M&AロイヤルアドバイザリーのIPO|信託型SOの放棄と成功報酬の収益認識【Ⅰの部から読む上場準備】

※本記事は2026年11月3日時点の公表資料に基づきます。

M&Aロイヤルアドバイザリー株式会社(証券コード669A)は、2026年10月29日に東京証券取引所から上場承認を受け、2026年12月3日に東京証券取引所グロース市場へ上場する予定です。中堅・中小企業を主な対象とするM&A仲介サービスを単一の事業として営んでおり、2021年11月の設立から約5年で上場承認を受けました。同日提出の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」には、分業体制による仲介の仕組み、成功報酬の収益認識、創業者2名による株式の保有、ストック・オプションの整理などが具体的に記載されています。

結論からいえば、このⅠの部から上場準備会社が学べるのは、①成功報酬型ビジネスの収益認識の時点と、期末に成約が集中しやすいことの開示、②信託型の第1回新株予約権を全部放棄したうえで役職員向けに新たな新株予約権を付与したストック・オプションの整理、③独立した内部監査部門を置かず、兼務者2名の相互監査と半期ごとの三様監査会議で補う内部監査体制、の3点です。

本記事では、公認会計士の立場から、M&AロイヤルアドバイザリーのⅠの部に書かれている事実を項目ごとに整理し、そのうえで上場準備会社が自社の準備にどう生かせるかを一般論として解説します。数値や日付はすべてⅠの部の記載によるもので、持株比率などは上場申請時点(Ⅰの部記載時点)の数値です。上場時の公募・売出しの株数や価格はⅠの部には記載されていないため、本記事でも扱いません。Ⅰの部とⅡの部の違いについては、Ⅰの部とⅡの部は何が違うかもあわせてご覧ください。

M&Aロイヤルアドバイザリーはどんな会社で、いつどの市場に上場するのか

まず、会社と上場の概要を表で確認します。M&Aロイヤルアドバイザリーは2021年11月30日に東京都千代田区で、M&A仲介業務を事業目的として資本金30百万円で設立されました。本店は東京都千代田区丸の内(丸の内トラストタワー本館20階)にあり、決算期は10月31日です。第1期は2021年11月30日から2022年10月31日までの11ヶ月と1日で、2025年10月期が第4期にあたります。Ⅰの部の提出日は2026年10月29日で、上場承認日と同じ日です。

項目 内容
会社名 M&Aロイヤルアドバイザリー株式会社(英訳名 M&A Loyal Advisory Co., Ltd.)
証券コード 669A
市場 東京証券取引所 グロース市場
上場承認日 2026年10月29日
上場予定日 2026年12月3日
設立 2021年11月30日(資本金30百万円)
本店所在地 東京都千代田区丸の内一丁目
代表者 代表取締役社長 橋場 涼
決算期 10月31日(2025年10月期=第4期)
事業 M&A仲介事業(単一セグメント)
従業員数 215名(2026年9月30日現在。ほかに臨時雇用者 最近1年間の平均23名)、平均年齢31.6歳、平均勤続年数1.9年
関係会社 なし(連結財務諸表は作成していない)
会計監査人 監査法人A&Aパートナーズ

従業員215名の内訳は、アドバイザー120名、ミドルオフィス39名、バックオフィス56名です。平均年間給与は13,478千円で、最近日までの1年間で従業員数は33名増え、平均臨時雇用者数は27名減ったと記載されています。正社員を中心とした採用に取り組み、アルバイトの採用を抑えたことが理由とされています。子会社・関連会社はなく、親会社等もありません。単体の会社がそのまま上場するシンプルなグループ構成です。

なお、上場前の会社ですので、本記事では「上場予定」「上場承認を受けた」と表記しています。上場準備の全体像はIPO準備の全体像(N-3期〜N期)で整理しています。

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何で稼ぐ会社か:分業体制のM&A仲介と成功報酬

Ⅰの部の「事業の内容」によると、同社はM&A関連サービス(仲介、アドバイザリーなど)を主たる事業としています。非上場企業のM&A案件を中心に、上場企業のカーブアウト案件や投資ファンドのEXIT案件まで支援しており、卸売業、小売業、情報通信業、製造業、建設業など幅広い業種で成約実績があるとされています。創業から2026年7月末までの成約実績のうち、売り手企業の売上高が5億円以上である案件の割合は51.3%と記載されています。

特徴として挙げられているのが「コンサルタントの生産性を重視した分業組織体制」です。コンサルタント(M&Aアドバイザー)に加えて、インサイドセールス部が組織的に売り手候補を探索し、提携支援部が買い手候補に網羅的に打診します。基本合意後は、公認会計士等が在籍するコーポレートアドバイザリー部と提携先の外部会計・税務専門家が、デューデリジェンスや契約交渉で決めた条件を実行に移す支援(エグゼキューション)を主導し、資料作成や見込み顧客との関係を育てる活動(ナーチャリング)は企画部が支援します。

分業体制によるM&A仲介の流れ売り手企業(譲渡企業)コンサルタント(M&Aアドバイザー)買い手企業(買手企業)専門部隊がコンサルタントを支援(分業体制)インサイドセールス部売り手候補を探索提携支援部買い手候補へ網羅的に打診コーポレートアドバイザリー部DD・契約の実行支援企画部資料作成・ナーチャリング相談・受託打診・交渉

図1 Ⅰの部「事業の内容」の記載をもとに作成。コンサルタントは売り手と買い手の合意形成に注力し、専門部隊が探索・打診・実行支援・資料作成を担う

その結果として、コンサルタント1人当たりの成約件数は2023年10月期3.20件、2024年10月期2.27件、2025年10月期1.42件であり、中小企業庁「M&A支援機関登録制度」の登録機関データベースで専従者数が上位のM&A仲介専業5社と同じ方法で比べると上位に位置する、と記載されています。また、入社1年以上のアドバイザーの離職率は6.1%(2025年10月末時点)、第1期から第4期までの成約のうち手数料1億円以上の案件(大型案件)の割合は15.1%とされています。

報酬体系は「エクイティレーマン方式」です。レーマン方式は移動した資産額等に応じた割合を報酬とする成功報酬の体系で、同社が採用するエクイティレーマン方式は、純資産額等に基づく譲渡対価に応じた割合を報酬とするものと説明されています。原則として、売り手企業は完全成功報酬で、買い手企業は相手先の確定(マッチング)時に中間報酬、M&A成立時に成功報酬が発生します。アドバイザリー契約締結時の報酬は、売り手・買い手とも表上「-」となっています。

報酬の発生時点(エクイティレーマン方式)区分アドバイザリー契約締結時相手先の確定時M&A成立時売り手企業--成功報酬買い手企業-中間報酬成功報酬料率は純資産額等に基づく譲渡対価に応じた割合(エクイティレーマン方式)

図2 Ⅰの部「事業の内容」の表をもとに作成。売り手は完全成功報酬、買い手はマッチング時の中間報酬と成立時の成功報酬

KPIとしては、売上高と営業利益率を重視し、これらに影響する成約件数、成約平均単価、M&Aアドバイザー数を重要な指標として数値管理していると記載されています。成約件数・成約単価・新規受託件数の推移は次のとおりです。

