評価で見つかった不備を改善する段階で、多くの会社がつまずきます。不備を見つけるたびに担当部門へ個別に伝えると、何をどこまで直せば終わるのかが見えなくなります。
有効なのは、不備をいったん集計し、全容を示してから改善に入ることです。原因が共通するものをまとめれば、直すべき対象がはつきりします。
この記事では、集計と全容の把握、指示ではなく提案にする伝え方、会議体での進捗管理、完了の確認を整理します。
- 不備の改善を5段階で回す進め方
- 原因が共通する不備をまとめる意味
- 改善の指導で避けたい5つの進め方
- ルールを指示するのではなく案を示す理由
- 月次の全体会議と分科会の使い分け
- 完了の確認を証拠の提示と運用の評価に分ける考え方
📌 結論 個別に叩かず全容を示す
評価で見つかった不備を改善する段階で、多くの会社がつまずきます。よくあるのが、不備を見つけるたびに担当部門へ個別に伝え、その都度対応してもらうという進め方です。この形だと、部門の側は次々に指摘が飛んでくる状態になり、何をどこまで直せば終わるのかが見えません。
有効なのは、不備をいったん集計し、全容を示してから改善に入ることです。何件あり、どの部門にどう分布し、原因が共通するものがどれかを整理すれば、優先順位がつけられます。
集計して全容を見ないと、同じ原因の不備を何度も指摘することになる
🧭 原因でまとめる
集計するときは、不備の件数を数えるだけでなく、原因が共通するものをまとめます。承認の記録が残っていないという不備が5件あったとして、原因が同じ手順書の不備であれば、直すべきは手順書1つです。
この整理をしないまま個別に対応すると、5件それぞれについて改善を求めることになり、部門の負担も評価チームの負担も5倍になります。しかも、根本の手順書が直されなければ、翌年度も同じ不備が出ます。
個別に叩くのではなく、全容を示して優先順位をつける
原因でまとめると、改善の相手も変わります。個別の担当者ではなく、手順書を管理している部門や、システムを管理している部門が対象になります。組織として直すべきものが見えるということです。
📊 指示ではなく提案にする
改善の進め方で効果が分かれるのが、指示するか提案するかという点です。評価する側がルールを決めて指示すると、現場の実情に合わない手続ができあがり、結局守られません。
望ましいのは、いくつかの案を示して現場に選んでもらう形です。承認の記録を残す方法として、押印、システムの承認機能、チェックリストへの記入という選択肢を示し、どれが実務に馴染むかを現場に決めてもらいます。自分たちで選んだ方法は定着しやすくなります。
また、改善を求めるときは、完了した状態を具体的に書きます。承認の記録を残すという書き方ではなく、購買システムの承認機能を使い、承認者と承認日時が記録される状態にする、と書けば、何をすれば終わりかが分かります。
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🗂 会議体で進捗を管理する
改善の進捗は、会議体で管理します。月に一度、経営者と各部門長が出席する場で、全体の進捗と遅れている項目を確認します。この場に経営が関与しているかどうかで、改善の速度が大きく変わります。
全体会議で経営が関与すると、改善の速度が上がる
全体会議とは別に、プロセスごとの分科会を設けると、具体的な調整が進みます。全体会議では進捗の確認にとどめ、どう直すかの議論は分科会で行うという分担にすると、会議の時間が短くて済みます。
決算・財務報告プロセスの不備については、会計処理に関わる論点が含まれるため、監査法人を交えた協議が必要になることがあります。この場合は個別に場を設けます。
⚖️ 完了の確認
改善が完了したという報告を受けただけでは、完了とはいえません。実際に直ったことを確かめる必要があります。確かめ方は2つあり、証拠の提示を求める方法と、改善後の運用を評価する方法です。
証拠の提示は、改善後に作成された記録を見せてもらう方法です。承認の記録が残るようになったのであれば、改善後の伝票を数件見れば確かめられます。
改善後の運用の評価は、その統制が期末までに十分な回数実施されていることを確かめる作業です。有効という結論を出すためには、こちらが必要になります。証拠が数件あるだけでは、期末時点で有効とは言い切れません。
したがって、改善には期限を設けます。期末の3か月前を目安にすると、月次の統制であれば3件の実施を確かめられます。この期限を超える改善については、その年度は不備が残る前提で重要性を判断することになります。
❓ よくある質問
A. 個別に伝えると、部門の側は次々に指摘が飛んでくる状態になります。集計して全容を示してから改善に入るほうが動きます。
A. 件数だけでなく、原因が共通するものをまとめます。同じ手順書に原因がある5件は、直すべき対象が1つということです。
A. いくつかの案を示して現場に選んでもらうほうが定着します。指示すると実情に合わない手続ができ、結局守られません。
A. 完了した状態を具体的に書きます。承認の記録を残すではなく、システムの承認機能を使い承認者と日時が記録される状態にする、と書きます。
A. 部門長です。担当者に直接伝えると、上長が把握せず組織として動かないことがあります。
A. 月次の全体会議で経営者と部門長が進捗を確認します。経営が関与しているかどうかで改善の速度が変わります。
A. 完了とはいえません。証拠の提示を求めるか、改善後の運用を評価して確かめます。
A. 期末の3か月前を目安にします。月次の統制であれば、改善後に3件の実施を確かめられる期間が必要です。
📄 まとめ
不備は個別に叩かず、集計して全容を示してから改善に入ります。
原因が共通するものをまとめると、直すべき対象が絞られ、翌年度の再発も防げます。
改善はルールを指示するのではなく、案を示して現場に選んでもらいます。自分たちで選んだ方法は定着します。
進捗は月次の全体会議で管理し、具体的な調整は分科会で行います。経営の関与が速度を決めます。
完了は報告ではなく証拠と運用の評価で確かめます。期末の3か月前を改善の期限にします。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。