内部統制の対応が進まないという相談は、状況がさまざまに見えて、実際にはいくつかの型に分かれます。始まらない、やりすぎる、終わらない、間に合わない、直らないの5つです。
どの型に当てはまるかで打つ手が変わります。始まらない会社に効率化の話をしても意味がなく、やりすぎている会社に丁寧にやりましょうと言えば事態は悪化します。
この記事では、5つの型と抜け出す手、よくある6つの誤解、立て直しの順序を整理します。
- 内部統制対応が行き詰まる5つのタイプと抜け出す手
- 始まらない会社が最初にやるべきこと
- やりすぎている会社が絞るべき対象
- 文書化が終わらない原因と完成の基準の決め方
- 同じ不備が毎年残る本当の原因
- 止まっている会社に共有されがちな6つの誤解
📌 結論 止まり方には型がある
内部統制の対応が進まないという相談を受けると、状況はさまざまに見えて、実際にはいくつかの型に分かれます。始まらない、やりすぎる、終わらない、間に合わない、直らないの5つです。
どの型に当てはまるかで、打つ手が変わります。始まらない会社に対して効率化の話をしても意味がなく、やりすぎている会社に対して丁寧にやりましょうと言えば事態は悪化します。まず自社がどの型かを見極めることから始めます。
どのタイプかを見極めると、打つ手が変わる
🧭 始まらない、やりすぎる
始まらないタイプは、担当も範囲も決まらないまま時間が過ぎている状態です。誰がやるのかが決まっていない、決まったが他の業務と兼務で手が回らない、どこから手をつければよいか分からないという理由が重なります。
この場合は、完璧な計画を作ろうとせず、1つの業務プロセスに絞って着手します。購買や経費精算のように手続が定型的な領域を選び、ウォークスルーから文書化までを一度通してみます。1つ通せば、必要な作業量と自社の課題が具体的に見えます。
やりすぎるタイプは逆で、必要以上の統制を作り、文書も細かく書きすぎて疲弊している状態です。真面目な会社ほどこうなります。この場合は、評価範囲と統制の数を絞り直します。1つのリスクに複数の統制があるなら最も効果的なものに絞り、文書は統制の位置が読み取れる粒度まで簡略化します。
誤解を抱えたまま進めると、必ずどこかで止まる
📊 終わらない、間に合わない
終わらないタイプは、文書化がいつまでも完成しない状態です。原因の多くは、完成の基準が決まっていないことにあります。どこまで書けば終わりかが決まっていないと、細部を詰め続けることになります。
対策は、完成の基準を先に決めることです。統制の位置が読み取れること、リスクと統制が対応づけられていること、証跡が特定されていることの3つが満たされていれば完成とする、といった形です。そのうえで期限で区切り、期限が来たら次のプロセスに移ります。
間に合わないタイプは、期末までに評価が終わらない状態です。原因は決算業務との重なりであることが多く、決算月とその翌月に評価を置かない設計にするだけで大きく変わります。あわせて、不備の改善に使う期間を先に確保し、そこから逆算して評価を前に詰めます。
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🗂 直らない
直らないタイプは、同じ不備が毎年残る状態です。改善を求めているのに直らないという場合、原因は現場の意識ではなく、改善の求め方にあることがほとんどです。
不備を個別に伝えて都度対応してもらう形だと、原因が共通する不備が何度も出てきます。集計して原因でまとめ、手順書やシステムといった仕組みの側を直すという進め方に変えると、翌年度の不備が減ります。
また、改善の期限と完了の確認が曖昧であることも原因になります。期末の3か月前を期限とし、完了は証拠の提示と改善後の運用の評価で確かめるという運用にすると、放置されなくなります。
減らす判断をするには、経営の関与が要る
⚖️ 誤解を解く
止まっている会社では、いくつかの誤解が共有されていることがあります。内部統制に価値はない、統制は多いほど安全である、文書は詳しいほどよい、評価は経理だけの仕事である、外部に任せれば終わる、上場後に始めればよいといったものです。
これらの誤解を抱えたまま進めると、どこかで必ず止まります。特に、評価は経理だけの仕事という誤解は根深く、各部門の協力が得られない原因になります。統制を実施しているのは各部門であり、評価は全社の作業だという理解を経営から伝えてもらう必要があります。
そして、立て直しには経営の関与が欠かせません。評価範囲や統制の数を減らすという判断は、担当者だけではできません。月に一度、経営者が出席する場で進捗と課題を確認する仕組みを作ることが、結局のところ最も効く手になります。
❓ よくある質問
A. 完璧な計画を作ろうとせず、1つの業務プロセスに絞って着手します。購買や経費精算のように手続が定型的な領域が入りやすいところです。
A. 1つのリスクに複数の統制があるなら最も効果的なものに絞ります。文書も統制の位置が読み取れる粒度まで簡略化します。
A. 完成の基準が決まっていないことが原因です。統制の位置が読み取れる、リスクと対応づいている、証跡が特定されているの3つで完成とし、期限で区切ります。
A. 決算月とその翌月に評価を置かない設計にします。あわせて不備の改善期間を先に確保し、そこから逆算して評価を前に詰めます。
A. 改善の求め方に原因があることがほとんどです。集計して原因でまとめ、手順書やシステムといった仕組みの側を直します。
A. 期末の3か月前を期限とし、完了は証拠の提示と改善後の運用の評価で確かめる運用にします。
A. 統制を実施しているのは各部門であり、評価は全社の作業です。この理解を経営から伝えてもらう必要があります。
A. 経営の関与です。評価範囲や統制の数を減らす判断は担当者だけではできません。月に一度、経営者が出席する場で進捗を確認します。
📄 まとめ
内部統制の対応が止まる型は5つです。まず自社がどの型かを見極めると、打つ手が決まります。
始まらない会社は1プロセスに絞って着手し、やりすぎている会社は範囲と統制の数を絞り直します。
文書化が終わらないのは完成の基準がないためです。3つの条件で完成とし、期限で区切ります。
同じ不備が残るのは、改善の求め方に原因があります。原因でまとめて仕組みの側を直します。
立て直しには経営の関与が欠かせません。減らす判断は担当者だけではできないためです。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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- 内部統制報告書の書き方
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