期 成約件数 成約単価 新規受託件数
2022年10月期 2件 117百万円 37件
2023年10月期 16件 79百万円 103件
2024年10月期 42件 79百万円 290件
2025年10月期 66件 61百万円 584件
2026年10月期 第3四半期累計 67件 64百万円 470件

2026年10月期の新規受託件数は第1四半期131件、第2四半期179件、第3四半期160件の合計です。受託残件数(四半期末時点でアドバイザリー契約を締結し、成約に向けて支援している案件数)は、2025年10月期第4四半期末441件、2026年10月期第3四半期末487件と記載されています。成約単価は「当該期間の売上高÷成約件数」で計算されており、案件の規模や構成によって期ごとに大きく動く指標です。

成約件数とアドバイザー数の推移成約件数(件)アドバイザー数(期末・人)03060901202022年10月期2023年10月期2024年10月期2025年10月期216426692766104

図3 Ⅰの部「各種指標の推移」「従業員の状況」から作成。2026年10月期は第3四半期累計で成約67件、第3四半期末のアドバイザーは115名

上場準備会社にとってのポイントは、KPIの定義を開示書類の中で明確にしていることです。成約件数は「当該期間中にクロージングした件数」、新規受託件数は「アドバイザリー契約を当該四半期中に締結した案件数」と、数え方が注記で示されています。グロース市場の審査では事業計画の合理性が問われ、計画の前提となるKPIの定義と実績の推移を説明できることが重要です。IPO審査の「事業計画の合理性」やグロース市場の「高い成長可能性」とはも参考にしてください。

設立から上場承認まで、どんな道のりだったのか

沿革の記載は、拠点の新設・移転が中心です。2022年2月に日本橋オフィス(東京都中央区日本橋富沢町)、2023年5月に大阪支社(大阪市北区梅田)、2024年6月に東京サテライトオフィス(千代田区岩本町)、2025年3月に日本橋第2オフィス、2026年1月に日本橋第3オフィスを設けており、いずれも「事業拡大に伴い」と書かれています。さらに、設備の新設計画として、拠点の移転・集約に伴う日本橋本町オフィス(仮称)の設備等(投資予定額798百万円、既支払額17百万円、自己資金、2026年8月着手・2027年5月完了予定)が記載されています。

沿革と上場までの主な出来事2021年11月千代田区で設立2022年2月日本橋に拠点2023年5月大阪支社新設2024年6月サテライト新設2025年3月日本橋第2拠点2026年1月日本橋第3拠点2026年10月29日上場承認2026年12月3日グロース上場予定2027年5月(予定)本町へ拠点集約

図4 Ⅰの部「沿革」「設備の新設、除却等の計画」と上場承認日・上場予定日をもとに作成

人員の推移を見ると、事業の拡大が数字ではっきり分かります。従業員数(期末)は2022年10月期27名、2023年10月期50名、2024年10月期110名、2025年10月期188名、2026年10月期第3四半期末214名です。このうちアドバイザーは9名、27名、66名、104名、115名と増えています。

職種別の従業員数の推移(人)アドバイザーミドルオフィスバックオフィス03060901202022年10月期末2023年10月期末2024年10月期末2025年10月期末2026年7月末計27計50計110計188計214

図5 Ⅰの部「各種指標の推移」から作成。ミドルオフィスは提携支援部・コーポレートアドバイザリー部、バックオフィスはインサイドセールス部を含むその他の部署

設立(2021年11月30日)から上場承認(2026年10月29日)までは約5年です。監査法人による監査(上場申請に必要な直前2期の監査)は2024年10月期と2025年10月期について受けており、2022年10月期と2023年10月期の数値は会社計算規則に基づく数値で、金融商品取引法第193条の2第1項に準じた監査は受けていないと注記されています。監査を受ける期間から逆算した準備スケジュールについては、監査法人はいつまでに決めるかや上場スケジュールはどこで遅れるかで解説しています。

業績はどう推移し、増収減益をどう説明しているのか

主要な経営指標等の推移(単体)は次のとおりです。第1期は経常損失・当期純損失、第2期以降は利益を計上しています。

項目 2022年10月期(第1期) 2023年10月期(第2期) 2024年10月期(第3期) 2025年10月期(第4期)
売上高 234,075千円 1,257,318千円 3,320,319千円 4,010,914千円
経常利益 △89,395千円 214,547千円 940,653千円 296,309千円
当期純利益 △58,779千円 155,093千円 676,508千円 312,295千円
純資産額 △24,329千円 130,763千円 806,222千円 1,118,517千円
総資産額 489,812千円 1,248,785千円 2,384,823千円 2,471,625千円
自己資本比率 △5.2% 10.4% 33.8% 45.3%
営業CF - - 1,060,829千円 △64,057千円
監査 なし なし 監査済み 監査済み
売上高と経常損益の推移(単体・百万円)売上高01,2002,4003,6004,8002022年10月期2023年10月期2024年10月期2025年10月期2341,2573,3204,011経常損益△89215941296

図6 主要な経営指標等の推移から作成(百万円未満四捨五入)。第1期・第2期は会社計算規則に基づく数値で監査を受けていない。第1期は11ヶ月と1日

2025年10月期(第4期)は、売上高が4,010,914千円(前期比20.8%増)と伸びた一方、営業利益は308,495千円(同68.5%減)、経常利益は296,309千円(同68.5%減)、当期純利益は312,295千円(同53.8%減)でした。Ⅰの部は、将来の成長に向けた先行投資として、人員を前期末の110名から188名へ大幅に増やしたことなどにより、人件費を中心に費用が大きく増加したと説明しています。

内訳を見ると、売上原価は1,813,657千円(前期比66.4%増)で、M&Aアドバイザーの増員による人件費の増加と、提携先を通じて紹介を受けた案件の成約増による案件紹介料の増加が理由とされています。売上総利益率は54.8%(前期67.2%)と12.4ポイント低下しました。増員したアドバイザーの人件費が先に発生し、成約への寄与は翌期以降に生じるという説明です。販売費及び一般管理費は1,888,762千円(前期比50.9%増)で、管理部門の人件費、採用関連費用、ダイレクトメール等の通信費、拠点の増設・増床に伴う地代家賃が増えています。売上高営業利益率は7.7%(前期29.5%)でした。

営業利益の増減要因(2024年10月期→2025年10月期・百万円)2024年10月期978売上総利益の減少-33販管費の増加-6372025年10月期308

図7 損益計算書から作成(百万円未満四捨五入)。売上高は691百万円増えたが、売上原価が723百万円増え、販管費も637百万円増えた

成約件数は66件(前期42件)と24件増えましたが、成約平均単価は60,771千円(前期79,055千円)に下がっています。Ⅰの部は、アドバイザーの増員に伴い幅広い規模の案件が成約に至ったことによるもので、手数料は対象会社の規模や取引形態によって案件ごとに大きく異なるため、成約平均単価は各期に成約した案件の構成で変動すると説明しています。

税金費用にも特徴があります。2025年10月期の法人税等合計は△15,985千円で、当期純利益(312,295千円)が税引前当期純利益(296,309千円)を上回っています。これは主に、賃上げ促進税制に関する税額控除の繰越控除に係る繰延税金資産を計上したことによるものと記載されています(詳しくは後述の会計の論点で扱います)。

