。

1つ目は「ホテル運営」で、顧客はホテル利用者とされ、宿泊や付帯サービスの提供が完了した時点で収益を認識します。2つ目は「ホテル運営受託」で、顧客は委託者であり、受託業務を実施した時点で収益を認識します。3つ目は「ホテル運営関連DXソリューション等」で、suitebookを中心とするサービスを一定の期間にわたって提供するため、契約期間の経過につれて収益を認識します。

コンサルティング・開発支援売上は、準委任に相当する契約ではサービス提供期間を通じて充足した履行義務に応じて収益を認識し、請負に相当する契約では一定の期間にわたり充足される履行義務としてインプット法(原価比例法)で進捗度を測っています。進捗度を合理的に見積もれない場合は原価回収基準、ごく短期の契約は履行義務を完全に充足した時点で収益を認識するとされています。

契約形態ごとの収益認識区分顧客・内容収益を認識する時点ホテル運営顧客はホテル利用者宿泊・付帯サービスの提供完了時ホテル運営受託顧客は委託者受託業務を実施した時点DXソリューション等suitebook中心のサービス契約期間の経過につれてコンサル(準委任)サービスの提供提供期間を通じて充足に応じてコンサル(請負)インプット法(原価比例法)一定の期間にわたり認識※上3区分はホテル支援ソリューション売上(2025年12月期5,242,019千円) 下2区分はコンサルティング・開発支援売上(同125,847千円)

図15 売上区分ごとの顧客と収益を認識する時点(Ⅰの部「収益認識関係」「重要な会計方針」をもとに筆者作成)

上場準備会社にとってのポイントは、同じ「ホテル運営」の事業でも、契約形態によって顧客が誰か、何を履行義務とするか、いつ収益を認識するかが変わることです。運営を受託する形態では委託者が顧客となる一方、物件を借り受けて自社で運営する形態ではホテル利用者が顧客となります。マネジメント・コントラクト、マスターリース、SaaS、成功報酬など複数の契約形態が並存する会社では、契約類型ごとに収益認識の方針を整理した一覧表をつくり、監査法人と早い段階で合意しておくことが、上場審査での説明にも役立ちます(参考:上場審査で問われる収益認識、収益認識基準 完全ガイド)。

借上物件モデルの拡大とリース・減損

会計面で次に注目したいのが、借上物件モデルの拡大です。MD&Aでは、借上物件モデルの導入を進めており、敷金の差入れが主要な投資資金の需要であると記載されています。これを裏付けるように、オペレーティング・リース取引の注記では、解約不能な不動産賃貸借契約の未経過リース料が、2024年12月末の32,400千円から2025年12月末には2,911,190千円(1年内222,350千円、1年超2,688,839千円)へと増えています。連結の販売費及び一般管理費のうち地代家賃も、121,783千円から746,933千円になっています。

借上物件モデルの拡大と費用・契約残高未経過リース料(千円)2024年12月末2025年12月末32,4002,911,190地代家賃(千円)2024年12月期2025年12月期121,783746,933

図16 解約不能な不動産賃貸借契約の未経過リース料と連結の地代家賃(Ⅰの部「リース取引関係」、販売費及び一般管理費の内訳をもとに筆者作成。単位:千円)

未適用の会計基準の注記では、新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等)を2028年12月期の期首から適用する予定で、影響額は評価中と記載されています。新リース会計基準では、借手のリースは原則として貸借対照表に使用権資産とリース負債を計上することになるため、借上物件が増えるほど財務諸表への影響は大きくなります。

事業等のリスクの「減損」では、現状はマネジメント・コントラクト方式の運営受託が中心で賃貸借方式は限定的としつつ、今後賃貸借方式が拡大した場合には減損リスクが高まる可能性に触れています。上場準備会社では、ビジネスモデルの転換が会計上どのような影響を持つかを、事業計画の段階から経理部門と共有しておくことが大切です。

繰延税金資産と重要な会計上の見積り

2025年12月末の連結貸借対照表には、繰延税金資産243,937千円が計上されています。税効果会計の注記によれば、繰延税金資産の小計307,791千円の内訳は、税務上の繰越欠損金123,622千円、ソフトウエア156,923千円、貸倒引当金13,547千円などで、評価性引当額は△63,375千円です。評価性引当額は2024年に152,961千円、2025年に303,070千円減少しており、主に繰越欠損金に係る評価性引当額の減少によるものとされています。

2024年12月期の「重要な会計上の見積り」では、繰延税金資産の回収可能性を取り上げ、中期経営計画を基礎とする課税所得の見積りの主要な仮定として「市場成長率、客室平均単価及び稼働率」を挙げています。事業等のリスクでも、繰延税金資産の回収可能性が中期経営計画に基づく課税所得の見積りに依存していることが記載されています。

また、suitebookの開発費は研究開発費として費用処理されており(2025年12月期の研究開発費230,791千円)、無形固定資産としてのソフトウエアの残高はありません。繰延税金資産の内訳には、「ソフトウエア」に係る一時差異(156,923千円)も含まれています。自社開発ソフトウエアを資産計上するか費用処理するかは、上場準備会社にとって会計方針の重要な選択で、監査法人との協議が必要な論点です。

