業務プロセスの評価は、整備状況の評価と運用状況の評価という2段階で行います。設計を確かめる作業と、実施を確かめる作業です。
順序は整備が先です。統制の設計そのものに問題があれば、それが実施されていたかを確かめても、リスクが防げていないという結論は変わりません。
この記事では、2つの評価の違い、それぞれの進め方、不備の性質の違い、評価の時期を整理します。
- 整備状況の評価と運用状況の評価を6つの観点で比較
- 整備状況の評価で確かめる3つの点
- 証跡が残らない統制が運用評価に進めない理由
- 運用状況の評価での閲覧と再実施の使い分け
- 整備の不備と運用の不備で対応がどう違うか
- 業務に変更があった場合の評価のやり直し
図 整備状況の評価と運用状況の評価の進め方
📌 結論 設計を確かめてから実施を確かめる
業務プロセスの評価は、整備状況の評価と運用状況の評価という2段階で行います。整備状況の評価は、統制が適切に設計され存在しているかを確かめるもの。運用状況の評価は、その統制が期間を通じて設計どおりに実施されてきたかを確かめるものです。
順序は整備が先です。統制の設計そのものに問題があれば、それが実施されていたかを確かめても意味がありません。設計が不十分な統制を100件確かめても、リスクが防げていないという結論は変わらないためです。
整備に不備があれば、運用を評価しても意味がない
🧭 整備状況の評価
整備状況の評価では、マトリクスに書いた統制が実際に存在し、対応するリスクを防ぐか見つけるだけの設計になっているかを確かめます。主な手法はウォークスルーで、1件の取引を起点から終点まで追いながら、各工程の統制を確かめます。
確かめるのは3点です。統制が実在するか、リスクに対して有効な設計になっているか、実施されたことを示す証跡が残るかという点です。この3つのいずれかが欠けていれば、整備状況の不備になります。
実務で多いのが、3点目の証跡の欠落です。担当者は確かめているが記録が残らないという状態で、この場合は運用状況の評価ができません。記録の方法を決めてから、運用の評価に進みます。
整備の不備は設計の問題、運用の不備は定着の問題
📊 運用状況の評価
運用状況の評価では、その統制が期間を通じて実施されてきたかを確かめます。整備状況が1件を追うのに対し、運用状況は統制の実施頻度に応じた件数のサンプルを抽出して確かめます。
整備の不備を残したまま運用評価に進むと二度手間になる
手法としては、証憑の閲覧が中心になります。承認印のある伝票、システムの承認履歴、チェックリストの記入といった記録を見て、統制が行われていたことを確かめます。
より強い証拠が必要な場合は、再実施を行います。担当者が行った照合を自分でもやってみる、計算を再現してみるという方法です。承認印はあるが内容を見ずに押しているという状態は、閲覧では分かりません。再実施をすれば、その統制が意図した結果を出せるかが確かめられます。
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🗂 不備の性質が違う
整備状況の不備と運用状況の不備では、意味も対応も違います。整備状況の不備は設計の問題であり、統制を新たに作るか、既存の統制を変更する必要があります。対応に時間がかかるため、早い段階で見つけることが重要です。
運用状況の不備は、設計は正しいが実施されていなかったという状態です。原因としては、担当者が失念した、繁忙期に手続を省いた、担当が交代して引き継がれていなかった、といったものがあります。原因によって対応が変わります。
個別の失念であれば、注意喚起と件数を増やした再確認で足りることがあります。手順が現場の実態に合っていないために省かれているのであれば、手順そのものを見直す必要があり、これは実質的に整備状況の問題になります。
⚖️ 評価の時期
整備状況の評価は、期中の早い時期に行います。不備が見つかった場合、設計を直して運用を定着させ、その運用を評価するという工程が続くためです。期末近くに整備の不備が見つかると、その年度に有効な状態にすることは難しくなります。
運用状況の評価は、整備の評価が終わった統制から順に進めます。全部の整備評価が終わるのを待つ必要はありません。プロセスごとに、整備が終わったものから運用に入るという進め方にすると、期間を有効に使えます。
また、業務に変更があった場合は、整備状況の評価をやり直します。システムの入れ替え、担当の変更、手順の改定があれば、統制の設計が変わっている可能性があります。変更前の期間と変更後の期間で、それぞれ運用状況を確かめることになる点にも注意が必要です。
❓ よくある質問
A. 整備が先です。設計に問題があれば、実施されていたかを確かめてもリスクが防げていないという結論は変わりません。
A. 統制が実在するか、リスクに対して有効な設計か、実施を示す証跡が残るかの3点です。いずれかが欠ければ整備状況の不備になります。
A. 運用状況の評価ができません。記録の方法を決めてから運用の評価に進みます。
A. 統制の実施頻度に応じた件数のサンプルを抽出します。整備状況が1件を追うのとは考え方が違います。
A. 承認印はあるが内容を見ずに押しているという状態は閲覧では分かりません。より強い証拠が必要なら再実施を行います。
A. 整備の不備は設計の問題で、統制を作るか変更する必要があります。運用の不備は設計は正しいが実施されていなかったという状態です。
A. 期中の早い時期です。不備が見つかると設計の変更と運用の定着に時間がかかるため、期末近くでは間に合いません。
A. 整備状況の評価をやり直します。変更前と変更後で、それぞれの期間の運用状況を確かめることにもなります。
📄 まとめ
業務プロセスの評価は整備状況と運用状況の2段階です。設計を確かめてから実施を確かめます。
整備状況では、統制の実在、設計の有効性、証跡の3点を確かめます。証跡が欠けると運用評価に進めません。
運用状況では頻度に応じた件数を確かめます。閲覧で足りない場合は再実施でより強い証拠を得ます。
整備の不備は設計の問題、運用の不備は定着の問題です。原因によって対応が変わります。
整備の評価は期中の早い時期に行い、終わった統制から順に運用の評価に入ります。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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評価範囲の決定
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評価の実施
- 整備状況と運用状況の評価(この記事)
- 期中評価とロールフォワード
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