直近の2026年10月期は、中間会計期間(2025年11月〜2026年4月)で売上高3,151,907千円、営業利益759,300千円(売上高営業利益率24.1%)、中間純利益487,767千円、第3四半期累計期間(2025年11月〜2026年7月)で売上高4,304,545千円、営業利益793,106千円(同18.4%)、四半期純利益507,421千円です。中間財務諸表と第3四半期の四半期財務諸表は、監査法人A&Aパートナーズの期中レビューを受けたもので、年度の財務諸表のような監査ではありません。また、当中間会計期間から中間財務諸表を作成しているため、前年同期との比較は記載されていません。

項目 2026年10月期 中間会計期間 2026年10月期 第3四半期累計期間
期間 2025年11月1日〜2026年4月30日 2025年11月1日〜2026年7月31日
売上高 3,151,907千円 4,304,545千円
営業利益 759,300千円 793,106千円
経常利益 750,781千円 783,373千円
中間・四半期純利益 487,767千円 507,421千円
成約件数 45件 67件
成約平均単価 70,042千円 64,246千円
保証 期中レビュー 期中レビュー

上場準備会社にとってのポイントは、減益の期を含む業績推移を、KPI(人員数・成約件数・単価)と費用の先行という因果で説明していることです。グロース市場では赤字や減益であっても上場は可能ですが、その理由と今後の見通しを、事業計画と整合した形で説明できるかが審査で確認されます。グロース市場の実質審査基準は「企業内容、リスク情報等の開示の適切性」「企業経営の健全性」「事業計画の合理性」「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」「その他公益又は投資者保護の観点」の5項目です。基準全体の考え方はIPOの実質審査基準とはで解説しています。

キャッシュ・フローにも目を向けておきます。2025年10月期の営業活動によるキャッシュ・フローは△64,057千円で、税引前当期純利益296,309千円、未払費用の増加154,281千円などの増加要因に対し、法人税等の支払額449,528千円、未払消費税等の減少119,116千円、売上債権の増加104,214千円が減少要因となりました。前期の高い利益に対する法人税等の支払が翌期のキャッシュ・フローに表れる形です。中間会計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは1,115,088千円の増加でした。

資本政策と株主構成:創業者2名の保有と資産管理会社

同社の発行済株式総数は33,400,000株(普通株式のみ、2026年9月30日現在)です。設立時に30,000,000株(発行価格1円)を発行し、2022年6月6日に有償第三者割当で3,400,000株(発行価格1円、割当先は個人4名)を発行して、資本金は33,400千円となりました。それ以降、株式の発行はありません。種類株式は発行されておらず、ベンチャーキャピタルの出資についての記載もありません。自己株式もありません。2025年3月31日の臨時株主総会では、単元株制度(1単元100株)の導入と、発行可能株式総数を200,000,000株減らして100,000,000株とする定款変更が決議されています。

株主の状況は、株主数25名(その他の法人6名、個人その他19名)で、所有株式数の割合はその他の法人39.76%、個人その他60.24%です(2026年9月30日現在)。事業等のリスクの「大株主との関係に関するリスク」には、代表取締役社長の橋場涼氏が10,566千株(発行済株式総数に対する所有割合31.6%)、代表取締役の荒川有理氏が14,406千株(同43.1%)、両氏合計で24,972千株(同74.8%)を、資産管理会社を通じた間接保有を含めて保有していると記載されています。

創業者2名の持株比率(上場申請時点)発行済株式総数33,400,000株に対する割合荒川氏(資産管理会社含む)14,406千株・43.1%橋場氏(同)10,566千株・31.6%その他8,427千株・25.2%潜在株式を含む総数41,379,578株に対する割合荒川氏グループ34.81%橋場氏グループ25.54%役職員等・その他39.65%

図8 上段は事業等のリスク(本書提出日現在)、下段は第四部「株主の状況」(潜在株式を含む総数に対する割合)。いずれも上場申請時点の比率で、上場時(公募・売出し後)の比率ではない

この所有割合となった背景について、Ⅰの部は「当社の創業に際して行った資金調達において両氏が負担したリスクの程度を参考として決定した」と説明しています。また、2022年2月に荒川氏が代表取締役に就任した際、橋場氏が保有株式の一部を荒川氏に譲渡したと記載されています。両氏は上場時の売出しで所有株式の一部を売却する予定ですが、引き続き大株主となる見込みとされ、議決権の行使にあたっては株主共同の利益を追求し、少数株主の利益にも配慮する方針を持つ一方で、利益相反が生じる可能性もリスクとして開示されています。

第四部「株主の状況」では、潜在株式(新株予約権)を含めた総数41,379,578株に対する割合が示されており、荒川氏18.67%、橋場氏11.04%、MOONLIGHT株式会社8.07%、SUNRISE株式会社8.07%、株式会社SH7.25%、株式会社RH7.25%などとなっています。上段(事業等のリスク)と下段(第四部)では分母が違う点に注意が必要です。いずれも上場申請時点の比率で、上場時の公募・売出し後の比率ではありません。

2024年1月、創業者から資産管理会社へ株式を移している

第四部の「特別利害関係者等の株式等の移動状況」には、2024年1月31日付で、橋場氏から株式会社SHと株式会社RHへ各3,000,000株、荒川氏からMOONLIGHT株式会社とSUNRISE株式会社へ各3,340,000株が、いずれも単価25円で移動したことが記載されています。移動理由は「所有者の事情による」で、移動後の各社は両氏がそれぞれ代表取締役を務める会社です。役員の状況の注記でも、両氏の所有株式数は資産管理会社が所有する株式数を含んだ実質所有株式数と記載されています。

創業者から資産管理会社への株式移動(2024年1月31日)橋場 涼(代表取締役社長)株式会社SH株式会社RH荒川 有理(代表取締役)MOONLIGHT株式会社SUNRISE株式会社3,000,000株(単価25円)3,000,000株(単価25円)3,340,000株(単価25円)3,340,000株(単価25円)

図9 第四部「特別利害関係者等の株式等の移動状況」から作成。移動理由はいずれも「所有者の事情による」。各社は各氏が代表取締役を務める資産管理会社

資産管理会社が保有する株式は、上場審査上「役員等により総株主等の議決権の過半数を所有されている会社」として特別利害関係者等に該当し、流通株式からも除かれます。上場時の流通株式比率を見込む際には、創業者本人だけでなく資産管理会社の保有分も含めて計算する必要があります。計算の考え方は流通株式比率の計算式と調べ方と流通株式数の数え方で解説しています。

役職員への株式譲渡と移動価格の算定方法

同じ第四部には、創業者から役職員への株式譲渡も記載されています。2024年10月31日には、橋場氏から取締役の阿藤剛氏と従業員4件へ各42,312株、荒川氏から阿藤氏と従業員4件へ各57,688株が単価20円で、2026年4月25日には、橋場氏から従業員2件へ各101,000株、荒川氏から従業員2件へ各137,700株が単価158円で、それぞれ「経営参画への意識向上のため」に移動しています。移動価格は、DCF法、純資産方式及び類似会社比準方式により算出した価格を総合的に勘案し、譲渡人と譲受人が協議のうえ決定したと記載されています。

