IFRS(国際財務報告基準)の導入は、差異分析から会計方針の決定、数値作成、注記・開示まで論点が多く、「何から手を付けるべきか」が見えにくいプロジェクトです。
本ガイドは、IFRS任意適用を検討する上場企業・IPO準備企業の経理責任者・CFOの方に向けて、導入判断からプロジェクト実務・基準別論点・開示までを全30回で体系的に解説する連載の目次ページです。
- IFRS任意適用の要件と、導入のメリット・デメリット
- 導入プロジェクトの標準的な進め方・期間・費用・体制
- のれん・収益認識・リースなど日本基準との主要差異と実務対応
- コンバージョン(数値作成)と注記・開示の作成実務
- IPO準備と並行してIFRSを導入する場合の留意点
📅 IFRS導入の全体ロードマップ
IFRS導入プロジェクトは、大きく「影響度調査」「差異分析・方針決定」「数値作成・開示」の3つのフェーズで進みます。まず全体像をつかんでから、各回の記事で論点ごとの詳細を確認してください。
図1:IFRS導入プロジェクトの3フェーズ(所要期間は企業規模・子会社数・適用範囲により変動します)
⚖️ 日本基準とIFRSの主な違い
IFRS導入のインパクトは会社の取引内容によって大きく異なりますが、多くの会社で論点になりやすいのは次の領域です。それぞれ連載の基準別論点編(第15回〜第26回)で詳しく解説します。
図2:多くの会社で論点になりやすい日本基準とIFRSの主要差異(会社の取引内容により影響は異なります)
なお、IFRSの任意適用は、連結財務諸表規則(第1条の2・第93条)に基づき、一定の要件を満たす「指定国際会計基準特定会社」が連結財務諸表に適用するものです。連結財務諸表を作成している会社では、単体(個別)財務諸表は引き続き日本基準で作成します(連結財務諸表を作成していない会社については、財務諸表等規則第1条の2の2に別途の特例が設けられています)。この「連結だけIFRSにする」という建付け自体が、コンバージョン実務(第12回)を理解するうえでの出発点になります。
📊 IFRSを適用している会社はどのくらいあるか
「IFRSはまだ一部の大企業だけのもの」という印象を持たれることがありますが、数字で見ると状況は変わってきています。日本取引所グループ(JPX)の公表資料によると、IFRS適用済会社は297社、IFRSの適用を決定している会社は22社で、合計319社となっています(2026年7月末現在・JPX公表)。
図3:IFRS適用会社数と時価総額シェア(出典:日本取引所グループ「IFRS適用済・適用決定会社一覧」2026年7月末現在、東京証券取引所「『会計基準の選択に関する基本的な考え方』の開示内容の分析について≪2026年3月決算会社まで≫」2026年7月31日公表)
社数だけを見れば上場会社全体の一部ですが、東京証券取引所の分析によると、IFRS適用済・適用決定・適用予定会社318社の時価総額の合計は708兆円で、東証上場会社の時価総額1,384兆円の51.2%を占めます(いずれも2026年6月末時点、2026年7月31日公表)。時価総額ベースではすでに過半がIFRSで開示している、というのが現在地です。海外投資家との対話や海外M&Aを重視する企業ほど、IFRSは「検討すべき選択肢」になっています。適用要件や最新の統計は第2回、導入企業が増える理由は第3回で詳しく解説します。
📚 全30回の目次
連載は毎日1本ずつ公開し、公開済みの回から順にこの目次へリンクを追加していきます。
第1部 IFRSの基礎と導入判断(第1〜7回)
- 01IFRSとは?日本基準との違いと導入の全体像をわかりやすく解説
- 02IFRS任意適用とは?適用要件・手続きと適用企業数の最新動向
- 03IFRS導入のメリット・デメリット|導入企業が増え続ける理由
- 04IPO準備企業のIFRS導入|上場スケジュールと両立させるタイミング
- 05IFRS導入のスケジュールと期間|標準ロードマップと短期導入の条件
- 06IFRS導入の費用はいくら?コスト内訳と外部支援の相場感
- 07IFRS導入の体制づくり|経理部・監査法人・外部専門家の役割分担
第2部 導入プロジェクトの実務(第8〜14回)
- 08IFRS導入プロジェクトの進め方|3フェーズの手順と成果物
