決算公告はいつまでにするか|方法の選択と電子公告

決算公告をしていない非上場の会社は、実際には少なくありません。官報の掲載費用がかかること、していなくても事業に支障がないことが理由でしょう。しかし、会社法は義務として定めています。

そして、公告の方法によって載せる内容も期間も変わります。この記事では、いつまでに、何を、どの方法で公告するのかを条文で整理し、費用を抑える選択肢まで見ていきます。

この記事でわかること

  • 決算公告の期限が定時株主総会の終結後遅滞なくであること(会社法440条1項)
  • 公告方法によって貸借対照表の全文か要旨かが変わること(同条2項)
  • ウェブに5年間置く方法と、その場合の登記(同条3項、911条3項26号)
  • 有価証券報告書の提出会社に義務がないこと(同条4項)

期限は定時株主総会の終結後遅滞なく

会社法440条1項は、株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければならないと定めています。大会社にあっては、貸借対照表および損益計算書です。

遅滞なく、という言葉に何日という定めはありません。総会が終わったら速やかに手配してください、という趣旨です。官報であれば申込みから掲載までに日数がかかりますので、総会の日程が決まった段階で手配を始めるのが実務です。

大会社の定義は会社法2条6号にあります。最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること、または負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であることのいずれかに該当する会社です。どちらでもなければ、公告するのは貸借対照表だけです。

公告方法は3つ。定めがなければ官報

会社法939条1項は、会社は公告方法として、官報に掲載する方法、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、電子公告のいずれかを定款で定めることができるとしています。

定款に定めがない場合は官報になります。会社法911条3項29号が、27号の定款の定めがないときは、939条4項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨を登記事項としていることからも分かります。

公告方法は登記事項です。同項27号が定款の定めがあるときはその定め、28号が電子公告を公告方法とする旨のものであるときは、公告すべき情報について不特定多数の者が提供を受けるために必要な事項などを登記するとしています。

方法によって載せる内容が変わる

会社法440条2項は、公告方法が939条1項1号または2号に掲げる方法、つまり官報または日刊新聞紙である株式会社は、貸借対照表の要旨を公告することで足りるとしています。

逆に言えば、電子公告を選んでいる会社は要旨では足りず、全文を公告することになります。官報のほうが載せる情報は少なくて済むということです。ここは直感に反するかもしれません。

決算公告の3つの選び方官報または日刊新聞紙で公告する載せるのは貸借対照表の要旨で足りる(440条2項)。掲載費用がかかる電子公告調査は不要(941条かっこ書き)公告方法を電子公告にする要旨では足りず全文。総会の終結の日後5年を経過する日まで継続(940条1項2号)決算公告は電子公告調査の対象外(941条かっこ書き)公告方法は変えず、貸借対照表だけウェブに置く総会の終結の日後5年を経過する日まで(440条3項)。1項と2項は適用されない必要な事項を登記する(911条3項26号)

3つめの方法なら、公告方法の定款変更をせずに官報の費用を避けられます

ウェブに5年間置く方法

費用を抑える選択肢が会社法440条3項です。2項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができるとしています。この場合には、1項と2項は適用されません。

自社のウェブサイトに貸借対照表を載せ、5年間置いておけば、官報への掲載が不要になるということです。公告方法そのものを電子公告に変える必要はありません。公告方法は官報のままで、決算公告だけをウェブで済ませる形です。

ただし登記が必要です。会社法911条3項26号は、440条3項の規定による措置をとることとするときは、貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるものを登記事項としています。掲載するページの情報を登記するということです。登記した内容とサイトの実態がずれないよう、サイトを作り直すときは注意してください。

もうひとつの注意は5年です。総会の終結の日後5年を経過する日まで継続して置く必要がありますので、直近の1期分だけを置いて古いものを消す運用にはできません。5期分が並ぶことになります。

電子公告を選んだ場合

公告方法そのものを電子公告に変える場合は、会社法940条1項2号により、440条1項の規定による公告は、同項の定時株主総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電子公告による公告をしなければなりません。440条3項の措置と同じ5年です。