移動年月日 移動の内容 単価 移動理由
2024年1月31日 橋場氏→株式会社SH・株式会社RH(各3,000,000株) 25円 所有者の事情による
2024年1月31日 荒川氏→MOONLIGHT株式会社・SUNRISE株式会社(各3,340,000株) 25円 所有者の事情による
2024年10月31日 橋場氏→取締役・従業員(5件、各42,312株) 20円 経営参画への意識向上のため
2024年10月31日 荒川氏→取締役・従業員(5件、各57,688株) 20円 経営参画への意識向上のため
2026年4月25日 橋場氏→従業員(2件、各101,000株) 158円 経営参画への意識向上のため
2026年4月25日 荒川氏→従業員(2件、各137,700株) 158円 経営参画への意識向上のため

有価証券上場規程施行規則第266条により、基準事業年度の末日から起算して2年前の日(同社の場合は2023年11月1日)から上場日の前日までの特別利害関係者等の株式等の移動は、Ⅰの部に記載することになっています。また、同第267条により、上場日から5年間、その記録を保存することが求められます。上場前の株式移動は、価格とその算定根拠、移動理由が開示され、後から説明できる状態にしておく必要があります。株価算定の方法は未上場株式の株価算定はどの方法を使うか、上場前の株式移動の注意点は上場前に株式を動かすとどうなるか(継続所有の確約)で整理しています。

資本政策の時系列(設立から上場予定日まで)2021年11月設立3,000万株2022年5月第1回SO(信託型)2022年6月第三者割当340万株2022年10月第2回SO行使価額1円2023年11月第3回SO行使価額3円2024年1月創業者から資産管理会社へ2024年10月第1回SOを放棄第4回SO 20円2026年2月第5回SO行使価額36円2026年4月従業員へ譲渡単価158円2026年12月3日上場予定

図10 発行済株式総数の推移、新株予約権の状況、ストック・オプション等関係注記、第四部の記載をもとに作成

ストック・オプション:信託型の第1回を放棄し、第2回〜第5回が残る

現在残っている新株予約権(ストック・オプション)は第2回〜第5回の4回分で、本書提出日現在の潜在株式数は7,979,578株、発行済株式総数33,400,000株の23.9%に相当すると「新株予約権の行使による株式価値の希薄化について」のリスクで開示されています。各回の内容は次のとおりです。

ストック・オプション(新株予約権)の各回の比較回付与日行使価額付与株数2026年9月30日現在第2回2022年10月31日1円200,000株146,669株第3回2023年11月1日3円300,000株255,000株第4回2024年10月31日20円6,295,000株6,245,454株第5回2026年2月1日36円1,340,000株1,332,455株合計---7,979,578株潜在株式7,979,578株は発行済株式総数33,400,000株の23.9%(本書提出日現在)

図11 Ⅰの部「新株予約権等の状況」「ストック・オプション等関係」注記から作成。第1回(信託型)は2024年10月31日に全部放棄

回 決議・付与 付与対象者(付与時) 行使価額 行使期間
第2回 2022年10月31日決議・付与 取締役1名、従業員27名、外部協力者2名 1円 2024年11月1日〜2032年10月31日
第3回 2023年10月31日決議、2023年11月1日付与 取締役3名、監査役1名、従業員52名、外部協力者2名 3円 2025年11月1日〜2033年10月31日
第4回 2024年10月30日決議、2024年10月31日付与 取締役3名、従業員110名 20円 2026年11月1日〜2034年10月31日
第5回 2026年1月28日決議、2026年2月1日割当 取締役4名、従業員57名 36円 2028年1月29日〜2043年1月28日

一方、ストック・オプション等関係の注記には、2022年5月1日付与の第1回新株予約権が載っています。付与対象者は「受託者1名」で、及川武士氏を受託者とする信託に割り当てられ、信託期間満了時点の役職員等のうち受益者として指定された者に交付される仕組みでした。目的となる株式は7,500,000株、権利行使価格は10円、付与日における公正な評価単価は0.14円です。この第1回新株予約権は2024年10月31日に全部放棄されており、2024年10月期に7,500,000株分が失効しています。同期の損益計算書には、特別利益として新株予約権戻入益1,050千円が計上され、株主資本等変動計算書では期首の新株予約権1,050千円がゼロになっています。

第1回を放棄した日と同じ2024年10月31日に、第4回新株予約権(6,295,000株、行使価額20円、取締役3名・従業員110名)が付与されています。Ⅰの部には第1回を放棄した理由は書かれていないため、本記事でも理由には触れません。一般論としては、2023年5月に国税庁が、信託型ストック・オプションの権利行使時の経済的利益を給与所得として課税する考え方を示して以降、信託型の扱いを見直す会社が見られます。信託型の課税関係は信託型ストックオプションはなぜ給与課税かで、税制適格の要件は税制適格ストックオプションで解説しています。

行使条件と会計処理:上場後に段階的に行使でき、2024年・2025年10月期の費用計上はなし

第2回〜第5回は、行使条件の骨格が共通です。上場するまでは行使できず、上場から2年以内は付与数の30%、その後1年間は60%、それ以降は100%まで行使できます。権利行使時に当社または関係会社の取締役・監査役・使用人の地位にあるか、継続的な契約関係にあることが必要です(取締役会の特段の決議がある場合を除く)。発行済株式の過半数を第三者へ移転する合意が成立し承認された場合には全部を行使でき、新株予約権者が死亡した場合は相続されません。また、一定期限(第2回は2032年10月31日、第3回は2033年10月31日、第4回は2034年10月31日)までに上場しなかった場合は、会社が無償で取得できる事由とされています。

各回共通の行使条件(行使可能割合)上場まで行使できない上場から2年以内30%までその後1年間60%までそれ以降100%・権利行使時に当社等の取締役・監査役・使用人等であること(取締役会の特段の決議がある場合を除く)・発行済株式の過半数を第三者へ移転する合意が成立し承認された場合は、全部を行使できる・死亡した場合は相続されず行使できない

図12 第2回〜第5回の新株予約権の行使条件から作成。行使には権利行使時に役職員等の地位にあることなども必要

会計処理については、2024年10月期・2025年10月期とも「ストック・オプションにかかる費用計上額」は該当事項なしです。第2回〜第4回は、当社株式が未公開株式であるため、公正な評価単価に代えて単位当たりの本源的価値(株式の評価額−行使価格)で見積もる方法をとり、株式の評価は純資産価額方式によっていると記載されています。2025年10月期末の本源的価値の合計額は114,890千円です。権利確定数は、将来の失効数の合理的な見積りが難しいため、実績の失効数のみを反映しています。

上場準備会社にとってのポイントは2つあります。1つは、未公開企業のストック・オプションは本源的価値で測定できるが、行使価格が付与時の株式評価額を下回れば費用が生じるという点です。付与時の株価算定と行使価格の決め方は、株式移動の価格とあわせて一貫した説明が求められます。もう1つは、信託型や有償の新株予約権も会計上はストック・オプションとして扱われうる点です。権利確定条件付きの有償新株予約権は実務対応報告第36号によりストック・オプションに準じて会計処理するため、「有償だから費用は生じない」とは限りません。権利不行使で失効した場合は、新株予約権として計上した額のうち失効分を利益に戻し入れます。注記の書き方はストック・オプションの注記の記載例も参考にしてください。