- 09GAAP差異分析のやり方|日本基準とIFRSの主要差異一覧表
- 10IFRS会計方針書の作り方|方針決定の論点と社内規程整備
- 11IFRS初度適用(IFRS第1号)|移行日・遡及適用と免除規定の実務
- 12IFRSコンバージョン実務|組替仕訳など数値作成3つの方法
- 13連結パッケージのIFRS対応|子会社への展開と決算スケジュール
- 14IFRS導入とシステム・内部統制対応|どこまで必要かを整理
第3部 基準別の主要論点(第15〜26回)
- 15IFRS15収益認識|5ステップと日本の収益認識基準との違い
- 16IFRS16リース|使用権資産・リース負債と新リース基準との違い
- 17のれん非償却の影響|IFRSと日本基準ののれん・企業結合の違い
- 18IAS36減損会計|減損テストの手順と日本基準との違い
- 19IFRS9金融商品|分類・測定と予想信用損失モデルを整理
- 20有形固定資産のIFRS論点|耐用年数・残存価額・コンポーネント会計
- 21開発費の資産計上|IAS38無形資産の要件と日本基準との違い
- 22IAS19従業員給付|退職給付会計の差異と未消化有給の負債計上
- 23IAS37引当金|資産除去債務・訴訟引当と偶発負債の開示
- 24IAS12法人所得税|繰延税金資産の回収可能性と税率差異注記
- 25IFRS2株式報酬|ストックオプション・譲渡制限株式の費用処理
- 26IAS21外貨換算|機能通貨の決め方と在外子会社の換算
第4部 表示・開示と導入成功のポイント(第27〜30回)
- 27IFRS財務諸表の表示|構成・表示科目と日本基準からの組替
- 28IFRS注記・開示の作成実務|開示チェックリストと効率化の工夫
- 29IFRS移行時の開示|調整表(リコンシリエーション)の作り方
- 30IFRS導入支援の選び方|会計士に依頼できる業務と費用対効果
👤 こんな企業・ご担当者を想定しています
- IPO準備中で、上場のタイミングに合わせてIFRS適用を検討している
- 海外投資家・海外M&Aを見据えてIFRS任意適用を経営から求められている
- 親会社のIFRS適用に伴い、子会社側で連結パッケージ対応が必要になった
- 導入は決めたが、差異分析・数値作成・開示を推進する人手が足りない
会社の規模・子会社数・論点の多さによって大きく変わりますが、影響度調査から適用初年度の開示までを複数のフェーズに分けて計画するのが一般的です。標準的なロードマップと短期導入の考え方は第5回で解説します。
可能です。IFRSを適用して上場申請することも認められており、上場スケジュールとの兼ね合いで移行時期を設計することが重要になります。詳しくは第4回で解説します。
最初のステップは影響度調査(簡易なGAAP差異分析)です。自社にとって影響の大きい論点を早期に特定できれば、スケジュール・費用・体制の見積り精度が大きく上がります。進め方は第8回・第9回をご覧ください。
論点検討・GAAP差異分析から数値作成(コンバージョン)・注記・開示まで、公認会計士がIFRS導入を伴走支援します。IPOに伴う導入のご相談も承ります。
🔗 参考(公的一次情報)
- 金融庁「IFRS関連情報一覧」(指定国際会計基準の告示・IFRS関連の公表資料)
- 日本取引所グループ「IFRS(国際財務報告基準)への対応」(適用済・適用決定会社一覧、IFRSを適用して新規上場した会社一覧)
- 東京証券取引所「『会計基準の選択に関する基本的な考え方』の開示内容の分析について≪2026年3月決算会社まで≫」(2026年7月31日)
- 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(第1条の2「特定会社」・第93条)
- 企業会計基準委員会(ASBJ)(日本基準の各会計基準・修正国際基準)
※IFRS基準書の原文は有料ライセンスに基づくため、本連載では転載せず、基準番号・名称と公的一次情報を根拠に解説しています。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区)。IPO支援・IFRS導入支援・法人税務顧問に従事。
本連載は一般的な情報提供を目的としており、個別の会計処理の判断は、監査人・専門家にご確認ください。基準・制度は執筆時点の情報に基づきます。