全社的な内部統制は、会社全体に影響を及ぼす統制です。経営者の姿勢、倫理の方針、組織の構造、報告のルート、内部監査といった、個別の業務プロセスの外側にある仕組みが対象になります。
これを最初に評価する理由は、その結果が業務プロセスの評価の深さに影響するためです。良好であれば簡素化でき、問題があれば厚く評価することになります。
この記事では、評価項目の作り方、確かめる方法、判定と結論の出し方、上場準備の段階でやることを整理します。
- 全社的な内部統制の評価結果が業務プロセスに与える影響
- 基本的要素ごとの評価項目の例と、証拠になるもの
- 実施基準の例示を自社に合わせて作り替える方法
- サンプル抽出ではない評価の進め方
- 同じ項目を複数の人に聞くと何が見えるか
- 項目ごとの判定と全体としての結論の出し方
図 全社的な内部統制の評価項目の作り方
📌 結論 全社的な内部統制が評価の土台
全社的な内部統制は、会社全体に影響を及ぼす統制です。経営者の姿勢、倫理の方針、組織の構造、リスク管理の仕組み、報告のルート、内部監査といった、個別の業務プロセスの外側にある仕組みが対象になります。
これを最初に評価する理由は、その結果が業務プロセスの評価の深さに影響するためです。全社的な内部統制が良好であれば、業務プロセスの評価を簡素化できる部分があります。逆に問題があれば、業務プロセスの評価を厚くする必要が生じます。
良好であることの説明が、業務プロセスの負担を軽くする
🧭 評価項目をどう作るか
実施基準には、全社的な内部統制の評価項目の例が示されています。6つの基本的要素ごとに、確かめるべき事項が並んでいます。多くの会社は、この例示をもとに自社の評価シートを作ります。
項目ごとに証拠を決めておくと、毎年の評価が同じ手順で回せる
ここで大事なのは、例示をそのまま写さないことです。例示は幅のある企業を想定して書かれているため、持株会社を前提とした項目や、海外拠点を前提とした項目が含まれます。自社に当てはまらない項目は落とし、逆に自社に固有のリスクがあれば追加します。
落とした項目については、なぜ落としたのかを書いておきます。理由が書かれていれば、監査法人との協議でも説明ができます。書いていないと、なぜこの項目がないのかという質問に毎回答えることになります。
📊 どう確かめるか
全社的な内部統制の評価は、業務プロセスのようにサンプルを抽出して件数を確かめる形にはなりません。方針や仕組みが存在し、機能しているかを、資料の閲覧と関係者への質問で確かめる形になります。
項目ごとの判定だけで終わらせず、全体としての結論まで出す
確かめる相手は、経営者、管理部門の責任者、内部監査の担当者が中心です。同じ項目について複数の人に聞くと、認識のずれが見えます。経営者は仕組みがあると考えているが、現場の責任者はその仕組みを知らないという状態は、情報と伝達の弱さを示します。
証拠としては、規程、議事録、研修の記録、周知に使った資料などを集めます。方針が文書で示されているかだけでなく、それが従業員に伝わる仕組みがあるかまで確かめます。規程はあるが誰も読んでいないという状態は、統制環境として弱いという評価になります。
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🗂 判定と結論
項目ごとに、有効か不備かを判定します。この判定は、あるかないかではなく、機能しているかで行います。仕組みは存在するが運用されていないという状態は、不備として扱います。
判定には理由を添えます。有効と判定した理由、不備と判定した理由が書かれていないと、翌年度に別の担当者が評価するときに一貫性が保てません。また、監査法人が会社の評価を利用する際にも、判定の理由が必要になります。
項目ごとの判定が終わったら、全体としての結論を出します。不備がいくつかあっても、それが財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼさないのであれば、全体としては有効という結論になり得ます。逆に、1つの不備が重大であれば、全体として有効とは言えません。この判断は、不備の内容と、それが財務報告に及ぼす影響から行います。
⚖️ 上場準備の段階でやること
上場前の段階では、評価そのものより、評価の前提となる仕組みを整えることが中心になります。行動規範や倫理の方針、職務権限規程、通報制度、内部監査の体制といった、評価項目に対応する仕組みが存在するかを点検します。
点検の方法は簡単で、評価項目の一覧を作り、それぞれについて対応する規程や仕組みがあるかを並べます。空欄になった項目が、整備すべき対象です。この作業は、上場審査の準備とも重なるため、早い段階でやっておくと二度手間になりません。
また、仕組みを作るときは、証拠が残る形にします。研修を行うなら受講記録を残す、方針を周知するなら周知した方法と日付を残すという形です。後から評価するときに、証拠がないために有効と言えないという事態を防げます。
❓ よくある質問
A. 会社全体に影響を及ぼす統制です。経営者の姿勢、倫理の方針、組織の構造、報告のルート、内部監査といった業務プロセスの外側にある仕組みを指します。
A. その結果が業務プロセスの評価の深さに影響するためです。良好であれば簡素化でき、問題があれば厚く評価することになります。
A. そのまま写さず、自社に当てはまらない項目は落とし、固有のリスクがあれば追加します。落とした理由は書いておきます。
A. 資料の閲覧と関係者への質問が中心です。業務プロセスのようにサンプルを抽出して件数を確かめる形にはなりません。
A. 経営者、管理部門の責任者、内部監査の担当者が中心です。同じ項目を複数の人に聞くと認識のずれが見えます。
A. 言えません。方針が文書で示されているかだけでなく、それが従業員に伝わる仕組みがあるかまで確かめます。
A. 不備の内容によります。財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼさないのであれば、全体としては有効という結論になり得ます。
A. 評価項目の一覧を作り、対応する規程や仕組みがあるかを並べます。空欄になった項目が整備すべき対象です。
📄 まとめ
全社的な内部統制は評価の土台です。その結果が業務プロセスの評価の深さを左右します。
評価項目は実施基準の例示をもとに、自社の実情に合わせて作り替えます。落とした理由も書いておきます。
確かめ方は資料の閲覧と質問です。同じ項目を複数の人に聞くと、認識のずれから弱さが見えます。
判定は、あるかないかではなく機能しているかで行い、理由を添えます。項目ごとの判定の後に全体としての結論を出します。
上場前は評価の前提となる仕組みを整え、証拠が残る形にしておきます。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
制度の全体像
評価範囲の決定
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