監査法人と監査報酬

会計監査人はESネクスト有限責任監査法人で、継続監査期間は2年間です。Ⅰの部の財務諸表は、上場規程に基づいて2024年12月期と2025年12月期の2期分について同監査法人の監査を受けています。業務執行社員は2名、補助者は公認会計士5名とその他11名です。

区分 2024年12月期 2025年12月期
提出会社(監査証明業務) 18,500千円 27,500千円
提出会社(非監査業務) ― ―
連結子会社 ― ―
その他の重要な監査証明業務 ― SQUEEZE ASIAがErnst & Youngに12千米ドル

監査報酬は、監査計画・監査体制・監査時間等を検討したうえで、監査役会の同意を得て決定する方針とされています。上場準備では、ショートレビューから準金商法監査(直前々期・直前期の2期)までの期間を確保できるよう、監査法人の選定を早めに進めることが重要です(参考:監査法人はいつまでに決めるか、ショートレビューとは)。

事業等のリスクと審査で問われやすい点

SQUEEZEの事業等のリスクは、各項目に「発生可能性」「発生する可能性のある時期」「影響度」を付記する形式で書かれています。事業環境、事業運営、法的規制、その他の4区分に分けて、合計30を超える項目が並んでいます。

区分 主な項目(発生可能性/影響度)
事業環境 指定感染症等(低/大)、自然災害等(低/大)、為替変動(中/小)、資材の高騰(中/小)
事業運営 品質管理(高/中)、情報セキュリティ(低/大)、インバウンド需要への依存(低/大)、小規模体制(中/中)、内部管理体制の構築(中/中)、グループ会社ガバナンス(低/中)
法的規制 旅館業法等及び無人運営(低/大)、その他関連法令(低/中)
その他 減損(低/中)、入金・支払漏れ(低/中)、繰延税金資産(低/中)、配当政策(大/小)、新株予約権の行使による希薄化(高/小)

ホテル運営では許認可の管理が重要な論点です。同社は旅館業法、消防法、食品衛生法、公衆浴場法に基づく許可・届出を施設ごとに取得しており、2026年2月末時点の対象施設は、旅館業法等・消防法で各42施設、食品衛生法で7施設、公衆浴場法で3施設と記載されています。一部の施設では無人化フロントを導入し、自治体と協議しているとされ、本書提出日までに許可の取消しや停止の事由は発生していないと記載されています。

施設数が多い事業では、許認可の取得状況や更新期限を一覧で管理し、新規施設の開業時に漏れなく手続を行う仕組みが必要です。審査では、許認可の取消事由に該当する事実がないか、管理の仕組みがどうなっているかが確認されます(参考:IPOで許認可はどこまで見られるか)。

このほか、公募増資による調達資金は借入金の返済に充てる予定と記載されています。調達資金の使途は、成長投資に充てるのか、財務基盤の強化に充てるのかによって投資家への説明の仕方が変わるため、事業計画との一貫性を意識して記載することが求められます。

SQUEEZEのケースから上場準備会社が学べること

ここまで見てきたSQUEEZEのⅠの部の記載から、上場準備会社にとって実務上の示唆を6つに整理します。

SQUEEZEのⅠの部から学べる6つの論点①上場直前の優先株一斉転換と分割②関連当事者取引の縮小・適正化の説明③子会社役員の資金流用の判明と開示④内部監査2名+外部委託の体制⑤借上モデル拡大とリース・減損の論点⑥繰延税金資産と資本金1億円の論点

図17 本記事で取り上げた主な論点(筆者作成)

1. 優先株式の整理は日程を逆算して組む

SQUEEZEは、取得条項に基づく優先株式の取得と普通株式の交付、定款変更、単元株制度の採用、株式分割を、上場申請の直前に数日間で完了させています。種類株式を発行している会社では、取得条項の発動要件や種類株主総会の要否を事前に確認し、取締役会・株主総会の日程を上場スケジュールから逆算して組んでおくことが大切です。

2. 継続する関連当事者取引は「方針」とセットで説明する

社外取締役が関係する会社との取引について、SQUEEZEは取引条件、金額の水準、今後の縮小・適正化の方針、独立性の判断をあわせて開示しています。関連当事者との取引をすぐに解消できない場合には、取引の必要性と条件の妥当性に加え、今後どうするのかまで説明できるように準備しておきましょう。

3. 不正が判明したら、期ごとの影響額の特定と再発防止策を急ぐ

子会社元役員による資金流用について、SQUEEZEは各期に帰属する金額を特定し、債権の計上と全額の貸倒引当金計上を行い、関連当事者との取引として開示しています。上場準備中の不正の発覚は、スケジュールに大きな影響を与えかねません。調査、影響額の特定、監査法人との協議、再発防止策の整備と運用を、順序立てて進めることが重要です。