継続所有の確約は第5回だけ

第四部「第三者割当等の概況」には、第3回・第4回・第5回の新株予約権が載っています。発行価格(行使時の払込金額)は、DCF法、純資産方式及び類似会社比準方式により算出した価格を総合的に勘案して決定したと記載されています。このうち保有期間等に関する確約があるのは第5回だけです。有価証券上場規程施行規則第272条は、基準事業年度の末日(同社は2025年10月31日)から起算して1年前より後に役員や従業員等へ報酬として新株予約権を割り当てた場合に、割当てを受けた者との間で所有等の確約を求めるもので、同社は第5回について、原則として割当日から上場日の前日または行使日のいずれか早い日まで所有する等の確約を行っていると記載されています。

なお、施行規則の確約(継続所有の確約)は取引所規則に基づくもので、上場時に主幹事証券との間で結ぶロックアップの合意とは別の制度です。どの割当てに確約が必要になるかは割当日と基準事業年度の関係で決まるため、上場前の割当てすべてに確約が必要になるわけではありません。

第5回の取得者には、取締役の桜井博一氏(95,000株)、中田一徳氏(70,000株)、阿藤剛氏(35,000株)、倉澤瑞樹氏(15,000株)のほか、従業員56名(総数1,117,455株)が記載されています。第4回の取得者は、桜井氏772,596株、阿藤氏213,990株、倉澤氏135,269株、従業員96名(総数5,123,599株)です。第3回は、社外監査役の佐藤瞬也氏も6,000株を取得しています。

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コーポレート・ガバナンス:監査役会設置会社と会議体の役割分担

同社は、会社法上の機関として取締役会、監査役会、会計監査人を設置する監査役会設置会社です。監査役会設置会社を採用した理由として、取締役会が適正かつ迅速に経営の基本方針や重要な業務執行の決定を行い、全員が社外監査役で構成される監査役会が独立した立場から取締役の職務執行を監査する体制が、経営の効率性と健全性の確保に有効と判断したと記載されています。機関設計の選び方は監査役会設置会社と監査等委員会設置会社はどちらを選ぶ?で比較しています。

機関設計と会議体(監査役会設置会社)株主総会取締役会取締役8名(社外2名)毎月1回監査役会監査役3名(全員社外)毎月1回会計監査人監査法人A&Aパートナーズ代表取締役社長経営会議原則毎週1回リスク・コンプライアンス委員会(四半期1回)内部監査責任者+担当者(兼務)選任選任選定・監督選任・報告

図13 Ⅰの部「コーポレート・ガバナンスの概要」から作成(本書提出日現在)

取締役会は取締役8名(うち社外取締役2名)で構成され、毎月1回定時に開催しています。2025年10月期は定時・臨時あわせて月1回以上開催され、取締役の出席状況は13回中13回(2025年5月に就任した社外取締役の髙井孝佳氏は6回中6回)、監査役3名も13回中13回の出席です。具体的な検討内容として、経営方針、経営計画、月次予算実績差異分析、業務執行状況のほか、株式上場に向けた内部管理体制の整備、単元株制度の導入に伴う定款変更、M&Aアドバイザーの採用計画、新たな事業所の賃貸借契約の締結などが挙げられています。

経営会議は、取締役(社外取締役を除く)と常勤監査役で構成され、原則として毎週1回開催されます。職務権限に基づく決裁、取締役会付議議案の事前協議、主要KPIの確認、人事に関する協議などを行う場です。リスク・コンプライアンス委員会は、原則として四半期に1回(リスクやコンプライアンス違反に該当する事象が識別された場合は臨時)開催され、代表取締役社長の橋場氏を委員長に、取締役5名と常勤監査役の計7名で構成されています。

役職 氏名 主な経歴(Ⅰの部の略歴から)
代表取締役社長 橋場 涼 三菱東京UFJ銀行(現 三菱UFJ銀行)、M&Aキャピタルパートナーズを経て2021年11月に当社設立
代表取締役 キャピタルマーケッツ本部長 荒川 有理 ジョンソン・エンド・ジョンソン、レコフ、ジャフコグループ、M&Aキャピタルパートナーズなどを経て2022年2月に当社代表取締役
専務取締役 投資銀行本部長 桜井 博一 三菱東京UFJ銀行、KPMG FAS、M&Aキャピタルパートナーズ。桜井博一公認会計士事務所(現任)。設立時から取締役CFO
取締役 企画本部長 阿藤 剛 2022年6月入社、2023年11月取締役
取締役 経営管理室長 中田 一徳 大蔵省・金融庁(検査局、監督局など)を経て2025年8月入社、2026年2月取締役
取締役 管理本部長 倉澤 瑞樹 東京三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)を経て2022年7月入社、2023年2月取締役
社外取締役 髙井 孝佳 調味料製造・販売会社の代表取締役副社長など。2025年5月就任
社外取締役 岡田 和弘 銀行の取締役常務執行役員など。2026年2月就任
常勤監査役(社外) 佐藤 瞬也 公認会計士。2023年7月就任
監査役(社外) 嶋方 拓郎 公認会計士。2022年10月就任
監査役(社外) 田原 一樹 弁護士。2023年11月就任

社外監査役3名のうち佐藤氏と嶋方氏は公認会計士として財務・会計に関する相当程度の知見を、田原氏は弁護士として企業法務に関する相当程度の知見を有すると記載されています。社外役員の独立性については、独立性に関する基準や方針を明確には定めていないものの、選任にあたって東京証券取引所が定める独立性基準に抵触しないものと判断していると説明されています。社外監査役の佐藤氏が第3回新株予約権6,000個を保有している点は開示されていますが、それ以外に人的関係、資本的関係、取引関係その他の利害関係はないとされています。役員は男性11名で、女性の役員はいません。

一般論として押さえておきたいのは、独立役員の基準の動きです。東京証券取引所は2026年7月の上場規則改正(7月10日施行)で独立性基準を広げ、上場会社の主要株主(議決権10%以上)やその近親者、主要株主の業務執行者(最近において該当していた者を含む)、上場会社が主要株主である会社の業務執行者等は、2026年12月1日以後に終了する事業年度に係る定時株主総会の日の翌日から、独立役員の要件を満たさないこととしました。上場準備中に社外役員を選ぶ際は、改正後の基準で確認しておく必要があります。また、グロース市場の会社に適用されるコーポレートガバナンス・コードは基本原則のみです。社外取締役の人数の考え方は社外取締役は何人必要かで解説しています。

役員報酬の決め方:社外取締役の答申と業績連動賞与

取締役の報酬は、固定の基本報酬と業績連動報酬等で構成され、社外取締役は基本報酬のみです。業績連動報酬等はアポイント取得の推進を担当する取締役を対象とし、「企画本部長インセンティブ賞与支給規程」に基づき、企画本部が取得したアポイントのうち成約に至り売上計上された件数に、規程に定める1件当たりの金額を乗じて賞与を支給しています。目標値は設定しておらず、当事業年度の実績は42件と記載されています。

