内部統制評価のスケジュールで最も大事なのは、不備を直す期間を先に確保することです。期末に近い時期に不備が見つかると、直す時間も確かめる時間もありません。
負荷が集中する最大の原因は、決算作業と評価が重なることです。経理部門も評価チームも同時に止まるため、決算月とその翌月には評価を置かないという設計が効きます。
この記事では、スケジュールを組む6段階、決算との重なりの避け方、二度手間になりやすい場面、関係者との合意、遅れたときの判断を整理します。
- 不備の改善期間を先に確保する組み方
- 負荷が集中する時期と、それぞれの分散の工夫
- 決算月とその翌月を評価の空白にする理由
- 拠点ごとに月を割り当てる配分
- 二度手間になりやすい5つの場面と先に確認すること
- 予定より遅れたときに何を優先し何を後ろに回すか
図 1年の作業をどの順で進めるかの目安
📌 結論 改善の期間を先に確保する
内部統制評価のスケジュールで最も大事なのは、不備を直す期間を先に確保することです。評価を進めれば必ず不備が見つかりますが、期末に近い時期に見つかると、直す時間も、直したことを確かめる時間もありません。
そのため、期末から逆算して、不備の改善と再評価に使う期間を先に置きます。そのうえで、残った期間に評価の作業を前から詰めていきます。この順序で組むと、評価が遅れたときに何を削るかの判断もしやすくなります。
不備の改善期間を先に取ってから、評価を前に詰めていく
🧭 決算と重ならないように置く
負荷が集中する最大の原因は、決算作業と評価が重なることです。経理部門は決算で手が空かず、評価を担当するチームも経理と兼務していることが多いため、両方が止まります。
決算月に評価を置かないだけで、現場の負担はかなり下がる
対策は単純で、決算月とその翌月には評価を置かないことです。3月決算であれば、4月と5月を評価の空白期間にします。この2か月を外しても、残りの10か月で計画すれば十分に回ります。
四半期決算がある会社では、空白にすべき月が増えます。それでも、月ごとに対象を割り振っておけば、どの月にどのプロセスを見るかが決まり、現場も予定を立てられます。年間の予定を期初に共有しておくと、資料の準備も進みます。
拠点が複数ある会社では、拠点ごとに月を割り当てます。同じ月に複数の拠点へ資料を依頼すると、評価する側の処理も追いつきません。1か月に1拠点という配分にすると、余裕を持って進められます。
決算との重なりを避けた年間の割り振りと、改善期間の確保をご提案します。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の導入、内部監査対応を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
📊 二度手間を避ける
スケジュールを組む前に確認しておきたいのが、その年度に予定されている変更です。システムの入れ替え、業務フローの変更、組織再編、新規拠点の稼働といった予定があると、変更前に文書化した内容が使えなくなります。
変更が予定されている業務は、文書化を後回しにするほうが早い
変更が予定されている業務については、文書化を変更後まで待つほうが結果として早く終わります。変更前の姿を記録しても、数か月後には作り直しになるためです。ただし、変更が期末近くになる場合は、変更前の期間についても評価が必要になるため、両方の記録が要ります。
この確認は、情報システム部門と経営企画部門に年度の予定を聞くだけで済みます。期初に一度聞いておけば、無駄な作業をかなり減らせます。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら
🗂 関係者との合意
年間のスケジュールは、評価を担当するチームだけで決めても機能しません。資料を出すのは現場の担当者であり、その人たちの繁忙期と重なれば予定どおりに進みません。
期初に、各部門の繁忙期を聞いたうえで割り振りを作り、確定したら年間の予定として共有します。いつ何を依頼されるかが分かっていれば、現場も準備ができます。突然の依頼が続くと、協力が得にくくなります。
監査法人とも、年間の予定を共有しておきます。会社の評価がいつ終わるかによって、監査法人の手続の時期も決まります。評価が遅れることが分かった時点で早めに伝えれば、監査法人の側でも調整ができます。黙って遅れると、期末に一気に負荷がかかります。
⚖️ 遅れたときの判断
予定どおりに進まないことは必ず起きます。そのときに、何を優先するかを決めておきます。優先順位が高いのは、評価範囲の確定と、決算・財務報告プロセスの評価です。この2つが終わっていないと、報告書そのものが書けません。
次に優先するのが、不備が見つかっている領域の再評価です。改善したことを確かめないまま期末を迎えると、その不備が残った状態で報告することになります。
逆に、後ろに回せるのは、前年度に問題のなかった業務プロセスの運用評価です。全体が遅れているときは、こうした領域の評価件数を減らす、時期を後ろにずらすという判断で調整します。ただし、減らした理由は調書に書き、監査法人にも伝えておきます。黙って減らすと、後から追加の評価を求められます。
❓ よくある質問
A. 期末日から逆算して、不備の改善と再評価に使う期間を先に置きます。そのうえで残った期間に評価を前から詰めていきます。
A. 決算月とその翌月には評価を置かないと決めてしまいます。3月決算なら4月と5月を空白にしても、残りの10か月で十分に回ります。
A. 拠点ごとに月を割り当てます。同じ月に複数拠点へ依頼すると、評価する側の処理も追いつきません。
A. 変更が予定されている業務の文書化は変更後まで待つほうが早く終わります。ただし期末近くの変更なら変更前の期間の評価も必要になります。
A. 情報システム部門と経営企画部門に年度の予定を聞くだけで済みます。期初に一度聞いておけば無駄な作業をかなり減らせます。
A. 各部門の繁忙期を聞いたうえで割り振りを作り、確定したら年間の予定として共有します。突然の依頼が続くと協力が得にくくなります。
A. 年間の予定を期初に共有します。遅れることが分かった時点で早めに伝えれば調整ができますが、黙って遅れると期末に一気に負荷がかかります。
A. 評価範囲の確定と決算・財務報告プロセスの評価です。この2つが終わっていないと報告書が書けません。次に不備が見つかっている領域の再評価です。
📄 まとめ
スケジュールは不備の改善期間を先に確保してから、評価を前に詰めるという順序で組みます。
決算月とその翌月には評価を置きません。それだけで現場と評価チームの負担が大きく下がります。
その年度に予定されている変更を先に確認します。変更が予定されている業務の文書化は後回しにするほうが早く終わります。
年間の予定は現場と監査法人の双方に共有します。いつ何を依頼されるかが分かっていれば準備ができます。
遅れたときは、範囲の確定と決算プロセスの評価を優先し、前年度に問題のなかった領域の評価を後ろに回します。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
制度の全体像
- 内部統制報告制度とは
- 4つの目的と6つの基本的要素
- 参照する基準と府令
- 内部統制基準の改訂
- 連結ベースの評価
- 評価のスケジュール(この記事)
評価範囲の決定
文書化
評価の実施
IT統制
不備と改善
整備と設計
報告と立て直し