給与計算、記帳の代行、物流と在庫の保管、システムの運用といった業務を外部に委託している会社は多くあります。財務報告に関わる場合、委託していることを理由に評価から外すことはできません。
業務を委託しても、財務報告の責任は委託した側に残ります。委託先の処理が正しいことを、何らかの方法で確かめる必要があります。
この記事では、委託の洗い出し、3つの確かめ方、自社側の統制で補う方法、契約と体制の整備を整理します。
- 外部委託の類型と、それぞれの財務報告への関わり
- 委託業務を評価する5段階と、一覧づくりの重要性
- 委託先の統制を確かめる3つの方法と使いどころ
- 保証報告書を利用するときに確かめる点
- 自社側の検証で補うという最も使いやすい方法
- 契約に入れておくべき条項と委託先の管理
図 外部委託業務の内部統制を確かめる3つの方法
📌 結論 委託しても責任は残る
給与計算、記帳の代行、物流と在庫の保管、システムの運用といった業務を外部に委託している会社は多くあります。これらの業務が財務報告に関わる場合、委託していることを理由に評価の対象から外すことはできません。
業務を委託しても、財務報告の責任は委託した側に残ります。委託先が誤った処理をしても、その結果として作られる財務諸表は自社のものです。したがって、委託先の処理が正しいことを何らかの方法で確かめる必要があります。
委託しても、財務報告の責任は委託した側に残る
🧭 まず委託の一覧を作る
最初にやるのが、委託している業務の洗い出しです。意外に把握されていないもので、契約書を集めてみると、経理が知らない委託が見つかることがあります。
まず委託の一覧を作る。契約書を集めると漏れが見つかる
洗い出したら、財務報告に関わるものを選びます。清掃や警備といった業務は財務報告に直接関わりませんが、給与計算や記帳の代行は金額に直結します。物流や在庫の保管は、在庫の数量に関わるため対象になります。
選んだ業務について、その委託先の処理がどのように自社の帳簿に反映されるかを追います。委託先から受け取るデータや報告書が、どの勘定科目にどう反映されるかが分かれば、確かめるべき点が見えます。
📊 3つの確かめ方
委託先の統制を確かめる方法は、大きく3つあります。委託先が第三者から受けた保証報告書を利用する方法、自社で委託先を訪問して確かめる方法、そして委託先の処理結果を自社で検証する方法です。
自社側の検証で補えるなら、それが最も手軽で確実
保証報告書は、受託業務の内部統制について第三者が検証した報告書です。大手のシステム運用会社や記帳代行会社では用意していることがあります。これを入手できれば、自社で確かめる作業を減らせます。ただし、報告書の対象期間が自社の事業年度をカバーしているか、対象となっている業務の範囲が自社の委託内容と一致しているかを確かめます。
委託先が小規模で保証報告書がない場合は、自社で確かめることになります。訪問して統制の状況を確認する方法もありますが、委託先の協力が必要で、契約にその旨が定められていないと難しいところがあります。
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🗂 自社側の統制で補う
実務で最も使いやすいのが、委託先の処理結果を自社で検証するという方法です。委託先の内部統制に依拠せず、その結果が正しいかを自社で確かめるという整理になります。
給与計算を委託している場合であれば、委託先から受け取った計算結果について、人数と支給総額を自社の人事データと照合する、変動の大きい項目を抽出して内訳を確かめる、といった手続を自社で行います。これが有効に機能していれば、委託先の統制そのものを評価する必要は小さくなります。
記帳の代行を委託している場合も同様で、委託先が作成した仕訳や残高について、自社で証憑との突合や残高の確認を行っていれば、その手続を統制として評価できます。
この方法の利点は、委託先の協力を必要としないことです。自社の手続だけで完結するため、委託先が変わっても同じ方法が使えます。
⚖️ 契約と体制の整備
委託にあたっては、契約の内容も確認します。委託する業務の範囲、報告の方法と頻度、記録の保存、必要な場合に監査を受け入れる条項が入っているかを見ます。特に監査の受け入れに関する条項は、後から追加することが難しいため、契約の締結時に入れておきます。
また、委託先の選定と管理の仕組みも評価の対象になり得ます。委託先をどのように選び、その後の業務の質をどう確かめているかという点です。何年も同じ委託先に任せたままで、品質の確認を行っていないという状態は、統制として弱いという評価になります。
上場準備の段階では、委託の一覧を作り、それぞれについて財務報告への関わりと確かめ方を整理しておくと、上場後の評価がそのまま進められます。この整理は審査でも説明を求められることがあるため、早めに作っておく価値があります。
❓ よくある質問
A. 財務報告に関わる業務であれば必要です。委託しても財務報告の責任は委託した側に残ります。
A. 契約書を集めるところから始めます。経理が把握していない委託が見つかることがあります。
A. 給与計算、記帳の代行、物流と在庫の保管、システムの運用など、金額や数量に直結するものです。清掃や警備は直接には関わりません。
A. 保証報告書の利用、自社での訪問確認、自社側の検証で補うという3つの方法があります。
A. 報告書の対象期間が自社の事業年度をカバーしているか、対象となる業務の範囲が自社の委託内容と一致しているかを確かめます。
A. 自社で委託先の処理結果を検証する方法が使いやすいところです。委託先の協力を必要とせず、自社の手続だけで完結します。
A. 委託の範囲、報告の方法と頻度、記録の保存、必要な場合に監査を受け入れる条項です。監査の条項は後から追加することが難しいところです。
A. なり得ます。何年も同じ委託先に任せたままで品質の確認を行っていない状態は、統制として弱いという評価になります。
📄 まとめ
業務を委託しても財務報告の責任は残ります。委託先の処理が正しいことを何らかの方法で確かめます。
まず委託の一覧を作ります。契約書を集めると、把握されていない委託が見つかることがあります。
確かめ方は保証報告書の利用、自社での訪問確認、自社側の検証の3つです。
最も使いやすいのは自社側の検証です。委託先の協力を必要とせず、委託先が変わっても同じ方法が使えます。
契約には監査の受け入れ条項を入れておきます。後から追加することは難しいところです。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
制度の全体像
評価範囲の決定
文書化
評価の実施
- 整備状況と運用状況の評価
- 期中評価とロールフォワード
- 評価の簡素化
- 外部委託業務の評価(この記事)
- 評価の外部委託
IT統制
不備と改善
整備と設計
報告と立て直し