決定手続としては、2025年1月17日の取締役会で個人別の基本報酬を、2026年1月28日の臨時取締役会で業績連動報酬(役員賞与)の額を、それぞれ社外取締役の答申を踏まえて決議しています。報酬限度額は、取締役が年額1,000,000千円以内(2026年1月28日の株主総会決議、使用人分給与を含まない)、監査役が年額30,000千円以内(2025年1月29日の第3回定時株主総会決議)です。2025年10月期の報酬等の総額は、取締役(社外取締役を除く)5名で180,310千円(基本報酬167,710千円、業績連動報酬12,600千円)、社外役員5名で22,200千円でした。任意の指名委員会・報酬委員会の設置についての記載は見当たりません。

関連当事者との取引はない

関連当事者情報の注記は、2024年10月期・2025年10月期とも「該当事項はありません」です。親会社や子会社もありません。創業者が大株主である会社では、創業者個人や資産管理会社との取引(不動産の賃貸借、借入の保証など)が審査で論点になりやすいため、上場準備の早い段階で関連当事者取引の有無を洗い出し、必要なものは解消しておくことが大切です。考え方はIPO審査の「企業経営の健全性」(関連当事者取引)と社長個人と会社の取引はどう解消するかで整理しています。

内部監査・内部統制:兼務2名の相互監査と外部専門家の活用

内部監査について、Ⅰの部は「当社が比較的小規模の会社・組織であることから、独立した内部監査部門は設置せず」と記載しています。代表取締役社長が選任した内部監査責任者1名(取締役管理本部長)と内部監査担当者1名(取締役企画本部長)が内部監査を行い、内部監査業務の補助を外部の専門家に委託しています。管理本部に対する内部監査は、自己監査とならないよう取締役企画本部長が実施する体制です。

内部監査の体制と自己監査の回避代表取締役社長内部監査責任者取締役管理本部長内部監査担当者取締役企画本部長管理本部以外の部署管理本部・内部監査業務の補助を外部の専門家に委託(責任者の指示のもとで監査手続を実施)・結果は代表取締役のほか取締役会と常勤監査役にも直接報告し、フォローアップ監査を行う選任監査監査(自己監査を回避)

図14 Ⅰの部「内部監査の状況」から作成。独立した内部監査部門は置かず、兼務の2名で相互に監査する

監査結果は、代表取締役社長のほか取締役会と常勤監査役にも直接報告することとされています。内部監査責任者は代表取締役社長に結果を報告して改善提案を行い、改善状況についてフォローアップ監査を実施します。代表取締役社長は被監査部門に監査結果と要改善事項を通達し、改善状況報告を内部監査人に提出させる流れです。

上場準備会社にとってのポイントは、専任者を置かない場合でも、①自己監査を避ける担当の割当て、②報告経路を社長だけにしない工夫、③外部専門家による補完を、文書で説明できる形にしておくことです。上場審査では内部監査が実際に機能しているか(監査計画、実施記録、指摘事項と改善状況)が確認されます。兼務の考え方は内部監査の担当者と兼務(自己監査の回避)、報告経路については内部監査の報告先は社長だけでよいのかで解説しています。

監査役監査と三様監査の連携

監査役監査は、社外監査役3名(常勤1名、非常勤2名)で行われています。監査役会は原則として月1回開催され、2025年10月期は14回開催、3名とも14回出席しています。検討内容は、監査計画及び監査方針の策定、監査業務の分担、取締役の職務執行の監査、内部統制システムの妥当性、会計監査人の選任及び報酬等に関する同意、監査報告書の作成などです。常勤監査役は経営会議などの主要な会議に出席し、重要な決裁書類を閲覧するほか、代表取締役社長と定期的に意見交換を行っています。

三様監査については、常勤監査役を中心として会計監査人や内部監査担当者と半期ごとに三様監査会議を実施すると、業務の適正を確保するための体制に明記されています。常勤監査役は内部監査責任者と密に情報共有し、内部監査の実施に立ち会うことで実効性を確保し、会計監査人からは監査計画と監査結果の説明を受け、内部監査の実施状況を共有するとされています。

三様監査の連携監査役(常勤監査役が中心)内部監査(責任者・担当者)会計監査人(A&Aパートナーズ)三様監査会議(半期ごと)立会い・共有計画・結果の共有実施状況を共有

図15 Ⅰの部「監査の状況」「業務の適正を確保するための体制」から作成

連携の頻度(半期ごと)と方法(立会い、説明、共有)が具体的に書かれている点は、他社の開示を作る際の参考になります。三様監査の進め方は監査役監査・内部監査・会計監査(三様監査)と監査役監査と内部監査の連携で詳しく解説しています。

リスク管理・コンプライアンスと内部通報

業務の適正を確保するための体制として、コンプライアンス規程の策定、社外に通報窓口を設けた内部通報制度の整備、リスク管理規程の制定、職務権限規程・職務分掌規程による権限と責任の明確化、文書管理規程・情報セキュリティ管理規程による情報の保存、反社会的勢力排除規程による反社会的勢力の排除などが記載されています。監査役の職務を補助すべき使用人を置く場合には、その任命・異動・人事評価・懲戒等を監査役の同意を受けて決定するとされ、報告者が不利な取扱いを受けないための体制も定められています。

このほか、役員等賠償責任保険(D&O保険)契約を締結して保険料を全額会社が負担していること、業務執行取締役等でない取締役と監査役との間で責任限定契約を締結していることも記載されています。M&A仲介業は顧客の機密情報を多く扱うため、事業等のリスクでも「情報管理」が影響度「大」とされています。内部通報制度の整え方は内部通報体制は上場審査でどこまで見られるかを参考にしてください。

会計・開示の論点:成功報酬の収益認識と繰延税金資産

収益は「株式譲渡・事業譲渡等が成立した時点」で認識

重要な会計方針の「収益及び費用の計上基準」には、売手・買手のM&A両当事者に対してアドバイザリー(仲介)契約に基づくM&A関連サービスを提供して報酬を得ており、当該報酬は、売手と買手との間で株式譲渡・事業譲渡等に係る最終契約の締結が実現し、株式譲渡・事業譲渡等が成立した時点で履行義務が充足されると判断し、当該時点で収益を認識していると記載されています。対価は履行義務を充足してから概ね1ヶ月以内に受領しており、重要な金融要素は含まないとされています。

M&A仲介報酬の収益認識の時点アドバイザリー契約の締結相手先の確定(マッチング)最終契約の締結譲渡等の成立対価の受領概ね1ヶ月以内成立前に受領した対価=契約負債履行義務の充足=収益を認識

図16 重要な会計方針・収益認識関係注記から作成。契約負債は2024年10月期末56,336千円、2025年10月期末120,375千円

収益認識関係の注記では、契約負債(履行義務を充足する前に顧客から受け取った対価)が2024年10月期末56,336千円、2025年10月期末120,375千円と開示され、2025年10月期に認識した収益のうち期首の契約負債に含まれていた額は45,615千円です。顧客との契約から生じた債権は、2025年10月期末で104,500千円です。売上高は全額が顧客との契約から生じる収益で、収益の分解情報は単一セグメントのため重要性が乏しいとして省略されています。