電子公告には調査機関による調査の仕組みがありますが、決算公告は対象外です。会社法941条は、この法律または他の法律の規定による公告を電子公告によりしようとする会社は調査機関に調査を求めなければならないとしたうえで、かっこ書きで440条1項の規定による公告を除いています。決算公告だけであれば調査の費用はかかりません。

公告方法を電子公告に変えると、決算公告以外の公告、たとえば資本金の額の減少や合併の債権者保護手続の公告も電子公告になります。これらは調査の対象です。公告方法の変更は決算公告だけの話ではありませんので、あわせて検討してください。

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有価証券報告書の提出会社は不要

会社法440条4項は、金融商品取引法24条1項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社については、1項から3項までの規定を適用しないと定めています。

有価証券報告書で計算書類の内容が開示されるため、重ねて公告する必要がないという趣旨です。上場すれば決算公告の義務はなくなります。逆に言えば、非上場のうちは義務があるということです。

公告方法 載せる内容 期間 電子公告調査
官報または日刊新聞紙 貸借対照表の要旨 掲載時 対象外
電子公告 貸借対照表の全文 総会の終結の日後5年 決算公告は対象外
440条3項のウェブ開示 貸借対照表の内容である情報 総会の終結の日後5年 制度の対象外

怠った場合

会社法976条は、取締役等が同条各号のいずれかに該当する場合には100万円以下の過料に処すると定めています。同条2号が、この法律の規定による公告もしくは通知をすることを怠ったとき、または不正の公告もしくは通知をしたときです。決算公告をしなければ、この2号に当たります。

過料は会社ではなく取締役個人に科されます。実際に科される例は多くありませんが、義務があることは変わりません。上場準備に入れば、過去に決算公告をしていなかったこと自体が管理体制の論点になりえます。

どれを選ぶか

非上場の会社が決算公告を始めるとき、選択肢は3つです。

ひとつめは官報です。定款を変える必要がなく、載せるのも要旨で足ります。掲載費用が毎年かかります。ふたつめは公告方法を電子公告に変えることです。定款変更と登記が必要で、決算公告以外の公告も電子公告になります。みっつめが440条3項のウェブ開示です。公告方法は官報のまま、決算公告だけを自社サイトで済ませます。登記は必要ですが定款変更は不要で、掲載費用もかかりません。

自社サイトを持っていて、5年分を置き続けられるのであれば、みっつめが素直な選択です。ただし、登記した情報とサイトの構成がずれると公告として機能しませんので、サイトの改修時に確認する運用を決めておいてください。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 決算公告はいつまでにしますか。

A. 会社法440条1項により、定時株主総会の終結後遅滞なくです。何日以内という定めはありませんが、官報は申込みから掲載まで日数がかかりますので、総会の日程が決まった段階で手配してください。

Q. 官報に載せずに済ませる方法はありますか。

A. 会社法440条3項により、貸借対照表の内容である情報を定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで自社サイトに置く措置をとれば、1項と2項が適用されません。ただし911条3項26号により登記が必要です。

Q. 上場したら決算公告は要りませんか。

A. 会社法440条4項により、有価証券報告書の提出会社には1項から3項までが適用されません。有価証券報告書で開示されるためです。

📄 まとめ

決算公告の期限は定時株主総会の終結後遅滞なくです。官報と日刊新聞紙は貸借対照表の要旨で足りますが、電子公告は全文で、総会の終結の日後5年を経過する日まで継続して置きます。

費用を抑えるなら、公告方法は官報のままにして、440条3項のウェブ開示を選ぶ方法があります。定款変更は不要ですが登記が必要です。怠れば976条2号により100万円以下の過料の対象になります。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 会社法440条1項(定時株主総会の終結後遅滞なく貸借対照表を公告)
  • 会社法440条2項(官報または日刊新聞紙の場合は要旨で足りること)
  • 会社法440条3項(総会の終結の日後5年を経過する日までウェブに置く措置)、911条3項26号(その登記)
  • 会社法440条4項(有価証券報告書の提出会社への不適用)
  • 会社法939条1項(3つの公告方法)、911条3項27号から29号(公告方法の登記)
  • 会社法940条1項2号(電子公告による決算公告の公告期間は5年)、941条かっこ書き(決算公告は電子公告調査の対象外)
  • 会社法2条6号(大会社の定義)、976条2号(公告を怠った場合の100万円以下の過料)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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