株主総会資料の電子提供制度|3週間前の措置開始とアクセス通知

上場すると、株主総会資料の電子提供制度は選択肢ではなく義務になります。振替株式を発行する会社は、電子提供措置をとる旨を定款で定めなければならないとされているためです。

そして、この制度に入ると株主総会の日程が前倒しになります。電子提供措置の開始が総会日の3週間前の日となり、計算書類や事業報告の確定を早める必要が出てくるからです。この記事では、条文の並びに沿って、いつ何をするのかを整理します。

この記事でわかること

  • 電子提供措置をとるために定款に何を書くか(会社法325条の2)
  • 措置期間が総会日の3週間前から総会日後3か月までであること(325条の3第1項)
  • 招集通知が一律2週間前になり、参考書類等の交付が不要になること(325条の4)
  • 書面交付請求を受けたときの対応と、1年経過後の打ち切り(325条の5)

定款には、措置をとる旨だけ書けばよい

会社法325条の2は、株式会社は、取締役が株主総会の招集の手続を行うときに、株主総会参考書類、議決権行使書面、計算書類および事業報告、連結計算書類の内容である情報について、電子提供措置をとる旨を定款で定めることができるとしています。そして同条後段が、その定款には電子提供措置をとる旨を定めれば足りると明記しています。

掲載するウェブサイトのアドレスや、対象書類の範囲を定款に書き込む必要はありません。定款変更の議案は一文で足ります。上場準備で定款を全面的に見直す際に、他の条項とあわせて特別決議にかけるのが通例です。

上場会社にとってこれは義務です。社債、株式等の振替に関する法律159条の2第1項により、振替株式を発行する会社は電子提供措置をとる旨を定款で定めなければならないとされています。上場すれば株式は振替株式になりますので、上場までに定款へ入れておくことになります。

措置期間は総会日の3週間前から、総会日後3か月まで

会社法325条の3第1項は、電子提供措置をとる旨の定款の定めがある会社の取締役は、株主総会の日の3週間前の日または招集通知を発した日のいずれか早い日から、株主総会の日後3か月を経過する日までの間、継続して電子提供措置をとらなければならないと定めています。前者を電子提供措置開始日、この期間を電子提供措置期間と呼びます。

いずれか早い日、という書き方に注意してください。招集通知を4週間前に発したのであれば、その日が開始日になります。3週間前まで待ってよいということではありません。

対象になる情報は同項の各号に並んでいます。298条1項各号に掲げる事項、株主総会参考書類および議決権行使書面に記載すべき事項、株主提案があった場合の議案の要領、取締役会設置会社が定時株主総会を招集するときは計算書類および事業報告に記載され記録された事項、会計監査人設置会社であれば連結計算書類に記載され記録された事項、そしてこれらを修正したときはその旨と修正前の事項です。

電子提供措置と招集通知のタイムライン3週間前電子提供措置の開始2週間前アクセス通知の発送期限総会日3か月後措置期間の終わり

招集通知を3週間前より早く発した場合は、その日が開始日になります

招集通知は一律2週間前。参考書類の交付は不要になる

会社法325条の4第1項は、電子提供措置をとる場合の299条1項の適用について、2週間と読み替えると定めています。公開会社でない株式会社に認められていた1週間前への短縮は使えなくなります。

同条2項は、招集通知の記載事項を軽くしています。298条1項5号の法務省令で定める事項は記載を要せず、その代わりに、電子提供措置をとっている旨、開示用電子情報処理組織を使用して手続を行ったときはその旨などを記載します。日時、場所、目的である事項、書面や電磁的方法による議決権行使を定めたときはその旨は、そのまま記載します。いわゆるアクセス通知です。

同条3項により、株主総会参考書類、議決権行使書面、計算書類および事業報告、連結計算書類を招集通知に際して交付し、または提供することを要しません。印刷と封入の負担が減るのは、この規定によります。

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書面交付請求は基準日までに受け付ける

会社法325条の5第1項は、電子提供措置をとる旨の定款の定めがある会社の株主は、会社に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができるとしています。インターネットを使わない株主のための仕組みです。

