内部統制の評価では、統制が何にもとづいて行われているかが問われます。担当者が慣習で行っているという状態では、担当が代われば統制も変わります。
規程に定められていれば、誰が担当しても同じ手続が行われるという説明ができます。上場審査でも規程の整備状況は確認されるため、内部統制の評価と重なる領域です。
この記事では、必要な規程の区分、整備の進め方、特に重要な規程、制定と周知の記録、作りすぎないための整理を扱います。
- 整備する規程を6つの区分で整理
- 足りない規程を作る前に既存の規程を確かめる理由
- 職務権限規程で金額基準が問題になる場面
- 規程でよくある5つの問題と直し方
- 制定と改定と周知の記録の残し方
- 規程とマニュアルの使い分け
📌 結論 統制は規程を根拠にする
内部統制の評価では、統制が何にもとづいて行われているかが問われます。担当者が慣習で行っているという状態では、担当が代われば統制も変わります。規程に定められていれば、誰が担当しても同じ手続が行われるという説明ができます。
上場準備の段階では、必要な規程を洗い出して整備する作業が必要になります。上場審査でも規程の整備状況は確認されるため、内部統制の評価と審査の準備が重なる領域です。
規程がないと、統制が何にもとづくのかを説明できない
🧭 まず一覧を作る
整備の第一歩は、必要な規程の一覧を作ることです。組織と権限、業務、経理、人事、管理、統治という区分で並べ、それぞれについて自社にあるかないかを確かめます。
作る前に、既存の規程が実態と合っているかを確かめる
この作業をすると、意外に多くの規程が既にあることが分かります。設立時に作った規程が更新されないまま残っている、他社の雛形を使って作ったが運用されていないという状態です。
したがって、足りない規程を作る前に、既存の規程が実際の運用と合っているかを確かめます。合っていない規程が残っていると、評価の段階で規程と実務のずれが不備として現れます。
📊 特に重要な規程
内部統制の観点で特に重要なのが、職務権限規程です。誰がどの金額まで何を決裁できるかを定めるもので、購買、販売、人事、資金といった領域の統制の土台になります。
この規程でよくある問題が、金額の基準が事業規模に合っていないことです。設立当初の規模で作った基準のままだと、日常的な取引が社長決裁になり、承認が滞ります。逆に基準が緩すぎると、統制として機能しません。現在の取引規模に照らして見直します。
経理規程も重要です。会計方針、決算の手続、証憑の保存といった内容が定められていれば、決算・財務報告プロセスの統制の根拠になります。会計基準の変更があったときに更新されているかも確かめます。
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🗂 制定と周知の記録
規程を作ったら、制定の手続を踏みます。取締役会または権限のある機関で承認を受け、その記録を残します。承認の記録がないまま運用されている規程は、会社の正式な決めごとと言えるかが問われます。
改定の履歴も残します。規程の末尾に、制定日と改定日を並べる欄を設けておくと、いつ何が変わったかが追えます。評価の際に、期中に改定があったかを確かめる材料にもなります。
周知も必要です。規程があっても、担当者が見たことがなければ守られません。社内ポータルなど誰でも閲覧できる場所に置き、その場所を案内します。周知した記録も残しておくと、統制環境の評価の材料になります。
⚖️ 作りすぎない
規程は多ければよいというものではありません。運用できない規程を作ると、規程と実務のずれが生まれ、評価のたびに不備として指摘されることになります。
目安としては、財務報告に関わる統制の根拠となるもの、上場審査で求められるもの、法令上必要なものに絞ります。それ以外の細かな手続は、規程ではなくマニュアルや手順書として整理すれば足ります。規程は改定に承認が必要ですが、マニュアルは部門の判断で直せるため、実務に合わせやすくなります。
この使い分けをしておくと、規程の数が抑えられ、改定の負担も減ります。何を規程にし、何をマニュアルにするかの方針を、文書管理規程で定めておくと整理がつきます。
❓ よくある質問
A. 統制が何にもとづくかを説明するためです。慣習で行っている状態では、担当が代われば統制も変わります。
A. 必要な規程の一覧を作り、あるものとないものを分けます。既にある規程が実態と合っているかの確認が先です。
A. 運用に合わせて規程を直すか、規程どおりに運用を戻すかを決めます。ずれを放置すると評価で不備として現れます。
A. 金額の基準が事業規模に合っているかです。設立当初のままだと日常の取引が社長決裁になり、承認が滞ります。
A. 取締役会または権限のある機関の承認を受け、記録を残します。承認の記録がない規程は正式な決めごとと言えるかが問われます。
A. 必要です。規程の末尾に制定日と改定日を並べる欄を設けておくと、期中の改定を確かめる材料にもなります。
A. 運用できない規程を作ると、規程と実務のずれが不備として指摘されます。財務報告に関わるもの、審査で求められるもの、法令上必要なものに絞ります。
A. マニュアルや手順書として整理します。規程は改定に承認が必要ですが、マニュアルは部門の判断で直せるため実務に合わせやすくなります。
📄 まとめ
統制は規程を根拠にします。慣習に頼った運用では、担当が代わると統制も変わります。
整備は一覧づくりから始め、足りないものを作る前に既存の規程が実態と合っているかを確かめます。
職務権限規程の金額基準は、現在の取引規模に照らして見直します。古い基準は承認の滞りか統制の形骸化を招きます。
制定と改定の承認、履歴、周知の記録を残します。見たことのない規程は守られません。
規程は絞り、細かな手続はマニュアルにします。改定の負担が減り、実務に合わせやすくなります。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。