評価の対象外とした拠点やプロセスから不備が見つかることがあります。内部監査での発見、監査法人からの指摘、決算作業での判明といった経緯があります。
このときに考えるべきなのは、不備を直すかどうかだけではありません。その拠点を範囲から外した判断が依然として成り立つのかという点です。
この記事では、影響の広がりの確かめ方、見つかり方による意味の違い、範囲に追加するかの判断材料、監査法人との協議と報告書への影響を整理します。
- 範囲外から不備が見つかったときの5段階の対応
- 原因がその拠点に固有か、仕組みの問題かの見分け方
- 誰がどう見つけたかが示す統制の状態
- 評価範囲に追加するかを判断する5つの材料
- 期末近くに追加が必要になった場合の扱い
- 監査法人との協議で示すべき材料
図 評価範囲外の不備が見つかったときの判定
📌 結論 範囲を決めた前提が崩れていないか
評価の対象外とした拠点やプロセスから不備が見つかることがあります。内部監査で発見された、監査法人から指摘された、決算作業で判明したといった経緯があります。
このときに考えるべきなのは、その不備を直すかどうかだけではありません。その拠点やプロセスを評価の範囲から外した判断が、依然として成り立つのかという点です。範囲を決めた前提が崩れているのであれば、範囲そのものを見直す必要が生じます。
基準の改訂でも、経営者の評価範囲外から識別された不備への対応が論点として扱われています。範囲外だから関係ないという整理は取りにくくなっています。
まず影響の広がりを確かめる。1拠点の話か、全社の話かで対応が変わる
🧭 まず影響の広がりを確かめる
最初に行うのは、事実の確認と影響の特定です。どの勘定科目にどのくらいの金額の影響があるのか、いつから続いていたのかを確かめます。金額が小さく、単発の誤りであれば、範囲の見直しまでは至らないことが多くなります。
次に確かめるのが、原因の広がりです。その不備の原因が、その拠点に固有のものなのか、他の拠点にも共通する仕組みの問題なのかで、意味がまったく違います。共通の仕組みに原因があるのであれば、評価の範囲内の拠点でも同じことが起きている可能性があります。
この確認は、範囲内の拠点で同じ手続がどう行われているかを見るだけでできます。同じシステム、同じ手順書を使っているのであれば、範囲内の拠点についても追加で確かめる必要があります。
誰がどう見つけたかは、統制が働いているかの手がかりになる
📊 誰がどう見つけたか
不備の見つかり方も、判断の材料になります。内部監査が発見したのであれば、監視の仕組みが働いているという評価につながります。範囲外の拠点であっても、内部監査が定期的に見ているという事実は、統制環境として評価できる要素です。
逆に、監査法人から指摘されて初めて分かった、外部からの指摘で発覚したという場合は、会社の把握が及んでいなかったことになります。この場合、範囲の見直しだけでなく、モニタリングの仕組みそのものを点検する必要があります。
内部通報で発覚した場合も同様です。日常の統制が働いていれば、通報より先に検出されているはずです。通報制度が機能したことは良いことですが、その前段の統制が働かなかったという事実も残ります。
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🗂 追加するかどうかの判断
評価の範囲に追加するかどうかは、いくつかの材料から判断します。金額の重要性、原因の広がり、統制がそもそも設計されていなかったのか運用されていなかったのか、いつから続いていたのか、そして範囲から外した理由が成り立たなくなっていないかという点です。
不備そのものより、範囲を決めた前提が崩れたかどうかを見る
特に重要なのが最後の点です。金額が小さいから範囲外にしたという判断であれば、金額の面では前提は変わっていません。しかし、統制がまったく設計されていなかったのであれば、金額の大小にかかわらず管理が及んでいなかったことになり、範囲外とした判断の前提が変わります。
追加すると決めた場合、評価の時期が問題になります。期末に近い時期であれば、その年度に評価を終えることは難しくなります。この場合、翌年度から範囲に含めることとし、当年度は不備の内容と影響、対応の状況を記録に残すという扱いが検討されます。
⚖️ 監査法人との協議と報告書
範囲外から不備が見つかった場合は、早い段階で監査法人に伝えます。会社が範囲の見直しを不要と判断しても、監査法人が別の見解を持つことがあります。期末近くに認識のずれが判明すると、対応する時間がありません。
協議では、事実、影響の金額、原因、範囲を見直すかどうかの判断とその理由を示します。判断の材料を並べて説明すれば、見解が分かれても議論が具体的になります。
報告書への記載については、不備が開示すべき重要な不備に当たるかどうかで扱いが変わります。重要な不備に当たる場合は、その内容と是正の状況を記載します。当たらない場合でも、評価範囲の記載に影響することがあるため、記載の内容を監査法人と確認しておきます。
❓ よくある質問
A. 関係します。範囲を決めた前提が崩れていないかを確かめる必要があり、基準の改訂でも範囲外から識別された不備への対応が論点になっています。
A. 事実と影響の特定です。どの勘定科目にどのくらいの金額の影響があり、いつから続いていたのかを確かめます。
A. 範囲内の拠点で同じ手続がどう行われているかを見ます。同じシステムや手順書を使っているなら、範囲内でも追加の確認が必要です。
A. 違います。内部監査の発見は監視が働いている証拠になりますが、外部からの指摘は会社の把握が及んでいなかったことを示します。
A. 金額の重要性、原因の広がり、統制の設計の有無、継続していた期間、そして範囲外とした理由が成り立たなくなっていないかを見ます。
A. 統制がまったく設計されていなかった場合は、金額の大小にかかわらず範囲外とした判断の前提が変わります。
A. その年度に評価を終えることは難しいため、翌年度から範囲に含めることとし、当年度は不備の内容と対応の状況を記録に残す扱いが検討されます。
A. 早い段階です。会社が見直し不要と判断しても監査法人が別の見解を持つことがあり、期末近くにずれが判明すると対応する時間がありません。
📄 まとめ
範囲外から不備が見つかったときは、不備を直すかだけでなく、範囲を決めた前提が崩れていないかを確かめます。
最初に確かめるのは影響の広がりです。その拠点に固有の問題か、仕組みに原因があるかで対応が変わります。
誰がどう見つけたかも判断の材料になります。外部からの指摘で初めて分かった場合は、モニタリングの仕組みも点検します。
追加の判断では、統制がそもそも設計されていなかったかどうかが分かれ目になります。金額の大小だけでは決まりません。
監査法人には早い段階で伝えます。期末近くに見解のずれが判明すると対応する時間がありません。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
制度の全体像
評価範囲の決定
- 評価範囲の決め方
- 全社的な内部統制の評価
- 重要な事業拠点の選定
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- 決算・財務報告プロセスの評価
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