この収益認識の方針は、事業等のリスクの「収益の計上時期による業績の偏重について」とつながっています。譲渡企業に対して完全成功報酬を採用し、M&Aの成約をもって収益を認識するため、各四半期の業績は均等には推移せず、事業年度の末期に成約が集中する傾向があると記載されています。実際、2025年10月期の成約件数は第1四半期14件、第2四半期13件、第3四半期14件、第4四半期25件でした。期末付近の案件が翌期にずれ込んだ場合の影響も、リスクとして開示されています。

上場準備会社にとってのポイントは、成功報酬型の収益は、どの事実(契約締結、クロージング、入金など)をもって履行義務の充足とするかを会計方針で明確にし、その証憑(最終契約書、譲渡実行の確認資料)で期末の計上を裏付けられるようにしておくことです。期末に成約が集中するビジネスでは、カットオフの検証が監査上も審査上も重要になります。上場審査で問われる収益認識もあわせてご覧ください。

重要な会計上の見積りは繰延税金資産の回収可能性

重要な会計上の見積りとして挙げられているのは、2024年10月期・2025年10月期とも「繰延税金資産の回収可能性」だけです。将来の課税所得の見込み等により回収可能性が高いと判断できる金額を計上しており、見積りの前提となる条件や仮定が変われば翌期の財務諸表に重要な影響を与える可能性があるとされています。

2025年10月期末の繰延税金資産の純額は272,781千円です。内訳には、未払費用134,210千円などとともに繰越税額控除215,952千円が含まれ、評価性引当額は△112,132千円です。評価性引当額の増加は、賃上げ促進税制による税額控除の繰越控除に係る評価性引当額を認識したことによるものと注記されています。税効果会計適用後の法人税等の負担率は△5.4%で、法定実効税率34.6%との差異の主な項目は「繰越税額控除限度超過額に係る繰延税金資産の増減額」△72.9%、「評価性引当額の増減」37.8%などです。また、防衛特別法人税の創設に伴い、2026年11月1日以後開始する事業年度以降に解消が見込まれる一時差異等について、法定実効税率を34.59%から35.43%に変更して計算しており、その影響は軽微とされています。

上場準備会社では、人件費が大きく増える成長期に賃上げ促進税制を活用するケースがあります。控除しきれなかった額を繰り越す場合、その繰越控除の回収可能性(将来の法人税額で使い切れるか)を見積もる必要があり、事業計画の課税所得の見込みと整合させることが求められます。

その他の特徴的な注記

項目 Ⅰの部の記載(2025年10月期)
資産除去債務 原状回復義務を資産除去債務として認識。敷金が資産に計上されているため、負債計上に代えて、敷金の回収が最終的に見込めない金額を合理的に見積り、当期の負担額を費用計上する方法
財務制限条項 シンジケートローン(政府関係金融機関他、残高315,000千円、無担保、弁済期限2029年4月末日)に、純資産を2023年10月期末の75%以上に維持すること、経常損益が2期連続して損失とならないことの条項
未適用の会計基準 「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)等を2028年10月期の期首から適用予定。影響額は評価中
表示方法の変更 敷金を投資その他の資産の「その他」から独立掲記。役員報酬が販管費の10%を超えたため主要費目として注記
関連当事者情報 該当事項なし
後発事象 該当事項なし

拠点はすべて賃借で、2025年10月期の地代家賃は94,159千円です。拠点集約により、日本橋オフィス・日本橋第2オフィス・東京サテライトオフィスの建物等の一部は、集約予定までに全額を償却または除却する予定と記載されています。新リース会計基準の適用で、借手のリースは原則としてオンバランスとなるため、オフィスを多く賃借する会社は早めに影響を見積もっておくとよいでしょう。

監査法人と監査報酬

会計監査人は監査法人A&Aパートナーズで、継続監査期間は2年、業務を執行した公認会計士は木間久幸氏と松本浩幸氏、補助者は公認会計士8名、その他7名です。監査報酬(監査証明業務)は、最近事業年度の前事業年度が13,860千円、最近事業年度が18,480千円で、非監査業務に基づく報酬はありません。監査法人の選定にあたっては、監査法人の概要、監査日数、監査期間及び具体的な監査実施体制、監査報酬の見積額等に関する資料を入手し、質問・面談等を行って総合的に判断したと記載されています。なお、財務諸表等の適正性を確保するための特段の取組として、監査法人との緊密な連携、各種団体が主催するセミナーへの参加、会計専門書の購読が挙げられています。

項目 内容
監査法人 監査法人A&Aパートナーズ
継続監査期間 2年
業務執行社員 木間 久幸、松本 浩幸
補助者 公認会計士8名、その他7名
監査報酬(最近事業年度の前事業年度) 監査証明業務13,860千円、非監査業務なし
監査報酬(最近事業年度) 監査証明業務18,480千円、非監査業務なし
中間・第3四半期 期中レビュー

事業等のリスクは何が書かれ、審査ではどこが問われやすいか

事業等のリスクは、「外部環境に起因するリスク」「事業内容に起因するリスク」「その他のリスク」の3区分で、各項目に顕在化可能性、発生する可能性のある時期、影響度が付されています。顕在化可能性が「高」とされているのは「同業他社との競合」(影響度は中)だけで、M&A仲介事業は行政等からの許認可が存在せず、大規模な設備投資を要しないため参入障壁は比較的低いと記載されています。

事業等のリスク(顕在化可能性×影響度)影響度:中影響度:大可能性:高可能性:中可能性:低同業他社との競合-新株予約権による希薄化法的規制/業績の変動収益の計上時期による偏重M&A仲介業への依存人材の確保及び育成技術革新/訴訟の可能性急速な組織拡大配当政策大株主との関係景気悪化や自然災害等情報管理代表取締役への依存

図17 Ⅰの部「事業等のリスク」に記載された顕在化可能性と影響度をもとに配置

「法的規制について」では、現在M&A仲介業を制限する直接的な法的規制は存在しないものの、今後何らかの法的規制が適用された場合には受託案件数の減少等により影響を受ける可能性があるとしています(顕在化可能性:中、影響度:大)。経営成績の分析では、M&A仲介業界で新規参入企業の増加に伴い一部で助言の質の低下やトラブルが報告され、中小企業庁が「中小M&Aガイドライン」の適用を強化していること、同社が2024年8月公表の「中小M&Aガイドライン第3版」と2025年4月公表の「中小M&A専門人材(個人)向け使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」に準拠した教育プログラムを実施していることが記載されています。

このほか、「代表取締役への依存について」では、橋場氏が代表取締役社長として全体の経営を統括し、取締役会・経営会議・リスク・コンプライアンス委員会の議長を務め、荒川氏が代表取締役キャピタルマーケッツ本部長としてキャピタルマーケッツ本部を統括していると役割分担が説明されています。「人材の確保及び育成について」(顕在化可能性:中、影響度:大)、「急速な組織拡大に係るリスク」(発生する可能性のある時期:1年以内)など、人材と組織に関するリスクが複数挙げられているのも、人がサービスを提供する事業らしい構成です。

