内部統制の評価を外部の専門家に委託できるかという質問はよくあります。答えは、作業の一部は委託できるが、判断は経営者に残るというものです。
文書化の支援や評価手続の実施は委託できます。評価範囲の決定、不備かどうかの判断、報告書の作成は経営者が行うものです。自社の会計監査人には委託できません。
この記事では、委託できる範囲、成果物の受け入れ、監査法人に利用してもらう条件、費用と社内の育成を整理します。
- 委託できる作業とできない作業の線引き
- 自社の会計監査人に委託できない理由
- 初年度の文書化を委託するときの注意点
- 成果物をそのまま評価結果にしてはいけない理由
- 監査法人に評価作業を利用してもらう5つの条件
- 費用を抑えながら社内に知見を残す進め方
📌 結論 作業は委託でき、判断は残る
内部統制の評価を外部の専門家に委託できるかという質問はよくあります。答えは、作業の一部は委託できるが、判断は経営者に残るというものです。
文書化の支援、評価手続の実施といった、手を動かす作業は委託できます。一方で、評価範囲の決定、不備かどうかの判断、報告書の作成といった、評価の結論に直結する部分は経営者が行うものです。
もう1つはっきりしているのが、自社の会計監査人には委託できないということです。監査人が会社の評価を作り、その評価を自ら監査するという構図になり、独立性が保てません。
手を動かす作業は委託でき、判断は自社に残るという線引き
🧭 どこまで委託するか
実務でよく委託されるのが、初年度の文書化です。3点セットの作成には時間がかかり、経験のない担当者が一から作ると手戻りが多くなります。経験のある外部の専門家に支援してもらうと、形が整うまでの時間が短縮できます。
成果物をそのまま自社の評価結果にせず、内容を確かめて受け入れる
ただし、丸ごと任せることは避けます。文書は業務の実態を写したものであり、社内の人が内容を理解していなければ、翌年以降の更新ができません。外部が作った文書を自社の担当者が読んでも分からないという状態では、その後が続きません。
望ましいのは、外部の支援を受けながら自社の担当者が作るという形です。進め方や様式は外部から学び、内容は自社で書くという分担であれば、知見が社内に残ります。
評価手続の実施についても、繁忙期に人手を借りるという使い方が現実的です。証憑の突合といった定型的な作業は委託しやすく、その結果を自社で確かめて受け入れるという流れにします。
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📊 成果物の受け入れ
委託した作業の成果物は、そのまま自社の評価結果にしてはいけません。内容を確かめ、自社として受け入れるという工程を挟みます。
確かめるのは、依頼した範囲の作業が行われているか、結論を支える証拠が添付されているか、自社の業務の実態と合っているかという点です。この確認を行った記録も残します。
受け入れの工程を省くと、外部が作ったものを自社が理解しないまま報告書の根拠にすることになります。監査法人から質問を受けたときに答えられず、外部に聞き直すという事態が起きます。
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🗂 監査法人に利用してもらう
会社が行った評価の作業を、監査法人が自らの監査で利用することがあります。利用してもらえれば、監査法人が行う手続が減り、会社が対応する負荷も減ります。
この5つが整うほど、監査法人の手続が減り会社の負担も減る
利用してもらうためには、いくつかの条件が整っている必要があります。評価する人が対象部門から独立していること、評価に必要な専門的な能力があること、決められた手順で体系的に行われていること、作業が査閲されていること、記録が第三者に読める形であることです。
このうち、会社側で整えやすいのは手順と記録です。評価のマニュアルと調書の様式をそろえ、調書にレビュー欄を設けて上位者が査閲するという運用にすれば、体系性と品質管理の条件が整います。
独立性については、評価チームの所属と担当の設計で対応します。経理部門の担当者が自部門の統制を評価するという形は避け、少なくとも自分が実施している統制は評価しないという整理にします。
⚖️ 費用と社内の育成
外部への委託は費用がかかります。初年度に手厚く支援を受けて、2年目以降は自社で回すという計画にすると、費用の総額を抑えられます。逆に、毎年同じように委託していると、費用が続くだけでなく社内に知見が残りません。
社内に残すという観点では、外部と一緒に作業する担当者を固定しておくことが有効です。その人が翌年度の中心になります。担当が毎年変わると、毎年外部に頼ることになります。
また、委託の契約では、成果物だけでなく、進め方の説明や社内への引き継ぎを含めるかどうかを決めておきます。成果物だけを納品する契約と、社内が自走できるようにする契約では、費用も内容も変わります。上場後も続く作業であることを踏まえると、後者のほうが結果的に安く済むことが多くなります。
❓ よくある質問
A. 作業の一部は委託できます。文書化の支援や評価手続の実施は可能ですが、評価範囲の決定や不備の判断、報告書の作成は経営者が行います。
A. できません。監査人が会社の評価を作り、その評価を自ら監査するという構図になり、独立性が保てません。
A. 避けます。社内の人が内容を理解していないと翌年以降の更新ができません。外部の支援を受けながら自社の担当者が作る形が望ましいところです。
A. 使えません。依頼した範囲の作業が行われているか、証拠が添付されているか、実態と合っているかを確かめて受け入れる工程を挟みます。
A. 条件が整えば利用してもらえます。客観性、専門的な能力、体系的な手法、品質管理、文書化の5つが求められます。
A. 手順と記録です。評価のマニュアルと調書の様式をそろえ、調書にレビュー欄を設けて査閲する運用にすれば整います。
A. 経理部門の担当者が自部門の統制を評価する形は避けます。少なくとも自分が実施している統制は評価しないという整理にします。
A. 初年度に手厚く支援を受け、2年目以降は自社で回す計画にします。外部と一緒に作業する担当者を固定すると知見が社内に残ります。
📄 まとめ
評価は作業を委託でき、判断は経営者に残ります。自社の会計監査人には委託できません。
初年度の文書化は委託しやすい領域ですが、丸ごと任せると翌年以降の更新ができなくなります。
成果物は内容を確かめて受け入れます。この工程を省くと、監査法人の質問に答えられなくなります。
監査法人に評価作業を利用してもらうには、客観性、能力、体系性、品質管理、文書化の5つが要ります。手順と記録は会社側で整えやすい部分です。
初年度に手厚く支援を受け、2年目以降は自社で回す計画にすると費用を抑えられます。担当者を固定すると知見が残ります。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
制度の全体像
評価範囲の決定
文書化
評価の実施
- 整備状況と運用状況の評価
- 期中評価とロールフォワード
- 評価の簡素化
- 外部委託業務の評価
- 評価の外部委託(この記事)
IT統制
不備と改善
整備と設計
報告と立て直し