内部統制の基本的な枠組みは、4つの目的と6つの基本的要素で整理されています。金融庁の企業会計審議会が示した基準に定められており、内部統制報告制度の出発点になります。
制度が対象とするのは4つの目的のうち財務報告の信頼性だけですが、他の3つと完全に切り離せるわけではありません。周辺の目的とつながっているという理解が実務で役に立ちます。
この記事では、4つの目的の読み方、6つの要素の関係、実務での使い方、基準の改訂との関係を整理します。
- 内部統制の4つの目的と、制度が対象とするもの
- 財務報告の信頼性以外の目的が制度に与える影響
- 6つの基本的要素と、統制環境が土台になる構造
- モニタリングのなかで内部監査が占める位置
- 6つの要素で分類すると見える統制の偏り
- 基準の改訂で変わった部分と変わらない骨格
図 4つの目的と6つの基本的要素のどこに当たるかの判定
📌 結論 目的は4つ、要素は6つ
内部統制の基本的な枠組みは、4つの目的と6つの基本的要素で整理されています。金融庁の企業会計審議会が示した基準に定められているもので、内部統制報告制度の出発点になります。
制度が対象とするのは、4つの目的のうち財務報告の信頼性だけです。ただし、他の3つと完全に切り離せるわけではありません。法令の遵守が崩れれば財務諸表に影響が出ますし、資産の保全ができていなければ資産の実在性が疑われます。対象は財務報告に絞られるが、周辺の目的とつながっているという理解が実務では役に立ちます。
制度の対象は財務報告の信頼性だが、他の3つと切り離せない
🧭 4つの目的をどう読むか
業務の有効性及び効率性は、事業の目的を達成するために業務が無駄なく行われることを指します。制度の直接の対象ではありませんが、統制を増やしすぎて業務が滞れば、この目的が損なわれます。統制の設計では、この目的とのバランスを常に意識します。
財務報告の信頼性が、制度が対象とする目的です。ここでいう財務報告には、財務諸表だけでなく、財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報も含まれます。
法令等の遵守と資産の保全は、直接の対象ではありませんが、これらが機能していない状態は財務報告にも影響します。評価の範囲を決めるときには、財務報告への影響という観点でこの2つを見ます。
6つは並列ではなく、統制環境が他の5つの土台になる
📊 6つの要素の関係
6つの基本的要素は並列ではありません。統制環境が土台となり、その上にリスクの評価と対応、統制活動が積み上がる構造です。統制環境が弱い会社では、いくら承認の手続を細かく作っても機能しません。経営者が統制を軽視していれば、現場もそれに倣うためです。
情報と伝達は、必要な情報が必要な人に届く仕組みです。統制が行われた結果が上長に伝わらない、現場で起きた問題が経営に届かないという状態は、この要素の弱さを示します。
モニタリングは、内部統制が機能しているかを見続ける仕組みです。日常的な業務のなかで行われるものと、内部監査のように独立した立場で行われるものの2つがあります。内部監査が制度のなかで位置づけられるのは、この要素です。
ITへの対応は、業務がシステムに組み込まれている現在では、他の要素と切り離せません。承認がシステム上で行われていれば、統制活動の評価はIT統制の評価と一体になります。
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🗂 実務での使い方
この枠組みは、覚えるためのものではなく、抜けを見つけるために使います。統制を並べたときに、6つの要素のうちどれに当たるかを分類すると、偏りが見えます。
目的から入り、リスクを経て統制にたどりつく順序を崩さない
よくあるのが、統制活動ばかりが並び、モニタリングと情報と伝達が薄いという状態です。承認や照合の手続は整えられていても、それが行われているかを誰も見ていない、問題が起きても上に伝わらないという構造になっています。
逆に、統制環境の評価だけが厚く、業務プロセスの統制が具体化していないという会社もあります。理念や規程は整っているが、現場でどう運用されているかが確かめられていないという状態です。
6つの要素で分類してみることで、こうした偏りが数の上で見えるようになります。評価の計画を立てる段階で一度やっておくと、どこに時間を使うべきかの判断ができます。
⚖️ 基準の改訂との関係
内部統制の基準は改訂が行われており、国際的な枠組みとの関係の整理や、経営者による内部統制の無効化への対応、ガバナンスや全組織的なリスク管理との関係といった論点が加えられています。
ただし、4つの目的と6つの基本的要素という骨格そのものは維持されています。上場準備の段階で枠組みを理解するには、この骨格を押さえておけば足ります。改訂の内容は、評価範囲の決定やITを利用した内部統制の評価といった、より実務に近い部分に関わります。
実務としては、最新の基準と実施基準を確認したうえで、自社の整理がその骨格に沿っているかを見る形で進めます。細かな条項を追うより、目的から統制へとつながる流れが説明できることのほうが重要です。
❓ よくある質問
A. 制度が対象とするのは財務報告の信頼性です。ただし他の3つも財務報告に影響するため、その観点では無関係ではありません。
A. 財務諸表だけでなく、財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報も含まれます。
A. 並列ではありません。統制環境が土台となり、その上にリスクの評価と対応、統制活動が積み上がる構造になっています。
A. 承認の手続を細かく作っても機能しません。経営者が統制を軽視していれば現場もそれに倣うためです。
A. モニタリングです。日常的な監視と、独立した立場からの監視の2つがあり、内部監査は後者にあたります。
A. 切り離せません。承認がシステム上で行われていれば、統制活動の評価はIT統制の評価と一体になります。
A. 統制を並べて6つに分類すると偏りが見えます。統制活動ばかりでモニタリングが薄いという状態がよくあります。
A. 4つの目的と6つの基本的要素という骨格は維持されています。改訂は評価範囲の決定やITを利用した内部統制の評価といった実務寄りの部分に関わります。
📄 まとめ
内部統制の枠組みは4つの目的と6つの基本的要素です。制度が対象とするのは財務報告の信頼性ですが、他の目的とつながっています。
6つの要素は並列ではなく、統制環境が土台になります。土台が弱いと個別の統制をいくら作っても機能しません。
統制を6つの要素で分類すると偏りが数の上で見えます。統制活動ばかりでモニタリングが薄いという状態がよくあります。
基準の改訂でも骨格は維持されています。細かな条項を追うより、目的からリスクを経て統制につながる流れを説明できることが重要です。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
制度の全体像
- 内部統制報告制度とは
- 4つの目的と6つの基本的要素(この記事)
- 参照する基準と府令
- 内部統制基準の改訂
- 連結ベースの評価
- 評価のスケジュール
評価範囲の決定
文書化
評価の実施
IT統制
不備と改善
整備と設計
報告と立て直し