一般論として、許認可がない事業でも、審査では業界の自主規制やガイドラインへの対応、顧客とのトラブルの管理体制(クレームの記録と再発防止)、情報管理体制が確認されることが多いといえます。同社はクレーム管理規程を制定し、経営会議とリスク・コンプライアンス委員会で再発防止に努めていると記載しています。許認可の考え方はIPOで許認可はどこまで見られるか、主幹事証券の審査で聞かれることは主幹事証券の引受審査では何を聞かれるかで解説しています。

このケースから上場準備会社が学べること

ここまでの内容を、上場準備会社の実務に引き直して整理します。

上場準備会社が学べる主なポイント分業体制とKPI成約件数・単価・アドバイザー数成功報酬の収益認識時点と期末集中の開示先行投資による増収減益を数字で説明SOの整理信託型の放棄と新たな付与資産管理会社への移動と株式移動の価格算定兼務の内部監査相互監査と三様監査会議

図18 本記事の内容をもとに作成

1. 事業の仕組みとKPIを、定義つきで開示できるようにする

同社は分業体制の役割分担を部署名で説明し、成約件数・成約単価・新規受託件数・受託残件数の定義を注記しています。KPIの定義が社内の管理資料と開示書類で一致していることが、事業計画の合理性を説明する土台になります。

2. 成功報酬の収益認識時点と、期末集中のリスクをセットで説明する

収益の認識時点(譲渡等の成立時)を会計方針に書くだけでなく、四半期ごとの成約件数を示し、期末に成約が集中する傾向をリスクとして開示しています。成功報酬型や一時点で収益を認識するビジネスでは、予算と実績の差が出やすい理由を先に説明しておくことが、上場後の業績予想の開示にもつながります。

3. 先行投資期の減益は、費用の内訳と人員数で説明する

2025年10月期の減益について、人員数(110名→188名)、売上原価の内訳(人件費、案件紹介料)、販管費の内訳(採用関連費用、通信費、地代家賃)を示しています。減益の期を含む会社ほど、因果関係を数字で追える説明が重要です。

4. ストック・オプションは、過去の設計も含めて整理する

信託型の第1回を放棄し、その後の各回は行使条件の骨格をそろえています。注記には放棄した回の付与日、株式数、公正な評価単価、失効と戻入益まで記載されます。過去に発行した新株予約権の扱いは、上場申請前に方針を決めておく必要があります。

5. 株式移動は、価格の算定方法と理由を記録しておく

資産管理会社への移動、役職員への譲渡のいずれも、移動価格の算定方法(DCF法、純資産方式、類似会社比準方式の総合勘案)と理由が第四部に記載されています。施行規則に基づく記録の保存(上場日から5年間)も見据えて、契約書や算定資料を整えておきましょう。

6. 兼務の内部監査は、相互監査と報告経路で補う

専任部門がなくても、自己監査を避ける担当の割当て、取締役会・常勤監査役への直接報告、外部専門家の活用、半期ごとの三様監査会議によって、体制を説明できる形にしています。

7. 財務制限条項や税額控除の繰越など、数字に影響する契約・制度を把握する

シンジケートローンの財務制限条項は「重要な契約等」と注記の両方で開示され、賃上げ促進税制の繰越税額控除は繰延税金資産と評価性引当額に表れています。経理部門は、契約や税制が財務諸表に与える影響を一覧にして管理しておくと、開示の漏れを防げます。

  • KPI(成約件数・単価・人員数など)の定義を文書化し、管理資料と開示書類で一致させているか
  • 収益認識の時点と、その裏付けとなる証憑(最終契約書・実行確認など)を決めているか
  • 期末に売上が集中する場合、カットオフの手続とリスク開示の文案を用意しているか
  • 過去に発行した新株予約権(信託型・有償型を含む)の扱いと会計処理を整理しているか
  • 上場前の株式移動について、価格の算定方法・理由・契約書を記録し保存しているか
  • 兼務の内部監査で自己監査を避ける割当てと、取締役会・監査役への報告経路を定めているか

よくある質問

Q1. M&Aロイヤルアドバイザリーはいつ、どの市場に上場する予定ですか?

2026年10月29日に東京証券取引所から上場承認を受け、2026年12月3日に東京証券取引所グロース市場へ上場する予定です(Ⅰの部の提出日も2026年10月29日です)。

Q2. M&A仲介の報酬は、いつ売上として計上されていますか?

Ⅰの部の重要な会計方針では、売手と買手の間で株式譲渡・事業譲渡等に係る最終契約の締結が実現し、株式譲渡・事業譲渡等が成立した時点で履行義務が充足されると判断し、その時点で収益を認識すると記載されています。成立前に受け取った対価は契約負債として計上されています。

Q3. ストック・オプションの費用は計上されていますか?

2024年10月期・2025年10月期とも、ストック・オプションに係る費用計上額は「該当事項なし」と記載されています。未公開株式であるため、公正な評価単価に代えて本源的価値(株式の評価額−行使価格)で見積もっており、株式の評価は純資産価額方式です。なお、信託型の第1回新株予約権は2024年10月31日に全部放棄され、2024年10月期に新株予約権戻入益1,050千円が計上されています。

Q4. 独立した内部監査部門がなくても上場できるのですか?

同社は、比較的小規模であることから独立した内部監査部門を置かず、取締役管理本部長を責任者、取締役企画本部長を担当者とし、管理本部は企画本部長が監査する相互監査の体制をとっています。外部の専門家への補助の委託や、取締役会・常勤監査役への直接報告もあわせて記載されています。体制の妥当性は会社の規模や業務に応じて審査で確認されるため、専任部門の有無だけで決まるものではありません。

最初の一歩は、自社の「売上が立つ瞬間」を言葉にすること

成功報酬型のビジネスで上場を目指すなら、最初に取り組みたいのは、売上を計上する事実と、それを裏付ける証憑を1枚の文書にまとめることです。「何をもって成約とするか」「中間報酬はいつ受け取り、どう処理するか」「期末をまたぐ案件をどう判定するか」を決めておけば、会計方針、内部統制、リスク開示、KPIの定義が一本の線でつながります。そのうえで、人員計画と成約件数の見込みを事業計画に落とし込み、ストック・オプションや株式移動の記録を整えていくと、Ⅰの部の作成と審査対応がぐっと進めやすくなります。準備の進め方はIPO準備 完全ガイドとグロース市場事前チェックリストもご活用ください。

まとめ

M&Aロイヤルアドバイザリーは、2026年10月29日に上場承認を受け、2026年12月3日に東証グロース市場へ上場する予定のM&A仲介会社です。Ⅰの部からは、分業体制とKPIの定義、譲渡等の成立時点で収益を認識する成功報酬の会計方針と期末集中のリスク開示、人員の先行投資による2025年10月期の増収減益の説明、信託型の第1回新株予約権の放棄と第2回〜第5回の新株予約権(潜在株式は発行済株式総数の23.9%)、創業者2名による資産管理会社を含めた株式の保有(発行済株式総数の74.8%、上場申請時点)、兼務2名の相互監査と半期ごとの三様監査会議による内部監査体制が読み取れます。

上場準備会社にとっては、ビジネスモデルの特徴(成功報酬、人がサービスを提供すること)を、会計方針・リスク・KPI・ガバナンスの各項目で一貫して説明している点が参考になります。自社の上場準備でも、事業の特徴から逆算して、開示と体制を組み立てていくことをおすすめします。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

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