4. 少人数の内部監査は、役割分担と報告経路を明確にする

内部監査室長1名・担当者1名と外部委託先という体制で、自己の所属部門以外を監査し、結果を代表取締役と全取締役に個別に報告する。SQUEEZEの体制は、少人数でも自己監査を避け、報告経路を明確にする工夫の一例です。

5. ビジネスモデルの変化を会計方針と開示に反映する

借上物件モデルの拡大は、未経過リース料の増加、地代家賃の増加、敷金の差入れ、将来の新リース会計基準の適用、減損リスクなど、会計・開示の複数の論点につながります。事業の転換を進める際には、その会計上の影響を経理部門と事前に共有しておくことが欠かせません。

6. 税務上の論点も資本政策と一体で考える

資本金1億円を維持して中小法人等の繰越欠損金控除を活用している点、上場時の増資で資本金が増えた場合の影響をリスクとして開示している点は、資本政策と税務が密接に関係することを示しています。繰延税金資産の回収可能性も、事業計画の合理性と結びついて検討される論点です(参考:IPO審査の「事業計画の合理性」)。

  • 優先株式の取得条項・転換条件と、上場前に普通株式へ転換する日程を確認しているか
  • 役員やその関係会社との取引を一覧化し、必要性・条件の妥当性・今後の方針を説明できるか
  • 子会社(特に海外子会社)の資金管理・承認権限・月次報告の仕組みが整っているか
  • 内部監査の担当者が自己の所属部門を監査しない体制と、結果の報告経路が規程に明記されているか
  • 契約形態ごとの収益認識の方針(顧客は誰か、いつ認識するか)を一覧にして監査法人と合意しているか
  • KPIの定義・集計方法と、監査対象かどうかを申請書類に書き分けられるか

よくある質問

Q1. 上場前に優先株式を普通株式に転換するのはなぜですか?

東証に上場するのは通常は普通株式であり、優先株式に付いている優先配当や残余財産の優先分配などの権利が残ったままでは、上場後の株主間の権利関係が複雑になるためです。SQUEEZEでも、取得条項に基づいて優先株式を取得し、1株につき普通株式1株を交付したうえで消却し、定款から種類株式の定めを廃止しています。

Q2. 社外取締役が関係する会社と取引があると上場できないのですか?

必ずしも上場できないわけではありません。ただし、取引の必要性と条件の妥当性、社外取締役の独立性への影響が審査で確認されます。SQUEEZEのように、取引条件が独立第三者間と同様であること、金額が僅少であること、今後縮小・適正化する方針であることなどを説明できるようにしておくことが重要です。

Q3. 上場準備中に子会社で不正が見つかったらどうすればよいですか?

まず事実関係を調査し、影響額を事業年度ごとに特定します。そのうえで監査法人と会計処理を協議し、必要な開示を行い、再発防止策を整備・運用します。SQUEEZEのⅠの部では、判明時期、各期の計上額、貸倒引当金の計上、元役員への返還請求などが開示されています。

Q4. 内部監査を外部に委託してもよいのですか?

外部委託を活用すること自体は可能です。ただし、内部監査の計画や結論について社内の責任者が責任を持ち、委託先の作業を監督できる体制が必要です。SQUEEZEは内部監査室長と担当者を社内に置いたうえで、外部委託先と組み合わせて内部監査を実施しています。

最初の一歩は「株式と取引の一覧表」をつくること

SQUEEZEのケースから見えてくるのは、資本政策、関連当事者取引、子会社管理、会計方針といった論点が、上場直前になって一気に表面化しやすいということです。上場準備の最初の一歩として、まずは①種類株式・新株予約権を含む株式の一覧表と、②役員やその関係会社、子会社との取引の一覧表をつくってみてください。この2つを整理するだけで、資本政策の課題と、審査で説明が必要になる取引の多くが見えてきます。

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SQUEEZEのⅠの部と比べる 上場準備ギャップ診断シート(Excel)

SQUEEZEの機関設計・内部監査・会計・資本政策の25論点を、自社の状況と並べて点検できます。申請期の期末日を入れると上場までの逆算表も作れます。

まとめ

SQUEEZEは、民泊の運営支援から始まり、自社開発のsuitebookとオペレーションを組み合わせたスマートホテル事業で成長し、2026年4月に東証グロース市場に上場しました。Ⅰの部からは、A〜D種優先株式の一斉転換と株式分割による上場直前の株式の整理、社外取締役が関係する会社との取引の開示、子会社元役員による資金流用への対応、少人数の内部監査体制、借上物件モデルの拡大にともなうリース・減損の論点、繰延税金資産と資本金1億円をめぐる税務の論点など、上場準備の実務に直結する多くの論点を読み取ることができます。

上場準備会社にとっては、これらの論点を「上場直前に慌てて対応する」のではなく、N-3期・N-2期の段階から計画的に整えていくことが重要です。上場準備の全体像はIPO準備の全体像(N-3期〜N期)やIPO準備 完全ガイドもあわせてご覧ください。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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