信託型ストックオプションはなぜ給与課税になったか|国税庁Q&Aの根拠条項

信託型ストックオプションは、行使時に給与所得として課税される。国税庁が令和5年に公表したストックオプションに対する課税(Q&A)の問3が示した見解です。

引用されている条項は、所得税法第28条、同法第36条第2項、そして所得税法施行令第84条第3項です。

理由の要点は2つ。実質的には発行会社が役職員にストックオプションを付与していると認められること、そして役職員に金銭等の負担がないことです。

この記事でわかること

  • 給与所得とされた根拠条項
  • 理由として示された2点
  • 源泉徴収義務者が発行会社であること
  • 過去分の取扱い
  • Q&Aの構成と改訂の経緯
  • 信託型がすべて否定されたわけではないこと

📌 結論 実質的に会社が付与していると見る

図1 国税庁Q&Aが示した根拠条文論点内容所得区分給与所得引用されている条項所得税法第28条、同法第36条第2項、所得税法施行令第84条第3項信託に関する引用所得税法第67条の3第1項・第2項理由の要点実質的には発行会社が役職員にストックオプションを付与していると認められること、および役職員に金銭等の負担がないこと

所得税法施行令第84条第3項は、発行法人から与えられた新株予約権等の経済的利益について、収入金額の計算時期を定める規定です。国税庁はこの規定の適用対象と整理しています。

信託型は、創業者などが信託に金銭を拠出し、信託が新株予約権を引き受け、後から役職員に配分する仕組みです。役職員が直接に会社から受け取っているわけではない、という形をとります。

国税庁の整理は、この形にかかわらず、実質的には発行会社が役職員にストックオプションを付与していると認められる、というものです。

そして役職員に金銭等の負担がありません。拠出しているのは創業者などで、役職員は無償で受け取ります。この2点から、行使時の経済的利益は労務の対価として給与所得になる、という構成です。

🧭 納めるのは発行会社

図2 誰が納めるのか論点内容源泉徴収義務者発行会社徴収の時期ストックオプションの行使による株式の交付の際過去分速やかに源泉所得税を納付する必要がある、と示されていますQ&Aの構成問1が無償・有利発行型、問2が有償型、問3が信託型、問4が源泉所得税の納付、問5が株式の価額、問6以降が税制適格、問12が税制適格(信託型)

信託を作った側ではなく、発行会社が納めます。設計時に想定していなかった納付義務が、後から会社に来ます。

Q&Aの問3と問4が、発行会社が源泉徴収義務者であることを示しています。ストックオプションの行使による株式の交付の際に、給与所得に係る源泉所得税を徴収して納税地の所轄税務署に納付する必要がある、という書き方です。

すでに行使が行われていた場合については、速やかに源泉所得税を納付する必要がある旨が示されています。

設計時には会社の負担を想定していなかった、ということが起こります。上場準備の途中で信託型が残っているなら、行使時の資金繰りまで含めて見積もってください。

信託型の課税関係の整理と、組み直しの検討をお引き受けします

すでに組成した信託型について、行使時の源泉徴収額の試算、過去分の納付の要否の確認、役職員への説明資料の作成、そして税制適格の枠組みで組み直せるかの検討まで通してお受けします。組み直しは付与済みの権利をどう扱うかが論点になります。放置するほど選択肢が減りますので、早い段階でご相談ください。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。

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🧾 Q&Aはどう作られてきたか

図3 Q&Aの改訂の経緯時期内容令和5年5月ストックオプションに対する課税(Q&A)を公表令和5年7月改訂。あわせて措置法通達29の2-1(1株当たりの価額)が新設された令和6年11月最終改訂

信託型についての見解は令和5年に示されました。それ以前に設計されたものについても、行使時の課税関係は同じ整理になります。

ストックオプションに対する課税(Q&A)は、令和5年5月に公表され、令和5年7月に改訂、令和6年11月に最終改訂されています。

令和5年7月の改訂とあわせて、措置法通達29の2-1が新設されました。租税特別措置法第29条の2第1項第3号の1株当たりの価額の算定方法を定めるものです。

権利行使価額の算定方法が明確になったことで、税制適格の設計がしやすくなりました。信託型についての見解と、この通達は同じ時期のものです。

📅 信託型がすべて否定されたのか

図4 いま何を確認するかすでに信託型を組成しているかを確かめる行使が行われた事業年度があるかを確かめる源泉徴収と納付が行われているかを確かめる未行使のものについて、今後の課税関係を役職員に説明する税制適格の枠組みで組み直せるかを検討する

問12は税制適格ストックオプション(信託型)を扱っています。信託を使う形すべてが否定されたわけではありません。

Q&Aの問12は、税制適格ストックオプション(信託型)を扱っています。信託を使う形がすべて否定されたわけではありません。

ただし、税制適格の要件は租税特別措置法第29条の2第1項の各号を満たす必要があります。権利行使価額が契約締結時の1株当たりの価額以上であることなど、設計の自由度は下がります。

要件の詳細は税制適格ストックオプションはどの要件で落ちるかにまとめています。

❓ よくある質問

Q. 信託型はどの所得区分ですか。

A. 給与所得です。国税庁Q&Aの問3が示しています。

Q. 根拠条項はどこですか。

A. 所得税法第28条、同法第36条第2項、所得税法施行令第84条第3項が引用されています。

Q. なぜ給与になるのですか。

A. 実質的には発行会社が付与していると認められること、役職員に金銭等の負担がないことが理由として示されています。

Q. 源泉徴収は誰がしますか。

A. 発行会社です。行使による株式の交付の際に徴収して納付します。

Q. すでに行使済みの分はどうなりますか。

A. 速やかに源泉所得税を納付する必要がある旨が示されています。

Q. 信託型はもう使えませんか。

A. Q&Aの問12が税制適格ストックオプション(信託型)を扱っています。要件を満たす形であれば使えます。

Q. 見解はいつ示されましたか。

A. 令和5年5月公表のQ&Aです。その後、令和5年7月と令和6年11月に改訂されています。

Q. 上場審査で問題になりますか。

A. 未納付の源泉所得税があれば、その解消と再発防止の説明が求められます。

📄 まとめ

信託型は給与所得です。実質的に会社が付与していると見る整理です。

源泉徴収義務者は発行会社です。行使時の資金負担が会社に来ます。

信託を使う形がすべて否定されたわけではありません。問12が税制適格の信託型を扱っています。

いま信託型が残っているなら、行使前に整理してください。行使後は選択肢がありません。

📚 参考(公的な一次情報)

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