同条2項は、取締役が招集通知に際して、書面交付請求をした株主に対し当該株主総会に係る電子提供措置事項を記載した書面を交付しなければならないとしたうえで、基準日を定めた場合には、その基準日までに書面交付請求をした者に限ると定めています。基準日を過ぎてからの請求は、その総会には間に合わないということです。株主名簿管理人と、受付の締切りの運用をそろえておいてください。

同条3項は、電子提供措置事項のうち法務省令で定めるものの全部または一部について、交付する書面に記載することを要しない旨を定款で定めることができるとしています。交付書面を薄くするための定めで、電子提供の定款変更とあわせて置く例が多くあります。

請求は放置すると積み上がります。同条4項は、書面交付請求の日から1年を経過したときは、会社は当該株主に対し交付を終了する旨を通知し、異議があれば一定の期間内に述べるべき旨を催告することができるとしています。この催告期間は1か月を下ることができません。同条5項により、催告期間内に異議が述べられなければ、書面交付請求は催告期間を経過した時に効力を失います。

項目 内容 根拠
措置の開始 総会日の3週間前の日と招集通知を発した日のいずれか早い日 325条の3第1項
措置の終わり 株主総会の日後3か月を経過する日 325条の3第1項
招集通知 一律2週間前。1週間前への短縮は使えない 325条の4第1項
書面交付請求 基準日までに請求した株主へ交付。1年経過後は打ち切りの催告が可能 325条の5第2項・4項

登記と、上場準備の日程への影響

電子提供措置をとる旨の定款の定めは登記事項です。会社法911条3項12号の2に掲げられています。定款変更の効力発生から2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします(915条1項)。

実務でいちばん効くのは、計算書類と事業報告の確定を前倒しすることです。従来は招集通知の発送日に間に合えばよかったものが、その1週間前に電子提供措置を開始しなければなりません。監査役会の監査報告と会計監査報告の日程、取締役会での承認の日程を、それぞれ1週間ずつ前へ動かす必要があります。

上場準備では、上場申請期の定時株主総会からこの日程で回してみることを勧めます。上場後に初めて経験すると、決算の確定が間に合わないという事態になりかねません。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 非上場のうちから電子提供制度を使えますか。

A. 使えます。会社法325条の2は、株式会社は定款で定めることができるとしており、上場の有無を問いません。上場前に定款変更をして運用を試しておく会社もあります。

Q. アクセス通知には何を書きますか。

A. 会社法325条の4第2項により、298条1項1号から4号までの事項に加えて、電子提供措置をとっている旨などを記載します。参考書類や計算書類そのものは同条3項により交付を要しません。

Q. 書面交付請求はいつまで受け付ければよいですか。

A. 基準日を定めている場合は、その基準日までに請求した株主が対象です(325条の5第2項)。基準日を過ぎた請求は、その総会の分としては交付の対象になりません。

📄 まとめ

電子提供制度は、上場すれば振替株式を発行することになるため事実上の義務です。定款には電子提供措置をとる旨を定めれば足り、対象書類やアドレスを書き込む必要はありません。

制度に入ると、電子提供措置の開始が総会日の3週間前となり、招集通知は一律2週間前になります。計算書類と事業報告の確定を1週間前倒しする必要がありますので、監査と取締役会の日程から先に組み直してください。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

  • 会社法325条の2(電子提供措置をとる旨の定款の定め)
  • 会社法325条の3第1項(電子提供措置期間と、対象となる情報)
  • 会社法325条の4第1項から3項(招集通知の2週間への読替え、記載事項、交付の省略)
  • 会社法325条の5第1項から5項(書面交付請求、基準日までの制限、1年経過後の催告と失効)
  • 会社法911条3項12号の2(電子提供措置をとる旨の登記)および915条1項(2週間以内の変更登記)
  • 社債、株式等の振替に関する法律159条の2第1項(振替株式を発行する会社の義務)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

このテーマの全体像は上場準備の会社法|定款・機関・株主総会・株式の手続にまとめています。

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